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できないことも「喜ばせごっこ」になる

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

記事:美(み)枝(え)花(か) (26 年 9 月ライティングゼミ with AI)

 

「人生は喜ばせごっこ」 

朝ドラ『あんぱん』でこのセリフを聞いた時、なんて素敵な言葉だろうと思った。

漫画家で詩人のやなせたかしさんが大切にしている人生哲学が、劇中のセリフとして登場し、私の好きな言葉になった。

 

しかし、同時にこんな疑問も生まれた。 

「喜ばせごっこ」というのは、自分が得意なことやできることで人を喜ばせ、社会に貢献すること。

それが自身の喜びにつながるからこそ「喜ばせごっこ」になるんだと思う。

だとしたら、私にとっての「喜ばせごっこ」ってなんだろう? 

 

長年、会社員として働いてきた私だが、1年ほど前、激務で心身に不調をきたし、退職を決意した。

定年まで数年を残すタイミングだった。 

幸いゆっくり休養を取ったことで徐々に元気を取り戻し、そろそろ社会復帰を考え始めていた。 

だけど私にできる喜ばせごっこって何だろう? 

生真面目な性格ゆえ、つい頑張りすぎて仕事を抱え込んだあげくダウンし、周りに迷惑をかけてしまった。

同じことは繰り返したくない。第一、そんな働き方では、自分自身が喜べない。

 

そんなある日、地元を散歩中のことだった。

大通りで信号が青になり、渡り始めた時、横断歩道の手前で右往左往している人が視界に入った。

よく見ると白杖を持った男性だった。

あれ? 困ってるのかな……? と思い、引き返して小さく声をかけてみた。

 「あの、お手伝いしましょうか?」  

もしも余計なお世話だったら、すぐに引き下がるつもりでいた。

以前、似た場面で声をかけて「結構です!」と強めに断られた記憶がよぎった。

 

しかしなんと、その男性、「わ~!ありがとうございます~!」と明るい声で私の腕に飛びついてきた。

思いのほか陽気なリアクションに一瞬のけぞりつつ、ほっとして 「あ、じゃあ、一緒に渡りましょう。私の腕に掴まって……。あ、もう掴まってますね。あはは」と笑い合う。

ぎこちなく誘導しながら横断歩道を渡り終えたところで、「よければ駅までご一緒しますよ」と言ってみた。 すると彼は「わ~!いいんですか?助かります~!」と、これまた嬉しそうに応え、駅までの道を一緒に歩きながら、こんなことを話してくれた。

 

「僕、元々は普通に見えてたんですけど、2か月前に病気で突然見えなくなったんです。だからまだ慣れてなくて。今日はこの近くに手続きに来て、その帰りなんですけど、初めて来た場所で方向がわからなくなって困ってたんです。だから声かけてくれて凄く嬉しかったんです」と、明るく笑いながら話してくれた。 

年齢は30代半ばぐらいだろうか。

 

「それは大変でしたね」 と言ってみたが、私の想像じゃ思い図れないくらい大変だったのだろうと思う。

なのに彼のこの清々しいほどの明るさは何だろう。 

もしかして神様なの? と思ってしまうほどだった。

 

駅に到着し、改札で見送る私に、彼は満面の笑顔で「本当に助かりました!ありがとうございました~!」と言って、爽やかな風が吹くように去っていった。

私の胸に何とも言えない温かいものが広がっていくのを感じた。その温かさはいつまでも続いた。 

 

彼は私にたくさん「ありがとう」と言って、思い切り喜ぶ姿を見せてくれた。

それがものすごく嬉しかった。

確かに手助けしたのは私の方かもしれないけど、それ以上に受け取ったものが大きかった。

 

もしかしたら、何かをしてあげることだけが人を喜ばせることじゃないのかもしれない。

自分ができないことをお願いすることや、誰かの助けを気持ちよく受け取ること。

そして喜んで「ありがとう」と表現すること。 

そういうことが相手の心を明るくすることだってある。

 

そういえば私、会社員時代、あんな風に気持ちよく人に頼ることってほとんどなかったように思う。

同僚からの「手伝おうか?」の声に即答で「ううん、大丈夫!」って受け取り拒否して全て自分で抱えてしまっていた。

彼みたいに「わ~!ありがとうございます!」って喜んで助けてもらっていたら、見える景色が変わっていたかもしれない。

 

「喜ぶことが喜ばせごっこ」 

そんな言葉が浮かんだ。

できないことがあっていいんだ。

 

一人で頑張らずに誰かに助けてもらう。

助けてもらったら、思い切り喜びを表現する。

心を込めて「ありがとう」を言う。

 

それを受け取った人の心が喜ぶかもしれない。

そういうことが自然にし合えたら、どんな人も、どんな状況も肯定し合える居心地のいい場になるだろう。

まさに喜ばせごっこの世界だ。

 

よし、これからの私はそんなマインドで行こう! 

社会復帰への道に明るい光が差した気がした。

 

やっぱり、あの白杖の彼は、神様だったのかもしれない。

ふふふ……。

≪終わり≫

 

 

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