週刊READING LIFE Vol.39

1日の終わりじゃない。1日のはじまりに1番近くにいてくれる、「私の部屋の必需品」《週刊READING LIFE Vol.39「IN MY ROOM〜私の部屋の必需品〜」》


記事:井上かほる(READING LIFE編集部 ライターズ倶楽部)
 
 

朝起きると、首や肩が痛い。
そんなことはありませんか?
まぁ……朝起きた段階で首や肩が痛いなんて、結構悪い状態で寝ているということですよね。
「床で寝ちゃった」
「ソファで寝ちゃった」
そういう場合であれば、そりゃあ痛くなるでしょう。
ところがもし、そうじゃなくて。
ベッドや布団で、掛け布団も枕もある場所で寝ているというのに、首や肩が痛い。
そうなると朝からブルーな気持ちになりませんか?
だって私がそうだったから。
これから仕事に行くっていうのに、朝から打ち合わせがあるっていうのに、目が覚めたら首や肩が痛い。ひどいときだと、頭まで痛い。これじゃあ仕事になりません。
「とりあえず頭痛薬飲むか」
「うちの会社はマッサージルームがあるからそこでやってもらえばいいか」
そんなことができれば、問題ないです。
ですが、私は持病があって簡単に頭痛薬が飲めません。そして、これまで働いてきた会社に、マッサージルームはありませんし、家の近所に予約なしですぐ背術してくれるマッサージ屋さんもありません。
 
そう。
私は長年、悩まされてきました。
朝起きたら、首肩頭すべてが痛い。
もうどうしたらいいかわからないくらい、何度も、何年も、そんな日が訪れました。
毎日じゃないにしろ、たびたび襲ってくるこの辛さは、体験した人にしかわからないんじゃないでしょうか。
救急車を呼ぶとか、すぐに病院に行かないといけないというほどではありません。
いや、たまに病院に行って、首と肩を含めた緊張をほぐす薬をもらったり、ひどいときだと点滴を打ってもらうこともありますが、それはそんなに多い頻度ではありません。
けれど、そこまでじゃなくても、朝起きて辛い状況である日は、かなりの日数あるのです。
 
これまでいろいろと試してはみました。
原因は、枕。
自分に合う枕がないんです。
見つけられたことがないんです。
固め、やわらかめ、だけではなく、頭のあたりが凹んでいるものだったり、首の後ろが斜めになっているものだったり、彗星のごとく登場した低反発だったり、枕ナシで寝てみたり。どれも試しました。けれど、どれも合いませんでした。そのたび、私は、「諦めるしかない」と思っていました。だって、長年、枕で悩んでいたタレントが、「これだったら自分好みの高さに合わせられる!」とテレビで喜んでいた、「バスタオルを重ねて枕とする方法」さえもダメだったのだから。私が知りうる、「これならば!」と思ったものが、ことごとくダメだったのだから。
だから、朝起きたら首や肩が痛い。
これはもう、「私のスタンダード」として受け入れるしかないと思っていました。
どうせ、「1日の終わりの場所なんだから」と。

 

 

 

「1日のうちの約3分の1。人生の3分の1は寝てるんですよ?」
4年ほど前、会社の後輩に、仕事中よりも真剣な顔で言われ、「なるほど。たしかに」と思い、たどり着いたのが「オーダーメイド枕」です。
「え?  バスタオルでつくった自分用の枕、ダメだったじゃん」
そう思われるかもしれません。
私もそう思っていました。
それに、オーダーメイドっていっても、もともとある素材でつくるんだから、大したことないんだろ、と。
そんな簡単に自分に合った枕を見つけられるなんて、今までになかったんだからあり得ないだろ、と。
ところが!  これは!  違うんです!
本当に、自分に合った枕をつくることができるんです!
 
どのようにつくられたのかというと。
まず、店内にあるベッドに仰向けになり、全身のどこに圧力がかかっているかを専用の機械でチェックします。
サーモグラフィーのようなものでチェックすると、私は完全に、首と肩、そして後頭部に通常より多めに圧力がかかっていました。
自分が寝ている状態をチェックすることなんて今までになかったので新鮮です。
チェックが終わると、私に必要な高さや固さを、データに基づいて枕の中身を調整します。
具体的になにが入っているかまではしっかり把握はしていませんが、私に合ったものを入れていってくれます。
この作業を2回ほど繰り返すと、私専用の枕ができるというわけです。
 
できあがった枕は結構大きなものでした。
就活生のカバンを、横にもう1つ分くらい伸ばした感じです。
帰り道、お店のロゴがたくさん入った大きな布袋を肩から下げ、たくさんの人に注目されながらも、「これから私はこの枕で寝るんだぞ!」と声を大にして言いたいくらいでした。
だって、そのお店はプロのアスリートたちも御用達のお店。期待しないわけにはいきません。
が、もし合わなかったら……という不安も、少なからずありました。
しかし!  この不安も、今までとは違うのです!
今までだと、既製品を買っていたので、合わなかったら買い替えることしかできませんでしたが、今回はなんと、「何度でも、再調整が可能(期間は数年~10年程度※商品による。私の枕は枕が破けたりなどしない限り、永久的に再調整可能)」なんです。

 

 

 

使うようになって、もう4年。
年に数回、メンテナンスに行きます。
この枕にしてからというもの、朝起きたときに首肩頭が痛くなったことはありません。
むしろ、日中忙しくて首肩頭が痛くなった日も、この枕で眠れば次の日には痛かった首肩頭は治っています。
「朝起きたら、また、首肩頭痛くなるんだろうな……」と不安に思いながら寝ていた私は、この枕に首肩頭を預けるようになってからは、ほぅっと安心できるようになりました。
「ちゃんと朝までに整えてあげるよ」と言ってくれているようです。
 
そして、「最近ちょっと目覚めが悪いな」と思ったら、メンテナンスの合図です。
お店のロゴがたくさん入った大きな布袋を肩から下げ、「メンテナンスお願いしまーす!」と言えば、ものの数十分ほどで新品同然の枕に戻してくれます。
 
ただ、1つだけ困ったことがあります。
私は旅行が好きなのですが、持っていけないのです。
中途半端に大きいので、国内旅行しかしない私が使うトランクには入らないし、別で持っていくにしては大きなカバンが必要になります。
けれど、たまに離れてみるのもいいと思うのです。
ひとり暮らしをして、初めて実家のありがたみがわかるように、旅行から帰ってきて、慣れない枕で凝り固まった首肩頭を元の状態に戻してくれるから。
 
かつて、どうしようもないものだと諦めていた枕は、私にとって、なくてはならない大切なものになっていました。
今では、1日の終わりではなく、1日がはじまる場所。
「オーダーメイド枕」が、私の部屋の必需品です。

 
 
 
 

◻︎ライタープロフィール
井上かほる(READING LIFE編集部 ライターズ倶楽部)

札幌市在住。元・求人広告営業。
2018年6月開講の「ライティング・ゼミ」を受講し、12月より天狼院ライターズ倶楽部に所属中。
IT企業のブログにて、働く女性に向けての記事を書いている。
現在は、プロのライターになるべく勉強中。
エネルギー源は妹と暮らすうさぎさん、バスケットボール、お笑い&落語、映画、苦くなくて甘すぎないカフェモカ。

http://tenro-in.com/zemi/86808



2019-07-01 | Posted in 週刊READING LIFE Vol.39

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