週刊READING LIFE vol.56

オリンピックが2021年の日本に残すもの~世界的スポーツの祭典が、日本の満員電車を解消させる理由~《週刊READING LIFE Vol.56 「2020年に来る! 注目コンテンツ」》


記事:坂田幸太郎(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 

オリンピックまで、あと1年もないというのに、日本は盛り上がりに欠けていると感じているのは私だけだろうか。
 
半年前に一度だけオリンピック観戦チケット争奪戦で世間が盛り上がったことは知っている。予約サイトにアクセスが集中し、サイトを開くことさえできなかった賑わいだったと聞く。束の間のオリンピックフィーバーだったとは言えやはり、オリンピックを内心楽しみにしている人は少なくないんだなと思う一方全く興味がない人も多い。
 
私もその一人だ。
 
もはや、オリンピックは別次元に出来事なのかもしれない。
私のようにオリンピックを別次元のイベントとして捉えている人も多い気がする。
五輪を楽しみにしている者、別次元のイベントだと割り切っている者過ごすごす者。
国民の熱量の差が激しい今回の東京五輪に対して、1968年に行われた
オリンピックは大変な騒ぎだったと聞く。
 
全国民が該当テレビにむらがりオリンピックの中継を見ている姿は、幾度か資料映像で見たことがある。とくに東京の盛り上がりは異常だったと当時を生きた私のおじさんが教えてくれた。皆オリンピックに熱狂し、オリンピックに酔いしれていたと話してくれた。
 
しかし、一つ疑問思う。
 
、当時の国民、とりわけ東京都民はそんなにスポーツへ熱狂的な関心があったのだろうか。
 
いや、全 国民にその熱があったとは思えない。
無関心の人もいるはずだ。
しかし、1068年の五輪は、全国民が大熱狂するイベントとなった。
 
なぜだろう。
 
それは、きっと「オリンピックの恩恵」があったからに違いない。
 
高速道路の開通や東京タワーの建設などオリンピックに向けて街が変貌して行くのが庶民でも感じた当時。
あきらかに変わっていく街並みを目の当たりにしたら、スポーツに興味がなくともオリンピックに関心が湧いてしまうものだ。
 
今日よりも明日はいい日になる。
1968年のオリンピックは、明日への希望の光だったのだ。
 
しかし、現在の日本には完成されたインフラが既にあり、経済的にも豊かな国である。
それは日本が発展仕切っているなによりもの証拠であり、喜ばしい事であり、誇らしいことである。
 
では、オリンピックの恩恵を何も受ける事がないのだろうか。
2020年はなにも日本に残さないまま、通り過ぎて行くのであろうか。
 
現実、新しいインフラ設備が2020年に整うことはない。
それどころか、オリンピック期間中の都心は人が集中し、交通麻痺が起こると予想されている。
 
都心の交通麻痺、普段の生活が出来ない。
恩恵どころかマイナスの事しか起こらないではないか。
オリンピックはやらない方がいい。東京でやる必要はない。
どうしても、悲観的な考えが先行してしまう。
しかし一つ考え方を変えれば、オリンピックで起こりうる弊害やマイナスというのは、
日本をより住みやすい国へと変える起爆剤になるかもしれない。
 
例えば通勤電車。
現代社会を生きる東京都民なら、共通の悩みとして、「通勤電車」があると思う。
毎朝、混雑した朝の電車に乗り込み、通勤しなくてはいけないのは極めて苦痛である。
通勤しただけでその日の力を使い果たしてしまう人も多いのではと思う。
なんでも、日本の通勤電車は海外の人からすると物珍しい光景らしく、わざわざ朝の電車に乗り込み通勤電車を体験する人も多いのだとか。
 
さらに、朝方に行うオリンピック競技が多い。
よって、今回の東京五輪は通勤ラッシュ時に多くの観光客が電車を利用するとのこと。
普段の通勤でも悲鳴を上げているというのに、来年の夏は一体どうなってしまうのだろうか。
そこで、今ビジネス界ではこの言葉が注目を浴びている。
 
「モバイルワーク」。
一度は聞いたことがあるかもしれない。
「モバイルワーク」とは、場所に縛られることなく働くこと。
この言葉はなにも最近できたというわけでもない。
 
昔は「テレワーク」という似た言葉もあり、時代の節目で新しい働き方というものは提案されてきたがあまり浸透されてこなかった。やはり、新しい働き方というものを積極的に取り入れる企業はすくないのが実情だ。
 
時代の節目で現れるも、企業に受け入れられてこなかった「テレワーク」や「モバイルワーク」。
もしかしたら東京五輪が、これらの働き方を定着させるチャンスかもしれない
 
そもそも、今まで実現に踏み切れなかった理由は、企業が「モバイルワ-ク」を毛嫌いしていたから、というわけではない。
むしろ企業は「モバイルワーク」をやりたい。
「モバイルワーク」が実現可能になれば、社屋を持たなくても良いのだ。
定期代も払わなくて良い。
いい事づくしだ。
 
しかし実現ができなかったのは、実際に「モバイルワーク」を行った企業の実体験例や成功例が少ないからだ。
成功例や、体験談少ないことはあまり行いたくないのが企業の心情。
言ってしまえば企業同士が実現するタイミングを伺っていた状態だった。
 
しかし、今回の東京五輪で通勤が困難になるという問題を解決しなくてはいけないという共通の課題がある今、まさにそのタイミングが来たのだ。
 
以前「テレワーク化」が出来なかった要因として職場とのディスコミュニケーションが
問題になった、ITの発展により社屋にいなくともチャットやビデオ通話もできる時代になったことでコミュニケーションは円滑に行える。
絶好のタイミングとITの後押し。
「モバイルワーク」に可能性実現の可能性を感じずにはいられない。
 
オリンピックは2021年の私たちの何を残すだろうか。
インフラなど目に見える部分では変わりないかもしれない。
だが、働き方など目に見えない部分で、日本にもう一歩先へと発展させてくれる行事になるに違いない。
 
2021年どんな未来になっているか。
スポーツに興味がなくとも気になるところである。

 
 
 
 

◻︎ライタープロフィール
坂田幸太郎 26歳(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

東京生まれ東京育ち
10代の頃は小説家を目指し、公募に数多くの作品を出すも夢半ば挫折し、現在IT会社に勤務。
それでも書くことに、携わりたいと思いライティングゼミを受講する

http://tenro-in.com/zemi/102023

 


2019-11-04 | Posted in 週刊READING LIFE vol.56

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