お金に好かれる方法~闇に堕ちた男を救う光は誰だ!?《週刊READING LIFE Vol,88「光と闇」》
記事:千神 弥生(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
「オレが死んだら、保険金が出る。だから、死にたい……」
ずっと昔、「お金がない!」というタイトルのドラマがありましたね。
お金がどれだけ人生の明暗を分けるのか、面白おかしく描かれていましたが、まさか、わが家にもそんなドラマチックなことが起きるとは思ってもみませんでした。
お金には、種類があるそうです。
「生き金」と「死に金」という、2種類です。
お金に、もし感情があると仮定したとき、「生き金」はお金自身が喜ぶような使い方のことで、「死に金」はお金自身が悲しむ使い方のことだそうです。
最終的には、「生き金」は、また“お友達”を連れて帰ってくるのに対して、「死に金」は“お友達”が全然寄ってこなくなるとか……。
実際に世の中には、お金ですべてを失う人もいれば、ほとんどの幸福はお金で買えるという人もいます。
まさに、お金は、「生きるか、死ぬか」に関わっており、人生を明るく照らすのか、どん底に落とすのか、その明暗を分けるものです。
だからでしょうね、巷には、お財布の種類や、使い方などのウワサがたくさん流れています。
・長財布がいい
・お札のシワにアイロンをかける
・カード類、レシートを入れない
・カバンから出して、財布のベッドで休ませる
・満月の光にあてて、財布をフリフリと振る
・黄色やゴールドが良い
などなど、私もいくつか試したことがあります。
多くの人にとって、お金は悩みの種ですし、お金を増やすためのノウハウはいつも大人気です。
人々にとって、お金がどれだけ重要で、そして、必要かがよく分かります。
そう、お金ほど、人を「光と闇」に振り分けるものはないのだと思います。
そんな私も、お金に、めちゃくちゃ困った時期があります。
冒頭のアレです。
数年前のことです。
夫が15年勤めていた会社を辞めました。
いわゆる脱サラというやつです。
かといって、そのあとの当てなどは、まったくありませんでした。
なんとか知り合いの会社でバイトを始めたのですが、会社の景気の悪さと、本人の体調の悪さとで(金属を扱うのですが、金属アレルギー!)辞めざるを得ませんでした。
しばらくプータローだったり、また違う会社でバイトをしたりと、安定しない日々でした。
私は私で、出産を機に会社を辞めたので、しばらく働いておらず、言ってみれば、夫婦そろって脱サラ&プータローという状態でした。
その間に、二人の子供はどんどん大きくなっていきました。
元来の私の楽観的な性格もあり、「どうにかなるでしょ!」と貯金を切り崩して生活していたのですが、とうとう貯金があとわずかで底をつく、というところまできていました。
「ヤバい!」
そう気がついたときには、時すでに遅し……。
「え、お金なくて何にも買えないんですけど!?」という状態になっていました。
さすがの私も、鬼気迫って、夫に「今すぐ! 今すぐ正社員になれるところを見つけてきて!」と叫びました。
夫は、その私のかつてない鬼の形相に「ヤバい!」と察知したのでしょう、翌日すぐに正社員の仕事を見つけ、面接をパスしてきました。
ホッとしたのも束の間。
「社長がムカつく」という理由で、勤めて1ヶ月半でまた辞めると言うんですよ……。
いやいやいやいや!
社長がムカつくとか言ってる場合じゃないで!
家にはもう、お金が全然ないって言ってるじゃん!
それでも、どーーーーしても!!! 社長が無理だと言う……。
トホホ……。
「娘を幸せにすると約束したんじゃないのか!」
うちの父親にもテーブルをバンバン叩かれながら叱られる夫……。
トホホ……。
親から援助してもらってもなお、毎月の家のローンの支払いや、子供の学費を支払えるのか!? というギリギリの自転車操業というのを初めて経験しました。
夫の精神状態は、次第にマズい状態に追い込まれていきました。
「オレが死んだら保険金が入る」
「死にたい」と言い出すように……!
いやいやいやいや!
そういうことじゃなくてさ、普通に正社員で働いてくれたらいいだけでしょ!
ボーナスとかさ! 出るじゃん!?
でも、まあ、ここでは割愛しますが、色々とワケあって正社員になれないことも理解していました。
まさか、いつも私をギャグで笑わせてくれる夫の口から「死にたい」なんて、こんなドラマみたいなセリフを聞く日が来るとは……。
さらに、
「オレは、『スターウォーズ』のダースベーダーの気持ちがよく分かった。闇に堕ちるとはこういうことなんだ……」と呟くんですよ!
「知らんがな! 『スターウォーズ』興味ない! 観たことないわ!」
夫の邪気を跳ね除けたのですが、夫は落ち込み続け、ついには、霊能者から「霊が憑いてます」と言われるまでに!
マジな話、夜中に2階の寝室の窓をノックされたり、耳元で「ねえ、起きて……」と囁かれたりするように!
なんと、心霊写真まで撮れちゃいました……!
おいおいおいおい!
ちびまる子ちゃんの顔に描かれる斜線みたいなのが見えるよ!
勘弁して!
夫の背後にはブラックホールみたいな穴があって、ウッカリするとそこに吸い込まれそうな感じでした。
私は、「絶対大丈夫だから! とにかく死ぬな!」と言葉をかけながら、全然大丈夫じゃないこの状況をどうやって乗り越えたらいいのか、日々、打開策を考えていました。
そんなある日。
当時2才の息子と二人で、スーパーを歩いていると、「半額セール」と書かれた、子供用の靴の在庫処分をしていました。
ちょっと前から、子供の靴に穴が開いていたので、「靴を買ってあげたいな」と思っていた私は、「半額ならいけるかも!」と思って飛びつきました。
ところが、よく見ると、正規の価格が5,000円くらいで、半額になっても2,500円……。
私の財布には、1,300円しか入っていなかったんです。
しかもこれは、食費……。
ガッカリしたけれど、履いてみるだけならいいかなと思い、2才の小さな息子をイスに座らせました。
右には新しい靴、左には今の靴。
息子はニコニコしながら、靴を履かせる私を見ていました。
「わぁ、可愛い!」
そう思った私は、思わず「ハルくん、この靴、どっちが好き?」と聞いてしまいました。
聞いてすぐに、後悔しました。
だって、どうせ買ってやれないじゃないですか。
それなのに聞いちゃって、右って言ったらどうするんだ……。
……
「……こっち!」
元気よく息子が指差したのは、左の方でした。
穴が開いたボロボロの靴を指して、ニコニコしている息子を見て、私は……。
ホッとしてしまったんです……。
……?
あれ?
私の目から、涙がポロっと落ちました。
なんで、私は泣いているの?
自分でもしばらく理解できませんでした。
お金がなくて辛かったからじゃないんです。
親としての不甲斐なさで泣いたんじゃないんです。
息子への愛が、自分の中に溢れていることに気がついたんです。
「こんなにもこの子への愛が溢れているのに、それを表現できないなんて……」
それが、悲しかったんです。
ああ、そうか! お金は愛を表現するためのツールなんだ!
そう思いました。
不思議なことに、お金は変わらずありませんでしたが、お金が喜んでいるのが分かりました。
それからしばらく経った、またある時のことです。
相変わらず状況は変わっていませんでした。
夫は例の嫌いな社長がいる職場は辞め、違う会社でバイトしていたのですが、経済状況は厳しいままでした。
ただ、ブラックホールが小さくなっているのは感じました。
そんな時、私の恩師が、とある出来事へのお礼にと、3万円入った封筒を渡してくれました。
恩師は、私がお金に困っていることを知っており、いくらお礼といっても貰いすぎの3万円に、恩師の「愛」が込められていることが分かりました。
私はお金を、毎朝夫が拝んでいる神棚に供えました。
食料が買えなくなった時の最後の砦として使わせてもらおうと思ったからです。
そのあと今度は、私の先輩が、普通ならお金を払ってもなかなか出来ない体験を、先輩のお金で私にプレゼントしてくれました。
それはそれは、素晴らしい体験でした。
そのお礼をしたいと思ったのですが、いかんせんお金がありません。
「そうだ! 今こそ、神棚のお金だ!」
恩師からいただいた大切なお金です。
私は、先輩が一番喜ぶ、かつ恩師が喜ぶ、また今の私が最大限に世界に貢献できる、みんなが喜ぶお金の使い方は!? という視点で神棚のお金の三分の一を使って、先輩にお礼をしました。
そして、神棚の残った三分の一のお金は、恩師が本が出版された時に、大量に購入する一部に使いました。
不思議なことに、このときも、「お金が喜んでいる」という感覚がありました。
お金が笑っているというか、お金に肩を組まれているという感じです。
このような経験から、私は学びました。
「生き金」とは、自分の内側に溢れる「愛と感謝」を乗せたお金のことなんだと。
お金が喜ぶ、って、こういう意識で使ったときなんだと。
そして、お金がないときほど、その「愛と感謝」は、自分の奥から引き出し、渡すことができ、また、受け取ることができる、そんなチャンスなのだと。
それを感じる機会があるたびに、私はどん底にも関わらず、あたたかい涙が流れていたのでした。
それからは、お金がない状況は変わらなくても、私の中には、いえ、私たち夫婦の間には、光がいつも差し込んでいました。
近所のおばちゃんがくれる野菜にも、人がかけてくれる何気ない言葉にも、「愛と感謝」が溢れていることを感じました。
またそこから生まれた自分自身の「愛と感謝」を、今目の前のやれることに全力で乗せて返す、それだけを繰り返しました。
そうやって、「今月もなんとか生きられた!」と繰り返しているうちに、気がつくと、わが家の最大のピンチを乗り越えることができていました。
正直、お金に換算しても数十万の援助、また、お金には換えられない恩義を、この数年で受け取りました。
返しきれない愛を受け取った私は、人生をかけてお返ししていこうと誓っています。
そして、「死にたい」と言っていた夫ですが、人生で最大のどん底を乗り越えたことで、逆に強くなったんだと思います。
相変わらずバイトですが、正社員以上に朝から晩まで働いていて、長年勤めていた会社の時よりずっと元気で、ずっと逞しいです。
本人の気持ちが楽で、楽しく仕事できるのが一番ですからね。
もう「正社員に」という言葉を言うことはありません。
「正社員であることこそ安心」という時代は、もうとっくに終わっており、「自分の性質や生き方に沿った働き方」というものを重視していく時代に突入しています。
彼は、一足早くその新しい時代の働き方にシフトしただけで、しかもそれはパートナーの理解なくしては難しいことだったというわけです。
あの最大のピンチを二人で乗り越えたことで、私たち夫婦は、根底から深くつながることができました。
お互いの性質を理解しあい、信頼しあい、尊敬しあいながら、それぞれがピッタリの働き方をしています。
私はと言えば、自分のお金の使い方が、適当で雑だったことに気がつきました。
そう、大切に使っているようで、使えていなかったのです。
もちろん、特別ムダ遣いをしたり、お金をぞんざいに扱っていたわけではありません。
多分、普通の人と同じです。
ただ、「お金への愛」を通して、夫や子供たち、大切な人たちと、より深く濃く、愛が通過しあう関係性へとシフトするために、あの経験をする必要があったのだと、今なら分かります。
なぜなら、私の現在の仕事は、「人生相談」に乗ることだからです。
相談の内容のほぼ100%が、「人間関係とお金」に集約され、そこで多くの人が苦しんでいます。
表面上の対処療法ではなく、人生を根本から意識改革することでしか、本当の意味で人生が好転することはありません。
またどんな人の人生にも「光と闇」が存在するものなので、この仕事を続けていくうえで、あの経験は絶対に必要だったと思います。
ちょうどあの頃から、相談件数が増えていったので、間違いないと思います。
よく「どん底」を経験した人がそのあと成功するという話を聞きますが、今の私は、それがよく分かります。
お金がないことは「生きること」への絶望とも言えますが、ただ、その闇の中だからこそ、真っ暗だからこそ、人はそこに「愛と感謝」という“光”を見出すことができるということを体験したからです。
神棚のあと三分の一残ったお金は、今もずっと供えたままです。
私がいつかお金への「愛と感謝」を忘れてしまった時に、また私に今回のことを思い出させてもらうためです。
人がすぐ調子に乗ってまた失敗するのは、人生において「光と闇」を繰り返しながら「愛と感謝」の器を大きく深くしていくためだと思っています。
ちなみに、5才になった息子の靴は、今でもちょっとボロっちいです。
まだまだ履けるので、それこそ穴が開くまで履かせるつもりです。
ただ、今度は、右を選んでも左を選んでもいいように、夫婦で力を合わせて、お金と仲良くしていこうと思います!
そう、お金とパートナーシップは直結しているのです。
□ライターズプロフィール
千神 弥生(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
言葉で人を生(活)かすストーリーテラーとして生まれてきた。
クライアントの過去から「人生のテーマ」を導きだし、親子、男女の絡まった糸を結び直しながら、悩みを根本から解決していく「時空力コンサルタント」として活動中。
この記事は、「ライティング・ゼミ」を受講したスタッフが書いてます。 ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
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