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週刊READING LIFE vol.88

転生しなくても悪役令嬢ビジュアルですが、だからなに。《週刊READING LIFE Vol,88「光と闇」》


記事:なつき(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
いま共感しているアニメがある。『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』である。なんとも長いこのタイトルに全てが集約されている。このタイトルにもある乙女ゲームをやったことがあるだろうか。
 
乙女ゲームは、女性が主人公でその主人公を取り巻く周りの人たちと恋愛するゲームだ。気に入った人と何度も会話をし恋愛イベントをこなし恋人関係になることを目的としたゲームだ。主人公が相手との会話の中で選択肢がいくつかあるが、その選択によってグッドエンド、バッドエンドが存在する。そしてこのタイプのゲームの主人公の設定は、大抵小柄で可愛い女子になることが多かった。誰から見ても愛らしくて守ってあげたくなるようなそんなタイプの女子。ふわふわした髪型にふわっとしたワンピースが似合う女子。ギュッと抱きしめたくなるような女子。対して、主人公のライバルだったり適役には、ちょっときつめの面立ちで背の高い女子が設定されることが多い。縦ロールやストレートの髪型に、シャープな服装。お金持ちで高慢なお嬢様。見た目からして意地悪そうなそんな女子。このタイトルはこの意地悪そうなライバル女子を悪役令嬢と呼んでいてその女子に転生した物語であることを語っている。
 
悪役令嬢に転生ってどういうことだろう。この物語は17歳で死んでしまった女子高生が前日までプレイしていた乙女ゲームの中のキャラクターに転生したところから始まる。ゲームに転生するという発想自体がすごいけれども、転生したキャラクターがライバル役の悪役令嬢だというのも珍しい。そして転生した人生をどう生きるか、がテーマに物語は進む。
 
私はこの物語を見ているうちに共感を覚えた。なぜだろう。
 
少し話は遡る。20年ほど前に私は乙女ゲームの存在を知った。当時はまだ男性向けが主流で女性用はあまり知られていなかった。そんな中で友人から乙女ゲームの存在を教えてもらった私はどっぷりはまった。主人公と取り巻く男子との恋愛シミュレーションにはまった。男子はキャラクター設定が様々だ。礼儀正しい男子、俺様系男子、優しい男子、つんけんしている男子、可愛い男子。5通りの男子を挙げたが、この5通りの男子との会話、恋愛イベントが楽しめるのだ。1人の人とのシミュレーションを何度も楽しんでもいいし、先に挙げたグッドエンド、バッドエンドを全てコンプリートするのも面白い。
 
こんな楽しいシミュレーションにはまらないわけがない。私は主人公の女子になり切って楽しんだ。乙女ゲームを何作品も楽しんだ。ところが次第にあまり楽しくなくなってしまった。この乙女ゲームはパターン化しているものがあった。それが主人公はみんな小柄でふわふわほわほわでちょっと天然で可愛いということだ。
 
ゲームをやり始めた頃は小柄で愛くるしい主人公でプレイするのがとても楽しかった。プレイ中ふわふわほわほわ和やかな気持ちになる。でも次第に、ライバル役に設定された女子に目が行くようになった。主人公に対して意地悪をしてくる女子に対して気持ちが向くようになった。なぜだろうか。
 
それは私が背が高く釣り目がちの面立ちをしているから。ゲームは別の世界で別の自分になれるからプレイするのが好きという話を聞いたことがある。私はどうだろう。プレイ中になぜだかライバルのことが知りたくなる。主人公の恋愛を進めながらライバルの状態を知りたくなる。どうやら私はライバルにもいい方向に進む道が無いか考えてしまう様だ。背格好と顔が似ているからか、ちょっと釣り目のライバルお嬢様に感情移入してしまう様だ。
 
ゲームの世界は別のキャラクターになればいいじゃない、そう思っても見た目が似ている方にやっぱり目がいってしまう。見た目だけの問題なのかもしれないけど、なにも毎回意地悪キャラが背が高くて釣り目がちにしなくてもいいじゃないかと思ってしまうのは否めない。
 
そんな時にこの作品に出合った。この作品はアニメで、私は予告のCMを見て知った。悪役令嬢が主役ってどんなよ、と思って興味本位で見ることにした。そうしたら、前世でプレイしていたゲームのキャラクターに転生、しかもライバルの主人公に意地悪する悪役令嬢。タイトルそのままだった。どんな悪役令嬢なのだろうかと見始めた。
 
悪役令嬢に転生した主人公はあることをきっかけに自分が前世でプレイしていた乙女ゲームのキャラクターになっていることを知る。しかも、どう進んでもバッドエンドしかない設定をされた悪役令嬢。国外追放、殺されるなどお先真っ暗なものしかない。そこで主人公は自分の身の安全を護るために防御策を考える。主人公は小さな魔法を使えたからその魔法の強化、剣の稽古など。そして魔法強化で辿り着いたのは畑を作ることだった。国外追放されても生計を立てられるように考えた畑だったが、その畑を通し主人公の周りは変わっていく。また、主人公がバッドエンドを回避するべく必死に起こした行動が周りをいい方向に巻き込み大きな影響を与え、愛される人物になっていく。そんな物語だった。物語としてはとっても王道だ。主人公が一人一人を巻き込み皆で仲良く、または仲間になると言った塩梅だから。
 
この物語を見て、見た目で考えなくていいのだなと思わせてもらうことができた。釣り目の人はきつめの性格。性格は顔に現れると聞くし間違いではないのだろう。でもそれで諦める必要はない。きつめに見られているから、その通りに振舞わなければと思う必要はない。殻に閉じこもる必要もない。今までの主人公が光の存在であるならば、悪役令嬢は闇の存在だ。そんな悪役令嬢でも心の持ち方ひとつ、行動1つで光にもなりうることを教えてくれている。どんな環境でもいつでも変えていけることを教えてくれている。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
なつき(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

東京都在住。2018年2月から天狼院のライティング・ゼミに通い始める。更にプロフェッショナル・ゼミを経てライターズ倶楽部に参加。書いた記事への「元気になった」「興味を持った」という声が嬉しくて書き続けている。

この記事は、「ライティング・ゼミ」を受講したスタッフが書いてます。 ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

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2020-07-22 | Posted in 週刊READING LIFE vol.88

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