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週刊READING LIFE vol,110

「若者よ!私の教訓をいかして欲しい!」《週刊READING LIFE vol.110「転職」》

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記事:久一清志(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
「今日、少しお時間をいただくことはできますか?」
接点が少ない社員から声をかけられた時に、嫌な予感がする言葉である。
普段は一緒に仕事をすることが少なく、あまり面識のない者であれば、より違和感を覚える。
当日、予定があったとしても優先順位を変える。
約束の時間まで不安を持ちながら過ごして面会に備える。

 

 

 

「私、会社を辞めます」

 

 

 

普段、運を試されるような直感力は極めて低く、当たった試しはないものの、
このような場面の直感力は99%当たる。事前にヒントが得られているからである。
ヒントとは、普段の働きぶりや生活習慣。仕事に向き合う姿勢。
表情や態度を見ているとある程度の予測はつく。

 

 

 

やめる覚悟を持って挑んでくる者は、以外と割り切っている。
この時とばかりに、今までの仕事では見ることができなかった最高の自己主張をしてくるのである。
面白いものだと関心させられる。
この自己主張能力を日常で活かしていれば、今の怠慢な行動にはならなかったものと推察する。

 

 

 

転職することは、悪いことではない。
働き方が多様化した昨今においてはなおさらである。
1つの会社で働きつづけることが良いとか、悪いというこだわりもない。
人それぞれの選択肢があって当然だからである。
私は人事担当者であるため、職場を優先しながらも、本人の人生を考慮して話をする。
退職の目的や理由がその人の人生に大きく左右するからである。

 

 

 

職場の人間としては、やめてほしくない。一緒にがんばろうといいたい。
けれども、個人としては自分の人生は自分で決めればよいと言いきる。
他人に決めてもらうのではなく、自分で決めろといいたいのである。
自己責任である。自己責任があれば、次も止める場面がきたときには、
原因が自分であることに目が向く。
また、現在の置かれた状況をも自分が選んだものであることに気づくからである。

 

 

 

ただし、唯一こだわっているものがある。
前向きな退職であること。
やりたいことがある。何かに挑戦したい。家業を継ぐなど、応援したくなる転職は歓迎する。
反対に、後ろ向きな退職には大いに抵抗する。
給料が安い。あの人が嫌い。面白くないなど、他人を理由にする退職に対しては最後の思いやりを注ぐ。
採用時の喜び以上に、退職時の悔しさは大きくなるために、こだわってしまうのである。
説得しても変わらないのは承知の上で、伝えるべきことは伝えている。

 

 

 

ところが、残念なのは聞く耳を持ってもらえないことである。
聞く耳を持ってもらえていない時点で、私との人間関係はできていなかったということになる。
従って、原因は私にもあると考えて終えることにしている。

 

 

 

「どうせやめるんだから……」

 

 

 

退職者は開き直ったら強い。対立関係になるとお互い気まずくなるため、
働きにくくなり、職場の雰囲気も悪くなる。
会社に行きたくもなくなり、引継ぎのことなど、気にも留めずに、残りの有給休暇の消化を始める。

 

 

 

「権利なのだからいいではないか!」

 

 

 

この態度が前面に押し出されるかたちで現れる。
こういう人に限って、退職の日は賞与支給月に設定されているのが常である。
自分の中で、計画的な退職日程が確立されているのである。
今までの仕事では計画通りに進められていなかったとしても、この時ばかりは完璧である。

 

 

 

最後は、私の見る目がなかったということであり、採用した方が悪いということに落ち着く。
残念な話であり、人事に関わる仕事をしている中で、一番寂しい気持ちになる瞬間である。

 

 

 

前向きな退職もある。
前向きな方は、第一声からして違う。
 
「相談があるのですが」
 
考えや想い、やりたいこと、進むべき方向性などを説明し、会社に迷惑を掛けないかたちでの退職相談になる。
残念な気持ちは変わらないものの、人の人生という目線で話をすると応援したくなるのが人情である。
自分自身で決めたことであると言いきるほどに、熱意が伝わってくる。
こういう人は、今までも責任ある行動で仕事をしてきた人であるため、わかりやすい。
プライベートな質問をしても応えてくれる。
さらには、退職による仕事内容が現職に関係性があるものであれば、互いに良好な関係を保つことも視野にいれている。本当に格好の良い転職計画である。

 

 

 

私も会社を辞めようと考えたことがある。
職場が嫌になったときである。
20年も前の出来事であり、その理由は後ろ向きなものであった。
人間関係と働き方がその原因であった。
現在の言葉に置き換えてみると、パワーハラスメントであったと断言できる。
また長時間に及ぶ労働時間は、今で言う過労死ラインを2倍に達していた。

 

 

 

雇われの身において、頼まれた仕事に負荷を感じる理由には次のものがある。
受け止め方は人に寄って違うものの、考え方は次の通りだと認識している。
①やったことのない仕事を頼まれたとき
②納期が短い仕事
③割り込まれてきた仕事
④突発的な仕事
⑤命令された仕事

 

 

 

仕事の負荷と後ろ向き名退職理由はどうやらちがうようである。
①仕事がハードな時
②将来性がない
③人間関係に不満
④収入が少ない。見込めない。休みが少ない。
⑤面白くない。雰囲気が悪い。

 

 

 

私の場合は違った。妻に止めろと言われていた。
それは自分の選択ではなかったから決断を長引かせた。
職場では奴隷のようなものだった。正直に、散々悩んだ。
私の中の常識は、辞めることは罪だったから肉体的にも精神的にも耐えた。
しかし、結果として身体が悲鳴をあげて壊れた。
原因不明の難病に侵された。本末転倒である。
新婚3年目。初めての子どもが生まれて4ヶ月が過ぎた頃だった。
会社にも家族にも迷惑を掛けた。
結果として、誰も良かったことはなかった。

 

 

 

私は、父の背中から転職はいけないことだと身を持って教えられた。
1つの会社で働き続けることで安定収入を得て、家族を安心させることの大切さを知った。
自己犠牲の精神で会社に忠誠心を持つことが美徳と思い込んでいた。
父は、全く逆のことをしていた。一生懸命働いていたものの、職場は点々としていた。
我が家は貧乏だったから苦労した。
この貧乏生活が、職場を変えることは罪であるという意識を私自身に植えつけたのである。

 

 

 

昨今、会社員をやっていて収入が増えてもたかがしれている。
さらに、税負担が増える傾向からより落胆してしまう。
会社が悪いとかいう論点ではなく、会社員はそういうものなのである。
では、会社員が収入を上げようとする場合、1つの選択肢として転職がある。
賃金の高い業界に替わるということである。
たとえ、能力は今のままであったとしても収入は上がる。

 

 

 

前向きな転職とはどのようなものであろうか?
自分自身を成長させる。やりたいことができる。
収入があがる。休みが増える。
満足感が向上する。
経済的自由が手に入る。
自分自身を向上させるのには、とても良いことだと思う。

 

 

 

会社員は労働力を売っている。その対価として給料をもらっている。
その労働力を高く買ってくれる会社を選ぶことが収入を上げるコツである。
高く買ってくれる会社選びに活用したいのが転職エージェントである。
自分のキャリアを把握して、転職エージェントに登録する。
自分にあった企業を無料で丁寧に紹介してくれる。
決して、転職しなかったとしても自分の価値を評価するのには、とても便利である。
自分の価値がわかっていれば、その後の働き方も変わってくるものである。
今はそういう時代!
自分の能力を高く売る時代は益々加速していく。

 

 

 

仕事は人生だ!
と言いきれるほどに、長く働き続けなければいけない時代になった。
人生100年時代と呼ばれるようになった。
働き方が自由に選べる時代となった。
働き方の多様性の1つである。
自分の価値観にあった働き方が求められる。
自己責任のもとで働き方を考えればよい。

 

 

 

昭和の時代を生きてきた大人たちは、バブル経済が崩壊するまで右肩上がりで成長を続けてきた。
1つの会社で働いてさえいれば、賃金はあがり、定年を迎えることができた。
毎年、昇給し、ポストが飽けばそこに当てはまった。努力もせず、学びもせずに出世ができた。
今、そのポジションにいる人たちは、引退の時期まで守り続ける。
自ら学ぶことを知らずに、部下を育てる意識も薄い。
自分の居場所を早く譲るような行為はあえてしない。
そういう世の中を生きてきた訳であるから、気づきもない。

 

 

 

世の中の変化に対応して、働き方を考えている人は、自ら行動に移す。
学ぶ。より評価される場所を選ぶ。
同じ場所で働いていても収入がわずかしかあがらない時代なのである。
そのことに気づくか気づかないかが、考えているか、学んでいるかの差である。
会社が悪い訳でもなく、世の中が悪い訳でもない。そういうものなのである。
どこで働くかが問われる時代になった。
そして何を価値とするかである。
収入を取るなら、収入の高い業界、収入の高い働き方をするしかない。
実力のない会社に留まっているだけ時間の無駄なのである。

 

 

 

仕事は人生において、大きく影響するものだと考える。
一部の大金持ちを除き、働いて生活の収入を得なければならず、多くの時間を割く。
人生の時間の大半を労働に使う。その時間は満足なものでなければならない。
だから、時間で働くという働き方も変わってきている。
時間でしか評価できない会社であれば、命の時間を切り売りしなければならない。
もう、転職は当たり前の時代にきている。
自分の人生を考える道であり、方向を変えることは当たり前で悪いことでも何でもない。
昭和の時代を生きていた考え方でいるとしたならば、思考停止状態である。
いい学校を出て、いい会社に就職する。そこの会社で定年退職まで一生働く。
多額の退職金をもらう。このような神話はもう崩壊している。
会社員生活は、昇給以上に税や社会保障費を奪われ、退職金は年々減少している実態がある。
それらを知らずに働き続けることは、無能以外のなにものでもない。

 

 

 

偉そうなことを書いてしまった。
私は無能であった。
1つの会社で働きつづけることを美徳と信じてきた。
会社に忠誠心を持ち、自己犠牲の精神に立ち、安定を求めた。
パワーハラスメントも受けた。原因不明の難病にもかかった。
理不尽なこともたくさん味わった。
同期も死んだ。2歳の娘と2カ月後に生まれてくる子供を残し、40歳で過労死が認定された。
私の身代わりになったのと同じである。

 

 

 

馬鹿ですよね

 

 

 

でも、強くなった。人の気持ちがわかるようになった。
今も同じ会社で働いている。
地獄を知っているから、楽に思えるようになった。
決して間違ってはいなかった。

 

 

 

令和の時代に入り、大きな社会変化が起こっている。
私自身も変化への対応が必要に迫られた。
今までの経験はプラスに働いている。
地獄をみたことを活かせる状況になったからである。
今こそ這い上がる時。
すぐに転職を選択する気持ちはいまのところない。
進む道を変えることは必ずやる。

 

 

 

自分のやりたいことがわからない若者たちに言いたい。
わからないといって、無理に答えを見つける必要はない。
今夢中になれるものにとことん取り組んでみて欲しい。
必ず、見えてくるものがある。そうして、やりたいことが見つかり具体的になる。
何度も失敗すればいい。失敗をなくして、成功はない。
とにかく、賢く生きて欲しい。

 

 

 

私は随分遠回りをしてきた。
1つの会社で真面目に働いた。
莫大な労働時間を費やし、人並み程度の収入で暮らしてきた。
人よりも効率良く、長く働いた。そして、今も働いている。
その間、沢山の人間が辞めていった。その中で生き残った。
対した評価も得られずにいるものの、不自由なく、人並みの生活を続けてくることはできた。
決して、後悔はしていない。
なぜなら、自分が選んだ人生(みち)だからである。
そういう場所にいただけのことで誰が悪いわけでもない。

 

 

 

人生100年といわれる時代になった。
私は今の会社での仕事を最後までやりぬくことを選ぶ。
これはプライドであり意地でもある。
その後は、新たな働き方を決めて働くことも決めている。
生涯働くつもりであるからである。働きたいからである。

 

 

 

一般的には60歳定年、65歳まで再雇用というかたちの企業が多い。
私も同じである。ある時点での転職活動が必要になる。
もうすでに準備ははじめている。
人生の折返し地点は過ぎた。後半に向けて、自分の棚卸しすることは面白い。
自分に何ができるのか?

 

 

 

若者に伝えたいメッセージはただ1つ。転職は悪いことではない。
自分の人生(みち)は自分で決めて欲しい!
私の教訓を活かて欲しい!
 
 
 
 

□ライタープロフィール

□ライターズプロフィール
久一清志(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

大阪生まれ。2020年11月ライティング・ゼミ「秋の集中コース」を受講。
継続してREADING LIFE編集部ライターズ倶楽部での受講を決意し勉強中。

この記事は、人生を変える天狼院「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」をご受講の方が書きました。 ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

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2021-01-11 | Posted in 週刊READING LIFE vol,110

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