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週刊READING LIFE vol,110

サッカー選手はいい見本《週刊READING LIFE vol.110「転職」》


2021/01/11/公開
記事:吉田 真子(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
「お前は就職しても3年以内に仕事を辞める」
「絶対立派に勤め上げることは出来ない」
「そのあとは就職なんてできない」
 
高校生だったころある先生からそう言われた。
 
当時私の高校では就職後最低でも3年はその会社で働くこと、長く務めることが立派とされていた。
無事高校を卒業し就職した私は地元の中小企業で働き始めた。
正直就職する気がなかった私は仕方なく就職したので会社に行くのがつまらなくて仕方なかった。
同僚もおらず、短期大学に進学した友人がうらやましくて仕方なかった。
会社に行って、勤務が終わると友人と会い夜遅くまで遊ぶ。
そんな毎日を繰り返しているうちに、「何のために働いているのだろう」
「何が楽しくて働かないといけないのだろう」そんな疑問が出てきた。
 
次第に仕事に行くことより遊ぶことに重心を置くようになり会社を休みがちになった。
そして就職して1年も経たないうちに退社した。
 
両親、特に母親からはものすごく怒られたのを覚えている。
 
ただ生活はしないといけなかったため就職ではなくアルバイトを始めた。
正直気が楽でアルバイトとして働くのが性に合っているのではないかという気にすらなっていった。
そう思えたのも初めの数か月だけだった。
正社員の時に比べ給料も下がり生活するのに必要な金額を稼げず掛け持ちをしないといけない状態になったころ再度就職することを決意した。
 
就職先は地元の企業。
受かったときは嬉しくて初めて働くことに面白さを感じた。
「ここでだったら長く続けられるかも」
内心そう思っていたし、会社での歓迎会の時も社長や上司の方に気に入られ将来的に会社でいろいろな仕事を覚えてもらいたいと言われ、その会社で働くための熱意は上昇する一方だった。
1年を過ぎたころから会社での仕事に不満を覚え始めた。
給料などに不満はなかったが1年たっても仕事の量が増えていく気配がなかった。
もちろん1年ではまだまだ新人で任せられるようなことなどそんなにないことは分かってはいたがそれでももっと新しいことにも挑戦してみたかった。
「このままここで働き続けてなにか覚えられるようなことはあるのだろうか」
そのような思いが次第に強くなり、2年経つ前にこの会社も退職した。
 
その後いくつかの企業の面接に行ったがもちろん不採用。
 
理由は分かっていた。
短期間に2社会社を辞めたこと。
それに尽きる。
 
やはり転職をすると再度就職をすることが難しくなる。
そのことを改めて痛感した。
 
だが1つ疑問が出てきた。
「転職はそんなに悪いことなのだろうか」

 

 

 

20代半ばの頃、私は現実から逃げるようにある場所に就職した。
米軍基地。
そこは日本ではあるが中に入るとアメリカそのものだ。
 
今までと全く違う世界でアルバイトとして働きだした。
毎日見るもの聞くことすべてが新しく新鮮だった。
ようやく自分の居場所を見つけられたような気がした。
 
当時の地元の最低賃金が600円台だったころ基地内のアルバイトの時給は850円と高時給だったこともあり働いてお金を稼ぐということにやりがいを感じていた。
基地内では英語が必須だったため全く話すことも出来なかった英語も毎日勉強を頑張り少しずつ覚えていった。
本当に充実した日々を過ごしていた。
 
気が付くとそこでの勤務歴は2年を超えていた。
そんなある日「転職はしないの?」
そんな質問を投げかけられた。
 
「せっかく見つけ出した自分の居場所、転職はしない」
そう心に決めていたので「転職しないの?」
と聞かれた時には正直に
「今は転職しない。 まだ3年も経ってないし転職するのはまだ早いだろうから転職はしない」
そう答えると彼女は
「3年も待たなくていいよ。 いい求人が出ている時はなるべく受けて挑戦してみないと」
「転職するのに早いとか適正な時期とかはないから」
「沢山挑戦したほうがいいって、そのほうが自分の成長にもつながるよ」
今まで考えたこともなかった答えが返ってきて私は正直びっくりした。
初めて転職を肯定的にとらえた意見を聞いた。
 
それまでは「転職はするものではない」「1つの会社に長く立派に勤め上げることが美徳」とされてきた日本の文化にしっかり染まっていたため転職を肯定的にとらえる意見があるとは考えたこともなかった。
 
実際何人かのアメリカ人にも転職について質問してみた。
すると答えは彼女と同じように肯定的な意見が多かった。
むしろ転職しないほうがおかしいというような意見まで出てきた。
 
海外では1つの会社に2、3年務めると転職して新しいことに挑戦するというのが一般的な考えだということを知った。
なので転職をせずに1つの会社で働き続けるということはすなわち新しいことに挑戦することを恐れる向上心のない人ととらえられかねないということになる。
 
それ以降私は基地内で何度か転職を繰り返した。
ただし転職をするのにも私なりの条件があった。
同じアルバイトでも社会保険が付いている仕事に就くこと。
または、何か新しいことに挑戦できるところに行くこと。
 
この2つの条件だけは必ず守った。
 
初めて基地に入ってから5年半、英語を話せなかった私は英語を話せるようになりアメリカの文化に触れ学生の時には想像することも出来なかったほどに私の視野は広がった。
私の人生の中でたくさんのことを勉強出来た5年半だった。
 
そして初めて転職をしてよかったと思えた。

 

 

 

考えてみると転職に似たようなことでとても有名なスポーツがある。
サッカーだ。
 
野球の選手なども時々チームを移籍したりはするがサッカーほどではない。
ではサッカー選手はどのくらい移籍をするのだろうか。
 
サッカー選手でとても有名な「クリスティアーノ・ロナウド」で考えてみる。
 
彼が初めて所属したクラブチームは自国ポルトガルのスポルティングだ。
2002年に所属し、所属わずか1年後別のチームに移籍する。
次に移籍したのはサッカーで有名なイングランドのマンチェスターユナイテッドだ。
マンチェスターユナイテッドに所属していた2003年から2009年の6年間の間にイングランドプレミアリーグで3度の優勝を経験している。
取得得点も118点とチームに大いに貢献していた。
だが彼は再度移籍した。
次はこれもサッカーではとても有名なスペインのレアルマドリードだ。
ここでの所属期間は長く2009年から2018年と9年間も所属した。
もちろんチーム貢献もしている。スペインリーガ・エスパニョーラでも2度の優勝を経験し取得得点もマンチェスターユナイテッド時代を抜き450点と大量得点を収めている。
それでも彼はまた移籍をした。
今回はイタリアのユヴェントス。
 
彼をもってしてでも移籍をし続けている。
チームを変え、国を変え。
国が違えば言葉も違う。
彼は移籍をするたびにその国の言葉を覚え文化を覚え、新たなチームで活躍できるように努力をした。才能が有っても活躍できない選手は沢山いる。
それでも彼は現在も活躍し続けている。
簡単にできることではないことは容易に想像がつくと思う。
 
なぜこのように何度も移籍を繰り返すのだろうか。
そこにはこんな理由がある。
日本のサッカー選手の場合、多くのサッカー選手はJリーガーになることが最終目的地ではない。よりレベルの高いヨーロッパなどのビッグクラブに移籍し活躍をしたり、日本代表としてワールドカップに出場したり、チャンピョンズリーグに出場して優勝したりと多くの億票があるのです。だが日本国内の弱いとされているチームに所属し続けているとその目標を達成するのは極めて困難なのが現実。サッカーの場合はチームによってみられる夢や目標が全く異なってくるのです。目標を達成するために、夢を叶えるために移籍をする。
これこそが移籍を繰り返す最大の理由になる。
 
これは企業での転職でも言えることだと思う。
大企業に入社できればたくさんのことをその一社で経験することが出来るかもしれない。
だが地方の一般企業に勤めるとどうだろう。
大企業のようにいろいろな職種はなく1つの職種を経験して新しいことを学ぶという経験が出来る可能性は極めて低い。
 
いろんな知識を身に着けるためには転職するのが一つの手段になる。
そして転職をすることで新たな刺激を受け続けることも出来るのだ。
 
また転職には別の観点もある。
 
日本ではここ数年ブラック企業が問題に取り正されている。
就職口が少なくようやく就職できた会社。
辞めると次の就職口が見つかる可能性は低くなる。
それがゆえにどんなに精神的に辛い仕事でも仕事の一つとして続け、やがて心身ともに疲れ果て社会で仕事していくことが困難になる。
 
このようなニュースをよく目にする。
 
令和になった現代でも日本では終身雇用という概念がまだ残っている。
終身雇用ではなくても最低3年は勤めるのが常識としてまかり通っている。
 
だが本当に3年間務める期間は必要なのだろうか?
3年以内に辞めてしまう人は本当に仕事が出来ない人なのだろうか?
3年以内に辞めてしまう人は本当に精神的に弱い人なのだろうか?
 
どんな会社でも会社で働く以上少なからずともストレスを抱えることはある。
人間関係で多少の問題を抱えているところも普通のことだと思う。
 
だが自分という人間を殺してまで働かないといけない状態に陥ったとき本当に3年間も働かないといけないのだろうか。
 
私はそうは思わない。
1年で本当に精神的に疲れたのだったら会社を辞めていいと思う。
時には逃げることも必要だと思う。
 
ストレスが溜まりすぎて引きこもりになったり、自殺をするよりは会社を辞めるという逃げをすることのほうが得策に思えるのは私だけだろうか。

 

 

 

アルバイトまで入れると正直何度転職したかはあまり覚えていない。
毎回転職を成功し続けたわけでもない。
何度も転職には失敗した。
例えばコールセンターやホテルの受付業務、某有名コーヒー店でのアルバイト、私からするとこれらの仕事への転職は失敗だった。
何が失敗だったかというと私には不向きだった。
勢いで転職してみたもののどうも何一つやりがいを見いだせなかった。
だがそれでも学んだことはある。
 
転職で失敗したことによって自分にとっての不向きな職種とは何かを知ることが出来た。
自分について考えることが出来たのだ。
 
またこれら3つの業種は全く異なり全然違う分野の知識をわずかではあるが身に着けることが出来た。
 
成功した転職もある。
それは現在も続けている事務職だ。
高校卒業してから事務職の経験は合計4社になる。
同じ事務職でもこれら4社の業種も全く異なる。
仕事の内容としては特に変わったことはないのだが、日々耳にする言葉や専門用語など業種が変わるとまるで変わる。
転職をするたび自分の知識を広げることが出来た。
知識が広がると会社内でマルチに動くことが出来るようになった。
 
そしてもう一つ。
知識が身に付き視野が広がり、スキルなどが身についていくにつれ転職先での年収も上がっていった。
 
賃金の安い地方の会社で年収を上げていくのは簡単なことではない。
 
だが私は転職することでそれを実現した。
 
これからの時代転職は自分を高めるための一つの手段だと思っている。
有名なスポーツ選手などはオファーがあるかもしれないが、一般人にオファーが来ることはよくあることではない。
だが、いい求人が出ていたとしてそれに挑戦することは悪いことではないと思う。
いい求人が出ていてその企業に興味がわいたのであるのであればそれは人生におけるチャンスだとも私は思う。
何事も挑戦し続けることが重要なのだ。
 
私が転職して身に着けたもの。
英語、ネイリストとしての技術、造船業での知識、卸業者での知識、ホテル、清掃業、挙げだすとまだまだあるのだが、これらすべて一つも無駄なことはない。
どの業種で働こうがこれらの知識が少しずつ活かされている。
 
逆に言うと転職をしなければこれらの知識を身に着けることは出来なかった。
 
転職は悪いことではない。
サッカー選手のように新たな刺激を求め続け、自分を高めるための転職はむしろすべきことだと私は思う。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
吉田真子(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

長崎県生まれ。佐世保商業高校卒。
会社員。将来独立して自分でビジネスをしたいと思いビジネスで活かせるためのライティング技術を学ぶべくライティング・ゼミの受講を決意。
現在はライティング・ゼミを経てライターズ倶楽部へ入部しライティング技術を習得すべく日々奮闘中。

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2021-01-05 | Posted in 週刊READING LIFE vol,110

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