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週刊READING LIFE vol.126

幸せは、旅先でもらった冷えピタが教えてくれた《週刊READING LIFE vol.126「見事、復活!」》


2021/05/03/公開
記事:空飛ぶぺんぎん(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
人は、どうしたら幸せになれるのだろう。
数年前、プロ・コーチを目指して、コーチングを学びはじめたわたしは、そんな問いを持ち、フィジーを旅することにした。
 
フィジーは、オーストラリアの東に位置する島国だ。
ラグビーでも有名だが、「世界一幸せな国」だといわれている。
それは、主観的幸福度を問うギャラップ&WIN社による「幸福度調査」でフィジーは何度も1位になっていることに由来する。
この調査は「自分の人生は幸せだと思うか?」という自分の主観を問うもので、フィジーは「自分は幸せだ! 」と思う人が多い国なのだ。
 
なお、幸せの国といえばフィンランドをイメージする人も多いだろう。
フィンランドが第1位になった調査は「世界幸福度報告」という国連の持続可能な開発ソリューションネットワークによるもので、自分が幸せかどうかという主観的幸福度に加えて、国内総生産や健康寿命などの客観的な幸福度も総合的に評価したものである。
幸福度調査にもいろいろある、らしい。幸せの定義って難しい。
 
とはいえ、自分自身が「幸せ」だと思っていないのに、「幸せ」だなんてことはあり得ない。フィジーから学ぶことは多くありそうだ、と思ったのがフィジー行きの理由だった。
 
旅は、現地在住の日本人のYさんがコーディネートしてくれるというぜいたくなスタディ・ツアーで、わたしとパートナー、教育に携わる方で10名ほどの人が参加していた。
 
Yさんは、現地の学校や村、スラム街などに同行し、フィジーについての小ネタやわたしたちが幸せについて考えるヒントをくれる。
 
空港からホテルまでのバスのなかでは、フィジーには生粋のフィジアンとインド系フィジアンがいること。生粋フィジアンはのんびりしてて適当だけど、インド系フィジアンは真面目なこと(だからちょっと仲が悪い)、とか、100年前までは人を食べていた(!)ことなど、色んな情報を教えてくれた。
 
そしてホテルに到着するなり、Yさんはこういった。
「フィジーは比較的治安はいい国だけど、荷物には注意して。盗まれるから」
 
治安がいいのに?という怪訝な顔をしたわたしたちを見て、彼は続けてこう言った。
「フィジーでは、ものを共有する文化があるんだ。僕たちにとったら盗みだけど、彼らにとったら『借りた』だけ。返ってくるのはきっと100年後だけどね」
 
笑うに笑えないフィジー文化の紹介からはじまったスタディ・ツアー。
学び多い旅だったので、フィジーで学んだ幸せのヒントを紹介したい。
 
旅の初日に訪れたマーケットで、Yさんから、誰でもいいから「Are you happy? 」と聞いてごらん、と言われた。そんな不審者みたいなことしてもいいんだろうか、と思いながらも、すれ違った人、お店の人などあらゆる人に「Are you happy? 」と聞いてみた。そうすると、聞いた人からもれなく「I’m happy! 」と満面の笑みで返ってくるのだ。
知らない外国人からの唐突な問いかけに満面の笑み。
フィジー人、フレンドリーすぎる。
 
調子に乗ったわたしは、パイナップルを買ったお店の人に「どうしてそう思うの?」と少し突っ込んで聞いてみた。
 
「神様がいて、家族がいて、友人もいて、仕事もある! 」
「それだけ? 」
「それ以外に何か理由が必要? 」
「誰かと比べて幸せじゃないって思わないの? 」
「誰かと比べることに意味がある? 」
 
なんて衝撃的にシンプルな答えなんだろう。
わたしたちが「Are you happy? 」と聞かれたら、何と答えるだろう。
「就職が決まれば(年収が上がれば)、幸せ」
「結婚ができたら(子どもがいたら)、幸せ」
「コーチングで生きていけたら、幸せ」
といったように、条件をつけてしまうのではないだろうか。
 
それは、わたしたちが、
・自分は、彼に比べて経験が足りない
・勉強が足りない
・収入が十分ではない
と、誰かと比べたり、「普通」と言われるものと比べて、足りないと感じる部分に目を向けがちだからだ。
 
旅の途中、Yさんからこんな問いかけをされた。
「利き腕を10年間貸し出さなくてはいけないとしたら、いくらで貸し出す? 」
 
年収×10年、1億円、様々な答えが飛び交ったが、わたしは1億円でも10億円でも嫌だ、というのが直感的に思ったことだった。
あたり前のようにあると思っているものにも価値があるのだということに気づいた時間でもあった。
 
今、自分が持っているもの、目の前にあるものが価値あるものだと認める。
幸せのヒントの一つ目は、そんなシンプルなものだ。

 

 

 

フィジーではフィジータイムという言葉がある。
「I’m ON FIJI TIME NO HURRY NO WORRY」というものだ。
フィジー人が適当らしいことは、この言葉からもわかる。
 
旅の途中、こんなことがあった。
旅はチャーターバスでの移動が基本だったのだが、ある日の朝、バスの運転手が来ないということがあった。Yさんがバス会社に電話して、代わりの運転手が来てくれたのだが、理由を聞くと、
「社長が入院してよくわからない」
 
と返ってきた。
そんなたいへんな、と思っていると、運転手はにやにやしている。
 
ウソだった。
そして、謝りもしない。
 
遅刻しようがドタキャンしようが、その時の気分を彼らは一番大切にする。
 
また、お店で頼んだものがなかなか出てこない、そんなことは日常茶飯事だ。
 
日本ではありえないことだが、フィジーではありえる。
そして彼らは口をそろえていう。
「フィジータイム! 」
 
今、自分が興味あることをする。
今、自分が必要だと感じたことをする。
とことん、今を大切にするのがフィジー流で、フィジータイムの極意だ。
 
ちなみに、フィジーのお土産の時計の定番は、時間の数字の配置がばらばら、なんなら配置されていない、という時計が売られていた。
ちょっとは急いでほしいし、ちょっとは心配してほしい。
 
フィジータイム、恐るべし。
 
そんな「今」を大切にしすぎるフィジー人にあきれかけたとき、感動した出来事があった。
それは、訪れた大学で出会った女子学生に「Are you happy? 」と尋ねてみたときのことだ。
 
彼女は笑ってこういった。
「もちろん幸せよ。だって、今あなたたちに会えたから」
 
究極の「今ココ」だ。
本当に出会ってくれて、ありがとう。
 
幸せのヒントの二つ目は、「『今』を徹底的に生きる」で決まりだ。

 

 

 

フィジーには、「ケレケレ」という言葉がある。
日本語でいうことの「共有する」ことに近い言葉が、フィジー人の「共有」は半端ない。
 
これは、飲食店で、誰かが頼んだ飲み物を別の人が勝手に飲んでいる、みたいなことも起きる(らしい)。
誰かのものを「盗っても」、「借りただけ」だし。
 
ランチをしているとき、となりのテーブルで、カバ(フィジーの伝統的な飲み物)を飲み始めた。「ケレケレ」と言ったら、嫌そうなことなく「飲む? 」と勧めてくれて、そのまま総勢11人で隣のテーブルのカバを飲んだ、ということがあった。
ケレケレ文化、万歳。
 
また、買い物をしていて、財布のお金が足りずにあたふたしていたら、見知らぬ少年がすっとお金を貸してくれた、ということがあった。フィジー人、本当に優しい。
 
フィジー人は自分のものは誰かのものだし、誰かのものは自分のものだと思っている。
Yさんはそんなフィジー人のことを「優しいジャイアン」と評していた。
 
優しいジャイアンであるフィジー人は、里子も当然のごとく引き取って育てるし、1足しかないサンダルも片方ずつ履くし、誰かのTシャツを勝手に着たりする。
フィジーでは、困っている人がいたら、困っていない人が助けてくれる。
そんな国だったら、安心してSOSが出せるし、困っても誰かが助けてもらえると信じられたら、安心して生きることができる。
 
あなたが困ったとき、あなたにはどれほど頼れる人がいるだろう?
安心して困ることができるつながりをつくること。それが幸せのヒントの3つ目だ。

 

 

 

それ以外にもフィジーは常夏で、部族内で土地を持っているから、衣食住に困らないこと、部族内での役割が明確で、存在する意味を生まれながらに持っていることなども学んだ。
 
そんな充実した旅の終盤、パートナーが熱を出した。
行きの飛行機からどうやらのどをやられていたらしく、だましだまし旅程をこなしていたが、限界を迎えたようだった。
 
4日目、晩御飯を食べたあとから様子がおかしい。
熱があるようだ。そして、まだあがりそうな気配がある。
 
旅先で体調を崩すことなど想定していなかったわたしたちは、ろくな準備もしていなかった。
さて、どうしよう。誰か冷えピタもっていないかな……。聞いてみようかな、でも、持ってきていない自分たちが悪いんだし……とわたしは思考がぐるぐるしていた。
 
日本であれば、冷えピタが必要であれば、コンビニや薬局で買えばいい。
そもそも、万が一の準備を怠った自分たちが悪い。そう、自己責任だ。
ひと様に迷惑をかけるなんて、申し訳ない。
 
わたしたちは小さなころから、ひと様に迷惑をかけるなと教えられてきた。誰かを頼らなくても生きていけるような術を身につけてきた。
そんな日本思考が全開な自分がそこにいた。
 
しかし、ここでは、そんなことを言っている場合ではない。パートナーの熱はまだあがりそうだ。フィジーに冷えピタなど売っていない。借りるしかないのだ。
ケレケレだ! 学んだケレケレを今使わずして、いつ使う!
 
ツアー仲間ならわかってくれるし、誰も迷惑なんて思わないはずだ。
 
「ひと様に迷惑かけるなんて…… 」といういつもの日本思考を振り切って、勇気を振り絞って、ツアー仲間のLINEグループに「冷えピタ持っていませんか? 」と投げてみた。
 
そうすると、ツアー仲間のIちゃんが冷えピタを、Hちゃんがヨーグルトを、Mさんがアクエリアスの粉を快くくれた。
 
ケレケレありがたい。勇気を出してよかった。
そして、同時に「迷惑をかけたくない」という気持ちがこんなにも強い自分にも気がついた。
 
翌朝、パートナーはYさんに病院に連れてってもらい、もらった解熱剤のおかげで大量の汗とともに熱が下がった。
 
出発日の朝。
昨日は、一日ホテルで寝ていてかわいそうだったね、とパートナーに声をかけると、
晴れやかに彼はいった。
 
「ホテルの人が心配してくれてシーツを何度も変えてくれたし、ツアー仲間から冷えピタやヨーグルトももらえたし、Yさんが病院に連れてってくれたし、こうやって介抱したり心配してくれる人がいて、幸せだったよ 」
 
フィジーの学びを、身を持って体験できたわたしたちだった。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
空飛ぶペンギン(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

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2021-04-29 | Posted in 週刊READING LIFE vol.126

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