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週刊READING LIFE vol.138

メンタル不調から復帰する時に意識しておきたいこと《週刊READING LIFE vol.138「このネタだったら誰にも負けない!」》

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2021/08/09/公開
記事:垣尾成利(READING LIFE編集部ライターズ俱楽部)
 
 
友人がメンタル不調の闇からようやく抜け出せたと教えてくれました。
 
その話を聞いて、心から良かった、と思いました。
 
メンタル不調を経験した人って、そのこと自体をマイナスなもの、悪いこと、と捉える傾向にあるので、隠し通そうとすることがとても多いのです。
 
でも、それは自分自身にとっても、周りの人にとっても、良いこととは言えないのです。
 
詳しく語る必要は無いけれど、メンタル不調に陥った経験があること、通院を継続しているのか、投薬を受けているのかなどの今の状態、どういうことに精神的負担を感じるのか、こころの状態からできることできないことがあるかどうか、と言った、周りの人が気になること、聞きたくても聞きにくく感じることを自分から発信することはとても大事です。
知っておいてほしいことと、知っておいた方がいいと思うことは全く同じではないけれど、仕事を続けていく上で、お互いにストレスなく向き合うためにも、情報開示は必要です。
 
私自身、約3年前にメンタル不調で3か月の休職を経験しました。
その時の経験を踏まえて、復職時にどういうことに気を付けていけば、自分自身、そして周りの人たち、共にストレスなくいられるか、ということを考えてみたいと思います。
 
休職明け、復帰のための調整勤務が2か月ほどありました。
職種や企業の規模によって、できる、できないは様々でしょうが、メンタル不調となった場合、同じ職場に戻るより、環境を変えた方が良いという判断が下され転勤となることが多いです。
 
私はあまり忙しくない部署で、これまでの経験を活かせる部署で復帰に向けて調整する期間を設けてもらうことができたのですが、この部署に着任した初日のことはとてもよく覚えています。
 
事前に、メンタル不調で休職していた職員が調整勤務で配属になるから、という情報だけは先に伝わっています。
しかし、何があったのか? はほとんど伝わっていませんでした。
 
「メンタル不調の人が来るのか、どう接していいのかわからないよね。厄介なことにならなければいいけど」といった印象を持つ職員が大半、というのが実態です。
 
この、どう接して良いのかわからない、という状態。
これが曲者で、私と職員の間に大きな溝を作ることになりました。
 
皆さんも経験があるのではないでしょうか?
 
・どう接して良いのかわからないから、距離を置こう。
・ちょっと離れたところから様子を見てみよう。
・関わって何かあっても困るから、そっとしておこう。
・面倒だから一切関わらないでおこう。
 
気遣いだったり、拒絶だったり、思いは様々ですが、見えている事実としては、どんなふうに見ているのかわからないけれど、誰も私に近寄ってこない、ということです。
 
これは、とても堪えるんです。
 
ほら、転校生が来た時のことを思い出してみてください、あんな感じかもしれません。
 
興味はあるけれど、何を話せばいいのかわからなくて、少し離れたところから好奇の目で見ていた、という場面はなんとなく創造できるのではないでしょうか?
 
実際はもっと距離置かれるんですけどね、誰かが近寄ってきてくれるまで、ポツンと独りでいるわけです。
 
ただでさえ休職という大きなマイナスを背負っていて、復帰のための調整勤務という微妙な立場のため、どう関わっていけばいいのか? がわからなくて最初はとても困りました。
 
いっそ、全部話してしまったほうが楽かな? と思い、直属の上司に尋ねました。
「私がどういう事情でここに配属になったかご存じですか?」
意外なことに、メンタル不調で休職していて、復帰に向けた調整勤務で配属されたこと以外何も聞いていないんだ、という返事が返ってきたのです。
 
どんな病状で、どういう診断を受けて、今ここにいるのか? を誰も知らなかった、ということがわかりました。
 
それでは近寄りたくても近寄れないですよね。
腫れ物に触るような扱いとはよく言ったもので、正にそんな感じ。
 
私は、自分の状態を正しく理解してもらうことが復帰の上で一番大事なことだと思い、休職に至る経緯と、休職中の状態、そして今どういう状態にあるのか? を全部話しました。
 
そして、同じ部署に勤務する職員ひとりひとりに、最低限知っておいてほしいことを伝えて回ることにしたのです。
 
そうすることで遠くから様子を見ていた人とも少しずつコミュニケーションが図れるようになっていきました。
 
気を付けたことは、できるだけわかりやすくするために数値で説明したり、できることとできないことを明確に説明するようにしたことです。
 
前の元気な状態を100%とした時に、今の状態は40%程度だと感じているというふうに、数字で説明するとイメージしやすかったようでした。
また、ひとつひとつのことは落ち着いて取り組めば大丈夫だけれど、同時に複数のことをやろうとすると焦りを感じてしまい、パニック気味になるから、今はひとつひとつやらせてほしいと思っていること、など、無理せず本当にできることだけを伝えるようにしたのです。
 
調整勤務の期間は基本的に有給休暇なので、来ても来なくてもどちらでもいい、ということでした。
それって、全くあてにされていないってことなのだな、と思ったけれど、正式に産業医の面談を踏まえて復職許可が出るまでは休職扱いなのだ、今やるべきことは普通に働けるようになるところまで回復することで、戦力になることじゃない、という立場を理解したら、気負う必要はないと思えるようになりました。
 
自分の立場をよく理解し、今やるべきこと以上をやらないようにしたことで、結果的には無理なく復職することができて良かったのでした。
 
メンタル不調から復帰した時に、一番やってはいけないことは、自分の状態を甘く見積もることです。
 
これくらいできるだろう、これくらいの負担なら問題ないだろう、と、自分に負荷をかけすぎないことが本当に大事だと感じました。
 
負い目を感じているから、どうしても無理をしようとしてしまいます。
ですが、このタイミングでの無理は結果的に治りを遅くしてしまいます。
 
まだ、こころの傷口はうっすらとかさぶたができて程度にしか回復していないのが調整勤務の時の状態です。
 
ここで無理をしてしまうと、傷口は簡単に開いてしまいます。
リハビリって大事なんです。
 
・まずは会社に行けたことを褒めよう。
・半日席に座っていられたらOKだ。
・しんどい時はしんどいと言おう。
・自分から話し掛けよう。
・笑える時は笑ってみよう。
・できないと感じたことはできないと言おう。
・それで申し訳ない、と思わないようにしよう。
 
このようなことを意識しながら毎日を過ごすようにしました。
 
一番難しいと感じたのは、できないことを申し訳ないと思わないようにすることでした。
 
責任感が強いことは決して良いことではなくて、なんでも自分で抱えてしまうことが不調の原因だったのなら、それは止めなければなりません。
調整勤務の間に、自分自身を壊してしまった思考パターンがどれか? にも目を向けて修正しておく必要があります。
私は、できないことをできないと言えなかったことが重荷になってしまい、潰れてしまいました。
なので、追い詰められる前に、できないと言えるようにならないといけない、と強く感じていたのですが、それでもやはり申し訳ないな、と感じることは多かったです。
 
そう感じる度に、考え方を変えないといけない、と言い聞かせることを繰り返しました。
 
他にも、自分を苦しめてしまった原因は何か? を見つめ直して、変えていくことも意識しました。
 
休職していた時、復帰してから、それまでと大きく変わったことは「本当の自分」と向き合う時間が増えたことでした。
 
メンタル不調に陥る前は、本当の自分の気持ちと向き合うことをせず、求められている自分、期待されている自分の姿ばかりを見ていたのだな、ということに気付いたのです。
 
できない、無理だよ、と本当の自分は言っているのに、その言葉に耳を傾けることなく無理をし続けた結果、心を病んでしまいました。
 
一番の理解者であるはずの自分が、自分自身の心の声に耳を傾けることをしなかったせいで、気付いた時には壊れていました。
 
壊れて初めてわかったこと、それは、健康でいることが何よりも一番大事だ、ということです。
 
今、いろんなことを背負いすぎてしんどいな、と感じている人は、壊れる前に声を上げてください。
 
しんどいよ、無理だよ、助けてほしいよ、協力してほしいよ、って言ってみてください。
 
辛いよ、不安だよ、悩んでいるよ、怖いよ、心配だよ、って心の叫び声を聞いてあげてください。
 
自分で自分の健康を守るために、やらなければならないことは、心の声を聴くことです。
壊れてからでは遅いんです。
 
私は幸い、軽いメンタル不調で済み、今は元気に頑張ることができています。
それでも、傷ついて壊れてしまった心の傷は完治していません。
きっと、この先何年経っても、この傷は治らないし、簡単に傷口が開いてしまうことだってあると思っています。
 
心の傷は一生消えません。
でも、だからと言ってずっと不安を感じ続けるのではなく、その傷をこれから先、ずっと自分自身を守り続けるための目印として活かしていくことを考えることができたなら、メンタル不調の経験は貴重な経験になって、自分にも他人にも優しくなれると思うのです。
 
そうなるためにも、自分自身の心の声を聴けるようになってください。
そして、経験したこと、感じたこと、わかったこと、隠さずに言えるようになっていきましょう。
 
あなたのその経験を聞いて、勇気づけられる人はきっと周りにたくさんいるはずです。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
垣尾成利(READING LIFE編集部 ライターズ俱楽部)

兵庫県生まれ。
2020年5月開講ライティングゼミ、2020年12月開講ライティングゼミ受講を経て2021年3月よりライターズ俱楽部に参加。
「誰かへのエール」をテーマに、自身の経験を踏まえて前向きに生きる、生きることの支えになるような文章を綴れるようになりたいと思っています。

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2021-08-09 | Posted in 週刊READING LIFE vol.138

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