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週刊READING LIFE vol.148

20年間サッカー沼にいた私が、野球に浮気しているのは彼のせいだ《週刊READING LIFE Vol.148 リーダーの資質》

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2021/11/22/公開
記事:nasuica(READING LIFE 編集部ライターズ俱楽部)
 
 
青春時代を10年間サッカー少年として過ごし、それ以降も、10年以上サッカーの試合を見てきた。最近は青春時代に見てきたスター選手が引退して、若くして海外で活躍する選手が多くなってきた。それ自体、見るのはめちゃくちゃ楽しい。
 
しかしなぜだろうか。最近の見るのはもっぱら、野球のスポーツニュースだ。Youtubeのオススメに出てくる動画も、野球のものばかりになってしまった。
こんなことは、以前の自分であれば考えられない。野球好きの方には申し訳ないが、正直、野球は好きになれなかったのだ。投手が一球投げるごとに試合が止まっているように見えてしまう。戦略性があまり目に見えない、私が無知なだけなんだろうけど……。ずっと画面が動いているのが好きな自分には、野球は合っていなかったのだ。
 
しかしなぜ今、こんなにも野球に心を奪われているのか。開幕を心待ちにしているのか。その理由ははっきりしている。
新庄剛志さんが日本ハムファイターズの監督になったからだ。
 
サッカー好きの私でさえ、まして野球にはほとんど興味のなかった私でさえ、テレビの前に釘付けになったのは、彼が日本ハムファイターズで選手をしていた時代だった。当時、札幌ドームの50mある天井から登場するといった、ど派手なパフォーマンスで知られていた。

 

 

 

始めに新庄さんに魅せられたのは、クイズミリオネアというテレビ番組だった。
クイズミリオネアは、15問の4択問題を連続で正解すると、1000万円がもらえる、というバラエティー番組である。当時、「ファイナルアンサー?」という決め台詞も流行した。
そのクイズミリオネアで新庄選手が登場したときに、最後の15問目まで到達した。
ここまででも、スター性を感じられる場面だが、そこで彼がどうしたか……。
 
 
ABCDの、4択が書かれた鉛筆を転がしたのである。
鉛筆を転がして、出た目をそのまま答える。そしてファイナルアンサー。
そこで見事正解して、会場はお祭り騒ぎになる。見ている私も、なんだこの人は! と開いた口が塞がらない。
その後、両手を上にあげて、会場に応援に来ていたチームメイトと抱き合う。選手としても勝負強い、新庄選手のスター性に改めて舌を巻く場面だった。
 
しかし、私がぐっと魅せられたのはその場面ではなかった。
正解してチームメイトと抱擁したその後すぐに、近くにいたファンの女性に、さっき転がした「ラッキー鉛筆」をすっとプレゼントするのである。
勝負強くてファン思いの、本物のヒーローがいる。そう思った。
そこから私は、なんとなくではあるが、新庄選手のニュースを追うようになり、引退するまで、試合も見るようになった。

 

 

 

 

なぜ新庄さんが日本ハムファイターズの監督になるのか。
それは、守備が弱いことが一つの要因として挙げられるらしい。前のシーズンではパリーグでエラーが最も多い。それにより最下位付近をうろちょろする、という結果に終わったようだ。
 
 
そのため、ゴールデングラブ賞を10回もとった新庄剛志が選ばれたのだろう。ゴールデングラブ賞とは、シーズンを通して卓越した守備の選手に与えられる賞である。ちなみに、野手として10回以上も受賞した選手は、片手で数えるほどしかいない。勝負強いだけでなく、守備も優れた選手なのだ。
 
ふと疑問に思う。
選手として素晴らしい結果を残してきたのは分かる。スター性もすごい。これは、野球をやったことのない、にわかの私にもわかる。
 
しかし、監督としてはまた別の話ではないか。来シーズン、新庄監督に期待したら裏切られてしまうのではないか……。これまで、日本ハムは不調だったのだ。実力が伴わなければ、いくら監督だけ話題になったとしても楽しくないだろう。
そう思った私は、過去の新庄選手の記憶を遡ってみた。

 

 

 

新庄選手を語る際に、これは欠かせないだろう、というプレーがある。
新庄選手がまだ阪神タイガースにいた時代のプレーである。あまりにバッティングの調子がよかった新庄選手は、三塁にランナーがいる状態で、敬遠をされてしまう。敬遠とは、調子のいい選手に点を取られないために、あえてフォアボールにして回避する、という戦略である。敬遠されたらなすすべなく一塁へ歩く、というのが普通だ、それ以外の選択肢など考えもつかない。
しかし新庄選手は違った。敬遠のボール、ストライクから大きく外れたボールを、敢えて打ちにいき、それがサヨナラヒットとなるのである。
 
まず、敬遠のボールを打つという発想が浮かぶ、というところに驚きだ。それに加えて、いくらプロでも、大きく外れた球を打てるのか、という問題がある。
新庄選手のインタビューで、敬遠が来ることに備えて、前日の練習で敬遠の玉を打つ練習に備えていた。その練習があったから、監督であった野村監督からGOサインが出た、と答えている。
 
新庄さんが監督に就任する際に、Instagramにアップした名言がある。
「努力は一生、本番は一回、チャンスは一瞬」
 
新庄選手の父親からの受け売りの言葉らしい。
この言葉通り、敬遠が来ることを想定して練習し、本番の一瞬のチャンスをものにしているのだ。スター性があるからこそ、天才だと誤解されやすい選手だったのだと思う。しかし、裏には地道な努力の積み重ねがあったのだ。そして、今がチャンスだと見抜く戦略性を持っている。

 

 

 

努力と計算が見えるエピソードに、新庄選手の守備の戦略がある。
新庄選手は日本ハムファイターズでセンターを守っていた。当時の話として、バッターの心理を読んで、ポジショニングを決めていたという話だ。
 
バッター追い込まれたときは、焦ってヒットにしようとする心理から、打球が行く方向が確率的に偏るという。そのため、自分の守備のポジションをその確率が高い方に位置どっていたというのだ。そして、他の選手にコーチングをして、
 
「たぶんこっちに来るから、ポジショニングを変えろ」
 
と、指示をだしていたという。そして新庄さんは言う、自分と守備をする選手はゴールデンクラブ賞をとれる、と。なぜなら、指示を出すおかげで、一緒に守備をする選手も、本来取れないボールをとることができる。新庄さんの戦略のおかげで、実力より高い確率で、アウトを取ることができるのだ。
 
この逸話から考えるに、選手時代から既に、選手の目線を超えた目線でプレーをしていたのではないかと思う。つまり、もはや監督の目線でプレーをしていたのではないかと思ってしまうのだ。自分一人の成果を目指すのではなく、チームとして勝つための戦略を考えていたのだ、そう思うようになった。
 
新庄さんは「勘ピューター」が優れている、という風に自分を評している。なんとなく、ボールが来る方向が勘で分かってしまう、ということだ。
おそらくそれは、努力に裏打ちされた経験則みたいなもので、本当の意味での勘ではないのだと思う。その証拠に、その勘ピューターの計算結果を人に伝えて動かせる、優れたコーチング能力がある。そうでないと、他の人は新庄さんに従わないだろう。
 
新庄監督は、監督になる前から戦略性、そしてそれを言語化して伝える能力を備えていたのだと思う。それに加えて、スター性を備えているのだから最強だ。新庄監督が、監督としての素養があるのは間違いないと勝手に思うようになった。
 
日本ハムファイターズがどういう結果を残すのか、今から楽しみで仕方がない。
彼が現役選手の時に見せてくれたワクワク感を、また見せてくれるのだろうか。
彼の守備のスーパープレーを、優れた指導力で再現できる選手が現れるのだろうか。「敬遠サヨナラヒット」のようなあっと驚くプレーを、他の選手の手によってまた見ることができるのだろうか。
 
 
新庄剛志のリーダーの資質は、サーカスのようなワクワク感なのかもしれない。
この次は何をしてくれるんだろう? そう思わせてくれる力であり、絶対にこちらの期待を上回ってくれるという安心感を、同時に感じさせてくれる。
 
 
あまり時間がない方は、スポーツニュースや日本ハムファイターズのYoutubeは見ないほうがいいかもしれない。新庄剛志のスター性に魅了されて、仕事が手につかなくなってしまうだろうから。伝説となるプレーが、どんどん出てくるだろうという確信を持たせてくれる。
 
早く開幕しないかなあ。
野球なんて、そこまで見てこなかったのに、こう思わせられる新庄さんはすごい。
 
 
 
 

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2021-11-17 | Posted in 週刊READING LIFE vol.148

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