週刊READING LIFE vol.162

乙骨憂太が教えてくれたこと《週刊READING LIFE Vol.162 誰にも言えない恋》


2022/03/21/公開
記事:izumi(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
この記事には、呪術廻戦のネタバレがあります。
 
真っ暗な暗闇の中、1人ポロポロと涙を流していた。
映像がうつされているスクリーンは明るいが、わたしのまわりは真っ暗だ。
大人の女性が1人で映画を見て泣いていても、まわりには見えない。
見た映画は、「劇場版 呪術廻戦0」
漫画、呪術廻戦の映画版だ。
 
まさか、ここまで感動して、泣くとは思わなかった。
有給休暇を使って、平日の朝の時間に見た。
お客さんは、わずか10人位だった。
泣いていても、まわりに人は座っていないため、誰も気づかない。
会社の同僚と一緒に見に行く約束をしていたが、タイミングが合わなくて、延期することになった。
だが、呪術廻戦にすっかりはまっていたわたしは、映画を見たくて仕方がなかったのだ。
1回目は1人で見て、2回目は会社の同僚と一緒に見た。
 
この漫画が、人気があるのは知っていた。
会社で、はやりをいち早く取り入れる部署が、キャラクターグッズを扱いだしたからだ。
わたしは、海外から商品を輸入する通関業務に関わっている。
呪術廻戦のキャラクタークッションを、輸入する業務に関わった。
最近、呪術廻戦というグッズを取り扱うのを見て、人気なんだろうな位に思っていた。
 
 
まわりに漫画を読んだり、アニメを見た人はいなかった。
会社の人に聞いても、読んだことがないとの返事だった。
子供が読む、漫画だろうと思っていた。
呪術って、のろいでしょ?
おどろおどろしい内容のホラーではないかと、勘違いしていた。
どうせ見るなら、笑えて、元気になる内容がいい。
 
興味がなかったのに、見たら大好きな作品のひとつになった。
はまったきっかけは、アニメを見たからだ。
U-NEXTの動画配信サービスを、見るのを楽しみにしている。
過去の映画や、人気のアニメ、ドラマが見られる。
鬼滅の刃、東京リベンジャーズを見たあとだった。
 
ちょうど、お正月休みで時間があり、何か面白いものを見たいと、探していた時だ。
あの人気がある漫画かあ。
どんな感じかちょっと見てみようか。
見てみると、思っていた認識と違っていた。
ホラーではなく、バトル漫画だった。
人間の負の感情から生まれる化け物である「呪霊」を呪術で倒していく。
主人公の高校生、虎杖悠仁(いたどりゆうじ)は呪術師として強くなりたいと、ひたむきな努力をする。
師匠や個性的な仲間と試練を乗りこえていく。
呪霊とのバトルシーンは、人間離れしている能力で、驚きの連続だ。
飛んだり、跳ねたり、普通の人間では出来ない動きをする。
アニメにはまって、一気に24話を見た。
どの回も、成長していく主人公への共感が生まれる。
1話から24話まで、見た時間は10時間。
3日間に分けて見たが、夢中になって、あっという間だった。
 
アニメが思った以上に面白かったので、同僚にも勧めた。
映画が公開されていると知った時は、絶対見に行きたいと思った。
「面白いから、見てほしい。面白かったら映画を一緒に見に行かへん?」
同僚も、予想通りに、呪術廻戦のファンになった。
あまりにも呪術廻戦にはまり、2回も劇場に見に行ったのである。
今まで同じ映画を、何度も見た経験はない。
この作品に出会うまでは、映画は一度見れば十分だと思っていた。
 
劇場版は、テレビアニメが始まる前の物語だ。
主人公の虎杖悠仁は、劇場版には出てこない。
映画の主人公は乙骨憂太(おっこつゆうた)という高校生。
呪いによって、同級生をロッカーに詰めてしまい、呪術高専に編入するところから始まる。
 
何度でも楽しめる映画で、1回目、2回目では、涙を流すポイントが変わる。
1回目は始まってすぐ、2回目は終わりの場面で涙が流れた。
1回目より2回目に見た時の方が、スクリーンが大きかったので、迫力も増して見えた。
いつも映画館では、途中でトイレに行きたくなったり、お尻が痛くなり、席にじっとしてられなくなる。
だがこの映画は、105分が一気に過ぎた。
 
乙骨憂太が呪術高専の同級生に言われた言葉が心に刺さる。
「何の目的で呪術高専に来ているのか?」
目的がはっきりしないとダメだと言われた時、まるで自分に言われているような気がした。
わたしはどう生きていきたいのか? 問いかけられている気がしたのだ。
 
「誰かに必要とされて、生きてていいって自信が欲しいんだ」
乙骨憂太のこの言葉にも共感した。
人間は、誰かに必要とされたいと思っているのではないだろうか?
大切な人の笑顔が見たい。
それは家族かもしれないし、恋人かもしれない。
友達の場合もあるだろう。
誰かに必要とされるのは、生きる原動力になるのではないか。
少なくとも、わたしはそうだ。
人間は、1人では生きていけない。
誰かと関わって、時には失敗したり、成長していく。
 
乙骨憂太は、最初は臆病で、誰も傷つけたくない人間だった。
自分で死を望むほど、生きる活力がない。
同級生と出会い、自分を苦しめている幼なじみの呪霊の呪いを解く決心をする。
わたしは、乙骨憂太にはまった。
 
大人の女性であれば、登場人物の1人、先生であるイケメン五条悟を好きになるのではないか。
スマートな立ち振る舞いで、圧倒的に他の人より高い能力。
いつもは目隠しされているが、時おり見える青い目を見ると、キューンとなる。
 
アニメを見た時は、五条悟がカッコイイと感じていた。
アニメのエンディングシーンでは、登場人物が、音楽に合わせておどっている。
後半で出てくる五条悟の踊り方がかっこよくて、何度も映像を見た。
彼は、大人でスマートな立ち振る舞いの男性なのだ。
 
 
なぜカッコいい五条悟、漫画の主人公の虎杖悠仁以上に、映画の主人公である、乙骨憂太を好きになったのだろう。
はじめは、生きる希望さえなかった彼が、強くなるために努力していく。
精神的、身体的に強くなるために、努力している姿を、応援したくなった。
 
時には、息子のように、がんばれ、がんばれと励ましたくなる。
またある場面では、一緒に成長しているような気持ちになる。
息子のように感じたり、一緒に成長していたかと思えば、女たらしのようなセリフを言う彼に驚く。
わたしのハートは、スナイパーに射抜かれた。
「キューン。かっこよすぎる」
いやいや、あんなに臆病な彼が、ここまでかっこよくなるとは、反則やわ。
何が反則なのか分からないが、大人の女性の心を、ぐっと握られた気がした。
乙骨憂太は、いろいろな顔を持ち合わせているから、魅力的なのだ。
 
幼なじみが事故にあった時に、死なないでほしいと思う願いが強く、相手の女性を呪霊にしてしまう。
死んでもなお、呪霊となったのは、乙骨自身の願いのせいだったのだ。
最後に、とりついていた呪霊から言われたセリフがある。
「死んでからの6年間、生きていた時よりも楽しかった」
確かこんな内容を、呪霊から言われていた。
死んでからなお、一緒にいて楽しかったと言われる男なのだ。
モテ男なのである。
 
 
わたしたちの思いは、プラスにもなるし、マイナスにもなる。
知らないうちに、自分で言葉の呪縛をかけている時はないだろうか?
わたしはある。
物事がうまくいっている時は、不安になるのだ。
なんだか、分からないが、順調にいっている。
どこかで足元を、すくわれるかもしれない。
 
たとえば、わたしの恋愛パターンはよくこうなる。
いいなと思う人がいて、順調にお付き合いをしていたとする。
こんなに順調でいいのかなぁと思う。
なにか、落とし穴があるのではないかと不安になる。
反対に、うまくいかなくなる時。
「わたしってこんなもんなのだ。やっぱりな。幸せになれるはずがないわ」
自分を認めてあげられない。
 
わたしは、自分で幸せの限界を、決めてしまっている。
誰かに幸せにしてもらうのではなく、自分が幸せだと思えばそれでいいのに。
幸せになりたいのに、心の奥では幸せになるのを、認めてないのだ。
 
ではどうしたらいいのか。
わたしは、スポーツ選手のように、メンタルが強いわけではない。
うまくいっていないのに、うまくいくと思いこむのもつらいだろう。
冷静に考えてみると、幸せのハードルを、高くしすぎているのだ。
 
本来、健康で、仕事があって、毎日生活が出来ているだけで十分幸せである。
ちょっと人生でうまくいかなければ、幸せではないという決めつけはやめよう。
隣りの芝生が青くみえて、人と比べて落ち込んでみても仕方がない。
 
幸せになりたいのなら、自分自身に呪縛は必要ない。
いまでも十分幸せだという設定で、ちょうどいいのだ。
そのうえで、もうちょっと幸せになりたい自分を認める。
誰だって、幸せになる権利はある。
わたしだけが、うまくいくはずがないかもしれないという気持ちはいらない。
映画を見て、思い込みは自分に呪いをかけていく。
恐ろしいと気づいた。
 
 
最近、ふと思う。
「乙骨憂太、ちゃんと修行しているのかなあ」
思った後に、われにかえる。
「実際にいない人物に、どこまで、はまっているんだ」
 
アニメ、映画を見ているが、まだ漫画を読んでいない。
漫画での彼の成長を、知るのが楽しみだ。
16歳の乙骨憂太は、息子のような年齢だ。
そんな彼に、恋人のようなときめきがあるのは、ここだけの秘密にしてほしい。
 
参考文献: 芥見下々 呪術廻戦 集英社  劇場版「呪術廻戦0」
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
izumi(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

2021年7月よりライティング・ゼミ超通信コースを受講。2022年1月よりライターズ倶楽部に参加。ランニング、トレイルランニング歴10年。最近山登りにハマってテント泊を実現したい。誰かの応援になる文章を、書けるようになりたいと日々特訓中。

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2022-03-16 | Posted in 週刊READING LIFE vol.162

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