週刊READING LIFE vol.172

地域清掃活動から見えるにぎわいと循環《週刊READING LIFE Vol.172 仕事と生活》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース、ライターズ倶楽部にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

2022/06/06/公開
記事:早藤武(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
「うわ、誰がこんなところに捨てたのだろう。ティッシュやペットボトルがいっぱい落ちてるよ」
 
小学2年生になった息子のケンは手ぶくろをはめてゴミ袋を片手に道端に落ちているゴミを発見してはどんどん袋に入れていく。
 
「ビンや缶で手を切ったりしないように気をつけてね。あ、そこにもタバコの吸い殻が落ちてるね」
 
いつも学校の行き帰りで慣れた道のはずなのに、綺麗にしましょうとゴミを探し始めると子どもたちは新鮮な気持ちで通学路が見えているようだ。
ここにも落ちてる、あっちにも落ちてるとバス停周りや電柱の裏や街路樹の葉っぱの影にゴミが落ちてないか探したりして、次々とゴミを発見していく。
 
本当に子どもたちの行動力はすごいな。
大人たちは子どもたちの拾ってきたゴミを燃やせるもの、燃やせないものと仕分けては袋に入れていきながらとても慌ただしく時間が過ぎていく。
 
仕事で平日があっという間に過ぎて週末くらいはゆっくりしたいと思っていたけれど、あちこち歩き回ったり、坂の上り下りもあるので、これは良い運動になっている。
しかも、地域を綺麗にして行っているので通りがかりのおじいちゃんやおばあちゃんから挨拶がてらにお礼を言われるのは意外だった。
 
「おはようございます。休みなのにご苦労さまです」
「小さいのに偉いね。ありがとうね!」
 
お礼を言われて子どもたちはさらに楽しくなって、さらに張り切ってゴミが落ちてないかを探して一生懸命になっていく。
今は親子で楽しんでいるが、始まった時にはみんなギクシャクしていたのでどんな魔法があったのだろうか?
 
感染症の拡大防止のために、昨年までは集団でのイベント活動は控えていたが、対策も進んで少しずつ日常が取り戻されてきているが、普段は話をしないクラスメイト同士でグループを組んだのもギクシャクの原因になっていたかもしれない。
保護者同士でフォローしようにも、保護者同士もお互いに交流が少ない人の組み合わせだったので、話かけて良いのか私も踏みとどまっていたのだ。
 
時間が少し戻って、集合場所に小学校のクラスメイトで集まった時には、なぜ週末にゴミ拾いをしなければいけないのかという空気が少なからずあった。
担任の先生たちがゴミ袋や軍手などの道具を参加者のみんなに配れるようにチェックリストを一生懸命に確認していた。
 
やっと担任の先生のチェックが終わって、6〜7人のグループにわけられたところに地域清掃に使うゴミ袋や軍手などをみんなに行き渡るように配っていく。
 
「今日は、いつもみんなで登下校をしている道や学校の周りをお世話になっているお礼も兼ねて綺麗にしていく活動をしていきます! そして大変な事もひとりでやるよりもみんなでやった方が負担も減ってあっという間にできるようになります。皆さんどうか少しでも楽しんでこの地域を綺麗にしていきましょう!」
 
学年主任の先生が参加者のみんなに向かって今日の清掃活動の目的と全体の流れと注意事項を説明して、それぞれのグループにどの地域を掃除して欲しいのかを割り振っていく。
 
そしてやっと準備が終わって地域の清掃活動が開始になりましたが、ゴミがどこにあるのかを探せずに袋の中には一向にゴミが入っていなかった。
わかりやすく空き缶が落ちているのを見つけてからゴミがどこに落ちているのか発見して、袋に入れていくテンポが速くなっていった。
どこにゴミが落ちているのかを見つけて綺麗にするのに慣れてくると、普段の自分がどれだけ道端のゴミに注意を払っていなかったのかがわかる。
子どもたちは流石育ち盛りな時期なのもあって、慣れないことでもチャレンジして行動していくので、大人たちよりもどんどん街を綺麗にしていくのが早かった。
 
「うわ、誰がこんなところに捨てたのだろう。ティッシュやペットボトルがいっぱい落ちてるよ」
 
息子のケンはゴミを拾う中で疑問が出てきたのか私に質問をしてきた。
私は頭の中でどう答えたものか色々と考えを巡らせて迷うことになった。
ゴミが落ちているということは誰かが捨てたからだろう。
通りがかりの心無い人が捨てて帰ってしまったのかもしれない。
思い浮かべると少し切ないと思う光景が頭をよぎったけれども、どこの誰かも知らない人を最初から疑ってかかった答えを子どもたちに伝えることは教育には良くないなとも思ったので、私はこう答えた。
 
「誰が置いて行ったのだろうね。もしかしたら風に飛ばされたり、カバンに入れていたのが何かのきっかけで落ちてしまったのかもしれないね」
 
そっか、それじゃあ僕たちが頑張って拾って綺麗にしないとだねとケンはやる気がさらに出たようだ。
私たち大人も子どもたちの勢いに負けないようにゴミを仕分けるだけではなく、子どもたちと一緒にゴミを探して拾って残りの時間を使って拾っていこう。
 
そうしてあっという間に1時間が経過して、集合時間が近づいてきた。
みんなで集合場所の小学校の校庭に向かいながら、帰り道の途中で、今まで発見できなかったゴミを拾い集めてながら進んでいった。
最初と違って、みんな街を綺麗にしていく腕が上がったおかげもあるかもしれない。
 
校庭に集まったみんなでゴミを仕分けして回収できるようにしていく。
用務員のおじさんがよく集めたねと驚いていた。
 
「これだけゴミが落ちているってことは、街がにぎわいを取り戻した証なのかもしれないね。街が静かだった頃には地域清掃をしてもゴミはそんなに落ちてなかったからね」
 
てっきり、私は心無い人たちがただポイ捨てをしたからだと思って嫌だなと感じていたのだ。
感染症が流行ってから街のにぎわいは確かになくなっていた。
掃除をいつもしてくれている用務員のおじさんは目にするゴミが少なくなって良かったと感じるよりも、街のにぎわいを感じていたのだということに目からウロコが落ちる思いをした。
 
街がにぎわうのは良いことだけれど、ゴミが散らかるのは正直なんとかしたいところだ。
そう思うと日常生活の中でゴミが片付いているのは、きちんと片付けてくれている人がいるからこそなのかもしれない。
 
誰かがうっかり汚してしまって片付けられない状態だと、次に誰かがポイ捨てをしてしまうきっかけになるようで、これは窓が割れているのを放置していると街の治安が悪くなる『窓割れ理論』に通じる部分がある。
タバコの吸い殻が捨てられている時には、電柱の周りなど固まった場所に落ちていることが多いことに気が付いた。
他にもペットボトルだったり、マスクやウェットティッシュが落ちていたりするのは今の時代らしいと思う。
 
まずは自分がポイ捨てをしたりしないように、小さなビニール袋を持って歩いておくようにしよう。
私がひとり反省会を開いている間に、ゴミの仕分けが終わって今回の集まりはお開きになるようだ。
 
「皆さん、今日はどうもありがとうございました! おかげで学校の周りがとても綺麗になりました。またみんな普段から綺麗にしていきましょう!」
 
学年主任の先生が締めの挨拶をして参加者の人たちは達成感と共に家路についたのでした。
私はケンと今日の清掃活動が楽しかったことを話しながら帰宅して、ちょうど妻がご飯を作っているところだった。
もうすぐご飯ができるから2人とも手を洗ってらっしゃいと言葉をかけてくれた。
 
私は家に帰ってきて住み慣れた自宅が少し違って見えたので、なんでだろうと考えた。
すぐに違和感の正体がわかった。普段から綺麗にしている部屋がきちんと手を入れてメンテナンスされているのが目に入るようになったのだ。
 
洗面台で手を洗っていると水垢がつかないように飛び散った水を綺麗に拭き取ってくれていたり、食事の支度をするのに使った道具は流しに置いておいたままにはせずに、すぐに洗って伏せておいてくれている。
 
ひとり暮らしの時代には部屋はあまり汚れることもなかったけれども、夫婦で生活するようになって、子どもたちが生まれて大きくなるにつれて家の中がすぐに散らばって汚くなる機会は増えてきたと思う。
それでも家の中は綺麗で整頓された毎日を過ごしている。
これだけ家の中が散らかって汚れやすくなったのは、家の中で妻がいて、息子がいて、にぎやかになったからなのだ。
そして家の中が片付いているのは妻が普段からゴミを片付けたり、汚れを綺麗にしてくれているから、循環して成り立っているのだ。
私が仕事で一生懸命頑張れているのは、妻が家の中を綺麗にしてくれているおかげなのだ。
しかも綺麗に掃除してくれているのを気づかないくらいに自然に行なって家の中の循環を担ってくれていたのはとてもありがたい。
 
仕事の場面でも、このにぎわいと循環が起こっているかもしれない。
私が意識していないだけで、仕事をした後に片付けができなくて身の周りを散らばしている人もいれば、陰ながら片付けてくれている人もいるのだろう。
それでも職場のみんなが活動しているからこそ、物が散らばったり、ゴミが出たりすることが起きるのだ。
もし会社の中に誰もいなかったら、ゴミが散らばることもない。
その光景を想像すると寂しい気持ちが出てくる。
明日、会社に行った時にはどんな光景が見えるのだろうか?
 
今日のゴミ拾いの帰り道のように今まで気づかなかったところに息子のケンと一緒に気がつけたことが起こる可能性に少し楽しみな気持ちも出てくる。
あとは自然環境を守っていこうという意識の高まりが出てきているので、今までよりもゴミが出ないことは必要とされてくる。
しかし、今すぐにゴミが出ないクリーンな活動に全てを置き換えられたら理想的だけれど、すぐには難しいので少しずつ見つけていこう。
みんなが一生懸命に仕事をしながら、日々の生活を守っていけるように今まで見えていなかったことに目を向けられたらとても良いと思う。
 
最初は子どもたちと一緒に気が進まないと思っていた地域の清掃活動も親子の交流や新しい発見が多くあったのは大きな収穫だった。
また気が進まないと思ってしまう学校の活動があったとしてもケンとやってみよう。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
早藤武(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

1984年生まれ東京都出身、城西大学薬学部卒業。
北海道函館市在住の薬局薬剤師。
SDGsアウトサイドイン公認ファシリテーター。
カッコ可愛いを追究する紳士くじらを名乗り「紳士くじらのブログ」を運営。

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2022-06-06 | Posted in 週刊READING LIFE vol.172

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