週刊READING LIFE vol.186

私はフォトライターですと宣言します!《週刊READING LIFE Vol.186 本業と副業》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

2022/09/19/公開
記事:青野まみこ(READING LIFE編集部公認ライター)
 
 
ここ1年くらい、副業のことを考えない日は1日もない。
 
平日はフルタイムで団体職員をしているが、その他の日はほぼ副業、もしくは副業の準備で埋まっているからだ。
本業は、秋に行事が目白押しだ。つまり9月に入ってからが繁忙期になる。まさに今なのだけど、おかしなことに本業が忙しければ忙しいほど副業をやりたいと思うのだ。
 
今の本業である団体職員として就業してからもうすぐ4年になる。
新卒で就職した職場を辞めて家庭に入り、キャリアブレイクの期間が13年間あった。社会復帰するために職探しをしたが非正規の仕事しかなく、アルバイトや契約社員を転々としながら正規職を得るためにそこから10年間就活をした。その結果今の仕事に就いている。
 
だが、私はこの仕事に満足をしていない。
待遇も正直悪い。しかしそれ以上に納得が行かないのが、現在の上層部の方針だ。
 
本来会議で方針を決めていき、そこで決定されたことが実行されるはずなのに、決定事項を無視して数名の上層部だけで打ち合わせをし、いつの間にか決定事項がすり替えられてしまうことが3年ほど前から頻発している。自分ごとではないから言う必要もない、言う勇気がない、言っても何も解決しない。職場はそんな空気に満ちている。仕事で足を引っ張られることに嫌気がさして退職していく職員は後を絶たず、何人も先輩方を見送った。
 
信じられないかも知れないけど、そんな息が詰まるような本業の職場が、副業を導いてくれたのである。
副業をするきっかけは、入職してから部署を異動になるまでずっと意地悪をされ続けていた時に訪れた。
 
入職した当初、一番下っ端だった私は、先輩職員の何人かから結構な意地悪をされた。
内容はたわいもないもので、昼食の時に一斉に消えるとか、仕事の内容を教えないなどだった。仕事内容を詳しく教えてくれないので質問すると舌打ちをされることもあった。右も左もわからない新人になぜそんなことをするのか理解ができなかったが、何かが気に食わなかったのだろう。
 
私はなんのためにここにいるんだろう、入って半年くらいだけどもううんざりだから転職活動しなくちゃ……、そう思いながら何気なくFacebookを眺めていたら本屋の広告が突如現れた。なんとなく店内の雰囲気もマニアックで良さそうだし、カフェもあるらしい。でも私の心を最も捉えたのは「文章を書くゼミをやっている」ことだった。
 
(面白そう……)
 
ブログはずっと書いていたけど自己満足でしかないと思っていて、「フィードバックに合格したらWebに掲載されます。不合格なら載りません」という単純明快なジャッジが気に入った。自分が書くものをプロの目で見てもらって診断してほしいという願望があったことに気がついた。それが私と天狼院書店の出会いだった。
 
職場からも歩ける距離だったので金曜の終業後に東京天狼院を訪ねた。その場で店員さんの説明を受けて、よくわからないけどなんとなくいいかもという理由で得体の知れない講座の申込をするなんて、自分大丈夫か? と思ったけど、根拠のない予感を信じて私はライティング・ゼミを受け始めた。
 
最初は何を書いていいやらさっぱりわからずボツだらけだったが、自分の感情を書きなぐって見たら初めて掲載された。自分が書いて、認められた文章が初めて人の目に触れるというのはとても嬉しい体験だった。
 
「よくなかったら1期だけ受けて辞めちゃえばいいや」と思って始めたライティング・ゼミは、終わってみたら掲載率はともかく16回全部提出できていた。書くことを続けたいとそこからライターズ倶楽部に進み、神奈川県の生産者を取材して記事を書く企画が通って連載ができることとなった。私にとっては夢のような出来事だ。自分が書いてみたいと思うことを連載までさせていただけるなんて。
 
もしどこかの媒体にいきなり「記事を書かせてください」と言い出したらまず間違いなく門前払いを食らう。ネットに出ているライター求人はどれも「1年以上の経験」「掲載物のURLを出してください」と必ずあるので、未経験のままライターになること自体とてもハードルが高い。天狼院書店は、全くの未経験者にもチャンスがあり、実績を掴める場所だ。それがとてもありがたかった。
 
連載が始まって少ししたころ、知り合いがライターを募集していた。思いきって連載のURLを添えて申し込んでみたら「ぜひお願いしたい」という話になり対談記事作成に取り掛かった。テープ起こしはやったことあるから大丈夫かな? と思ったけど、対談の中身が濃すぎてどれもいい話で、取捨選択がとても難しい。全部を載せることはできないのでまとめないといけない。何回も校正が入りようやく記事として公開された。天狼院で初めてWebに掲載された時とはまた違う喜びだった。なんと言っても今回は報酬が出るのだ。
 
報酬をもらうということは、仕事になったということである。対外的に実績を積めることも嬉しかった。
このまま、どこかで書かせてもらえるならどんどん書いてみよう。そう思っていた。ありがたいことに私の文章を読んで「記事を書いてほしい」と依頼を受けることが続いた。
 
どんどん書きたい。でも書く時間を確保することがなかなか大変なのだ。なんと言っても本業をしながらのライティングのため、空いているのは休みの土日祝日しかない。ここが潰れてしまうのは残念だけど、それでもいいから書きたい欲の方が勝っていた。
 
平日は本業から帰ってきたらかなり疲れるのでライティングがしにくい。きちんと休息を取らないと身体が持たない。でも平日に何もしないと土日が大変になる。土日は他の用事もあるし、それだけにかかりきりにはなれない。さあどうしよう。
 
思いついたのは、通勤の往復の時間で記事が書けないか? ということだ。
本業までの通勤時間は100分くらい。この区間は途中で座れる確率が結構高い。ここで書いてしまおう。私は原稿はいつもcloudに保存しているので、スマートフォンやタブレットからでもアクセスできる。それを利用した。電車で座れたらiPadを開いて、保存してある下書きや資料を使って原稿を作成した。電車に乗っている時間は意外と集中して作業ができるのだ。この方法で何本も記事を作成した。
 
できれば、ライターだけを仕事にしていけたら。そんな願望が芽生えていた。
だったら早く転職すればいいのにと言われそうだけど、多くの媒体は「長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を採用」にしているから、50歳すぎたらまずどこかの企業に社員として入ることが厳しくなる。
 
だったらフリーでライターをすればいいじゃないかと思うけど、ライターの単価はそんなに高くはないので本数をこなさないといけない。取材して起こして書くことを月に何本もやらないと採算が取れない。もし本格的にライターをするなら本業は退職しないとやっていけないだろう。ただ本業を辞めたとして、それに代わるだけの収入を毎月コンスタントに得ていくためにはレギュラーを持たないといけない。不定期に仕事が来るのをただ待っているだけではだめだ。
 
書きたいけど、思い切って本業を辞めるところまで決断できていない。これが現状だ。
打破したいがどうしたらいいのだろうか。
このジレンマをずっと抱えていたけど、最近、この解決方法がなんとなく見つかるような気がしてきた。
 
1年ほど前から、同じく天狼院書店で行っているフォトの講座を受けている。
ここでポートレートや物撮りを撮る機会を毎月数回確保している。
 
写真を撮ることはもともと嫌いじゃなくて、ブログにも多く載せていた。Instagramも今みたいに「映え(ばえ)」という流行りが始まる前から開設していてひっそりと続けている。
フォトの1DAY講座に時々顔を出していたが、本格的にやってみたいと思い始めてレギュラーの講座に申し込んだ。
 
最初は景色や食べ物、花などと撮影していたが、自分の連載の写真を自分で撮影してみたいと思い始めたのも写真をやってみようと思った理由の1つだ。カメラマンさんを依頼しなくても自分で撮れればいいのでは? と思ったのだった。
 
取材で撮影するには、人も撮らないといけない。それまで私はあまり人を撮ることがなかった。講座では大勢の参加者さんが1人のモデルさんに群がって撮影する。最初は恐る恐る撮影していたけど、講師に次のように言われた。
 
「ちゃんとモデルに向き合わないといけない。人を押しのけてでもいいので自分が撮りたいと思ったらぐいぐい前に出なさい」
 
他の参加者にぶつかるとか邪魔なんじゃないかとか思いながら撮影していたけど、遠慮していてはだめ、自分がこうしたいと思ったら堂々と行きなさいということだ。そうでなければいい絵なんて撮れるわけがない。普通に暮らしていたら人に気を遣って遠慮するところを、クリエイティブの世界ではある意味エゴイストにならないといけないらしい。この頭の切り替えがなかなかできにくかったのだけど、何回も撮影会に出ているうちにそれにも慣れてきた。
 
写真を始めて半年が経ったころ、野菜を撮影してきて下さいという課題が出た。トマトときゅうりの写真を出したところ、講師にこんな講評をいただいた。
 
「写真が変わったねえ。よくなった。野菜とか撮るの、向いてると思うよ。目線がいい。仕事にできるんじゃない?」
 
自分では前と比べてどこがどうよくなったのかがわからないけど、そうなのかあ、と嬉しく思うとともに、以前から抱えていた疑問を解決するヒントをもらったような気がした。そうか、連載も農業系だし、自然のものを撮ることも好きだし、写真と文章を組み合わせればいいのではないかと考えた。
 
いきなり営業をかけるのも難しいかもしれないので、まずはSNSを充実させることと、知り合いの食べ物系のサイトにお願いしてテスト撮影させていただくことから始めている。自分が撮った写真が世に出て「これが作品ですよ」と堂々と示せることが、ネットの時代ではとても大事なことだから実績作り、エビデンスを増やすことに今は注力している。
 
やっとのことで得た本業はユートピアではなかった。今までは事務系の仕事にこだわって、次を探せばいいやと思っていたけどそうではなく、自分の中に揺るがない何かを確立することの方が強いのではないか。それが3年前に天狼院書店に出会ってから、文章と写真を勉強してきた感想だ。
 
そろそろ「私の副業は、ライターです。写真も撮れますよ」と宣言したい。
文章と写真ができるんですよ、と堂々と言えることはやっぱり強いと思う。
 
実際これを書いている今週末も書くものが3本くらい溜まっており、ようやくそのうちの1本のシンポジウムの初校を出せた。9月13日が締め切りだから今週末に片付けておかないと明らかに詰むわというのがわかりきっているので、昨日1日缶詰にして仕上げた。書き起こしだけで20,000字になる大作をまとめて、削りに削って仕上げる作業は平日の仕事帰りには絶対にできないから週末にまとめて書く。締め切りを守ることが命題なので、今回もこなせてホッとしている。
 
とにかくここ1年は毎日いつも何かに追われている感じがしている。正直身体はしんどいと思うこともあるけど、それでも不思議と嫌ではない。むしろ時間がない中で集中して考える方が、ダラダラと書くよりもまとまることが多い。
 
副業の収入が本業を超えたら、本業を辞める時かな。最近はそう思っている。
その時期がいつになるのか、それは私の頑張り次第だ。じわじわと実績をあげて営業かけていったら1年後、3年後、どうなっているだろうか。3年前には考えられなかったことが今起きているんだから、この先もどうなるか密かに楽しみにしていたい。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
青野まみこ(あおの まみこ)

「客観的な文章が書けるようになりたくて」2019年8月天狼院書店ライティング・ゼミに参加、2020年3月同ライターズ倶楽部参加。同年9月READING LIFE編集部公認ライター。
言いにくいことを書き切れる人を目指しています。

この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

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2022-09-14 | Posted in 週刊READING LIFE vol.186

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