週刊READING LIFE vol.189

文章を書くことは私の人生そのものだと気づいた《週刊READING LIFE Vol.189 10年後、もし文章がいらなくなったとしたら》

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

2022/10/10/公開
記事:飯髙裕子(READING LIFE編集部ライターズ俱楽部)
 
 
「アレクサ、今日の天気は?」「橿原市の天気は晴れです」
私が持っているAIスピーカーが答える。
使えば使うほど、いろいろなことができるというのだが、何となくいつも決まったことしか話しかけることができないので、進歩がない。
 
AIの機器はこれくらいしか持ってないと思っていたが、私たちの暮らしの中には、今や様々なところでAIは使われていることを最近知ったのだった。
まあ、AIスピーカーもそれほど使いこなしていない私にはその詳しい知識もなかったのだから当然かもしれない。
 
AI(artificial intelligence)、いわゆる人工知能と呼ばれている仕組みは、人間の脳の仕組みと似ている。
人間の感覚器からの刺激に対する認知は、神経を通って脳に伝達されるがこの神経細胞の中の電気信号の行き来によるものである。つまり、ニューロンによって伝播される。これは、コンピューターも同じで電気信号のやり取りで特徴量という空間を作り出す作業をする。これが学習(機械学習)と呼ばれるものである。
 
AIの進化には何回かブームがあった。
 
最初は、1950年ごろからのほんとに推論や探索の時代。今ほどいろいろなことができるわけでなく、人間の思考を推測的に記号化してパターン探索するようなものであった。
それには限界があり、そのうちブームは去って行った。
 
そうはいっても、AIの研究を続ける人はいるわけで、第二のブームが1980年ごろに訪れる。いわゆる知識の時代で、専門知識を学ばせて現実世界の問題に対応させるというものだった。このような特定領域は、非常に難しく、やはり、次第にブームは去っていった。
 
膨大なデータとマシンスペックの飛躍的な向上で、第三のブームは2000年ごろからまた始まり、現在も続いている。
 
それが機械学習と、データプランニングである。
今のAIは与えられたデータから特徴量を抽出するということを行うため、種類や分類があり、それによってできることも変わってくる。
 
AIは、強い人工知能、弱い人工知能、また、汎用型、特化型という種類に分けることができる。
強い人工知能とは心を持つもの。つまり情報処理の過程に基づき計算による思考を表現するものとされているが、現在はまだ実現されていないものである。
逆に弱い人工知能とは、心を持たないもの。これは、限定的な知能により見知的な問題解決をするものであり現在の人工知能はこれに該当する。
 
特化型人工知能とは、特定の決められた作業を決められたように遂行するもので、現在自動運転や画像認識などで、使われているものである。
 
もう一つの汎用型人工知能は、特定の決められた作業に限定されず、人間と同等または、それ以上の汎化能力を持ち合わせているものとされるが、これもまだ実現されていないのである。
 
今まで進化してきた人工知能ではあるが、その中でもレベルがあり、それは、AIがこれまで進化してきた過程とみることもできる。
 
①レベル1(制御)は、設定どおりの単純な制御プログラムであり、エアコンや、洗濯機などがこれにあたる。
②レベル2(知識、推論、探索)は、ルールを理解しつつ判断するもので、将棋プログラムとか、お掃除ロボットなどがある。
③レベル3(機械学習)は、自分で、ルールを改善し、より良い判断ができる。データ入力によって、ルールや知識を学習するタイプで、検索エンジンは代表的な例である。
④レベル4(特徴表現学習)は、判断基準を自ら設定し判断するものであり、特徴量を学習することができる。
こんな風にAIは、日々進化しているから、10年前とは比べ物にならないくらいいろんなことができるようになってきている。
 
それを危惧する人たちも多く、近い未来にAIが人間の知性を上回る転換点、いわゆるシンギュラリティが訪れるという見解もある。
人間と同等のことができるようになると、その仕事をAIに振り替えることができるようになる。
人の代わりにAIが様々なことをできるようになれば、人の仕事は少なくなってしまうという考え方に不安を抱くのは当然かもしれない。
 
まるで、映画や小説の中に出てくるAIのように、人間のような思考や感情を持ち、人間を支配しようとするというのは、あまりにも突飛ではあるし、実際にはそれは難しいのではないかと思う。
 
なぜなら、AIは、どこまで進化しても生身の人間ではなく、人間のようなアナログとデジタルの混合思考ではなく、完全なデジタル思考だからだ。
人間の細胞のように感情というものが生まれることはないのではないかと思う。
もし、あるとしても、それはデータから判断されたものであって、自ら作り出されるものではないのだろうと思う。
今は、音楽や小説まで作るAIが出てきているから、もしかするとそう遠くない未来には、文章を書かなくてもよくなる時代が来るのかもしれない。
 
もしそうなったとしたら、私は文章を書かなくなってしまうだろうか?
 
多分、それはないだろうと思う。なぜだろう? と考えてみると、私が文章を書くのは、自分の想いを伝えたり、共感してもらいたいという結果だけではないからだ。
文章を書こうと思うのは、自分の中にいろんな思いがたくさんあふれ出て言わずにはいられない感情の高揚があるときである。これを書いているときの、気持ちは、それを体験した瞬間がフラッシュバックされて、記憶が鮮明になる。感動や悲しみ、喜び、そのすべてが良くも悪くも私の中に蘇ってくる。
そんな書き上げるまでの過程も、書きあがったときの達成感もすべてひっくるめて全部私にとっては必要なことだから文章を書いているんだなという気がする。
 
私の想いをデータにして、AIがどんなに完璧な文章を書いても、それは私の作った文章ではない気がする。
それは、私の書く文章は、完璧ではないからなのだ。人間がすることは、間違いだらけ、100%の完璧なんてありえないと思う。
感情と理性が絶えずバランスを取ろうと、不安定な生身の人間は、それが逆にとんでもない奇跡を生み出すこともあるし、そうでないこともある。
そういう予測不能の温かさが私は好きなのかもしれないと思う。
 
生きている限り、いろんなことが起こり、それは小説よりも信じがたい事だったり、素敵なことだったりする。
 
つまり、AIの学習や、作りだすものは、もともと人間が考え集めたデータがもとになっていて、それを高速の計算や、ありとあらゆる可能性からたたき出した最善の方法から出来上がったものだから感情に左右されることなどないのだ。
 
昔見た「AI」という映画に出てくるロボットは感情を持っていた。
もしそんなロボットが未来に現れるとしたら、人間は滅んでしまうかもしれないなと、その時思った。
 
実際は、そんなことが起こるとは思えないけれど、未来のことは誰にも分らないのではないかと思うし、そうなったとしても、自分の命がある限り文章を書き続けるだろうなと思っている。
 
AIが今よりとんでもなく進化して人間の能力を上回るようなことができるようになっても、人間は、多分自分たちにしかできないことを見つけ出してそこからさらに今とは違う世界が作り出されるのかもしれないなという気がする。そうあってほしいと思っているし、きっととそうなるだろうとも思う。
 
だから私は、これからもずっと文章を書き続けようと思う。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
飯髙裕子(READING LIFE編集部ライターズ俱楽部)

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2022-10-05 | Posted in 週刊READING LIFE vol.189

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