週刊READING LIFE vol.197

世の中をパーッと明るくする音は今日も午後1時に聞こえてくる!《週刊READING LIFE Vol.197 この「音」が好き!》

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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2022/12/12/公開
記事:幸太郎(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
「午後1時になりました。いかがお過ごしですか? こんにちは赤江珠緒です」
 
私の午後は、ラジオから聞こえる彼女のこの一声から始まる。
彼女の軽快な一声を耳に入れ、コーヒーを一口飲み、体を軽くストレッチした後、午後の仕事に着手する。
この一連のスタイルを行い続けてもう3年。
その年数は奇しくもコロナウイルスの流行と被る。
それもそのはず。私がこの仕事スタイルになったのはコロナウイルスが流行ったことでリモートワークになってからのことだ。
コロナウイルスが流行するまでは、オフィスへ出社し、仕事するという一般的な仕事スタイルだった。しかし突如コロナウイルスが流行したことから急遽テレワークが始まり、それから3年間、仕事は家で行うのが”当たり前”になり、気づけばたまのオフィスに出社日が特別な日となっていた。
テレワークが始まった当初、まさか家で仕事ができるなんて夢にもおもわなかった私は、仕事の新たなる形に心躍らせた。
当時は通勤の時間がなくなったことで、ギリギリまで寝てから仕事を行えるという安易なメリットや、身だしなみを整えていなくてもいいなどと言ったメリットばかりに目を向け、ただただ高揚していたのだ。
2ヶ月ぐらいはそのテレワークの恩恵を満喫していた。
周りは静かで、部屋の温度は自分で決めれ、周囲の目を気にせずお菓子を食べられる。
あー快適、快適。
そんなことを思いながらテレワーク生活を満喫していた。
しかし、そんな理想な生活は2ヶ月で辛さを感じ始める。
何が辛いのか。それは静かすぎることだ。
 
静かな環境っていいことじゃないか。そう思う人もいるだろう。
静かだと集中して仕事が捗るのではないか。という意見も一理ある。
確かに学生時代でも、自習する場所の定番が、図書室だったり、
教室も静かにしないと勉強を集中できないなどといった”静かな場所”に対する信頼度は厚くその文脈からいくと「仕事は静かな場所で行うのがベスト」と言った理屈も納得がいく。
しかし、中には”静かな場所”で集中できない人もいる。その一人が私だ。
今考えてみれば、学生時代も、勉強するときはよくファストフード店やショッピングモールのフードコートを活用していた。家だと誘惑が多く、図書室だと印字の匂いに酔ってしまう。
そのためお金はかかってしまうが勉強するときはお店でやろうと当時は渋々決めていたとおもっていたが今考えてみれば、私は”静かな場所”で集中できない体質だったかもしれない。
”静かな場所”で集中できなかったから少し賑やかなファストフード店やショッピングモールを勉強場所として選んでたのだ。”静かな場所”ではないこと、つまりほどよい雑音がある環境が私の集中できる環境なのだ。そのことに学生を終えて10年経った今、テレワークといった形で「自分の集中できる場所」というものを思い知ることになった。
となると、この誰もいない自宅という空間に音を取り入れないといけない。
でもどうやって?
 
はじめに思いついたのは音楽を流すことだった。
そこで試しにいつも聴いてるJポップを流してみた。
賑やかにはなった。
賑やかにはなったが、なぜか集中ができない。なぜだろう。
おそらく普段の聞き馴染みのある音楽では、耳が今はプライベートだと誤解し、仕事モードにならないのではないだろうか。そう思った私は普段聞かない洋楽なども試しに聞いてみた。
 
たしかに普段聞き馴染みのある邦楽よりも集中ができたためそれから何ヶ月間かは洋楽、ボサノバ、ジャズなどいままで耳に入れてこなかった音楽を聴きながら仕事をこなしていた。
しかし、音楽というジャンルに耳が慣れてしまってからはリズムの中で奏でられる音というのは全て集中するには物足りない音となってしまった。
そんなに贅沢な耳だったのか、と自分でも驚いた。
 
そんな贅沢な耳を持ってしまった私は、自分の耳が納得する音をネットで探す日々が続いた。
街の雑音動画やファストフード店の音動画を一通り漁った。
街の雑音動画やファストフード店の音動画も始めは効果的だった。
しかし、何分動画の本数がないため、回数を重ねるうちに飽きが生じる。
するとまた集中には物足りない音になる。
 
ここまでで私がわかったことは予想できない音であればあるほど集中できるということだ。
確かにファストフード店にいるとどこで、だれが話しするかなんて予想できない。
誰かの話し声、誰かの咀嚼音、誰かの足音、誰かの笑い声。
その全てが予想不可能な環境こそがわたしの集中力を引き立てるのだ。
だがそのような自然発生する環境をやはり擬似的に作れるはずもなく私はつくづく困り果てていた。
 
そんな折、あるアプリと出会う。
それがradikoである。
radikoとは民放ラジオがスマホで聴けるアプリだ。
ラジオ機よりスマホを持っている人の方が圧倒的に多い世の中で現代人のラジオ離れに一石を投じたこのアプリ。特にコロナ渦においては私のような耳寂しい人に刺さりダウロード数もアップしたのだとか。
私も早速ダウンロードし、試しに放送中の番組を聞いてみた。
それが、
「午後1時になりました。いかがお過ごしですか? こんにちは赤江珠緒です」
からはじまるたまむすびという番組だった。
 
たまむすび
2012年より、TBSラジオで月〜金曜の午後13:00〜15:30まで放送しているラジオのお昼の顔というべき番組だ。
パーソナリティは、月〜木曜は赤江珠緒さん、金曜は外山恵理さんといった女性アナウンサーが担当し、週替わりに男性芸人や男性ミュージシャンがパートナーとして入り基本この2人の掛け合いで番組が進められていくのだがその掛け合いが絶妙なのだ。
何が絶妙かというと”面白い”の距離感だ。
腹を抱えるほどの笑いでもなく、だが決して面白くないわけではない。
コンロでいう中火の”面白い”? というと語弊があるかもしれないが、お昼という性質上その中火こそがありがたい。
なぜなら、リスナーの中には、私のように仕事をしている人もいれば、子育て中の人もいたり、ドライブ中の人もいたりと、聴く人のライフスタイルは様々。
しかし、その多くは何か活動しながら、聴いている方だと思う。
そのようなリスナーが求めてるのはゴリゴリの”面白さ”ではなく、クスッとにこやかになれる”面白さ”だ。たまむすびにはそのクスッとにこやかになれる”面白さ”がある。
 
つい最近では、パーソナリティの赤江さんと月曜パートナーのカンニング竹山さんがスターバックスのフラペチーノを飲んだことがないという話しになり、フラペチーノを飲んで「美味しい、美味しい」とはしゃいでいる姿を放送したりと終始和やかなムードがラジオから伝わってきた。
まるで、スターバックスで隣に座った客の談笑を聞いてるかのような心地よさだった。
 
それこそ私が求めていた音。
この絶妙な隣のお客の談笑を盗み聞きしているようなそんな絶妙音だ。
作業しながらでも、耳に入ってきたらクスッと笑える”面白さ”。
その絶妙な”面白さ”との距離感がクセになり、たまむすびを耳寂しい時には聴くようになっていき気づけば今や私の生活の一部となっている。
 
そうして、また1人また1人と生活の一部なりつづけ気づけば今年で放送10年だそうだ。
この10年の道のりはけして平坦ではなかったようで、前番組のファンからは冷ややかな目で見られながらスタートし、徐々に人気が出てきたと思ったら、パートナーの降板などがあり、赤江さん自身もお子さんを出産するなど苦しいことも楽しいことも含めて前途多難だったようだ。
その時の気持ちを隠しもしないですべてさらけだしてきたこの番組。
だからこそ、10年も続けられてきたのかなと新参者の私は思ってしまう。
やはりこの番組はリスナーと赤江さんの距離が近いことに魅力があり、だからリスナー含めて心地よい”面白さ”が生まれるのだなと私は思った。
 
 
今も続くコロナウイルスでテレワークが普及し、会議や仕事もより合理性を求められるようになった。それは一見するといいことではあるが、人と人とのコミュニケーションが希薄になったりと数字化できない感情的な部分が置き去りになった気がする。
かといって会社の方針を変えるのは難しく、個人の感情に寄り添ってくれる機会などあまりないのが社会人の悲しいところ。
だからこそせめて自分だけは自分の寂しいという感情には敏感になりたいもの。
耳寂しい、そんなことをもし、あなたが思ったら午後1時にラジオを回して欲しい。
「午後1時になりました。いかがお過ごしですか? こんにちは赤江珠緒です」
きっとあなたの心ををパーッと明るくしてくれる声が今日も聞こえてくるだろう。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
幸太郎

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2022-12-07 | Posted in 週刊READING LIFE vol.197

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