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週刊READING LIFE vol.199

サンタクロースからのプレゼントは、夢と希望と愛情でいっぱいだ《週刊READING LIFE Vol.199》

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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2022/12/26/公開
記事:種村聡子(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
安堵、という言葉がいまのわたしに一番しっくりくる。達成、でもいい。今年もなんとか「サンタクロースからの」プレゼントを準備することが出来た。今日はクリスマスイブ。クローゼットの奥深くに仕舞い込まれていたプレゼントは、いま、クリスマスツリーの下にある。無造作に置かれているだけなのに、それだけでキラキラと輝くオブジェのようだ。大きな箱の中には、息子がサンタクロースにリクエストしたプレゼントが入っている。でも、中にあるのはそれだけではない。息子の夢と希望、それから、わたしたち大人の、息子への愛情がたっぷり詰まっているはずだ。今年も、無事にここまでたどり着くことが出来てよかった。きっと、ほかのたくさんの「サンタクロース」たちも、同じ気持ちでいるのだろうな、と想像すると、勝手に同志のような親近感を持ってしまう。今年も頑張ったね、自分! 頑張ったね、サンタクロースさんたち!

 

 

 

小学生の息子は、サンタクロースがいると信じている。だから、クリスマスが近づくとサンタクロースにどんなプレゼントをお願いしようかな、と真剣に悩み始める。あれがいいかな、それともこれがいいかな、と頭を抱える姿は、いつまでたっても可愛らしい。そろそろサンタクロースの存在に疑問を持ってもいい頃だし、勘がいいお友だちの中には、もしかしたら知っている子もいるかもしれない。でも、わたしは息子が信じているその純粋な気持ちを大切にしてあげたいと思い、毎年こっそりと、でも汗だくになりながら無茶ぶりとも言える息子の願いを叶えるべく、奔走するのだ。そんなある日のことだった。
 
「お母さんは、いい子じゃなかったの?」
息子は、そんなことはあり得ない、とでも言いたげな口ぶりでわたしの顔を覗き込んだ。母親であるわたしが、子どもの頃にサンタクロースからプレゼントを貰ったことが無い、と話した時のことだ。わたしはついうっかり口を滑らせてしまったけれど、それは言ってはいけないことだった。なぜって、サンタクロースは「いい子」にだけプレゼントを持って来てくれる、と子どもたちは信じているからだ。これではわたしが「いい子」ではなかった、と言っているようなものだ。
 
息子は、わたしが子どもの時は「いい子」であったと信じている。お勉強ができてお行儀がよくて、褒められてばかりのお手本のような子どもだったと思い込んでいる。そんなことは決してなかったのだけれど、夫がちょっとばかり誇張して話したことを息子は鵜呑みにしてしまった。だから、「いい子」だったお母さんがプレゼントを貰えなかったなんてあり得ない、と息子は考えたのだ。きっと理由があるはずだ、と。しばらくわたしの顔をじっと見つめていた息子は、なにかを閃いたかのように、目をキラリと光らせて言うのだった。
「わかった、お母さんはサンタさんへお手紙を書かなかったんでしょ。欲しいものをちゃんと伝えていなかったから、サンタさんはどうしていいかわからなくて、来てくれなかったんじゃない?」
おお、なるほど。確かにお母さんはサンタさんへお手紙を書かなかったよ。息子くんは毎年サンタさんへ素敵なお手紙を書いているから、プレゼントを貰えるんだね。
すると、息子は言うのだった。
「でもね、お手紙だけじゃ、ダメなんだよ。来てくれるサンタさんへのプレゼントも、用意しなくちゃね」
そうなのだ。息子は毎年、サンタクロースへの手紙と一緒に、プレゼントの準備も欠かさない。今年はこんなプレゼントを欲しいです、と記されたイラスト付きのお手紙にはサンタクロースが間違えないように、おもちゃの品番まで調べて書いてある。さらに、サンタクロースは「必ず」息子が欲しがっているプレゼントを届けてくれるから、そのお礼のプレゼントも事前に用意しているのだ。お礼はいつも、息子お手製のレゴブロックで、レアパーツも使った渾身の作だ。貴重な部品を使うことで、彼の、サンタクロースへのリスペクトの大きさを物語っている。
 
息子はサンタクロースの存在を信じている。わたしも、息子の想いを裏切らないように、できる限りの努力をする。わたしだけではない。他のお母さんやお父さんも、きっと同じだ。子どもたちが望むプレゼントを用意するのは、時として困難な場合もあるのに、なんとしても入手しようと試みる。すべては子どもたちの期待を裏切らないために、夢を壊さないために。あるママは、子どもが望んだプレゼントが入手困難だったときに、法外な値段がついていたにもかかわらず、涙をのんで購入した、と話していた。抽選でしか購入できないものを、親族が総出でチャレンジし、手に入れることが出来た、という人もいる。でも、モノがあるときはまだましだ。どうしても見つからないときは、サンタさんも難しいみたい、とプレゼントの変更を提案しなくてはならない。怪しまれないように、気付かれないように、上手に言わなければならないから、こちらは緊張してしまう。
 
今年、息子が希望したプレゼントは、レゴブロックだった。しかも、びっくりするほど高額だった。目の玉が飛び出るって、こういうことなんだな、としみじみ思ったほどだ。ちょっとだけ分別がついてきた息子は、あまりにも高額なおもちゃを、おじいちゃんやおばあちゃん、両親へ欲しいと言うことを遠慮するようになってきた。でも、彼にとってサンタクロースは別格だったので、本当に欲しいものをお願いするのだ。サンタクロースは何でも出来る、どんなお願いも聞いてくれるはずだから、遠慮や忖度はまったくない。金額にひるんだわたしは、一瞬このプレゼントを用意するかを悩んでしまったけれど、夫は息子の希望を叶えるべく、動き出した。「彼の気持ちを大切にしてあげたい」と言うのだった。ただ、それからが大変だった。実店舗を5件探しても、希望のおもちゃは置いていなかったので、仕方なくネットで購入することにした。家にそのまま届いてしまうと息子が怪しむだろうから、配送先を実家にして、こっそり受け取る段取りもした。クリスマスプレゼントを準備するだけなのに、大の大人が寄ってたかって何人も暗躍するのだ。わたしたちは不思議な一体感でこの秘密のミッションをこなし、今年も無事にプレゼントを用意することができたのだった。
 
息子がいまよりうんと幼い時、彼の将来の夢はお医者さんになることだった。わたしはその夢を応援していた。そんなある時、息子はわたしに、ちょっと言いにくそうに、ためらいがちに打ち明けたことがある。
「ほんとうは、ぼくはお医者さんになることと同じぐらいに、魔法使いにもなりたいんだ」
現実的な医者と非現実的な魔法使いを、ひとつの職業として同じ次元で考えることが出来る息子が、わたしには眩しかった。どちらも素敵なお仕事だから、どちらにもなれるといいね、と伝えると、息子はホッと安心したように嬉しそうに頷いた。
 
サンタクロースがいると信じられること、魔法使いにだってなれるはず、と思えることは根っこのところで同じだと思う。あるかもしれないけど、ないかもしれない、いるかもしれないけど、いないかもしれない、そんな不確かなものを信じられるのは、本人の夢を見る気持ちだけでは不可能だ。その子の夢を阻むことが無いように、夢をまっすぐに大きく育ててあげられるように、周りが心を配り、気を遣ってあげて、やっと可能になるのだ。そう、子どもを取り巻く環境が温かくて安心できるものであること、その子が愛情いっぱいに守られていることが重要なのだ。
 
その点では、わが家は大成功だ。
今年もサンタクロースの存在を疑問に思うことなく、プレゼントが届けられることを息子は信じている。からだ全体から溢れるほどのワクワクした様子を見ていると、わたしまで幸せな気持ちになるのだ。ただ、息子はどんどん成長しているから、サンタクロースが本当は誰であったのか、いずれ気付いてしまうのだろう。その時に息子はどう思うだろう。やっぱりがっかりしてしまうのだろうか。そのがっかりした気持ちから立ち直ったあと、いままでサンタクロースを信じていた純粋な気持ちや温かい経験を糧に、これからの人生を豊かなものにしていってほしい、と願わずにはいられない。
 
でも、もう少し、あとほんの少しだけ、素敵な夢を見ている息子を、わたしは見ていたいとも思うのだ。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
種村聡子(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

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2022-12-21 | Posted in 週刊READING LIFE vol.199

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