週刊READING LIFE vol.203

「数学って役に立つの?」と聞かれても《週刊READING LIFE Vol.203 大人の教養》

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

2023/2/6/公開
記事:山田 隆志(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
子供のころは数学が好きだったはずだ。毎日のように計算ドリルをこなしてタイムを計測しながら少しでも早く解けるように夢中になって計算していた。遊んでばかりの私だったが、親から「勉強しなさいと」叱られたときに手を出していたのは大体数学だった。他の教科はそこまで熱心ではなかったものの、数学だけは夢中になって問題を解いていることもあったぐらいだ。
 
ところが、好きだったはずの数学が高校に上がると同時に最も嫌いな教科に変貌した。

 

 

 

私が考えていた学校の授業というのは、教壇に立つ先生の話を聞いて板書してから、出された宿題をこなして、期末テストに備えて勉強してそれなりの点数を取るのが常識だったはずだ。
 
私の中高一貫校に通っていたため高校入試というのは経験していない、その代わりに英語と数学は学力別テストがあり、数学は学年の上位25%が所属する選抜クラスに入ることができた。
 
その選抜クラスとは、これまでの授業とは全く異なるスタイルをとっていた。三角関数や微分積分といったテーマの始まりこそ、数学の先生が講義を行うのだが、普通は1週間かけてじっくりやるところを一日で終わらせてしまう。そこから先は自分で仕上げて来いというのがスタイルだ。このスピード感は先生なのに、ものすごく汚い字で黒板に書き板書をしようとするとさっさと消されてしまう。学校の授業というのはクラスで一番できないやつに合わせるものじゃなかったのか?
 
こんなに講義のスピードを早めて残りの時間はどうするのか?
 
その空いている時間を「チャート式」のような問題集を使ってとにかく演習の時間に使うのだ。そして、問題集にある設問を選抜クラスの生徒に割り当てて、その担当者が先生の代わりに教壇に立って説明するスタイルだ。一つの問題を生徒がしっかり理解して、生徒にわかりやすく説明することで、インプットとアウトプットを強化する。生徒が教壇に立つことで自然と責任感も養うことができ、非常に先進的な授業スタイルだ。
 
いやいや、これはやめてほしい
 
選抜クラスのほとんどは勉強ができるものばかりで、高1でも大学受験を見据えて準備に取り掛かっている者たちだ。
 
私はというと数学はそれなりに得意かもしれないが、英語やその他の科目はさっぱりでどちらかというと劣等生の部類だ。大学受験へのモチベーションなんてほとんどない。
 
それ以上にまずいのは、あがり症で声にドモリがあることがコンプレックスとなり、それをこじらせることにより友人たちとのコミュニケーションどころか、挨拶もろくにできない生徒になってしまっていた。
 
そんな私が黒板の前で授業なんてできるわけない。与えられた問題そのものはどうにかこうにか理解することはできた。でもだめだ。説明しようにも言葉がまるで出てこない。先生の目、教室にいるクラスメイトの好奇の視線が怖い。黒板の前で立ちすくむ私に心無いヤジが飛んでくる。「おい聞こえねえぞ!!」「早くしろよ」
 
こんな授業は地獄でしかない。いっそ下のクラスに落としてくれればどんだけ気持ちが楽なのか。クラスの入れ替えも兼ねている中間テストをあえて白紙で出してやろうか。いやいや真面目にテスト受けたって残留できるかわからない。
 
それが大学受験直前まで続き3年間ずっとさらし者の恐怖を克服できずにいた。しかし、数学の成績の効果は出ていたらしい。人前でしゃべることは全く改善しないものの自分の被害を最小限にするために、担当となった問題そのものは必死になって理解し、自分なりに準備をしていた。中には自分ではどうにもならないような難問もあったけど、私よりはるかに頭のよい友人に教わりながら準備を徹底した。私の説明は酷いものだったけど、問題そのものは間違えていないので、被害を最小限にとどめていたのだ。
 
かなり手荒なやり方だけど数学についてはある程度の結果は出ており、選抜クラスから漏れることはなかったのだ。

 

 

 

3年間地獄のような数学の授業を経て見事に志望校に合格しましたとはならなかった。
 
それもそのはず、英語は下位のクラスであり真面目に勉強していないこともあったので、当然のごとく志望校は箸にも棒にもかからなかったのだ。
 
こうして卒業後は、千葉の予備校に通うことになった。私が通う予備校は最初に入塾テストがあり、8段階にわたるクラスの編成が決まり、英数ともに選抜クラスに所属することになった。
 
といっても河合塾とか東進ハイスクールみたいな大手の予備校ではない、むしろ「偏差値30からの大逆転」を標榜しており、どちらかというと劣等生向けの予備校だ。
 
英語も数学も1クラス10人程度でホントに自分と同じぐらいの学力の奴がクラスメイトとなる。そのため、授業に全くついていけなくなることや逆に差が開きすぎて退屈するようなことがない。
 
英語も数学も授業中に頓珍漢な回答をしようものなら容赦なく怒鳴られ、数学の問題を正答するまでは家に帰してくれなかった。
 
夏休みになれば通常の授業の代わりに合宿が始まる。房総半島のホテルに缶詰めになり、朝の7時にたたき起こされては8時から授業が始まりその日の授業は夜の10時に終了することを2週間やっていた。
 
予備校生に大晦日も正月もない。そのころには赤本を10冊ぐらいもって予備校でひたすら赤本を解いていた。この時期にはいわゆる授業ではなく、朝8時から夜の22時まで赤本を解き、つまずいた時に先生にサポートをいただいていた。
 
それにしても我ながらよくやったものだ。会社勤めしていてもここまで働いたのは数えるほどだぞ。
 
こうして私は一浪した末に、第2志望の大学に合格することができた。
 
あれだけ一生懸命取り組んでいた数学もこれが最後となった。

 

 

 

高校・予備校と4年間は数学に苦しみながらもずっと向き合ってきた。
 
大学・そして社会人になるにつれて嘘のように数学と接することがなくなってしまった。
 
社会人になってから、印刷工場・社内情報システム・総務一般事務といった順番に任された。ステージが変わるごとに求められるスキルも変化していた。工場では印刷業界の専門用語と会社での専門用語とスキルを学び、社内情報システムではITと名のつくものは否応なく学ぶことが多くなった。
 
今の会社に入社してから15年ほど経過したときに、総務課に異動になり一般事務として必要なことを何となく学んできたが、どちらかというと社員のあらゆる要求にひたすら応えながら、多くのことを学んできた。
 
その中には簡単なお金の計算はあったにせよ、あれだけ苦しんできた数学も英語も見事になくなってしまっている。
 
思えば子供のころから高校時代を経て社会人に至るまでに私が学ぶことは、どうしても必要なことだけを必死に学んできただけだ。
 
私には明らかに教養というものが欠けている。
 
つい最近までそれでもよいと思っていたのだが、それだけでは物足りないのだと本能が訴えていた。

 

 

 

2021年より天狼院のライティングゼミに参画し、そのままの流れで翌年ライターズ倶楽部に参加することになった。
 
きっかけは、将来ライターや小説化になりたいとかではなく、なんとなくの気持ちで参加した。しいて言えば、日課であるインスタグラムの投稿をもう少し読んでもらいたいという気持ちがあった。
 
こうして、ライティングゼミ、ライターズ倶楽部を通じて1年間苦しみながらも文章を書くことに向き合い、2022年は天狼院沼にどっぷりとつかっていた。
 
文章を書くことよりもとにかく本を読むことへの圧も強くなり、年間10冊に満たない読書量も2か月足らずで軽く超えてしまい。2022年はおそらく50冊は読んでいるだろう。
ライターズ倶楽部の他にも時間術や読書術などいろんなものを学ばせてもらった。
 
時間術にしても読書術にしても今の私になんとなく必要だから受講した。おかげでいつも「時間がない」を言い訳にして生きてきたが、天狼院に参画する前では絶対にできなかった5000文字のライティングの毎週提出もほぼできるようになった。
 
そして、2022年の10月ずっと気になっていた「数学教室」がはじまった。
 
数学というのは大学受験が終わってからもう使うことのない科目だと思っていたが、思わぬところで数学を学びなおす機会に恵まれ、迷わず年間契約で申し込みを行った。
 
三角比も微分積分も見事に忘れている。高校の時にあれだけ勉強したはずなのに久しぶりに見るサンプル問題は見事に正答することができなかった。
 
それでも、授業を聞きながら昔を思い出すような懐かしい感じがした。
 
三角比や連立方程式もなんとか思い出すことができてから、サンプル問題を解くことが楽しくなってきた。
 
大人になってから数学をたしなむことができるのは喜ばしいことであり、今から教養というものを身に着けるにはもってこいなのではないだろうか?
 
今から数学ができるようになったらどんな職業に就くことができるのか?
 
すぐさま、思いつくのは高校か学習塾の先生が思いつくのだが、今から勉強しても受験生には到底かなわないのではと思われる。
 
それとも今から大学に入りなおして、数学者の道を歩んでみるか?
 
どれも夢はありそうだけど現実的ではなさそうだ。結局数学を学ぶことで何に役に立つのだろうか?
 
もし私が学生に聞かれたら間違いなく答えることはできないだろう。かといって必要のないものと断じるつもりもない。
 
でも、勉強というものは必ずしも今役に立つことばかりではなくてもよいのではないか
大人になってからは今すぐ役に立たなくてもいい、人生のどこかで役に立てばいいのだ
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
山田 隆志(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

2021年8月の誕生日にライティングゼミ夏季集中講座で天狼院デビューとなりここから天狼院沼にハマって、ハードワークの技術、時間術ゼミNEO、無限ラーニングZ他多くの講座を受講することになる。
2022年1月よりライターズ倶楽部参戦するもあまりのレベルの高さに騒然とし、ライティングゼミNEOでライティングを鍛えなおす。同年10月よりライターズ倶楽部復帰

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2023-02-01 | Posted in 週刊READING LIFE vol.203

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