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週刊READING LIFE vol.234

まさかポケモンカードがこんなに高騰するなんて。でも、高値で売れなくよかった《週刊READING LIFE Vol.234 まさかこんなことが!》

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

2023/10/2/公開
記事:Shota(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
私は先日、約1年振りに母親と食事に行った。
そこで初めて知った事実がある。それは、
「弟が仕事上の人間関係で悩んでいたこと」
「疎遠だった叔母と母親が連絡を取り始めたこと」
「父親が再来年の定年に向けて、新しい趣味を探していること」だ。
今まで知らなかったこと、いや、知ろうと感心を持たなかったことを後悔した。同時に母親と二人で食事に行けた今回の機会に感謝もした。
この機会を作ってくれたのは、小学生の頃に遊んだポケモンカードだった。

 

 

 

「20年前の自分に何を伝えたい?」
〇〇年前に戻れるなら……。といった言葉はよく聞く。
過去に戻ってきたつもりで行動しなさい。なんて書いている自己啓発本も読んだことがある。
もし、20年前の自分に何か言葉を伝えることが可能なら、私は間違いなくこの言葉を伝えるだろう。
「そのポケモンカードで遊ぶな! 傷つけるな! 博物館に飾られている展示品のように丁寧に保管しておけ!」と!
まさかあのときに遊んでいたポケモンカードが、ここまで高騰するなんて想像しなかった……。
 
 
私がフリマアプリに登録して間もない頃、自室のベッドで出品されている品物を眺めていた。
「へえー。本とか洋服、フリマアプリで買った方が安いやん」なんて考えながら眺めていたが、ポケモンカードを出品している者を見つけて懐かしくなった。
約20年前、私が小学生の頃ポケモンが大ブームだった。ポケモンカードにゲームソフトで遊んでおり、ポケモンのイラストが入った勉強机を欲しがったことを今でも覚えている。
最新のキャラクターの名前は分からないが、昔のキャラクターカードも多く出品されており、非情に懐かしい気持ちで眺めていた。
しかし、画面をスライドさせていく中で、私の懐かしいなんて気持ちは完全に消えた。マッチにつけた火が勢いよく燃え、一瞬にして消えたみたいだった。
「昔のポケモンカード、めっちゃ高騰しとうやん……」
内心呟いたつもりだったが、言葉に出ていたかもしれない。
私が小学生の頃、お年玉で購入したポケモンカードが、新車が購入できるくらいの金額で販売され、マクドナルドでハッピーセットのおまけとして貰ったポケモンカードが、今ではスターバックスのコーヒーが200杯以上注文できる金額で販売されている。
更に驚いたことに、それら全てが売却済みだった。
調べたところによると、今では『転売ヤー』と呼ばれる輩もいるみたいだ。遊戯目当てではなく、高額で転売するためにポケモンカードを買う。その輩のせいで本当にカードが欲しい子供が買えない事象が起きている。
何ともひどい連中だ。
もし、私が小学生の頃に未来予知ができていれば、アスファルトにポケモンカードを並べて遊んだり、忍者ごっこと称してカードを手裏剣のように投げて遊んだりはしなかっただろう。
スマフォの画面を眺めながら、カードで遊ぶ小学生の自分を思い出して後悔した。
 
 
私は次の休日に実家に戻った。
理由は単純。ポケモンカード発掘のためだ。
フリマアプリを眺めて高騰したポケモンカードに驚くと同時に思った。
「このカード、実家にあるかも」と!
小学生の頃に遊んだカードをまとめて保管していることを思い出した。
次の休日帰る。としか伝えていなかったため、母親は何かあったのかと思い心配していたそうだ。
退職や体調不良を疑っていた母親に、ポケモンカードを探しに来たと伝えたところ、鼻で笑われた。
そんな母親に高騰している事実を伝えたところ、喜々としてポケモンカード発掘のメンバーに加わってくれた。
小学生の頃に私が遊んだおもちゃ等が保管されている部屋に私と母親の二人で入り、目当てのカードを探した。
 
 
「あった!」
私は叫んだ。私の声を聞くなり、母親が小走りで近寄ってきた。
小学生の頃、カードを一枚ずつ保管していたカードケースが見つかったのだ。
本物の発掘隊が恐竜の化石等を見つけた時には、こんな気持ちになるのだろうか。そんなことを考えていた。
私は早まる気持ちを抑えながら、カードケースを開いて中身を確認していった。
しかし、現実は甘くなかった……。
目当てのポケモンカードは確かに見つかった。
だが、小学生の頃に遊んだカード。綺麗な状態なわけがない。角が折れたり破れているカード。弟のカードと区別をつけるため黒マジックで名前が書かれているカードもあった。
フリマサイトで高額販売されているカードと名前は同じでも、状態は最悪だった。
だが驚いたことに、状態が悪いカードでも全く値が付かないわけではない。
実際にカードを売却しに行ったところ、破れていたカード、落書きされているカードを含め、福沢諭吉さんを一名迎えることができた。
全て新品同様であれば、諭吉さんが五十名ほど我が家にやってきていただろう。そう思うとやはり後悔の気持ちが残る。
「しょうがないやん! これで昼ご飯食べに行こう」
母親が言った。
確かにそうだ。嘆いても仕方がない。
考えると、最後に母親と二人で食事に行ったのは何年振りだっただろうか。
それにしても、ポケモンカードの売却代金を私にくれず、全てを昼食代にするのが母親らしいなと思った。
そのことを伝えると、
「当時は私のお金で買ったカードやない!」
と笑いながら口にする母親に、言い返す言葉が見つからなかった。
 
 
私と母親は、昼にしては贅沢と思われるお店に入った。
ポケモンカードの売却代金は間違いなく残らないだろう。
「二人でご飯行くのも久々やね!」
テーブル席で正面に座る母親に言われた。
確かにそうだ。一人暮らしを始めてというもの、母親だけでなく、家族と過ごす時間も極端に減った。
「母親と二人で何を話そうか」なんて考えていたが杞憂だった。
お酒が入ったこともあるだろうが、約60分、母親と二人の食事時間は盛り上がった。
私が今の職場でどんなことをしているのか、まだ結婚しないのか等、くだらない会話が大半だったが、そのとき初めて知った事実もあった。
それは、
「弟が仕事上の人間関係で悩んでいたこと」
「疎遠だった叔母と母親が連絡を取り始めたこと」
「父親が再来年の定年に向けて、新しい趣味を探していること」
大きくこの三つだ。
家族、身内の大切な事情を今まで知らなかったこと、知ろうとしなかったことを後悔した。ポケモンカードを丁寧に保管していなかった後悔とは非にならない。
 
 
弟が人間関係で悩んでいることを知ったときは胸が締め付けられた。私自身も人間関係で悩んだことはあるが、それ以上に辛かった。
「今はどうなん?」
私は母親に聞いた。
どうやら、今は転職し新しい職場で楽しく過ごしているそうだ。仕事が楽しいとも、母親に話していたらしい。
弟が転職したことは知っていたが、その細かい理由までは知らなかった。
 
 
叔母とは5~6年疎遠状態が続いていた。
理由を説明すると長くなるため省略するが、誰が連絡しても無視され、今どんな状況なのかも、まるで分らなかった。
そんな状態であったにも関わらず、今では連絡を取り合っている。月に一回は、一緒に食事にも行っているそうだ。
叔母が健康と聞いたとき、一安心したのを覚えている。
 
 
父親は再来年定年だ。定年に向けて新しい趣味を探しているそうだが、その理由は母親の一言が原因だった。
「定年後ずっと家におられたら迷惑」と、父親に言ったそうだ。
何故言ったのかは聞いてないが、その言葉が引き金となり、アウトドア系の趣味を探しているみたいだ。
小学生の頃に父親と釣りに行ったが、もう二十年近く行っていない。
「また父親と釣りに行こうかな」
そう母親に言ったところ、
「何でもいいけん家から連れ出して! 私に自由時間をちょうだい!」
と言われてしまった。

 

 

 

母親と二人で食事をして、今回の記事を書くまでに約二年近くが経過した。
私は最近になって思うことがある。それは、
「ポケモンカード、高値で売れなくてよかった」
ということだ。
ポケモンカードが高騰していること、しかもそのカードは小学生の頃に持っていたことに当初は興奮した。だが、もし高値で売れていたら、と考えた。
そうなったとき、私はどうしただろうか?
あくまでも予測だが、恐らく母親と二人で食事には行っていない。他にもカードがあるかも! と躍起になり、カード発掘に力を入れていただろう。そうなったとき、母親と食事した時間は、間違いなくカード発掘の時間に変わっていたことだろう。そうなれば必然的に、弟や父親、叔母の現状を知ることはなかった。
お金で買えない大切な家族。そんな家族の現況を知る時間を、ポケモンカード発掘という、お金で解決できる、くだらないことに費やしていたことだろう。そう思うと非常に恐ろしくなった。
それに、今話題になっている『転売ヤー』に私自身がなっていた可能性もある。仕事を疎かにし、フリマサイト中心の生活になっていたかもしれない。そうなると、さらに家族と過ごす時間は減っていたことだろう。
 
 
ポケモンカードが高値で売れなかったことに最初は後悔した。だがそれは違った。むしろこれで良かったのだ。そのおかげで母親と二人で食事に行け、大切な家族の現況も知れたのだから。
そう思うと何故か嬉しくなった。
父親が喜んでくれるかは微妙だが、今度釣りに誘ってみよう。
そういえば小学生の頃に父親に買ってもらった釣り竿はもうない。二人分の釣り竿が必要だ。釣り竿や餌を購入し、今度は父親を助手席に乗せて行こう。間違いなく母親は歓喜の声をあげるだろう。
弟が喜んでくれるかは微妙だが、今度二人でお酒を飲みに行こう。恐らく私がお金を出すことになるが問題ない。今、弟がどんな仕事をしているのか、人間関係は問題ないか等、兄なりに聞いてみよう。
そんな風にも考えることができて、本当に良かった。同時にこうも思った。
ポケモンカードが高値で売れなくてよかった! と。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
Shota(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

福岡県生まれ。福岡県在住。
自慢できる肩書き・出版実績・メディア掲載は一切なし。
2023年4月開講のライティングゼミ、2023年7月開講のライターズ倶楽部に初参加。
東野圭吾さんの「ガリレオシリーズ」をキッカケに、推理小説を好きになって約六年。自分でも推理小説書きたいと思い、「このミステリーがすごい!」の大賞受賞を目標としているアニメ好きのサラリーマン。

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2023-09-27 | Posted in 週刊READING LIFE vol.234

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