週刊READING LIFE vol.236

不満の気持ちを抱えて参加した沖縄研修は、大開運旅行であった《週刊READING LIFE Vol.236 私のベスト・トリップ》

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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2023/10/23/公開
記事:青山一樹(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
「9月に会社の研修旅行で沖縄へ行けますよ」と言われると、多くの人は喜ぶであろう。お金は会社が出してくれて、自分の懐は痛まないからだ。しかし、私は心から喜ぶことができなかった。本来であれば、同じ年の5月に成績優秀者の研修旅行でフランスへ、7月には全社研修でスイスという、2つの国に行けるはずだったからだ。
 
私の仕事は、外資系製薬会社の営業、MRである。7年前、私は社内で嫌がらせを受け、それが原因で1年ほど会社を休んでいた。社内トラブルが起こる前、MRであれば誰もが憧れる都内の大学病院を担当しており、営業成績もトップクラスであった。翌年、フランスのニースで開催される成績優秀者研修に参加できることは間違いなかった。更に、新薬発売を記念したスイスでの全社員を対象にした研修へも参加できるはずだった。
 
しかし、社内での嫌がらせが原因で、10カ月間、自宅待機を命じられ、担当施設を取り上げられた私は、出勤日数が足りず、これらの研修への参加資格を失っていた。代わりに提示されたのが、沖縄での研修旅行であった。沖縄研修に参加する者は、入社間もない社員や、家庭の事情でスイス研修へ行けなかった社員であった。社内トラブルに巻き込まれたことが原因で、沖縄研修へ参加する社員は、私だけでであった。
 
しかも、職場復帰したものの、誰もが憧れる都内の大学病院の担当MRから、北関東の奥地の小さな市場の担当MRへと、転勤を命じられた。完全に会社から干された社員となっていた。
 
自宅待機を命じられていた間に、私はよく当たるという評判の占い師を紹介してもらった。当時の私は、会社の上司や同僚のすべてを敵とみなしていたが、仕事とは全く関係のないこの占い師の言うことには素直に従っていた。
 
月1回の鑑定を行ううちに、この占い師から、吉方旅行というものを教えてもらった。吉方旅行とは、恋愛運や結婚運、仕事運、金運などの運を身につけることができる開運旅行のことである。自宅を出発点として、日取りの良い日に、吉を表す方向に旅行すると運気が上昇するのである。
 
吉の方向は、日替わり・月替わり・年替わりで変化していくが、1年間に3日間だけ、これら3つが重なる日がある。この3日間を、大吉方旅行日という。私の沖縄研修は、自宅からの方向も日程も吉方旅行に最適であった。
 
このことを占い師に報告すると、占い師は驚き、そして一緒に喜んでくれた。私は、沖縄研修を最大限活用したいと考えた。そこで、より運気をあげるため、何をすればいいかを占い師に尋ねた。
 
占い師は「運気を上げたいなら、金運に絞ってあげなさい」という人だった。対人運や仕事運は運気があがったかどうか分かりにくい。金運であれば、お金が増えたかどうかで運気があがったか否かが分かりやすいから。という理由だった。そして、開運旅行で金運を上げる具体的な行動は次の5つであった。
 
1.現地の料理を食べる
2.現地のお酒を飲む
3.現地の温泉につかる
4.夜10時35分までに布団へ入る
5.現地の土を持って帰る
 
簡単にクリアできそうに思える。しかし、会社の研修旅行という特性を考えると、実行できない項目が出てくるかもしれない。と私は考えた。
 
まずは、現地の料理を食べる、という行動だ。沖縄へ行くのであれば、通常ならば沖縄料理が出てくるはずだ。しかし、社員研修であれば、あらかじめ食事の時間と料理が決められているかもしれない。もしかしたら、沖縄料理ではなく、カレー、スパゲティ、丼もの、定食などを食べさせられるのでは。と、心配した私は、那覇空港に到着した直後の食事に、ソーキそば屋さんに駆け込んだ。この時の食事は、自由行動の時間内に、好きなものを食べることができたからだ。まず1つ目のミッションをクリアした。
 
私の心配とは裏腹に、研修中のほとんど全ての食事が沖縄料理であった。ホテル滞在中の朝食はビュッフェ形式であり、当然、沖縄料理が中心であった。昼食は観光地を訪問中に出されるもので、やはり現地の料理ばかりであった。夕食は、ホテルに併設されるレストランで自由に食べることができ、ここにも沖縄料理を食べることには困らなかった。
 
次は、現地のお酒を飲む、という行動だ。研修旅行であれば、夜に誰かの部屋に集まって、朝まで宴会する、というのが定番だ。その宴会に呼ばれてしまうと、現地のお酒ではなく、誰かが買ってきた安いビールなど飲まされるのでは。と思っていたが、私は宴会どころか、一緒に夕食を食べましょう、と誘われることはなかった。
 
考えてみれば、当時の私は、周りの社員からトラブルメーカーとみなされていた。そのような面倒くさい者と誰も一緒に食事をしたくない。仲が良いもの同士で、ご飯を食べ、酒を飲んだ方が楽しいに違いない。私にとっても、他の社員から距離を取ってもらう方がありがたかった。夜は1人で、好きな時間に、好きな食事とお酒を楽しみたいからだ。私は、泡盛を1日1杯、と決めて飲むことにした。飲みすぎに気をつける、というより、飲食代がぼったくりと思えるほど高いレストランしかなかったからだ。毎晩、泡盛を飲んだ私は、2つ目のミッションをクリアした。
 
3つ目は、現地の温泉につかる、である。残念ながら宿泊しているホテルには温泉が併設してなかった。代わりに取るべき行動を、事前に占い師へ確認しておいた。温泉が無いのであれば、プールに入る、湯船にお湯を溜めてつかる、シャワーを浴びる、という行動を取れば温泉につかるのと同じ効果が得られるというのだ。
 
私は、研修の自由行動中に、ホテルに併設のプールで泳いだ。そして、夜は湯船にお湯を溜めてお風呂に入り、朝はシャワーを浴びた。特にお風呂に入る、シャワーを浴びる、という2つの行動は毎日実践した。3つ目のミッションもクリアである。
 
4つ目は、夜10時35分までに布団へ入る、である。このミッションも簡単にクリアできた。なぜなら、研修が終了する17時30分以降、私は他の社員から声をかけられることがないからだ。好きな時間に、夕食を取り、お酒を飲み、お風呂に入ることができた。私にとって、更に幸運だったのは、相部屋ではなく、1人ずつ個室が割り当てられていたことであった。夜は完全にフリーであった。もし、他の社員と一緒の部屋に泊まっていたら、部屋飲みなどに付き合うことになり、22時35分までに布団へ入ることができなかったであろう。
 
最後は、現地の土を持って帰る、である。この行動も出発する前に、沖縄という土地柄、砂を持って帰った方が金運アップにつながることを、占い師から教えてもらった。現地の砂を持って帰るという行動は、日にちと時間帯が大事であった。1年のうちで最も運気があがる、大開運旅行日の9月27日早朝に砂を集めないと、金運アップの効果が弱まるのである。
 
私は、研修旅行3日目の9月27日の朝6時にホテルのプライベートビーチへ行き、砂をビニール袋に詰めた。夜は、泡盛を1杯しか飲まず、22時35分には寝ているのだ。早起きして、砂を集めることくらい、本当に朝飯前であった。
 
このように6年前の私は、1年で最も開運旅行に向いている日に、沖縄研修旅行に参加し、より金運をアップさせる行動を取った。では、今の私は当時と比べて、どう変化しているであろうか。
 
まずは、金運である。毎年、約5%ずつ年収があがり、6年間で約1.4倍になった。過去の自分と比較すると、驚くほどのアップ率、アップ金額である。よって、金運アップに成功したと言える。
 
他の運気、例えば仕事運はどのように変わったかというと。沖縄研修から4カ月後に、再び転勤を命じられた。異動先は、同じく北関東エリアであった。しかし、今回は大学病院の担当MRとしての転勤であった。都内の大学病院に比べれば売上規模は小さいものの、MRとしてはやりがいのあるエリアを任された。このエリアで売上アップの結果を残した私は、更に4年後、再び転勤となった。今は神奈川県で最も売り上げ規模の大きい大学病院の担当MRとなった。MRとしての仕事運もアップしていると言える。
 
では、問題のあった社内の対人運はどうなっただろうか。実は、沖縄研修から半年後、私が勤めている会社が、大手製薬企業に買収された。その結果、経営陣が一新され、私のことを問題児扱いしていた経営幹部は誰一人居なくなった。
 
とはいえ、買収された側の社員は、リストラが付きものである。まず、企業統合にあたり、6人に1名のMRがリストラされた。次に企業統合から2年後に業績不振により、2回目のリストラが実施され、4人に1名のMRが会社を去っていった。私は、2回のリストラを免れ、現在は神奈川県内の重要施設の担当MRである。このことから、仕事運のみならず社内の対人運もアップしたと言える。
 
最後に家庭運・恋愛運はどうなっただろうか。沖縄研修から2カ月後、今の妻と入籍した。結婚してからずっと単身赴任生活が続いていたが、神奈川県への転勤をきっかけに週末婚から毎日婚になった。更に、近々第一子が誕生する。家庭運・恋愛運こそ、アップしていると言い切れる。
 
このように、金運をあげる開運旅行は、仕事運、対人運、家庭運・恋愛運をも急上昇させることになった。これこそ、私のベスト。トリップである。すっかり、吉方旅行のとりこになった私は、毎年、大開運旅行日に吉方旅行をすることにしている。
 
「旅行に行くなら、いつ・どこへ行きたいですか?」という質問に、私はすぐに答えることができない。なぜなら、ベスト・トリップの方位と日程は、年単位、月単位で変わってしまうからだ。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
青山一樹(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

三重県生まれ東京都在住
2023年4月人生を変えるライティングゼミ受講
2023年10月よりREADING LIFE編集部ライターズ倶楽部に加入。
外資系製薬会社の営業、MRとして働く
タロット占いで「最も向いている職業は作家」と言われ、その気になる
47歳からの男性育児奮闘記を書くべく、ライティングスキル磨き中

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2023-10-18 | Posted in 週刊READING LIFE vol.236

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