fbpx
週刊READING LIFE Vol,94

自分を知ることから始めよう《週刊READING LIFE Vol,94 コミュケーションには◯◯が肝心》


記事:和田誠司(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
コミュケーションでの悩み。これは人類普遍のテーマではないだろうか。アドラー心理学で有名なアルフレッド・アドラーは、
「悩みの90%以上は人間関係にある」
と言っている。私もその通りだと思う。では、コミュケーションをする上で、何が大切になってくるのだろうか。
それは、自分を知ることである。
「は? コミュケーションは相手が合って初めて成立するものでしょ?」
と思われる人もいるだろう。
ではどういうことなのか、私のエピソードを交えて解説したいと思う。
 
カチャカチャ。
いつものように自宅の静かな仕事部屋に、キーボードを叩く音だけが響いていた。黙々と仕事を進める自分に慣れが出始めたころ、私は、リモートワークでもしっかりと仕事をするもんだと自分を褒めていた。
資料作りを進めていると、
「ピコン」
打ち合わせ開始前を知らせるアラート音がなった。
「おっと、そろそろ打ち合わせだな。本当に朝から晩までやることは目白押しだな」
私は周りに誰も人がいないので、パソコンに語りながら、ZOOMの参加ボタンを押した。
「おはよう、ございます。本日もよろしくおねがいします」
私は元気よく挨拶をした。
そこからは、一時間ごとに次々とミーティングが入っていた。
ミーティング中に
「ピコン」
と次のミーティングを知らせるアラートがなる。
「お疲れさまです」
「こんにちは」
「もうこんな時間ですね。遅い時間にも関わらず、ありがとうございます」
と挨拶は変わっていき、カーテンを開けて外を見ると、あたりはいつの間にか、街灯を必要とする黒さが空を覆っていた。
この日は、お昼ごはんを食べることなく21時までずーとミーティングをしていた。
「さすがに、疲れたー」
と言いながら、リビングに降りていく。
「お疲れー、こんな時間まで大変だね」
と、私の労をねぎらってくれる、妻の一言が聞こえた。
「大変だね、こんな時間までミーティングなんて」
「そうなんだよ。今日なんてご飯も食べてないからね。リモートワークは移動時間ない分、分刻みでミーティングが入るよ(笑)」
「ごはんあるよ、食べたら」
「ありがとう。でも、まだ資料づくりが終わってないから、ちょっと昼寝をして、それを終えてから食べるよ」
カチャカチャ。
「ふーやっと終わった。さて、ごはんでも食べようかな」
と時計を見ると、23時をゆうに過ぎていた。
「こんな時間に食べても太るだけか。創太君(3歳の息子)の顔だけ見て寝よう」
私はひとつまみのナッツを食べて、お風呂に入って寝ことにした。
私はこんな働き方を5月から始まった。本来休みのはずのGWが一番忙しかった。
チクっと目に見えない何かが私の心に刺さった。しかし、この時の私はそんなことを気にもしなかった。まだ笑う余裕があった。まだ外に出ようとしていた。まだ寝ることができた。
 
心地よい春の風が終わり、少し長めの梅雨が明けようとしていたころ、私の心が晴れることはなかった。
カチャカチャ。相変わらず、黙々と仕事をしていたり、パソコンに映る人へ笑顔で話すことが続いていた。
このころには、保育園の送りを義父に頼むことも多くなり、一歩も外にでないことが当たり前になっていた。
ランチの時間もなく、打ち合わせやスマホのバイブが鳴り響き、電話をする日々が続いた。
「ピコン」「ブーン、ブーン」「ライン!」
機械音が私を動かすようになっていた。やばい、次のミーティングの資料を用意しないと、次の研修の準備をしないと。
ものごとの先を見据えて動く余裕などなく、その場でギリギリ準備をする。それでも減らない仕事、むしろ増えていく。
「世の中的には仕事が減っているはずなのに、私の周りは違うんだな。少し暇がほしいな。まぁ、仕事があるだけ幸せか。コロナ離職の方が怖いしな」
チクリ、チクリ、また私の心に何かが刺さった。しかし、この頃の私はそれを気づかないふりをしていた。会社が厳しい状況にあるいまだからこそ、仕事を頑張らないという気持ちの方が強かった。
チクリ、チクリ、ズブリ! 私はそんなものはどうでも良いと思い始めていた。
 
カチャカチャ。
「テロン」
メールを書いているそばから、また新しいメールが来た。
「なになに、Sさんからか。この人とのやりとりやなんだよなー」
それは私が社内で唯一苦手とするSさんからのメールだった。
SさんとはJ社とのやり取りで、かなり上手く言っていなかった。
Sさんと相談をした上で、ものごとを1つ進めていた。すると必ずSさんから、そのやり方は違うからやり直して欲しいというメールや電話が来ていた。J社のプロジェクトでそんなやり取りが3~4度続いたときに、このメールが来た。
イライラしながら、メールを読んでいた。内容としては、またプロジェクトのクライアントとのやり取りをこう変更してほしいという依頼が来ていて、メールの文面の最後には、
「和田さん、勝手に進めないで!!」
との文面が。
ブチン。私の中で何かが切れた。スマホを片手に、目は三角形の状態で、発信をした。
「トルルル」
「はいSですー」
Sさんが、いつもののんびりした口調で電話に出た。
カチン。私の怒りを促進してくれた。こっちとら、忙しい間をぬって電話しているのに、そっちは余裕ありそうだなと思ってしまったからだ。
「Sさん、なんですかこのメールの最後の文面。勝手に進めないで! ってどういうことですか。いつ私が勝手に進めましたか!!?」
はなからケンカモードの私。それに対してSさんは、
「いやー文面のとおりだけど」
あい変わらずのんびり
ありがとう。転職して以来、始めての怒りを提供してくれて。
「だからいつだって聞いてるんですよ!」
かなり口調は荒い。Sさんもそれを聞いてようやく察したらしい。こういう点を私に確認しなかったと、Sさんが語り始めた。
「こまけー。そんなこと気にしてたんですか?」
私の心の声は、生の声として出ていた。
「じゃあ私がSさんにどんな確認をしたか説明しますね」
私はSさんに常に確認していてそれをSさんが忘れていること、メールで3つのことを同時に伝えると、1つしか確認されないこと、期日は基本無視されることなどを伝えた。
ふー。ふー。怒ることはつかれることだ。私はSさんに向け20分くらいが止まらない。
最後まで聞き付けたSさんが
「ごめん。それは僕のせいだわ」
あれ、もっと反論がくると思ったが、意外に素直だぞ。(この心の声はもれていない)
「実は僕、心の病気かも知れないんだ。それで、この1年は細かいミスが連発してしまっているんだ。今病院に通ってるんだ。西洋系のアプローチと東洋系のアプローチと両方やっていて……」
この後も、Sさんは自分の状態を素直に話してくれた。
「それで和田さん申し訳ないのだが、もし僕が見逃していたら、今ぐらいきつく言ってほしい。そうしないと気が付けない状態なんだ」
私は15歳くらい年下の私に弱みを見せて、頭を下げるSさんの姿に感服した。お互い相談の上、対応策を考え実行することにした。それ以降、プロジェクトは嘘のように進むようになった。
Sさんは素直に自分の状態を見つめていた。しかし、私は……。
 
梅雨がやっと開けた頃、私の心は雷雨が続く。
私は、会社の人、友人、しいては家族までにあたりちらすようになっていた。
「和田さん、これミスしているよ。修正して」
会社の人からはミスを指摘されては、忙しいことを理由にその人に逆ギレをし、
「そんなことで怒るなよー」
と友人には言われ、
「ちょっと! 何よその良い方。絶対仕事にし過ぎでイライラしてるでしょ! 私にあたらないでよ」
と妻には怒られていた。私はちょっとしたことで、すぐに怒ってしまい、周囲とのコミュケーション不全を起こしまくっていた。
加えて、何もやる気が起きなくて、食欲もなく、熟睡することがなくなっていた。
私の心は棘だらけになっていて、私の心はとっくの前に不健全になっていたのだろう。
 
風呂上がりの鏡を見て、
「やば。なんだこのクマだらけの青白い顔は」
私はやっと自分の心の棘に気がついたが、手立てはみつからない。
 
それでも、仕事はたくさんあった。
「おはようございます。みなさん本日もお忙しい中お集まり頂き、ありがとうございます」
青白い顔を隠すため、ライトアップをした室内で、私はいつもどおり元気よく挨拶をした。
この日の研修テーマは
「自分とつながり、他者とコミュケーションをする」
その日は、私の以外に社外パートナーの心理カウンセラーを呼んでいた。
「それでは、専門的なことはAさんに伺いましょう。Aさんよろしくお願いします!」
私の担当パートを終え、Aさんに話を振った。
Aさんの話は何度も聞いているので、聞き流して資料でも作ろうかと思っていたが、そんな暇はなかった。
もう必死でメモをとった。忘れないために、必死で記憶をしようとした。手と脳がフル回転だった。
私は自分で企画した研修で、受講者以上に気づき、収穫を得たかも知れない。
一番は、今の自分の状態を抜け出せることを知れたことだ。
その方法はというと。
 
私はAさんの講義を聞いてから、まずは自分の状態を把握することから始めた。
心理カウンセラーの用語で、「モニタリング」というものだ。
今思っていることを思いつくままに書き出し続けた。自分でも驚くぐらいに、いろんなものが出て来る。
心の棘の正体は「不安」と「焦り」だった。不安と焦りを見せないために、周囲に当たり散らしていたのではないかと気づけた。
ではなぜ焦りや不安を感じるのか? これを知るために馴染みのコーチにお願いして、コーチングをしてもらった。すると、自分はアウトプットするか前に進んでいないと不安や焦りを感じるらしいということが分かった。後、無理してでも仕事をするのは、いろいろやって自分の幅を広げていきたいから。今の自分に居続けることが未来に不安があると思えてならないから。ということが浮き上がる。
そして、象徴的なのは「やりたい」と思い仕事を始めるが、自分のキャパを超えると「やらなければ」に言葉が変わることも分かった。
この気付きから、今では毎日自分タイムという時間を設けて、自分の状態や考えを出す時間を設けるようにした。
 
次に、Sさんと同じ様に周囲に話してみようと思った。Sさんの本音は私の心を動かしてくれたからだ。
初めに、一番親しい家族に打ち明けてみた。相談するとやっぱり親身に聞いてくれるものだ。妻が夏休みの間、子育ても忘れて、友人と遊んで来なというありがたい提案をしてくれた。
次に、友人に話をしてみた。友人も私の状態に違和感を持っていらしい。それで、夏休みに一緒に遊ぶことを快諾してくれて、真夏の温泉に行くことにした。ほったらかし温泉は本当に良かった。機械音がまったくない中で、自然に包まれ温泉に入ることがこんなにも癒やされんだと気がついた。
最後に、会社の何人かに打ち明けてみた。
すると
「俺のほうが大変だ!」「まだまだ大丈夫でしょ!?」
という愛のないムチをくれる人も居たが、
「大丈夫? どうしたの? だったらこうしてみたら」
と親身になって聞いてくれる人も居た。自分はひとりじゃないと知ることができた。
何より、自分じゃ出てこないアイデアがたくさん出てきた。自分ひとりで悩んでミスを連発していた頃が嘘のように、ものごとが進むようになったのだ。
 
皆さんいかがだったろうか。仕事や家庭が忙しくてイライラしたり、コロナのことが不安で知らない内元気がなくなってしまったり、相手のことが見えず疑心暗鬼になっていたり、それらが原因でコミュケーション不全をおこしてしまう、そんなことに思い当たるフシはないだろうか。
そんなとき、皆さんの心は棘だらけになっているのである。つまり、心が不健全の状態にあるのだ。心が棘だらけの状態で、人とコミュケーションをしても、普段よりは上手く行かない。するとますますコミュケーション不全が起きてしまう。そんなネガティブスパライルが回りやすくなってしまうのである。
では、どうすればよいのか。私は以下の3つのステップが必要だと考える。
 
1、 自分の状態を知る、モニタリングをする
2、 親しい人に打ち明ける、相談してみる
3、 その人達と一緒に解決策を考え、やりたいものやる
 
私もこの順番で心の棘を抜くことができた。
もし、自分の状態を知らない上で相談をしても、問題の本質には行き着くことはなく、何度もその人の時間を奪うことになるだろう。すると、自分も相手も疲弊してしまうのではないだろうか。
いきなり解決策を考えても同様で、心に棘だらけの状態だとろくなアイデアが出てこないだろう。
なので、ステップ1から始める必要がある。もし、コミュケーションで上手く行かないなとおもったら、いきなりコミュケーションを取ることから始めずに、まずは自分の状態を知ることから始めて頂きたい。これは簡単な日記をつけるだけでも良い。今自分がどんな感情を頂いているのか? それを見える化する必要があるのだ。見える化するだけでも、いくつかの心の棘は消えているのだ。私もやってみてびっくりした。
自分の状態や心の棘を知り、相談し、その中で出てきたアイデアを実行するだけで、かなりのコミュケーション不全を解消しているだろう。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
和田誠司(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

この記事は、人生を変える天狼院「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」をご受講の方が書きました。 ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325


■天狼院書店「シアターカフェ天狼院」

〒170-0013 東京都豊島区東池袋1丁目8-1 WACCA池袋 4F
営業時間:
平日 11:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
電話:03−6812−1984


2020-08-31 | Posted in 週刊READING LIFE Vol,94

関連記事