老舗料亭3代目が伝える 50までに覚えておきたい味

第42章 老けない食事、元気になる食べ方《老舗料亭3代目が伝える50までに覚えておきたい味》


2024/3/25/公開
記事:ギール里映(READING LIFE編集部公認ライター)
 
 
「あ、歳をとったな」
 
ふと鏡に映る自分を見て、愕然とする瞬間はないですか。
気づくと目尻のしわが増えていたり、ほうれい線が濃くなっていたり、はたまた白髪や抜け毛が増えていたり。それまではぽっこりお腹やダイエットが気になっていたけれど、それよりもなんとなく老けて疲れた顔をしていることに、もっとがっかりしてしまう。そんな年齢のベンチマークが50歳なのではないかと思います。
 
しかしそれも、男女で少し差があるかもしれません。
 
とくに女性は閉経を迎え、ホルモンバランスが不安定になりますから、それに伴い体調不良を訴えたり、気持ち的な不安定さを抱えたりします。いわゆる更年期というもの。どうがんばったって時間はすぎていきますし、エイジングを止めることはできません。それは男性も同じこと。歳と共に体力が衰え、皮膚のハリや筋力も衰え、ますます老化していく自分を感じて、なんとも言えない気持ちになることもあるでしょう。
 
しかし同じ年齢でも、生き生きと元気で若々しい人もいれば、すっかり老け込んで生気のない人もいる。この違いを分かつものは一体なんでしょう。
 
もちろん、仕事や家庭の環境で大きなストレスを抱え込んでしまえば、その精神的、肉体的なダメージは相当です。苦労している人が他の人よりも老けて見えるのは仕方ありません。しかしそうでなくてもやはり、若々しく元気いっぱいの50代がたくさんいます。彼らの秘密は一体どこにあるのでしょう。
 
もちろん、食べ物だけがその理由ではないですが、今日は食、食べ物、食べ方の視点から、若さを保つ秘密を紐解いていきます。
 
 

何を食べるか、より何を食べないか


「何を食べたらいいですか」
と思うかもしれません。しかしそこを考える前にまず、体に入れないほうがいいものを知っておくことです。私たちの体というものは、100%食べたものから作られていますから、今の体の状態を作っているのは過去に自分が食べてきた食べ物です。もし、自分の体を変えて行きたいと望むのであれば、これまで食べてきたもののなかで、自分にとっていらないものをやめることが先。それが体に入り続けている状況がある限り、どんなにいいものを食べてもその効果を発揮することはありません。
 
 
食べないほうがいいものの筆頭は、ずばり添加物です。
「そんなこと言われたら、食べるものがなくなってしまう!」
と言われるのですが、やはり添加物の摂取が多ければ多いほど、体にとっては負担になります。
 
添加物とは、食品添加物、香料、着色料などのことです。
日本においては厳しい基準を満たしたものだけが認可され、使われていると言われていますが、日本の歴史のなかでは少なからずの添加物が、後からその毒性が見つかり、使用停止になったこともあります。また日本では認可されていても、海外では禁止されているというものもあるぐらい、とても基準が不確かなものであります。
 
これらの添加物は、いわゆる化学物質です。原材料はさまざまですが、それらが化学的に合成され、作られています。つまり加工されているわけです。ということはつまり、自然界には存在しえない物質である、ということです。
 
人間も動物の一種ですから、どんなものでもブラックホールのように消化できるわけではありません。地球上、自然に存在するものですら、全てを無事に消化できるわけではありませんので、ましてや化学的に、人工的に作られたものを、全部安全に消化吸収できるとは、決して証明されているわけではありません。
 
現状として、添加物は危険、と言い切ることもできませんが、また安心と言い切ることもできない、というのが、業界の理解となっています。
 
社会や法律の基準がどうであれ、いわゆる自然界に存在しないものを、人間がいつまでも大量に消化できるとは思えません。
 
日本人は一般的に、一人当たり一月平均4キロ〜の添加物を摂取していると言われています。これが現代人の数々の疾患に結びついているという研究結果はないものの、その摂取量を考えると、いかに体が大変な思いをしてそれらを消化吸収しようとしているかを思い知ります。つまり、体はがんばって、なんとかしようとしてくれている。普段よりも大変な労力をかけて、消化吸収しようとしてくれているのですから、そりゃ体の老化が進むのも理解できるというものです。
 
 
今の日本で、添加物を一切とらない生活はもはや、できるものではありません。
 
なぜなら、どれほどラベルや表示をみて、添加物の表記がないものを探しても、現状表示義務のない食品も多くあります。つまり表示にないからと言って、添加物を使っていないとは限らないのです。どれだけの添加物が使われているかを正確に把握することは、私たちには無理、という今の世の中で、とにかくなるべく避ける、という努力を少しでもしておくしか、打つ手はありません。また努力だけでなく、なるべく添加物が含まれていないものを選ぶ習慣を持つことが必要です。
 
なぜなら、自分が無意識のうちにどんどんと老化が進む、なんてことは避けたいですよね。そのため、なるべく自然のものを選ぶ、加工品は選ばない、せめてラベルを見る、ということを、日常の中で取り入れてみていただきたいと思います。
 
 

できるだけ避けたい食べ物3選


人工的な物質ではなくとも、避けたい食べ物はあります。
その筆頭に、砂糖があります。砂糖があまり体にいいものではない、という理解がここ10年ぐらいでかなり進みました。砂糖、糖質、糖分など、呼び名はいろいろで混乱しますが、ここではいわゆる砂糖、つまり白砂糖、三温糖、グラニュー糖、ブドウ糖液糖といった、甘い調味料、甘味料としての砂糖のことを言います。
 
100年前の日本では、砂糖は貴重なものでした。お菓子などの甘いもの自体が存在しなかったので、果物や穀物の甘味、みたいなものは貴重で尊ばれました。しかし西洋の文化が入ってきてから大量の砂糖がもたらされ、何にでも砂糖を入れる文化が生まれました。
 
砂糖といえば、ケーキやクッキー、チョコレート、和菓子などに入っているのはもちろんですが、ケチャップやウスターソースといった調味料、そしてカレーのルゥやシチューなどレトルト、ラーメンやうどん、ハンバーガーなどのファストフードなど、甘い味がしないものにまで大量に入っています。つまり私たちは、知らず知らずのうちに大量の砂糖を食べてしまっているということが起こっています。
 
適量の砂糖、糖質はカロリーとなり、脳の栄養となり、体の機能を助けてくれますが、量が増えるとその限りではありません。100年前と比べると食文化が大きく変わった日本ですから、その変化に伴い、より多種多様の食べ物を消化しなければならなくなっただけでなく、砂糖の摂取量も鰻登りに増えています。
 
まだ西洋諸国に比べたら、日本人の1日あたりの砂糖摂取量はそれほど多くないと言われますが、それでも昔の日本と比べたら、まったく食べていなかったものを毎日大量に食べているわけです。砂糖のとりすぎは血糖値の乱高下を起こしたり、また代謝産物を生みやすいので血液が汚れがちになります。そして炎症を起こしやすくなりますので、アレルギーや鼻炎も引き起こしやすくなる。もちろん虫歯にもなるし、体重増加にもつながりやすい。
 
少しの砂糖は楽しみや息抜きにもなりますが、それを毎日大量にとり続けるという生活習慣を持っていることで、体の老化は残念ながら促進されていきます。
 
 
2つ目は、油。
 
油といっても、酸化した油です。
私たちの体は「酸化」から老化が促進されてしまいますので、なるべく酸化したものは体に入れたくありません。
 
油はとても酸化しやすい食材です。
 
油には植物性、動物性があります。また飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸など細かい分類があります。そしてそれぞれ酸化のしやすさが異なります。
 
中でも酸化しやすいのがオメガ3系と言われる油で、植物性の油、エゴマ油やアマ二油はその筆頭です。入れ物を開封したらすぐに酸化が始まってしまうぐらいに繊細な油ですので、体にいいと思ってたくさん摂取する方もいらっしゃいますが、その鮮度にはとにかく気をつけていただきたい。
 
また油は、加熱することで参加します。
そのため、揚げ物、それも揚げてから時間が経ってしまったものは要注意です。
 
ファーストフードで食べるフライドポテトや揚げてあるスナック菓子などは、揚げてから時間が経ってしまっているため、かなり酸化している可能性があります。こういうものを毎日常習的に食べているという状況があると、それはどうしても体に負担になります。
 
しかし、油全部が悪いといっているわけではありません。
 
油は、細胞膜の原材料でもありますし、またホルモンを作る材料でもありますから、全く摂らないことは却って体の老化に繋がります。そのため、質のいい油を、適量しっかり摂るという食べ方が最高です。
 
揚げ物系のお惣菜を避ける、スナック菓子を食べないようにするだけでも、かなりの酸化油の摂取を削減することができます。
 
 
そして3つめ。
 
お肉。鶏肉、豚肉、牛肉などの、動物性のお肉です。
一切食べるな、と言っているわけではありません。お肉は旨みもありますし、またタンパク質やビタミン、ミネラルなどの栄養分も豊富ですから、これらが危険と言っているわけでは
ありません。但し食べる上で気をつけないといけない要素がいろいろとあります。
 
まず動物性の脂は、人間の体温よりも溶ける温度が高いので、私たちが消化するためにはものすごく労力を使います。つまり、疲れるわけです。
 
またお肉の飼育過程で使われる薬品についても注意が必要です。
飼育過程においては、病気にならないように抗生剤を使ったり、また成長を促進するためにホルモン剤を使うことがありますが、これらの薬品は動物の体内に残留します。その数値は公表されていませんので、何がどれぐらい含まれているのかはわからないのですが、昨今その辺りを危惧している方も多い。欧米諸国では動物愛護の観点から動物の飼育環境にまで配慮が行き届いていますが、日本ではまだまだそこまで至っていません。
 
そして、動物の飼料についても注意が必要です。
日本では家畜の多くはとうもろこしや大豆のカスを餌として与えられています。これらを与えると早く大きく生育するため、経済効率のなかで選ばれている飼料なのですが、これは決して動物の本来の生育を促すものではありません。
 
さらに言うと、それらの資料は遺伝子組み換え食品でもあります。
アメリカなどから輸入されている大豆、とうもろこしは9割以上が遺伝子組み替えで、そしてそのほとんどが動物の飼料と加工食品用、工業用に使用されています。
遺伝子組み換えについてはかなり前からさまざまな議論が交わされていますが、なかなか決着がついていないのも事実です。しかし今、日本で手に入る食べ物はどんどんと加工度が進み、加工品の材料として使われるものとして、これらの大豆やとうもろこしが輸入されているという現状があります。
 
本来牛は、草、それも牧草を食べる生き物です。しかしカロリーの高い大豆やとうもろこしを与えることで、必要以上に脂肪がついたり、臓器に負担がかかったりします。その脂肪が美味しい、という評価もあるかもしれませんが、やはりこれも添加物同様、自然の法則からはかけ離れてしまっているということが、結果としてその肉を食べる人間たちの、消化の負担になっているということなのです。
 
そのため最近では、グラスフェッド(牧草を食べて育った肉)を好んで買う方も増えてきました。10年前なら「こだわりすぎ」と言われ、相手にしなかったような人たちでも、今では気にして選ぶ、という選択をする人も少なくくないことは、これらの肉が一般的にも売られているという現状からも見て取れます。
 
果たしてこれらの食べ物がどれぐらい影響を及ぼすのかは、はっきりとした調査結果があるわけではありません。これらの食品が流通してからの歴史がまだ浅いので、長期間に基づく調査というものがまだ存在しないのです。またもっと言えば、同じ一人の人間で、これらを食べ続けた場合と、これらを食べなかった場合のビフォーアフターを比較することは不可能なわけですから、あくまでも”そのようなことが言われている”という状況ではあります。
 
 

体は魂の乗り物、大切に扱えば長持ちする


危うきには近づかず。
不確定な要素にはなるべく近づかないというのは、自分の身を守るためにも有効な考え方です。
これらの食品の一つ一つの効力がいかほどのものかは不明ですが、小さい工夫をなるべくたくさん施すことで、確実にそれらは結果に繋がります。
 
人間の体というのは、とても繊細である反面、ものすごく頑丈でもあります。また環境や時代の変化に伴って、進化、退化していくものです。
 
歴史の変化に伴って、消化能力や骨格、姿勢など、さまざまな体の機能は変化し続けています。例えば、噛まない食事が増えてきたために顎が小さくなる、とか、狩りをしなくなったから筋力が衰えてきた、とか、その時代背景により体は順応していきます。
 
しかし、老化についてはその限りではなく、確実に時間は、全ての人に平等に与えられ、過ぎ去っていくものです。その時間の使い方をどう選択するか、により、体という魂の乗り物が、どれほど丈夫に長持ちするかは決まります。
つまり、大切に扱えば扱うほど長持ちするし、粗末に扱えば扱うほど痛みが激しく、長持ちしない、ということです。
 
 
食べることは毎日のことですから、1回1回のインパクトは小さくても、その毎日の、そして何年にも及ぶ積み重ねは、ものすごく大きなダメージになりかねません。
 
そのためにまずは、体にダメージを与えるものを、少しでもいいので減らしていく努力、そしてそれを習慣化する力を、さすがにこの歳になったのですから、持ちたいものです。
 
 
《第43章につづく》
 
 

□ライターズプロフィール
ギール里映(READING LIFE編集部公認ライター)

READING LIFE編集部公認ライター、世界一やさしいSNS軍師、食べかた研究家。京都の老舗料亭3代目として生まれ、現在は東京でイギリス人の夫、息子と3人ぐらし。食べることが好き、が仕事になり、2015年にゼロから起業。一般社団法人食べるトレーニングキッズアカデミー協会の創始者。2019年には書籍「1日5分!子どもの能力を引き出す!最強の食事」、「子どもの才能を引き出す!2ステップレシピ」を出版。

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