週刊READING LIFE vol.15

75×25のしあわせ、いかがですか?≪週刊READING LIFE「文具FANATIC!」≫


記事:みずさわともみ(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

 
 

「作品観ながら、メモ取ってるの?」
監督は私に聞いた。
「三度目の殺人」という映画のティーチイン(監督と作品について話のできる)イベントに、私は来ていた。
席は、なるべく前の方を選ぼう。
だって、後ろから監督に話しかけるとしたら、どれだけ緊張するかわからない。
私は、運良く前から2列目に席を取れ、監督に質問をすることもできた。
その時に最初に監督がおっしゃったのが、私のメモについてだった。

 

私は、昔からメモが好きだ。
映画を観るとき、ライブに行くとき、人の話を聴くとき。
私はうずうずする。
書き残したい!!
そのため、バインダーとA4の紙を普段から持ち歩き、たとえその場が暗くても、なぐり書きになっても、その紙に書き残すということをしていた。
そして去年私が運命的に出会ったのが、「ふせん」だった。

 

あるセミナーの講師の方がおっしゃった。
「気づきは『ふせん』に書いていきましょう!」
ん?
「ふせん」って、ここが重要ですよ、とか、目印に使うんじゃないの?
一瞬思ったが、言われた通り「ふせん」に、メモをすることにした。
するとどうだ。
これ、めっちゃ楽しい!!
私は、もともと手触りフェチなところがある。
ふわふわしたもの、すべすべしたもの、つるつるしたもの。
そういう、さわって楽しいものが好き。
「ふせん」は、はがした時の感覚が、グッとくる。
グッと、というか、グイッとくる。
A4の紙に直接書く代わりに、私は「ふせん」を1枚、かたまりからグイッとはがし、A4の紙に貼る。
うわぁっ! これ発見! って思うものと出会う。
「ふせん」に書く!
はがす。気づく! 書く!
このくりかえしが、言うならば餅つきのように楽しくなってくるのだ。
もちに杵を下ろす、杵を持ち上げる、水でちょちょいとやる、のくりかえしのように徐々にリズムを持ち始めるのだ。
講義などでノートを取るとき、聴くだけの受け身になっていると感じることってあると思う。
けれど私は、「ふせん」で軽めのスポーツをしている感覚になるのだ。
そこには、書きたい! を満たしてくれるだけでなく、グイッとした心地よさも伴う。
この「ふせん」をはがした数が多いほど、私はそのときの学びが楽しかったということなのだ。
それを、学んだ時間が終わったとき、一目で実感することも、体感することもできている。

 

もともとの、講師の先生の説明はこうだ。
ふせんを使うと、自分の感じた「発見」や「思考」を立体的に浮き上がらせることができる。
あとで見返したとき、平面的なノートだと、どこが重要かわからない。それが「ふせん」だと、立体的なため、主張してくるのだという。
たしかにやってみると、1枚1枚が何か、うったえかけてくるように感じられる。
そして、アイデアや考えなどを書き出すときにこれを使うと、自分のアウトプットしたものを簡単に整理することもできるのだ。
どういうことか?
たとえば、これからやりたいことは何か? を書き出す。
それを取り合えずバーッとどんどん「ふせん」に書く。
そこから、今度は分類する。
すぐやりたいこと、近々やりたいこと、いつかやりたいこと。
「ふせん」を使うと、好きなところにさっき書いたものを簡単に移動させられるのだ。
実際やりたいことをやり終えたら、終わったこと、という場所を作ってもいい。
同じように、「ふせん」を使ってアイデアを出し、すぐ使うもの、今は使わないもの、と分けたりするのもノートなどに書き直すよりとっても楽なのだ。
それをやるには、75mm×25mmの「ふせん」がちょうどいい。
手にいい感じにフィットして、はがす感覚もよくて、気づきやアイデアを書くのにピッタリなサイズだ。
そういうわけで、私は最近、「ふせん」にぞっこんだ。
かばんに「ふせん」が入っていないとそわそわし、実は奥の方にあったと気づくとものすごくほっとする。
ゼミ仲間に「ふせん」を貼りまくった紙を「おもしろいね」なんて言われると、
すてきでしょう?
と、恋人をほめられたような感覚になる。
こうなるともう「ふせん」は、貼ってはがせても、切っても切れないものなのだ。
ただ、この恋人、ちょっと取り扱いに注意が必要だ。
A4の紙に貼りまくったあげくそのまま放置したりする(ポケットバインダーに入れ忘れる)と、たいへんなことになる。
見るも無惨にかばんの中で折れ曲がってしまったりするのだ。
大切にできてなくて、ゴメン。
そっとその折れ曲がったところを整えながら、ファイルする。
見返しながら私は、字の書きなぐってある「ふせん」を愛しく思う。
私の情熱のあかしだ……。
次は、どんなことを「ふせん」と一緒に学べるだろう。
そう考えるとまた、楽しくなるのだ。
今日もまた、文具コーナーへ行こうかな。
仕事もまだ始まっていないのに、心はすでにスキップで、「ふせん」売り場に向かい始めている。

 
 

ライタープロフィール
みずさわともみ(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
新潟県生まれ、東京都在住。
大学卒業後、自分探しのため上京し、現在は音楽スクールで学びつつシンガーソングライターを目指す。
2018年1月よりセルフコーチングのため原田メソッドを学び、同年6月より歌詞を書くヒントを得ようと天狼院書店ライティング・ゼミを受講。同年9月よりライターズ倶楽部に参加。
趣味は邦画・洋楽の観賞と人間観察。おもしろそうなもの・人が好きなため、散財してしまうことが欠点。
好きな言葉は「明日やろうはバカヤロウ」。

http://tenro-in.com/zemi/66768


2019-01-14 | Posted in 週刊READING LIFE vol.15

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