週刊READING LIFE vol.17

飽き性の私が計3回クリアした、泣けるRPGゲームとは!?《週刊READING LIFE vol.17「オタクで何が悪い!」》


記事:村山千尋(READING LIFE ライターズ倶楽部)
 
 
皆さんはゲームというと、どういう印象をお持ちだろうか?
 
頭悪くなりそう、暗い人がやってそう、廃人になりそう、等様々なネガティブイメージを持っている人も多いだろう。
 
実際自分も、親や兄弟や友達の影響で多くのゲームに触れてきたが、ほとんどすぐに飽きてばかりだった。続きが気になってゲームを区切りのいいところまでは夢中でプレーするのだが、クリアした後はせいぜい15分浸れるかというくらいの軽い達成感と虚無感、疲労感や罪悪感に襲われる。もちろん私が今までプレーしてきたゲームの質が悪いと言っているわけではない。
ここで言いたいのは、自分は『ゲーム』が好きな人間ではないということだ。
 
こんな自分でさえ、10年以上の時を超えて夢中にさせたゲームを紹介しようと思う。
 
そのゲームは『MOTHER』といって、ゲームボーイでプレーできるゲームだ。
ゲームのジャンルとしては『RPG』(ローイングプレイゲーム)で、ストーリーがあり、立ちはだかる敵と戦い、成長していきながら物語を進めていくゲームだ。アクションゲームが最終ステージをクリアしたら終わるように、RPGゲームは手順に従って物語を進め、物語が終わるとゲームが終了する。
 
MOTHER1と2は1990年代につくられており、1996年生まれの私からすると世代ではない。父親が持っていたため、世代でない私もプレーすることができた。私の世代やそのあとの世代の人たちは『スマブラ』(大乱闘スマッシュブラザーズ)というゲームで、MOTHER2の主人公ネスが出てくるので、そのゲームだと認識していただきたい。
 
MOTHERは全部で3つのシリーズが出ており、私はMOTHER1~3をすべてプレーしたのはもちろんのこと、それぞれを小学校、中学校の時期に2回以上クリアしている。
さらに、私の一番好きなMOTHER2に至っては、この年末年始に家に籠ってわずか4日で3度目のクリアを果たした。(通常クリアには合計30時間ほどかかる。以前クリアしたときは1か月近くかかった)
 
それほどまでにプレイヤーを夢中にさせてやまないMOTHERシリーズの魅力は何だろうか? 私はいくつかのポイントでMOTHERシリーズの魅力を説明する。本当はシリーズ全てについてお話ししたいのだが、読者の皆さんが飽きてしまうといけないので最近クリアしたMOTHER2の魅力について語ろうと思う。
 
 
 
MOTHER2の大好きなポイントは3つある。
 
私が好きなポイントの1つ目は、このゲームには程よいムダがあるところだ。
 
MOTHER2で一番私が楽しんでいたことは、町を歩き回って人に話しかけることだった。
MOTHER2には10以上の町や村、場所(町や村で表現できない場所もあるため敢えて場所と表現した)が存在しており、そのすべてに人や動物(サルがしゃべる場合もある)が存在している。そして話しかけるとそれぞれが思い思いのことを話す。
 
町の人はクリアに必要な情報を教えてくれる人もいれば、ただ単に意味のないことを言ってくる人もいる。それが楽しくて、すべての町のすべての家に入り込み、すべての人に話しかけてしまう。町の人の発言には、メインストーリーと関連した意図がない面白いものが結構ある。例えば、ある町のホテルのラウンジにいるサラリーマン風の町人は、最初は子どもの主人公を適当にあしらうような発言をしていたのに、何度も話しかけると根負けして50ドルをくれる。(ちなみにこの世界では、敵の数と強さに応じてお金が入る仕組みになっており50ドルは比較的すぐに稼げる額である)
 
また、クリアには関係のないサイドストーリーも充実している。町を歩き尽くさないと見つけられないような隠れ家があったり、広大な砂漠の中で、たった1ピクセル(モニターで画像を表示するときの色情報の最小単位)程しかない黒ごまと白ごまがラブストーリーを展開したり。クリアには全く関係のない要素だけど、夢中になってしまうのだ。
 
もう1つは、シュールさだ。
 
この物語はまっすぐでありながら、時々笑ってしまうようなシュールさを兼ね備えている。
例えば、この物語では発明家の、あるキャラクターが重要な役割を果たしている。そのキャラクターは様々なものを作って、その発明品は物語を進める重要なカギとなってきたのだが、その発明品がまたシュールで仕方がない。ネタバレを最小限に抑えるため、1つだけ紹介する。最初に作ってくれたのは『タコけしマシーン』というものだ。これを読んでいる皆さんのきょとんとした顔が目に浮かぶ。訳が分からないだろう。
これは、タコの形をした物を一瞬にして消し去る、ただそれだけの装置だ。物語では、いかなければならない場所に続く道をふさぐタコの置物がある。それに向かってこの装置を使うとあらふしぎ。タコの置物が一瞬にして消え去り、物語を進めることができる。
 
また、この物語の主人公ネス(自分で名前を決めることもできる)はかなりのマザコンだ。
物語では、主人公は町の不良を退治したり、ゾンビをうちのめしたり、恐竜を倒したりと、かなり勇敢に成長していくのだが、たった1つ克服できないのがホームシックだ。
 
ゲームのデータ保存は物語に出てくる公衆電話でできる。そこからママにも電話をかけることができるのだが、主人公はしばらくママの声が聞けないと、戦いの最中でも「家が恋しくなった」「戦うのがむなしくなった」といってホームシックに陥る。仲間の中で一番強い主人公が戦えなくなったらこっちとしてはかなりの痛手である。一度、かなり強い敵を倒さなければならなかったときに主人公がホームシックに陥り、私自身とても痛い思いをした。データの保存は電話でパパがしてくれるのだが、私は保存よりも、主人公のママへの電話をこまめにすることを覚えた。
 
また、本記事の写真になっているこのキャラクターは『どせいさん』といって、サターンバレーという場所に生息している生き物だ。戦闘相手ではなく、話しかけることができる。口癖は「ぽえーん」と「ぶーぶー」だ。『どせいさん』は可愛すぎて、MOTHERプレイヤーではない私の母にも人気のキャラクターである。こんな愛くるしい生き物が出てくるところも、シュールで愛すべきMOTHER2の大好きなポイントだ。
 
最後に、MOTHERシリーズ全てに当てはまる魅力を紹介しよう。
それは、人同士の助け合いや友情、愛情が描かれているところだ。
ゲームは通常楽しさや、わくわく、スリルなどを味わうことが多いと思われるが、このMOTHERシリーズは全て泣ける。本当に。
 
助けた人たちに、また別の町で助けてもらったり。
お腹がすいた人に食べ物をあげた恩で、疲れた時に宿を提供してくれたり。
そして何より、無償の愛情を注ぐ主人公や仲間たちの家族や友達の存在がある。
 
どこか懐かしさを感じさせるノスタルジックな音楽とともに、登場人物たちの愛と友情を振り返る場面が必ずあるのだが、それが涙を誘う。
全てを包み込むような愛情で、敵でさえもいとおしく思えてしまうような、こんな暖かいゲームは他には無いだろう。
 
最近になって知ったのだが、このゲームはほぼ日の糸井重里さんがデザインしたものだという。このゲームを作ってくれた、糸井さんを始め、スタッフの方々には本当に感謝している。
 
MOTHERシリーズ、ありがとう!!
 
 
 

❏ライタープロフィール
村山千尋(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
生まれも育ちも新潟県新潟市。大学は仙台で、就職は東京。
趣味はカラオケでaikoとあいみょんが大好き。
現在大学4年生で、大学最後の時間を使いライティングの勉強をしている。

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2019-01-28 | Posted in 週刊READING LIFE vol.17

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