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ワイン・ゼミ1DAY講座レポート

「上手に酔う」ためのワイン・ゼミ1DAY講座! CHEESE STANDさんとコラボレーションSP!【第2部】チーズ編 レポート


2022/07/25/公開
記事:河瀬佳代子(READING LIFE編集部公認ライター)
 
 
【第1部 ワイン編はこちら
 

第1部 ワイン編に続き、第2部チーズ編では今回のワインゼミでコラボしていただきました「CHEESE STAND」の藤川真至氏より開業に至るまでのエピソードをお話しいただきます。そして会場でデモンストレーションも行っていただけることになりました!
できたてのモッツアレラの魅力とともに、素敵なお話をお届けします。

 
 

<講師プロフィール>



藤川真至(ふじかわ・しんじ)
1981年岐阜県生まれ 大阪外国語大学イタリア語学科卒
大学在学中にバックパッカーで世界を回っていた時にナポリピッツァに出会い現地にて修業、北イタリアにてチーズ作りの基礎を学ぶ。名古屋にてピッツァ職人をしたのち、2012年渋谷に「出来たてのフレッシュチーズが味わえる」をコンセプトにした「CHEESE STAND」を開業。2022年、尾山台に熟成チーズ工房をオープン。2022年6月4日に開業10周年を迎える。

 
 

「みんなと同じことはしたくない」青年が、夢を実現するまで


岐阜県の片田舎で生まれました。小さい頃、土曜の昼や日曜の朝に家族がピザトーストを作ってくれていました。1980年代だとスライスチーズくらいしかなかったと思うんですけど、チーズが大好きな少年でした。
 
高校時代に料理の専門学校に通うか大学に行くかで迷った時「大学に行きながらでも、夜間の料理専門学校にも通えるかな」と思って大学を選びました。
イタリア語学科を選んだ理由は「もし将来料理をやるんならイタリア料理をやりたい、イタリアの文化も学べる」と思ったからです。大学時代はラグビーと飲み会、そして魚市場のバイトに打ち込んで楽しく過ごしました。
 
基本天邪鬼で、みんなと同じことをやりたくない、新しい価値を生み出したいことが根本にあります。
 
2004年、ネットがまだADSL回線で、ネットカフェが街にやっと数カ所あるくらいのころ、バックパックの旅に出ました。
大阪から船で中国・上海に出て、そこからモンゴル、ロシア、東欧、モロッコ、イタリアなどを訪問しました。
 
イタリアに着いたら料理がやりたくなり、ナポリのピザ屋で3ヶ月ほど飛び込みで修業をしました。イタリア語もそんなにできないし、ナポリ弁もわからない。一旦断られたんですけど、次の日から働かせてもらいました。みんないい人たちでした。
写真家・藤原新也さんの写真が衝撃的で、その影響で最初はインドとトルコに行こうと思っていたのに、結局イタリアが楽しくて現地で料理を習ってしまいました。
 
アマルフィから少し行ったところにパエストゥムというところがあります。古代ギリシャの遺跡や文化が残っている土地です。水牛の産地でモッツァレラも作っています。
 
ナポリピッツァはモッツァレラを使います。パエストゥムから電車で1時間くらい行くとあちこちにチーズ工房があって、そこの毛むくじゃらのおじさんたちが作る出来立てのチーズを食べさせてもらいました。それがとても美味しかった。
 
そのあとは北イタリアのアルト・アディジェ地方、スイスの最北端、イタリアとの国境に移動しました。WWOOF(ウーフ)、労働力を提供する代わりに宿と食事を出してもらう「農業体験と交流のNGO」を使って南チロルと呼ばれている地域の酪農家に住み込み、まさにハイジの世界の中でチーズ作りを教わりました。
 
帰国後に渡航経験を生かして、卒論「イタリアの水牛モッツァレラ」を書いたんですが、その時に訳したイタリア語の文献は今でも自分の血肉になっています。
 
途中でバックパックの旅が入ったために6年かかって大学を卒業し、名古屋のレストランで働いた後、赤坂のドーナッツ屋でマネージャーをしました。その後牧場でのチーズ作りを経て、2012年に開業します。
 
 

「街中でできたてのチーズを気軽に楽しもう」を広めたくて


CHEESE STANDオープン当時のチーズの現状はどうだったか。そもそも「出来立てのチーズが美味しい」という概念すらなかったと記憶しています。もしできたてのチーズを食べることができたとしても北海道のような遠方や、牧場と工房が隣接するところしかなくハードルが高かった。スーパーに並んでいるものは、イタリアから何日かかけて届いたものですから出来立てではありません。
 
モッツァレラの生産量は上がっていて、1998年に750tだったものが2008年には2,100tになっています。当時大手メーカーさんがモッツァレラを作り始めたのもありますし、ピッツァの店が増えてきたのもありました。そんな現状を見ながら「これならなんとかなるかな」と思い、満を持して2012年に渋谷区の神山町にチーズスタンドを開業しました。
狭い店内ですがチーズ工房を作りました。今は手狭になったので、工房を別に移してやっています。
 
渋谷って文化や情報の発信地ですよね。ビジネスと住居とエンターテインメントが混在して様々な人が集まります。渋谷に開業した理由はとてもシンプルで「フレッシュチーズは出来立てが一番美味しいので、多くの人に食べて欲しい」からです。
 
チーズスタンドという名前の由来ですが、ガソリンスタンドやミルクスタンドのように「街中でふらっと立ち寄れる」イメージ、チーズを身近にしたいという想いからです。
 
会社名は「(株)nobilu」にしました。
チーズが伸びる、あとは会社も成長するようにということで命名しています。
イベントでチーズを練ったり、絵本で「モッツァーマン」というのをやったり、レシピカードを作ったり、オウンドメディアも運営したりしています。
 
2012年に創業したころは日本には166のチーズ工房がありましたが、2018年には319工房、今は350以上の工房があります。
日本人の2018年の年間チーズ消費量は2.6kgと上がっていて、日本のチーズを取り巻く環境がこの10年で様変わりしたのがよくわかります。
 
 

それは午前3時の生乳から始まる ~チーズ工房の1日~



 
開業から10年間毎日欠かさず、定休日以外は富ヶ谷の工房に午前3時にタンクローリーで生乳が届きます。午前3時というのはかなり早い時間ですが、当日作ったチーズをお届けするために、どんどん時間が早まって3時になりました。
 
東京都清瀬市の酪農家と契約して、生乳を取り寄せています。生乳は「チーズバット」という大きなタンクに入っています。毎朝平均して400〜500L調達しています。
清瀬市には6軒の酪農家があります。住宅街の中にある酪農家のため、皆様さまざまなご苦労がある中で餌もこだわって丁寧に生産していらっしゃいます。そこから毎朝牛乳をいただいています。
 
意外と知られていませんが東京の牛乳は質が良くて、全国の大会で脂質や栄養成分の点でベスト10に入るくらい良質なんです。
 
 

Buon appettito! モッツァレラチーズ実演 ~できたてを召し上がれ~


天狼院カフェShibuyaの店内にて、モッツァレラの実演&試食を行いました。
 
(1)乳酸菌を入れてレンネット(固める酵素)を入れます(①)

 
 
(2)大きなたらいに塩を入れたお湯を90℃に沸かし、その中に①を入れます。チーズの元の、カードができます。

 
 
(3)とても熱いですが頑張って棒で混ぜて練っていくと糸状になり、艶が出てきます。繊維を作って、繊維と繊維の間にお湯を練り込んでいくイメージです。

 
 
(4)縦の繊維をひとかたまりにして、丸めます。


 
 
簡単そうに見えるんですけど、ぷるん、つるんとさせるのはとても難しい作業です。牛乳が伸びてチーズの表面がツヤツヤになります。
 
この日の試食のチーズです(画像手前のチーズから反時計回りに紹介)

 

<モッツァレラ>

「手で引きちぎる=モッツァーレ」というイタリア語が語源。イタリア発祥のフレッシュタイプのチーズです。どんな料理でも合い、加熱すると伸びるのが特徴。
食べる30分くらい前(夏場だと15分前)に冷蔵庫から出して常温にしておくと、鼻に抜けるミルクの香りが出ます。モッツァレラ独特の繊維を感じるには大きく手で裂いたり、ナイフだったら櫛形に切るのがおすすめです。
 

<リコッタチーズ>

ほろほろしているフレッシュタイプのチーズです。ミルクの優しい甘さ、砂糖は入っていない。ホエイ(上澄)を煮詰めて作ります。「再び煮る=リコッタ」が語源です。クセがなく、低カロリー・高タンパク、脂肪分が少ないのでさっぱりしています。
 

<さけるモッツァレラ〈KURATA PEPPER味〉>

カンボジアのブラックペッパーが周りについて、パンチがあります。赤ワインやビールにも合います。モッツァレラと同じ製法なので熱すると伸びます。そのままでも料理に使ってもよいです。裂くと表面積が増えるので、また違った食感が楽しめます。
 

<東京白やなぎ>

先日開業10周年を迎え、節目ということで熟成チーズを始めました。この3月に発売されたばかりの商品です。
酸凝固タイプのチーズ。作りたてはほろほろして酸味が強めです。チーズ自体に酵母を使っていますので乳酸菌を主体にして発酵し、熟成が進むのが特徴です。フレッシュタイプのチーズとはまた違う、熟成が進む楽しさを感じられます。
「東京白やなぎ」の名前は、熟成チーズを作るのにこのチーズを作った熟成士・柳平孝二さんの名前から取りました。
 

 
参加された皆様からの感想です。
・モッツァレラはそのまま食べるのか、塩をつけて食べるかで全然違ってきますね
・リコッタチーズを季節の果物と一緒に白和えにしてもいいと思う。料理とワインの幅も広がると思います
・どのチーズもおいしかったです。塩味と甘味が両方あったので、口当たりがよいです
・チーズの甘さが控えめなので美味しい
・ワインとの取り合わせが良く、幸せな気持ちになりました
 
今回はワインとチーズを4種ずつ組み合わせて試飲・試食していただき、自分なりの「おいしい」を皆様に体験していただくイベントとなりました。
どこかで印象に残る味に出会ったら、自分にとっての「おいしい」を記録して、いつでも表現できるようにすると食べる楽しみが広がっていきます。日頃から意識して食べてみたいと、嬉しそうな皆様の表情が印象的でした。
 
 
(取材・文:河瀬佳代子、撮影:内田ケンイチロウ)
 
 

<今回のチーズ>


CHEESE STAND
https://cheese-stand.com/
オンラインショップ https://onlineshop.cheese-stand.com/
 
 

□ライターズプロフィール
河瀬佳代子(かわせ かよこ)(READING LIFE編集部公認ライター)

東京都出身。天狼院書店ライターズ倶楽部「READING LIFE編集部」公認ライター。「Web READING LIFE」にて「魂の生産者に訊く!」http://tenro-in.com/manufacturer_soul
、「『横浜中華街の中の人』がこっそり通う、とっておきの店めぐり!」 https://tenro-in.com/category/yokohana-chuka/ 連載中。他に企業HP、シンポジウム等実績。

□カメラマンプロフィール
内田ケンイチロウ(うちだ けんいちろう)(写真家)

埼玉県出身。サッカー選手引退後アパレル会社を経てWeb制作会社へ。母親の影響で写真に触れはじめる。
某カメラメーカー出身のプロカメラマンに師事し、写真活動をスタートする。後にキッズ&ファミリー撮影100組ツアーを実施し、これまで300組以上の撮影を手がける。2017年にウチダブロ合同会社(UCHIDAbüro.inc)を設立する。現在は榊智朗氏に師事し、受託撮影と写真家活動で活躍中。https://uchidaburo.com/

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