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「横浜中華街の中の人」がこっそり通う、とっておきの店めぐり!

【第2回「横浜中華街の中の人」がこっそり通う、とっておきの店めぐり!】 歴史の1ページを刻んだ店には、誰も真似できない冷菜があった ~華都飯店(かとはんてん)~《天狼院書店 湘南ローカル企画》


2021/07/13/更新
記事:河瀬佳代子(READING LIFE編集部公認ライター)
 
 

「冷菜とか水餃子が実に旨い店があってね。中華民国の行政院で僑務委員を務めた人がオーナーで、娘さんが実際には切り盛りする華都飯店っていう店。オーナーのお子さんは三男三女の6人兄弟姉妹でそれぞれが成功していて、一族がことあるごとに華都飯店に集まる様はさながら昔ながらの中華民族の象徴のよう。正当な北京料理の味を守り続ける姿勢、そして温かい雰囲気が最高!」

— 「横浜中華街の中の人」・順強さん推薦文

 
 

裏メニューから昇格した、誰も再現できない冷菜


うちの名物料理といえば、キュウリの冷菜です。
昔からあったんですけど、最初はメニューに出していませんでした。うちの父が好きな一品ですね。ニンニクがたっぷり入っていて若干匂いますが、身体にはとてもいいんです。
日本の方はニンニクあんまり好きじゃない人が多いかもしれませんね。でも食べてみたら「何これ? すごい!」って言ってくださる方が多くて、それからメニューに出すようになりました。あとはおすすめ料理はエビ料理とか、牛肉料理でしょうか。水餃子もよく出ますよ。
 
キュウリの冷菜はとてもシンプルで、キュウリとニンニクを塩とごま油だけで和えています。サラダ風です。「何が入っているんですか?」ってお客様に訊かれるので、特に秘密でもないので皆様にレシピをお教えするんですけど、「なかなかその味にはならない」「家でやっても絶対にかなわない気がする」っておっしゃいますね。シンプルなものほど、再現するのが難しいのかもしれませんね。
 
 

横浜に作り上げた「華僑の都」


この店の前身は喫茶店でした。普通の日本風の喫茶店でしたが、中華菓子も作っていました。たぶん日本で最初に中華菓子を作ったんじゃないかしら。
うちは大家族でした。喫茶店の収入では家族を養うのが大変だったこともあって、お店の業態を喫茶店から中華料理に変えることにしました。中華料理店を開くにあたって台湾からコックを招聘して、食材も全て台湾から調達しました。そうして開店したのが1973年です。今年で開店して48年になります。
 

 
華都飯店(かとはんてん)という店名の由来ですが、前身の喫茶店が「都(みやこ)喫茶」という名前だったんですね。そこから一文字取りました。あと、今のこの店が角地にあるので、「角(かど)」と「華都(かと)」という2つの読み方をかけています。そして「華僑の都」という意味もある。3つの想いを込めて名付けました。
 
この建物ですが、台北の圓山大飯店をイメージして作りました。建物の外観もですが、天井などの内装も圓山大飯店を建築した方にお願いしたんです。赤い柱と白い窓、緑の模様と、特徴を出してくれました。日本だとうちしかこんな建物はないんじゃないでしょうか。
 
 

「華僑の都」が救ったのは、あの革命家だった


華都飯店オーナーの次女・廣川德(ひろかわ・とく)さん

 
父からの申し送りですがお伝えしますね。
横浜が開港したのが1859年、華僑団体が1867年に誕生しました。孫文先生が革命を成功させて中華民国を建国したのが1911年。その後、日本に亡命してこちらに数日間滞在したと聞いています。
今はこの建物は3階建てですが、その時はまだ2階建てでした。今、建物の外側に『中山紀念堂』注1(ちゅうさんきねんどう)と書いてありますが、それは孫文先生がここにいらした時に華僑がつけた名前です。日本では『記念』という漢字ですが、中国では『紀念』と書きます。大変な歴史の1ページを背負っているんだなと思います。

注1:孫文は中国では「孫 中山」(そん ちゅうざん)の名称が一般的である。日本亡命の際に自身の称号として「中山」を使った。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AD%AB%E6%96%87

 
 

ファミリーの心を支えたのは、働く両親の背中



 
父は1922年生まれで今年100歳になります。健在です。
今日も本当はここに来てお話ししたいって言っていたんですが、高齢ですし無理してもということで、私が代理でお伝えしますね。
父は1951年に来日して明治大学を卒業しました。華僑関係の仕事を経て都喫茶を開店、そのあと華都飯店を開店しました。
父は中華民国の国会である行政院注2僑務委員会注3を構成する僑務委員(議員)をしていました。私が大学在学中くらいでしたから、1978年頃だと思います。委員だったのは2期くらいだと思います。華僑枠の委員なので、普段はずっと日本にいまして、双十節注4のような行事などに招聘された時だけ台湾に行っていました。ですので、仕事の割合としては日本の方が多かったですね。

注2 行政院:中華民国における最高行政機関。内閣と各省庁を併せたものに相当する。
https://ja.wikipedia.org/wiki/行政院
注3 僑務委員会:行政院に属する委員会の1つ。在外同胞に係わる業務を所管している。
https://ja.wikipedia.org/wiki/僑務委員会
注4:双十節(=中華民国国慶日、10月10日)

 

 
そして母ですが、2017年に亡くなりました。没後4年になります。
開店当時、父は店以外の仕事をしていたので、実質ずっと店を切り盛りしていたのは母です。1つの店を切り盛りするということは想像以上に大変なことなんです。私を含めた子どもたちは親が店を維持する苦労をずっと見てきましたから、大学を卒業後、店を手伝うようになりました。
 
母は生前よく申しておりました。「店は頑張って残しなさい」と。「続けておきなさい」と遺していました。だから皆、店を守るために頑張っているところです。「もし店が無くなったら、みんな集まるところがなくなるから」という母の言葉を胸にしています。
 

 
今は孫の代になって、子孫がどんどん増えていきます。母にとってのひ孫ですが、もう1歳、2歳、3歳になる子たちがたくさん生まれています。そんな世代になっていきますね。
このメニューは、母が作ったんです。メニューの表紙や、名刺に描かれている神様はお守りです。「これはお守りとして門の前に飾っておきなさい」と母に言われました。日本で言ったら七福神みたいなものですね。
 
 

変わりゆく中華街と、変わらない華都飯店



 
中華街も変わってきたなと思います。
昔は中華街も1軒1軒の店が、その店ならではの料理や、地方による味の違いとを分けていたのですが、今はみんな食べ放題になってしまって、全部同じ料理で同じ味になってきました。お値段をお安くしている分、昔の高級感がなくなりましたよね。
 
いろんな理由があると思うんですが、最近は老舗がどんどんなくなってきていて寂しいですね。先日も老舗が店をたたんで、賃貸にシフトしたとのことでした。店を経営するよりも貸した方が楽なのもあるのでしょうけど、それはそれで貸す商売も大変みたいです。借りる方も経営は大変で、お客さんも少なくなって結局辞めるところも多いと聞きます。昔は困ったことがあるとお互い助け合っていましたけど、今は自分たちのことで精一杯ですものね。こればかりは仕方がないです。
 

 
父はこう申しています。「ここはうちのダイニング。みんなここに帰ってきたらここで食事をするような、そんな店だよ。お客様はもちろん大事だけど、そのお客様も含めてみんな家族だと思っているから」と。うちはずっと家族経営でやっているから知っているお客さんが多くて、来てくれたら本当の家族みたいな感じで接しています。一度来てくれたら、また自然に皆さんに来ていただけるような、家庭的な雰囲気を大事にしていきたいです。
 

 
ひんやりとよく冷えたキュウリの冷菜を一口食してみた。
確かにニンニクは効いているけど、不思議とそれがすんなり入ってくる感覚だ。ニンニクが主張しすぎておらず、そこに塩とごま油が絶妙に絡む。シンプルにして誰も追随できない味なんて、生涯に何回も出会わない。「食材が集まるべくして集まった、運命の出会い」が作り上げた味だ。
創業者のご両親の言葉をしっかりと刻み込んで、ファミリーで店を守ってきた廣川さん。歴史の1ページを背負いつつ店を守ってきたけど、家族の結束があれば何があっても乗り越えていける。そんな強い絆を感じた。

 
 
 
 
(取材・文:河瀬佳代子、撮影:山中菜摘)

華都飯店
横浜市中区山下町166    045-641-0335
営業時間: 10:30~21:00
定休日:水曜
公式サイト: https://www.kato-hanten.com/
※取材時の情報です。営業時間等、変更している可能性もありますのでご注意ください。

「中華街の中の人」・順強さんのプロフィール
1964年横浜生まれ。華僑4世。
曽祖父母が広東省より来日(来日年は不明)。 祖母 1902年生まれ。両親ともに華僑。
幼稚園~小学校を橫濱中華學院に通う。中学・高校は公立に通い、早稲田大学へ進学。
卒業後就職ののち、同じく華僑3世の奥様と結婚、5世のご子息と3人で横浜に暮らす。
酒を愛し、知己を愛し、横浜を愛する気持ちは誰にも負けてない! ホスピタリティ溢れる熱い男である。

□ライターズプロフィール
河瀬佳代子(かわせ かよこ)(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

東京都豊島区出身。日本女子大学文学部卒。天狼院書店ライターズ倶楽部「READING LIFE編集部」公認ライター。「Web READING LIFE」にて、湘南地域を中心に神奈川県内の生産者を取材した「魂の生産者に訊く!」連載中。
https://tenro-in.com/category/manufacturer_soul

□カメラマンプロフィール
山中菜摘(やまなか なつみ)
神奈川県横浜市生まれ。
天狼院書店 「湘南天狼院」店長。雑誌『READING LIFE』カメラマン。天狼院フォト部マネージャーとして様々なカメラマンに師事。天狼院書店スタッフとして働く傍ら、カメラマンとしても活動中。


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