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三浦、また会社つくるってよ

起業の街「福岡」で実際に会社を創ってみた〜第1話「実際に福岡の金融機関を回ってみた」〜《三浦、また会社つくるってよ》


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記事:三浦崇典(天狼院書店店主および『殺し屋のマーケティング』著者)

おかげさまで、僕が2009年4月1日に設立した会社は、もう少しで第10期を終えようとしている。

会社を経営して10年。

メイン事業である「天狼院書店」は、全国に5店舗展開し、また1スタジオも運営している。
社員も10名を越え、全スタッフを入れると35名ほどのスタッフがいるんじゃないかと思う。

数値は伸びていて、店舗数も、第11期、第12期と増える予定であるが、「成長している」という実感よりも、「なんとか生き延びている」という実感の方が強い。

そう、なんとか、僕の会社は生き延びている。

これも、皆様のおかげだと思っている。

さて、社長10年は、何かの区切りのように思え、まったく新しい会社をもう一個創ってみようかと思い立った。

そして、本当にもう一個創ることにした。

どうせなら、まったく違った分野で創ろうと思った。
まったく違った街で、まったく違った環境で、まったく新しい人たちと一緒に、まったく新しいサービスを創ろうと思った。

池袋で、たとえば、出版に関するビジネスをするならば、アドバンテージが高すぎて面白くない。

イージー・モードで『信長の野望』をやるみたいでつまらない。

どうせなら、ハード・モードでやった方が面白いじゃないか。

10年前に1個目の会社を創ったとき、資本金は100万円だったので、今回もその規模でスタートさせようと考えた。

ビジネスモデルは、なんとなく、定まってきていた。

まずは、街を選ぶところからだった。

東京は、最初から対象外だった。
大阪は、商人の街と言われるくらいなんで、東北人の僕としては、ちょっと怖い。
かといって、故郷の仙台で起業するのも、なんだか、つまらないじゃないか。

そうして、考えていくと、九州がいいような気がした。

まず、本州じゃないところがいい。

外国に近いのも、面白い。

天狼院書店でも、「福岡天狼院」を展開していて、毎月行っていたので、この街がとても人に優しいことも知っていた。

そう、こわくない。

そして、たしか、福岡は、起業特区とかをうたっていたはずだ。

きっと、起業家に優しい街に違いない!!!

そう思って、あまり調べることもないままに、FacebookやTwitterなど、SNS周りで、

「福岡で起業します!」

と、大々的に宣言してしまった。
東京から福岡に展開するサービスは多くあるけれども、福岡から全国に展開できるサービスができれば面白いなとも思った。

起業と言えば、まず、お金である。

正直言ってしまうと、僕はお金に執着がない。
故に、今の会社で、それほど役員報酬をもらっていない。

着る服も、H&Mとかで十分だったので、あまりお金は使わないし、困らない。

また、去年は母親がガンだと宣告されて、それでも、抗癌剤で奇跡的に回復したんだけれども、故郷に帰って、ま、見栄を張って、

「お金のことは、僕にまかせなさい」

と言ってしまった手前、ほとんど手元にお金を残さず、お金をあげていたんだけれども、なんか、もうガンがすっかり消えたというから、返してもらおっかなとも思っていたりする。

要するに、手元に、お金はない。

つまり、僕には会社の運営経験はあるけれども、普通の人より、ヘタをするとお金がない。

メインバンクの支店長さんに、

「三浦社長、社長は、しっかりとお金をもらっておかないと困りますよ」

と、言われたのを今更ながら、思い出す。

うん、今の倍をもらっていても、誰も文句言わないだろうと思う。

でも、もう少ししたら、インセンティブ給与(ボーナスみないなもの)を入れて、古株のスタッフの年収が、僕の役員報酬を超えることになりそうなのだ。

「実は、うちのスタッフ、僕より給与もらっているんですよ笑」

なんて、社長として、実にかっこいいではないか。

僕は、かっこよさを優先したいので、役員報酬は、上げないでいこうと思っている。

つまり、何を言いたいかといえば、手元に、お金がない。

だから、たぶん、今、起業を考えているほとんどの人よりも、資金の面でアドバンテージがあるわけではないということだ。

会社を創るためには、資金の調達が必要になる。

資金がなくても、成長している会社を経営している実績がある。
たとえば、1個目の僕の会社は1株1万円ではじめたが、それが気づけば、1株250万円(大きくなりすぎて5分割したので1株50万✕株数5倍)になっていた。
今期の売上高はかなり増加したので、決算を経れば、おそらく、それ以上の価値になるだろうと思う。

つまり、僕が、

「新しく三浦が会社を創るので、投資してくれませんか?」

といえば、資金は集まるかもしれない。

でも、それではレベル35でドラクエを始めるようでつまらない。

ゲームは、ハード・モードが面白い。

また、今、付き合いのある金融機関にお願いしたら、たぶん、用意してくれそうな気もする。

だって、ちゃんと返しているんで。
返済実績と売上の伸びをみれば、「三浦が会社を創るんなら」と案外、貸してくれるかもしれない。

それも、つまらない。

それなので、まったく、僕と縁もゆかりもない金融機関を当たろうと思った。
知り合いに紹介されるというのも、ちょっとイージー・モードになってしまうので、それもやめた。

ゲームは、シンプルな方がいい。
スタートは尚更だ。

福岡の街の中心で、僕はGoogleマップを開いた。

その検索窓に、

「銀行」

と、入れた。

すると、周辺の銀行の位置が一気に記された。

僕は、アポも入れずに、近くから片っ端から銀行を回ることにした。

最初は、大手の都市銀行に行った。
理由は、近かったからだ。

ふつうに、一般のお客様の入り口から、普通に中に入り、案内の女性に、唐突にこう告げた。

「あの創業融資を受けたいんですけど、どこに行けばいいですか?」

一瞬、何を言ってるんだ、こいつ、みたいな目で見られた。

「あ、福岡で会社を創るんで、お金を借りようと思って」

と、言い直した。
すると、2階の法人窓口に行ってくれ、と階段を指さされた。

ちょうど、法人担当の営業の人がいて、要件を言うと、話を聞いてくることになった。

「福岡って起業特区をうたっているじゃないですか。ということは、創業のとき、なにかメリットの高い制度があるってことですか?」

当然あるだろうと思って聞いた。

僕が1個目の会社を起業したときは、東京都豊島区では、「ビジネスサポートセンター」というのがあって、区内での創業融資を文字通りサポートしていた。
具体的には、ビジネスプランとかを見せて、OKなら、区が利子の、たしか、半分くらいを変わりに金融機関に払ってくれるという制度だったと思う。

そこで、OKになって、地元の信用金庫さんにお金を借りた覚えがある。

もしかして、福岡市では、利子の全部を負担とか、起業から一年間の返済猶予とか、そもそも起業したら100万円くれるとか、夢のような制度があるのではないかとワクワクして待った。

ところが、担当者の方は、

「あれね……」

と、苦笑いした。

もしかして、と思った。

「そんな制度はない、ってことですか?」

実は、ここに来る前に、ちょっとGoogleで、「福岡市 起業」とかで調べていた。
検索では目的の金融制度は見当たらなかった。

それで、直接金融機関に聞けばわかるだろうと思って来たのだ。

「起業特区をうたってますが、そういう制度はないんですよ」

担当者が苦笑いする理由がわかった。
うたっているけれども、実際にはない。

では、なぜ、僕らは「福岡」に起業のイメージをもっているのか?
起業特区って幻想? ファンタジー?

そういえば、と思いだした。

福岡市には、スタートアップカフェ、というものがあった。
前には、天神のTSUTAYAさんの中にあったけれども、TSUTAYAさんが六本松に移ってからは、どこかに移転していたはずだった。
そこに後で寄って確認しようと思った。

ともあれ、銀行の担当者に話を聞いてもらった。

あちらが名刺を出してくるものだから、自然な流れで、

「今の会社のですいませんが……」

と、今の会社の名刺を出した。

その名刺を見た瞬間に、やや、担当者の目が変わったように思えた。

「会社をもうすでに経営されているんですか?」

「あ、はい、今の会社はもう10期終わろうとしているんで、どうせなら、新しい会社も創ろうと思いまして。いちから、福岡で起業しようと思いまして」

なるべく、新人っぽくしようと思ったが、なかなか、そうはいかない。

「本も出されているんですか?」

「あ、まあ、書いてたりもして。でも、今回の起業はいちから始めようと思いまして……」

素人扱いしてもらおうとする奮戦も虚しく、こちらにどうぞ、と個室に通された。

そこで、新しいビジネスのプランについて語った。
そもそも、今回は、単に片っ端から銀行を回るのが目的だから、事業計画書なども持ってきていない。
ただ、プランを語った。

すると、金融機関の担当者は、

「それは、面白いですね。それでいくらくらい、必要ですか?」

「設備投資、運転資金、合わせて2,000万円あると完璧だと思います」

「それくらいだと思っていました」

「ただ、もし、融資がおりなければ、ある分でミニマムでも始められるプランにしてあります。天狼院書店の方も、小さなところから始めたんで」

「そうでしょう。しかし、面白いプランですね」

「保証協会とかつけますよね?」

保証協会とは、信用保証協会と行って、金融機関に借りる時、家賃の保証会社みたいになってくれる政府系の機関のことだ。
小さいうちは、保証協会から、保証されないと融資を渋る金融機関が多い。
保証さえされれば、金融機関としても、とりっぱぐれがないからだ。

僕の1個目の会社でも、長らく、この保証協会さんに助けられていたが、最近では、保証がなくても借りられる「プロパー融資」の場合も多い。

当然、新しい会社なので、保証融資になると思っていた。

「いや、ない方がいいですよね?」

「それは、ないほうがいいですけど、行けるんですか?」

「今の会社の決算書とか必要になりますが、行けると思いますよ」

え、そうなの、と危うく言いそうになった。

一個目の会社を創ったときは、まずは財閥系の都市銀行に行って、けんもほろろに追い返された記憶がある。それで、信用金庫さんと日本政策金融公庫さんにお願いした。

ところが、今回は、どうも様子が違う。

「申込み書とか、必要ですか?」

それというのも、まずはいつもは、保証協会用の申込書への記入から始まっていたからだ。
当然、その手続きがあると思っていた。

「あ、大丈夫です。私が上司に話をつけますので、福岡に来る際に、直接連絡してください」

え、まじで? と言いそうになった。

自分が思っている以上に、企業経営10年とは、結構アドバンテージがあるのかもしれない。

帰りは、重厚な扉のエレベーターに案内され、見送りしてもらった。

思わぬほどに、話が進んでしまい、銀行をローラー作戦で回る戦略が崩れた。

15時を過ぎようとしていたので、やっているところを回ろうと思った。

まずは、福岡市が運営する、スタートアップカフェに行こうと思った。

そして、とある都市銀行と、日本政策金融公庫なら、17時くらいまでやっているので、回れると思った。

立ち寄ったスタートアップカフェで、僕は意外なことを聞くことになった。

《次回につづく》

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★【2019年1月開講】3ヶ月で株式会社を設計し登記まで挑戦する超実践「自分の会社を創るゼミ」開講!司法書士も行政書士も税理士も不要!現役弁護士から「会社法」を学び、会社の憲法「定款」を創ろう!会社は我が子、自分で理解し自分で育てよう!《天狼院書店/STYLE for Biz》

❏ライタープロフィール
三浦崇典(Takanori Miura)
1977年宮城県生まれ。株式会社東京プライズエージェンシー代表取締役。天狼院書店店主。小説家・ライター・編集者。雑誌「READING LIFE」編集長。劇団天狼院主宰。2016年4月より大正大学表現学部非常勤講師。2017年11月、『殺し屋のマーケティング』(ポプラ社)を出版。ソニー・イメージング・プロサポート会員。プロカメラマン。秘めフォト専任フォトグラファー。
NHK「おはよう日本」「あさイチ」、テレビ朝日「モーニングバード」、BS11「ウィークリーニュースONZE」、ラジオ文化放送「くにまるジャパン」、テレビ東京「モヤモヤさまぁ〜ず2」、フジテレビ「有吉くんの正直さんぽ」、J-WAVE、NHKラジオ、日経新聞、日経MJ、朝日新聞、読売新聞、東京新聞、雑誌『BRUTUS』、雑誌『週刊文春』、雑誌『AERA』、雑誌『日経デザイン』、雑誌『致知』、日経雑誌『商業界』、雑誌『THE21』、雑誌『散歩の達人』など掲載多数。2016年6月には雑誌『AERA』の「現代の肖像」に登場。雑誌『週刊ダイヤモンド』『日経ビジネス』にて書評コーナーを連載。


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