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週刊READING LIFE vol.25

「書く」ことは「生きていく」こと《週刊READING LIFE Vol.25「私が書く理由」》


記事:岡筋耕平(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 

「どうして、伝わらないのだろう?」
 
幼い頃から、僕は人に自分の意思を「伝える」ことが苦手だった。人見知りで、大人からは「何を考えているか分からない子」というレッテルを貼られていたことを覚えている。人見知りな性格も、どうせ分かって貰えないという諦めから来ていたのかもしれない。
 
家族や、身近な人の前では活発なのに集団の中に入ると、急に大人しくなる子供がいるが、僕はそんな子供だった。でも、僕はいつも何かを感じ、いつも何かを考えていた。心の中では、
 
「本当はこう思っている!」
 
ということを言いたくてたまらなかったけど、伝えることは出来なかった。単純に語彙が少なくて相手に伝わらなかった事も関係しているだろう。子供の頃から大人になってからも人との関わりの中で、伝えきれないもどかしさから感情的になることも多かった。
 
学生時代、皆んなと一緒にいても、声の大きい子が集団をリードしていく。自分が望んでいない方へいない方へ物事が進んで行き、「どうせいつもこうだから」と半分諦めていた。だんだんと人と話すのが億劫になってきて、次第に口数も少なくなり、とうとう登校拒否になり、家に引き篭もっていた頃もあった。
 
「どうせ誰も自分のことなんて分かってくれない」
 
いつもそう感じていた。家の中の自分の部屋で待っていたのは孤独だった。そんな時、僕の孤独を癒してくれたのは、音楽雑誌だった。好きなミュージシャンの生い立ちから新曲への想いを綴ったインタビュー記事、音楽記者の書いたライナーノーツと呼ばれる全曲解説。自分と同じく人と関わるのが苦手で、アーティストとしての生きる道を選んだミュージシャンの記事は僕の心の支えだった。
 
何より好きだったのは、海外のアーティストのCDを買うと付いてくるライナーノーツだ。一曲一曲、担当の記者がその曲の背景や構成、聞きどころを解説してくれる。アルバム一枚で2万文字くらいはあったと思う。いつもワクワクしながら文章を読んでいた。
 
「僕も将来、人に感動を伝える人になりたいな」
 
茫然とだけど、そう思っていたことを覚えている。その後、生きていくために社会に出て、当たり前のように働き出した。相変わらず、僕は人に自分の本心や気持ちを伝えていくのが苦手で、よく上司や同僚と衝突したし、それが原因で仕事を辞めた事もあった。対人恐怖症になった事もある。
 
人は人、他人は他人。そう割り切ってしまえば、生きていくのは容易だ。世の中のストレスの9割は人間関係から生じると言われている。実際にそうだと思う。でも僕は自分の考え、感じた事、良かった事、悪かった事、人に本当はこうして欲しかったこと、願望を伝えたい。「何か良い方法はないだろうか?」そう考えていた時に出会ったのがブログだった。
 
今から5〜6年前になる。当時はペンネームで誰に見せるわけでもなく、ただの自己満足日記のようにブログ記事を書いていた。アクセス数は多い時で5〜10程度。記事を書いても誰も見ていない、なんて日もあった。だけど、1日の出来事や自分の感じている事、考えを文章に書き起こすことによって、何か気持ちが楽になるのを感じていた。
 
最初は、数行書くことで精一杯だった。だけど段々と、どう書けばもっと良くなるのか、自分の考えをどうすればブログ記事に書き起こせるかを考えながら書くようになった。知らない間に「書く」ことにハマっていた。
 
記事が溜まっていくと、次第に読者も付いてきた。一言だけのメッセージ。「気持ちわかります」や「自分はこう思います」というコメントが嬉しくてたまらなかった。この時、「書く」ということは自分の中だけで完結するものではなく、人に見せて、伝えてこそ意味のある事に気が付いた。
 
「そうだ! 僕は伝えたかったのだ!」
 
僕が昔からずっと抱いていた、人との理想のコミュニケーションとは、自分の想いを相手に伝え、それに相手が反応してくれて答えを返してくれる、会話のキャッチボールだ。素直に気持ちが相手に伝わることに感動を覚えた。
 
それからというもの、メールの文章や就職する際の自己PR文など、「どうしたら自分の気持ちや考えが相手に伝わるだろう」ということを念頭に置いて書く様になった。するとどうだろう、今までよりも格段にコミュニケーションがスムーズに行くようになった。
 
僕は「書く」ことは生きていくための最強のコミュニケーションツールという事に気が付いたのだ。人が生きていくためには、1人で生きていくことは出来ない。他者との共存が不可欠だ。時には生存競争にも勝ち残って行かなければならない場面もある。もし、世の中に自分以外の人間が誰もいなかったら「言葉」という偉大なコミュニケーションツールは生まれなかっただろう。
 
人が他者と共存して生きていくために「言葉」が生まれたのだと思う。その「言葉」を文章に起こし、伝える行為が「書く」ということだ。人に気持ちを伝えるには大きく「話す」と「書く」がある。口に出すか文字に起こすかの違いで、自分の気持ちを他者に伝える行為に変わりはない。僕は人に伝えるために「書く」ことに主眼を置いて生きる道を選択した。
 
「書く」という行為は「言葉」をつないでいくこと。言葉には物凄い力が宿っている。言葉ひとつで人を動かしたり、感動させたり、救うことができる。逆に言葉一つで人を死に追いやったり、不幸にしたり、悲しませることもできる。言葉の力はとてつもなく強力だ。当たり前のことだけど、人を生かすも殺すかも「言葉」の使い方ひとつだ。
 
僕は「言葉」を「書く」ことで人に気持ちを伝え、読み手が何かに気が付いたり、読んで良かったと思える方向に使って生きたい。僕は「言葉」を通じて「書く」ことを通じて、人に自分の想いを伝える素晴らしさを知った。かつて、僕が記事を読んで感動して勇気付けられた様に、人に感動を伝えて、色々な物事の良さを人に伝えていきたい。
 
自分の想いや考えを文字に起こし文章にして発信してこそ意味があるのだ。他の誰でもなく自分自身の経験、出来事、感情は他の誰でもなく、自分が発信するからこそ価値がある。自分は生きている、ここにいるんだという存在証明こそが「書く」ことだ。僕は自分の気持ちを世に出すことで、自分の存在意義を見いだすことが出来た。
 
自分の文章を通じて多くの人と関わりたい。多くの人に自分という存在を知ってもらい、生きている感動を伝えていきたい。そんな願いを込めて僕は文章を書き続けている。
 
僕は生きている。生きているんだ。自分自身の考えで、自分自身の言葉で世の中を生きていきたい。今日も明日も明後日も人生の幕を閉じるまで、ずっとずっと。
 
だから僕は「書く」のだ。
 
「生きていく」ために。

 
 

❏ライタープロフィール
岡筋耕平

兵庫県出身 高校中退〜高校卒業程度認定取得
WEBライターです。自分の想いや考え、感動を伝え、文章で「言葉」をつないでいます。他の誰でもない自分の「言葉」を大切に活動しています。 【想いを言葉に】が僕の原点です。世の中を変えるために日々情報発信中。趣味は楽器演奏(ギター、ベース)、読書、筋トレ、マラソン。空手(茶帯) ファイナンシャルプランナー AFP ビジネス法務エキスパート

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2019-03-25 | Posted in 週刊READING LIFE vol.25

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