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週刊READING LIFE Vol.28

好きなことやしたいことがあなたにとっての真実とは限らないんだよ~NEEDSとWANTの法則~《週刊READING LIFE Vol.28「新社会人に送る、これだけは!」》


記事:藤原華緒(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 

2019年に新社会人となる皆さんへ
 
新社会人おめでとうございます。
 
今日は、新社会人の皆さんにお手紙を書きたいと思います。
社会人の先輩から、みなさんへ。
すこしのお時間を頂けると嬉しいです。

 
 
 

世の中は「好きなことをしなさい」ブームです。
 
本屋さんに行けば、
 
「好きなことを仕事に」
「好きなことで生きる」
「好きなことで食べていく」
 
こんな本であふれかえっています。
 
みなさんは、希望の会社に入ることができましたか? それとも希望の会社ではないところに就職しましたか? 好きなことを仕事にできましたか? 好きじゃなかったけどその仕事を選びましたか?

 
 
 

私は小さいころから文章を書くことが好きでした。そして得意でもありました。
だから(という安易な理由で)、新卒で小さいながらも出版社に入り、編集者を目指しました。
 
でも、ふたを開けてみたら、配属された先は広告営業の部署でした。
同期は同じように「編集」をやりたくてその会社に応募し、内定をもらっていましたが、同期の20人近くのうち新卒で編集部に配属されたのは、たったの1人でした。
 
短大卒の20歳で社会に出た私は、それがどんなことかもよくわからなかったのですが、4年制大学卒の同期や中途で転職してきた人たちは、「だまされた」ように感じているようでした。私も編集にいけなかったことはとても不満でした。でも、大好きな雑誌にかかわる仕事ができるだけでうれしいとも思っていました。
 
そこから私の社会人人生は広告、そしてマーケティングリサーチへと変化していきます。
 
途中、やっぱり文章を書くことをあきらめ切れなくてライターの仕事をしたこともありましたが、とにかくそれはお金になりませんでした。まだ若かったので貧乏でも仕方ないのかも知れなかったのだけれど、でも、お金がないことで、やりたいことをあきらめたり、我慢することも多かったように思います。お金がないということは、映画代や本代、旅行代など、自分のインプットをケチることになってしまいます。
それは、何かを生みだそうとする自分にとって致命的であることを、うすうす私はこころのどこかで知っていたのだと思います。そしてやっぱりいつもお金があったら、あんなことやこんなことができるのになぁ、と思っていました。
 
意図せず踏み込んだ広告の仕事は非常に大変なことが多かったのも事実です。でも、そこで自分にマーケティングやリサーチの経験が不足していることに気がつき、それがきっかけでリサーチの方向へ転職をしていきました。この仕事は、とても繊細で細かい作業が多い仕事で、自分にとっては決して「好き」といえる仕事ではありませんでしたし、向いているとも思っていませんでした。未だに自信はありません。でも、おそらく他人から見て「できる」種類の仕事ではあったということです。
私は、自分が本当に欲したこととは違った方向に流されるように次の道を決めていったのですが、誰かに導かれたり、求められることを機軸に歩いた結果、「自然とお金がついてくる」現象が起こっていきました。
 
そして、いろんな経験をしたのち、今、もう一度「文章を書く」ことにチャレンジしています。
今はもう、お金がないことで自分のしたいこと、インプットのもとになる行動をあきらめることはありません。

 
 
 

ここでもう一つ思い出すお話があります。
 
先日、とあるテレビ番組で東進ハイスクールの林 修先生がこんな話をしていました。
 
『自分は昔から本を書きたかった。予備校講師を経て少しずつテレビに出始めて顔が売れるようになってきたころ、とある出版社から「自己啓発の本を書いてください」といわれた。でも、自分は自己啓発の本なんて読んだこともないし、自分にかけるとも思っていなかった。
 
……でも、よく考えてみると「自分は自己啓発の本を書ける人間」だと思われていることに気がつき、それなら「求められていることに沿ってみよう」と思いやってみると、その出版社でトータル100万部記録的なヒットを出すことになった。
自分を発掘したのはフリーランスの編集者さんだったが、自分の本が売れたことがきっかけで、彼は大手出版社の正社員となり、安定した生活を得ることができ、それによって、奥さんの両親がとても喜んでくれた。自分はそれだけでこの仕事を引き受けた意味があったと感じるようになった。
 
すると、今後は「林先生の好きな本を出していいですよ」といわれ、チャンスをもらうことができた。出した本は「すし、うなぎ、てんぷら ~林 修が語る食の美学」。これがまったく売れなかった(笑)。この本は、自分が出した本の中でも重版にならなかった唯一の本で、プロとしてたくさんの人に迷惑をかけた失敗の経験であった。』

 
 
 

自分の経験、そして林先生のお話を通してお伝えしたいこと。
 
それは「NEEDSとWANT」という言葉です。
直訳すると、「求められることとしたいこと」。
 
会社に入り、新社会人となり、ある一定の研修を受けた後、みなさんは現場に配属されます。この配属は、新卒の時の私のように、自分の希望が通るとは限りません。自分の本意ではない部署に配属になる例が山のようにあります。そして、希望の会社に入ることができず新社会人になった方も「希望じゃなかった」と思いながら入社式を迎えている方もいるかもしれません。
 
でも、WANT(したいこと)よりもNEED(必要とされること)に沿ってみることも、実はなかなかいいものなのです。あなたを選んだ会社は、あなたを必要として選びました。あなたを選んだ部署はあなたを必要として選びました。そして、あなたを選んだ人たちはあなたよりも何歳も年上の長く生きている先輩たちなのです。現時点では、明らかにあなたよりもあなたのことを知っている可能性がある人たちなのです。
 
必要とされる仕事というのは、それはお金を稼ぐという一点においては、好きなことよりもその可能性が高まります。
そして必要とされることを続けていくことは、あなたを必要とする人を増やすということです。さらに、それはあなたの気持ちを上げて、経験や人生を豊かにしてくれます。なぜなら思いもよらない出会い、思いもよらない自分の才能、そんなものにも出会えたりもするからです。
 
私も若かったときは非常に生意気で、自分の希望しないことには反抗する気持ちがありました。でも、それは、必ず何かしらの形で自分に返ってきました。今思うと、自分の可能性を自分で狭めてしまうという、非常に高いリスクを含んだ行動だったのです。
 
世の中は「好きなことを仕事に」という言葉であふれかえっています。
 
もちろん、好きなことを仕事にできて、そしてお金もたくさん稼ぐことができたら、ベストです。
でも、「好きなことを仕事に」して、かつたくさんのお金を稼ぐ人は世の中でほんの一握りであることも事実です。
そして、このワードがあふれかえっているように見える理由はこれが、非常に強い「パワーワード」だからです。
 
パワーワードは、イコール「目立つ言葉」、「声が大きい」ということです。
人はどうしても目立つものに目を向けがちで、それを正しいと思ってしまう傾向にあります。
大きな声に耳を傾けることも時には大切かもしれない。でも、その後ろにあるものも忘れないで欲しいのです。
 
あなたがたとえ今、自分の希望した場所に立てていなかったとしても、そのこと自体がこれからのあなたの社会人生活をいい方向に導く可能性だって充分にあるのです。
 
「WANTよりもNEEDS」
 
そんな考え方もあるのだということを、心のどこかにとどめておいてもらえると、
苦しい場面に出会ったときも少しだけ生きやすくなるかもしれません。

 
 

❏ライタープロフィール
藤原華緒(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
1974年生まれ。2018年より天狼院書店のライティング・ゼミを受講。20代の頃に雑誌ライターを経験しながらも自分の能力に限界を感じ挫折。現在は外資系企業にて会社員をしながら、もう一度「プロの物書き」になるべくチャレンジ中。

この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

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2019-04-15 | Posted in 週刊READING LIFE Vol.28

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