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週刊READING LIFE Vol.28

先輩が教えてくれた「お昼ご飯」という仕事術!〜入社したらまず「会社の胃袋」をつかめ!〜《週刊READING LIFE Vol.28「新社会人に送る、これだけは!」》


記事:坂田光太郎(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 

「今日お昼なににする?」この言葉を使う頻度は学生より社会人になってからの方が圧倒的に多い気がする。
学生は、学食もしくは、親の作った弁当と限られた選択肢しかない。
特に私の学生時代は母親の弁当しか食べてなかったので選択も何もなかった。
学生時代おにぎり1つ買うのもためらってしまうお財布事情だったのだ。
当たり前だが、お昼の選択肢があるというのは、大前提にお財布に余裕がなくてはいけない。
だから、「今日お昼何にする?」と言われたて少し嬉しかった。
大人になった気がした。
「先輩のおススメでお願いします!」
「おススメか……パスタとかは?」
「大好きです! お願いします!」
私の勤める会社はオフィスビルに入っており、1階がレストラン街になっている。
チェーン店が多く立ち並び、お昼時になれば、どのお店も満席となる。
時刻は1時少し過ぎた頃。
私は入れるかどうか少し心配しながら、1階に降りた。
「あれ?」先輩は1階に降りるとレストラン街と逆方向に向かった。
「どうした? パスタだろ」
と言い先輩は当たり前のように、オフィスビルの外に出た。
しばらくついていくと、商店街が見えた。
「へえ、こんな近くに商店街なんてあるんですね〜」
「ここは、個人経営の店が多いからクオリティは高いよ!
ビルから少し歩かなきゃいけないから、お昼時でもわりかし空いているしね」
たしかに、遠いと思うほどではないが、休憩時間は有限だ。
多少なりとも移動時間を少なくして、限りある休みを有効的に使いたい。
だから、オフィスから一番近い1階のレストラン街は常に満席なのだ。
 
この日入ったのは、商店街の中にある本格創作イタリアンレストランであった。
先輩が言った通り、待つこともなく、すぐ席に座ることができた。
「お! いらっしゃい!」と店主が先輩に向けて言った。
「後輩を連れて来ちゃいました」
「ありがたいよ。んじゃ選んだら呼んでね」と言って店主は厨房に向かった。
「仲良しですね」私が言うと
「この辺の店主とは顔馴染みかな」と教えてくれた。
 
先輩は「会社の胃袋」だ。 会社の人は、皆あの先輩をそう言う。
お昼ご飯に迷ったときは、とりあえず何が食べたいかを伝えると、確実に旨い店を教えてくれる。確かにイタリアンレストランもおいしかった。
先輩のお昼ご飯はオフィスビルではほとんど食べない。
毎日商店街に赴き、お気に入りの店に入る。
その情報をみんなに共有するのだ。
商店街は土地が高く、お店に人気がなかったら、すぐ廃れてしまう世界だ。
半年ベースで、新店舗が生まれてはどこかが廃れる。
なので、先輩は新店舗ができたら、そのお店に誰よりも早く行き、情報を仕入れ仕事仲間に情報を共有する。
先輩も「会社の胃袋」という肩書きにプライドを持っているようだ。
しかし、そのプライドには代償が伴う。
まずは時間だ。商店街への移動時間が往復で10分程度。
さらに、商店街の人はオフィスビルの顧客を想定していない。
どちらかといえば、時間がある主婦がターゲットのお店が多い。
そのため調理時間が1階に入っている店より遅い。
すぐに座れるメリットを加味してもオフィスビルで済ませた方が若干早い気がする。
次に価格だ。
リーズナブルといえどもやはり私は日常的に出すには、苦しい金額だった。
サラリーマンの平均昼食代は570円だそうだ。
そう考えたら、あの商店街の設定金額はやや高めである。
やはり、ターゲットが主婦であることと、家賃が高いことからちょい高めの金額ではないとやっていけないのだろう。
そんな代償があっても先輩が商店街で食べる続ける理由が「先輩は食べる事が好き」だからだと思っていた。
もちろん「食べる事が好き」は間違っていない。
現に「食」へのこだわりは他の人より強い。
だが、もしかしたら理由はもう一つあるのかもしれない。
 
そう思ったのは、先輩と社長が談笑していた時だ。
当時、私の勤めていた会社は社長と社員の距離は割りかし近かったが先輩みたいに談笑ができる社員はそうそういなかったと思う。
 
私なんて、下っ端だったので社長が近づいただけで緊張してしまう。
そんな存在の社長と談笑できるなんて。
私は「社長と何話していたのですか?」と尋ねた。
「なにって、社長が『美味しい店ないか』ってきいてきたから教えただけだよ」
「え!? 社長に教えたんですか!? でも社長って高級料理とかしかたべないんじゃないんですか?」
「何言ってんだよ。社長だって人間だぜ。そりゃあ、俺らより旨い物は食べて舌が肥えているだろうけど、インスタンドラーメンや、吉牛とか美味しいと思うはずだよ。食に立場も何もないよ」
たしかに。
 
立場が関係ない唯一のコミニケーションツールは「食事」である。
好き嫌いはあると思うが、課長から部長になったからって、食への好みは
変わらない。
美味しいものは美味しいし、まずいものはまずいのだ。
そこに、立場も何もない。ただの人間対ただ人間、これに尽きる。
 
社会人で一番重要な仕事は、もしかしたら「お昼休憩をいかに使うのか」なのかもしれない。
それは、立場も、部署も関係ない唯一の時間だからだ。
「ただのヒト」になった上司や、仕事仲間と「ただのヒト」として話せる時間はそうそう無い。
先輩も、仕事で絶対関わらない方と普通に談笑している。
その中の一人に社長がいた。
ただそれだけだ。
なにも社長と話したいから、商店街に通っていたわけではないだろう。
社長と話していた光景は、「ただのヒト」と「ただのヒト」が話していただけだ。
もしかしたら、先輩は「ただのヒト」と話す題材を探しに、商店街に行っているのかもしれない。
私もそれから商店街に通うようにした。
商店街に通いSNSにアップしたり、仕事仲間に伝えたりした。
すると普段喋らない部署の人とも交流ができた。
それは、「◯◯部の××さん」と話しているというより、「ただのヒトの××さん」と話している感覚だった。
 
そんな「食」の力を感じ始めた当時の私には、悩みがあった。
上司とコミュニケーションが取れていなかったのだ。
仲が悪いわけではない。ただ忙しくコミュニケーションを取る時間がなかった。
その悩みを先輩に伝えたところ「あ〜〜、一回食事に言ってごらんよ」と言った。
「え、上司ですよ。僕から誘っていいんですか??」
「なんで? 嬉しいと思うよ」
先輩は普通に言うが私にとってハードルが高いことだ。
正直絶対誘えないと思った。
だが先輩の助言を実行する日は突然訪れた。
私がお手洗いで手を洗っていた時、上司が現れたのだ。
「お疲れ様」
「あ、お疲れ様です」
「ランチ帰り?」
「はい、商店街の方に」
「え、商店街? 俺行ったことないんだよ」
「本当ですか? 美味しい店多いですよ」
「へえ、どの店が美味しいのかわからないから、あまり行けないんだよね」
「そうなんですね? ぜひお時間ありましたらご紹介させてください!」
半分冗談、半分本気で言った。
上司は本気に取らないだろうな。と思いながら発した。
が、「えんじゃ明日行こうよ」意外な言葉が返ってきたのだ。
もちろん嬉しかった。
あとあと先輩に聞いたところ、私との接し方で悩まれていたらしく、私からの誘いは相当嬉しかったらしい。
 
翌日、あのイタリアンレストランに上司と行った。
様々なことを話した。趣味や、休日のこと。
上司が2歳のお子さんのパパであることも初めて知った。
そこにいたのは「上司」ではなく、「ただのヒト」だった。
 
仕事とは連想ゲームだ。
私はそのランチ以降、上司から色々違う仕事も任されるようになった。
それは、ランチで趣味や特技を話した事で上司が「あれが特技ならあの仕事をやらせてみよう」と連想を膨らませてくれたおかげだ。
仕事から人間性を見る事は難しい。
だけど人間性を仕事に結びつけることは可能だ。
その人間性という連想ゲームの始まりの言葉を発せられるのはランチや飲み会という勤務時間外だけだと思う。
 
言葉を交わさずともラインやメールで意思疎通ができる時代。
休み時間はスマホを見て過ごす人が多いこの時代だからこそ、他人とお昼を過ごす時間が大事なのかもしれない。
人間性こそが会社の財産になる時代が確実にくるなか、あなたはどうお昼の時間を過ごすだろうか。
 
1つ提案していいのなら、入社して半年は外食をおススメする。
偏った食ではなく苦手なジャンルにも挑戦してみてほしい。
いつか「ただのヒト」と会える場となると思うのだ。
 
先輩から教えてもらったのは、「仕事」というより、「ヒトとして仕事をする大切さ」だった。
なにを挑戦するにも、最高な季節。
新社会人の皆さんも、いままで外食をしてこなかった社会人の皆さんも、会社の胃袋を掴むことに挑戦してみてはいかがだろうか。
いつかそれが仕事につながり、きっと自分を成長させてくれる。
「お昼ごはん」にはそんな力があるのだ。

 
 

❏ライタープロフィール
坂田光太郎(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
26歳 東京生まれ東京育ち
10代の頃は小説家を目指し、公募に数多くの作品を出すも夢半ば挫折し、現在IT会社に勤務。
それでも書くことに、携わりたいと思いライティングゼミを受講する
今後読者に寄り添えるライターになるため現在修行中。。。

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2019-04-15 | Posted in 週刊READING LIFE Vol.28

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