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週刊READING LIFE vol.46

赤髪の男が教えてくれた「人を幸せにする方法」《 週刊READING LIFE Vol.46「今に生きる編集力」》


記事:中野ヤスイチ(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 

どの分野においても、スターと呼ばれる人、ヒーローと呼ばれる人、異端児と呼ばれる人がいる、その人達は多くの人に感動や影響を与えている、なぜスター、ヒーロー、異端児と呼ばれるまでになれたのだろうか。その答えは、自分が見えている世界を、相手の為に、わかりやすく編集して、伝わるように表現してくれているからかもしれない……。
 
僕は、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」という番組がとても大好きである。それぞれの分野で活躍している、プロフェッショナルの方々が登場して、まさに、今をどのように生きているのかを教えてくれる。「うわ~、こんな世界あるんだ、こんなこと考えているんだ、これがプロフェッショナルと呼ばれる人の生き様なんだ」といつも感動をくれる、その中でも「高木琢也さん」の特集を見たときに、僕は鳥肌がたった……。
 
僕は基本的にはテレビを見ない、時間を奪われている感覚があるから、「プロフェッショナル 仕事の流儀」は常に録画している。ただ、すべてを観られるわけではなく、タイトルとオープニングを観て、面白そうだなと思ったモノを観るようにしている。
 
珍しく、妻から「今回の観たほう方が良いよ、きっと好きだから」と言われて、観ることにした。今でも妻に、とても感謝している。きっと、妻に言われなかったら、観ていなかったと思う、僕は古い価値観を持っていて、髪を染めている人があまり好きではない、そんな古い価値観を壊してくれたのが、赤髪の「高木琢也さん」である。人は外見で判断してはいけない、中身や行動を観て判断するべきだと。
 
この「高木琢也さん」の特集を観ているうちに、自分の体の中心部分が熱くなるのを感じた。この人、「すごい、本物だ」って思えた、何より、「今を生きている」、「もっとこの世の中をよくしたいと真剣に考えている」という想いが、ヤリで刺されたように、痛いほど、伝わってくる……。こんな人見たことがない……。まさに、異端児という言葉がふさわしいと思う、ただ、それだけじゃない、美容師を志す若者にとってはスターでもあり、髪を切ってもらった人からしたら自分の人生を変えてくれたヒーローである。
 
同じ時代を生きているんだと知ったとき、「生きててよかった、今の世の中も捨てたもんじゃない」と本気で思えた、どんどん心が熱くなって、番組が終える頃には、「よし、俺も頑張るぞ、とことんやってやる!」と心の中で大声で叫んでいた。
 
高木琢也さんは、美容師の世界で生きる伝説の人だ、「日本一3年連続」、「予約は3分で完売」、「月間技術売り上げ1200万円」で渋谷・原宿6店舗のお店を展開している。
 
美容師の世界は、とても厳しく生き残るだけで、とても大変で、生活をしていくだけも大変な職業である。その中で、日本一位を3年連続とっている。僕だったら、嬉しくて、自慢して夢が叶ったと言っていると思う、でも、「高木琢也さん」はそんな感じが一切ない、「当たり前、むしろ、もっと若い人に攻めて来て欲しい」と思っていることが伝わってくるほど、業界全体を観ている、「医師、弁護士と同じように、美容師は国家資格なのに、地位が低いことが嫌で、本気で美容師の地位向上を目指している」、いや、「もっとその先を観ている」のが伝わってくる。

 

 

 

僕は刺激を受けた人の本が発売されていると聞くと、買って読むのが大好きである。「高木琢也さん」が初めて書籍を出すと知ったので、買う為にアマゾンで調べたら、すでに完売になっていて、「え、出たばっかりなのに」ととても残念だったのを今でも覚えている。
 
それから、数ヶ月後に、たまたま、スタバと隣接している本屋さんに行った時に、違う読みたい本を探していると、偶然その本の横に「這いつくばった奴が生き残り時代 道あけてもらってもいーすか?」(高木琢也 宝島社)が置いてあった、すぐに手にとって、本を購入した。
 
この本を読んでいるうちに、「プロフェッショナル」で観た高木琢也さん、そのままの姿が本に表現されていた。何も飾ることがなく、ありのままの自分でいることの大切さ、人に感謝を忘れてはいけない、人生捨てたもんじゃない、もっと、がむしゃらに生きないといけない、いいから進め、読めば読むほど、ビジビジと伝ってくる。
 
なぜ、この本をだしたのか、それはこの本を読んで、少しでも「勇気・元気」を与えたいから、今まで多くの人に勇気や元気をもらって、今の自分があると思っている、だから、少しでも返したい、絶対に一人ぼっちじゃない、一緒に頑張ろう、「間違った意見や考えにまけるな、今を一緒に生きよう」というメッセージが、この本を持つ手が熱くなるほど、僕に伝わってきた。
 
読み終えたあと、気がついたら、ページをずっとパラパラとめくっていた。
もっと読みたいなって思って、終わるのが、いと惜しく思えた。

 

 

 

高木琢也さんがなぜ、日本一を3回連続とれたのか、それはまさに、「編集力」の賜物だと僕は思う。高木琢也さんは、今までに数を数えきれ無いくらい髪を切ってきたらしい、多分、僕が想像している100倍、いや、1000倍、10000倍は髪を切ってきていると思う。それだけじゃない、常に研究することも怠っていないから、色々な雑誌に載っている髪型を合わせると、もう数万通り以上の髪型が頭の中にインプットされている。それも、おそらく、頭の中だけでなく、使い慣れた体の一部として染み込んでいる。
 
高木琢也さんは髪を切る時間は一人あたり15分らしい、僕はそれを聞いたときに、短いと思った、おそらく、多くの人もたったの15分と思うのではないだろうか。でも、その15分とわかっているのに、予約が3分で完売してしまう。不思議だ!? その理由は、どんなに近くの有名な美容室で30分、時間をかけて切ってもらう以上の価値が、その15分に込められているからだと思う。
 
テレビで観ていると多くのお客さんが「高木さんに、任せます!」と言っている、そこで、高木琢也さんは、「嬉しいけど、少しはあるでしょ!?」みたいなことを聞きながら、手のセンサーを駆使して、お客さんの頭の形から髪質まで把握して、鏡に映るお客さんの表情から、「このお客さんの髪型をこのようにしたら、このお客さんの人生を幸せにしてあげられる」と頭の中にある何万通りもの髪型から、このお客さんに合う髪型を瞬時に判断して、少しイメージを伝えた後に、「じゃ、切るね」と言って、驚くほど早い手さばきで、髪を切っていく、おそらくお客さんの感覚としては、目をつぶる瞬間も与えないくらいだと思う。それぐらい、髪を切る姿すら、とても格好良くみえて、まさに、「自分らしく、カッコよく、人生を幸せに変える魔法」をかけてくれているのである。
 
髪を切ってもらったお客さんの表情を見えていると、誰もが髪を切られる前以上に笑顔で、自信を取り戻して、帰っていく。なにより、切った高木琢也さん自信が、とても嬉しそうに見えるのが印象的だった。おそらく、自分の頭の中で編集した通りの髪型になっているのだろう。
 
そんな高木琢也さんですら、プロとしてやっていくには、悩み苦しみ、ほとんど眠れない日を迎える事もあるようである。決して、その部分をお客さんには見せていないし、スタッフの前でも見せていない、むしろ、親心を持って、本気で叱っている姿をテレビを通じて観た時に、人としての魅力がより伝わってくる。
 
どの分野でも、今という時代において、共に生きているスター、ヒーロー、異端児と呼ばれている人達は普通の人では考えないくらいの量をやり遂げたり、継続して勉強し続けることで、自然と体に染み込んでいる情報量から、その人、その時代の状況に合わせた最適解をその人なりの方法で表現することで、想像を超えた感動を与えたり、より人生を豊かにしてくれる。
 
これこそが、今を生きる「編集力」が持つ大きな力だと僕は信じてやまない、いつか必ず、僕もその力を身に着けたい。身に着けて、自分も含めて多くの人が幸せになる力になりたい。
 
その一歩として、この記事を読んでくれた方の心になにか伝わるモノがあると、この上ない幸せである。

 
 
 
 

◻︎ライタープロフィール
中野泰一(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

1986年島根県生まれ、東京都在住、会社員、妻と子供の3人暮らし、東京薬科大学卒業、奈良先端科学技術大学院大学卒業、バイオサイエンス修士。父親の転勤の影響もあり、島根県、千葉県、兵庫県、埼玉県、奈良県、佐賀県、大分県、東京都と全国を転々としている。現在は、理想の働き方と生活を実現すべく、コアクティブ・コーチングを実践しながら、ライティングを勉強中。ライティングを始めたきっかけは、天狼院書店の「フルスロットル仕事術」を受講した事。

 
 
 
 

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2019-08-20 | Posted in 週刊READING LIFE vol.46

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