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週刊READING LIFE vol.15

「正義感」が満たされる文具とともに 《週刊READING LIFE vol.15「文具FANATIC!」》


記事:伊藤千織(READING LIFE編集部 ライターズ倶楽部)

 
 

「え、こんな便利な文具あるの!?」

 

そう叫びたくなるくらい、世の中には画期的な文具がどんどん増えている。社会人になってからそれを痛感することが多くなった。請求書、納品書、注文書……かなりの量の書類と対面することになり、書類整理に時間の効率化が必然的に求められた。

 

そんな中で私が初めて便利だと感じたのは「テープのり」だった。これまでの液体のりは塗りすぎると紙がふにゃふにゃになるし、のり付けしたい面からはみ出してしまうとべとべとになる。それに、一度塗ったら乾く前に貼り付けなければならない。そもそも乾くまでに時間がかかる。
そんな小さなルールは当たり前だと信じ従ってきたが、この小さなルールへの不満がテープのりの登場のおかげで何もかも解消されてしまった。修正テープのように、のり付けしたい面に一直線に引くことで塗りすぎず、べたつかず、乾くかどうかも心配いらず、粘着力も保たれる。

 

もう手放せない。これしか使う気になれない。テープのりの替えの在庫が切れてしまい、やむを得ずスティックのりを使用したときのストレスは尋常ではなかった。

 

そんな仕事上使用する文具の中でも、特に私が感動した文具がある。それは「針なしホチキス」だ。

 

ホチキスの針って、燃えるゴミ? 燃えないゴミ?
そんな疑問を子供の頃から抱いてきた。調べてみると鉄扱いとなるようで、燃えないゴミとして処理しなければならなかった。私はホキチスの針の分別を当たり前のこととして特に気にすることもなかったが、この作業への不満は仕事をするうちにだんだんと大きくなっていった。

 

重要な内容や個人情報が記載された書類を破棄する時、シュレッダーにかけて裁断するのだが、この作業が私にとって一番ストレスだった。その書類がホチキス止めされていたら、針を外してからシュレッダーにかけなければならない。針がシュレッダーにつまると故障の原因になるからだ。

 

そもそも燃えるゴミとして出せないため外すことは仕方がないのだが、正直面倒くさい。
ホチキス本体の後ろについているヘラのような形をした金具を使って針を外すが、この行為だけで時間がかなり消費される。私がせっかちなのかもしれないが、効率を考えて仕事をしている最中で書類の内容のミスに気がつき、修正する作業だけでもストレスがかかる。それが、ホチキスの芯があることでさらに余計なストレスがかかるのだ。

 

ある日、他の営業所から郵送されてきた書類を見た時だった。
目を疑った。3枚ほどの書類が、ホチキスの針を使用せずにホチキス止めされていた。

 

何これ、どんな構造!?
よくよく見てみると、書類の一部にU字型の穴が開いていた。実際は穴ではなく、U字型の切り込みを入れ、その部分を表側に反り返し、すぐ下に別で2つ横線の切り込みを入れそこに滑り込ませて書類同士を固定していた。ベルトをズボンのループに一箇所通しているような見た目だ。
複雑な仕組みだが、こんな仕組みを再現できる文具に興味しか湧かなかった。私はすぐに書類の送り主である営業所に電話をしてホチキスのことを聞いた。

 

「これ、どこに売っているんですか」
「会社で契約している文具通販サイトに普通にあるよ」

 

私はカタログを開き、その商品を探した。するとすぐに見つかった。意外とメジャーな商品だったのか。これなら針の心配をせずに書類をシュレッダーにかけられる。私は所長に相談し、すぐに購入手続きをとった。

 

その画期的なホチキスはすぐに手元に届いた。全体的にプラスチックでできており、これまでに使用してきた一般的なホチキスよりもコンパクトだった。
私は試しに伝票を2枚ホチキス止めしようとした。しかし、本体がとてもかたくてビクともしない。ストッパーがかかっているのか? 確認するも、どこにもそのような機能はない。別の男性社員にホチキス止めできるか確認してもらった。その人が目一杯力を込めて紙をはさむと、ザクッと音がした。

 

書類のベルトは綺麗に穴に収まっていた。すごい。一回押しただけでこんな複雑な止め方ができるのか。今度こそ、と自分でも試してみた。体重をかけて一気に押す。すると、穴は開いたがベルトが収まっておらず宙ぶらりんになっていた。何でだろう。何度か試すうちに握力がなくなりそうになったが、なんとかコツをつかんだ。どうやら紙をはさんだ後にさらにひと押しグッと力を込めることで、綺麗に穴に収まるようだった。

 

見た目以上に頑丈なこのホチキスは、想像以上に扱いが難しかった。一度に止められる書類は6枚ほどで薄いものに限られるし、紙同士での固定なので強度は針よりも低い。別の会社へ提出するような書類には使えそうにないため、しばらくは両使いで行くしかない。

 

しかし、私はこの文具を絶対に使い続ける。なぜなら、ホキチスの針を使用しないという点が私の中では大きかった。
ゴミの分別や燃えないゴミが減ること、時間の使い方へのエコ意識はもちろんだが、それだけではなく、ホチキスの針は危険だからだ。書類をホチキス止めした後、針の先がうまくまるまっておらず、その部分を触ったために指から出血したことがあった。それがこのホチキスなら意図しない負傷をせずに済む。また、机の上や床に落ちてしまった時に、ペットや赤ちゃんが誤って触ってしまったり口に入れたりする心配もない。

 

大げさに聞こえるかもしれないが、身の回りの環境を守るために、このホチキスはどうしても必要だと思っている。私の「正義感」が、このホチキスのおかげで満たされるのだ。

 

ホチキスだけでなく、普段から何かしら不満を抱えていることがあるのなら、それはきちんと解消するために手段を探したほうがいい。文具はきっとその第1ステップとなるはずだ。

 
 

ライタープロフィール
伊藤 千織
1989年東京都生まれ。
都内でOLとして働く傍ら、天狼院書店でライターズ倶楽部に在籍中。小学生の頃から新聞や雑誌の編集者になるという夢を持っていたが、就職氷河期により挫折。それでもプロとして文章を書くことへの夢を諦められず、2018年4月より天狼院書店のライティングゼミに通い始める。
趣味は旅行、バブルサッカー。様々なイベントに参加し、企画もするなどアクティブに活動中。

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2019-01-15 | Posted in 週刊READING LIFE vol.15

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