1時間で仕込む保存食作り

第1回:「あるもの」を使って、1時間で手前味噌を仕込む!《マンションの1室で簡単にできる! 1時間で仕込む保存食作り》


2021/11/29/公開
記事:赤羽かなえ(READING LIFE編集部公認ライター)
 
 
1時間あったら、いつもは何をされますか?
 
この連載では、マンションの1室で簡単にできる『1時間で仕込む保存食作り』についてご紹介します。日本に昔から伝わってきた美味しい保存食の知恵を、狭いマンションでも手軽に楽しめる工夫も含めてお伝えしますね。
 
今回は手前味噌を1時間で仕込む方法です!
 

 
材料は煮た大豆、麹、塩のたったの3つ。
実は、大豆を煮るのに時間がかかるので、裏ワザとして「あるもの」を使います。
その「あるもの」とは、味付けをしていない水煮大豆です。
 

 
真空パックに入っているお豆さんです。ただし、味付けをしていないものを選んでくださいね。スーパーだと小分けのものが多いですが、インターネットで探すと1kg単位のものが売っていますのでそれを利用するとリーズナブルです。
 
それでは、仕込み開始です!!
 
 

<1時間で大豆を仕込む>


味噌の出来上がり約1kg
仕込みの季節:年中可能(冬がベスト)
材料:水煮大豆600g、米麹300g、塩150g
道具:ボウル、ジッパー付き食品保存バッグ2枚、キッチンペーパー、黒っぽい袋(黒いゴミ袋でもOK)
あったら便利なもの:フードプロセッサーやハンディブレンダー、すりこぎや麺棒、重石
 
 
0:00 ① 米麹と塩をボウルに入れ混ぜ合わせる

 
米麹は米粒状にバラバラになっている場合と、固まってくっついている場合があります。くっついている米麹はほぐしてバラバラにしながら、米麹と塩がまんべんなく混ざるようにします。この塩と米麹が混ざった状態を「塩切り麹」といいます。
 
 
0:05 ② 水煮大豆を食品保存バッグに入れて手でつぶす

 
水煮大豆を食品保存バッグに入れてつぶし、ペースト状にします。手でもつぶせますが、大豆の量が多い時には足で踏む方が早くつぶせます。最後は、ペースト状の大豆の中に埋もれてつぶれていない豆を探しながらつぶしていきます。袋の隅の方に大豆が集まりすぎると圧力で袋に穴があく場合があるので、時々ならしながら作業をします。大豆をつぶす作業は、フードプロセッサーやハンディブレンダーがあるとさらに簡単です。
 
 
0:20 ③ ②の食品保存バッグに①を入れて満遍なく混ぜ合わせる

 
特に保存バッグの隅の方にある大豆ペーストが①の塩切り麹と混ざりにくいので、保存バッグの外側からもみ込むようにして、満遍なく混ぜます。ハンバーグのタネくらいの固さになるまでよく練ってください。
 
 
0:30 ④ 食品保存バッグの空気を抜いてジッパーを閉める

 
入ってしまった空気を外に押し出します。手でもできますが、すりこぎや麺棒を使うとやりやすいです。空気が抜けたら、ジッパーのあたりについている汚れをぬぐって口を閉じ、半分に折ります。もう一枚の保存バッグに入れ、袋を二重にすることで、液漏れを防ぎます。
 
 
0:40 ⑤ 仕込み完了

 
保存バッグにいれた味噌は、黒っぽい袋にいれておくと遮光できます。あまり温度差がない冷暗所に保管します。冷蔵庫は発酵が進まないので、常温の環境に置くようにしてください。新聞や雑誌などの束の下に置いておくと重石のかわりになるので満遍なく発酵しますし、置き場所に困ることもありません。
 
40分ほどで味噌の仕込み完了です!
このまま半年ほど熟成させたら、手前味噌の完成です。
 

 
味噌の仕込み、意外とハードル低くないですか?
 
保存食は、冷蔵庫や便利な道具がなかった昔の日本で、食材を保存する技術として伝えられてきたので、そんなに工程は難しいものではないのです。
ポイントは「一度に大量に作り過ぎないこと」です。
本来味噌は、「寒仕込み」と言って、暦の中で「寒の時期」と呼ばれる1月末から2月初めに1年分の量を仕込むことが多かったようです。材料である大豆や、米麹の材料になる米を収穫するのが秋の終わりで、そこから農業が閑散期に入る冬が来るので、仕込む時間ができます。また、仕込む条件も整っています。気温が低い冬は、余計な雑菌が入りにくいけど味噌を発酵させる麹菌は働くことができるというメリットがあるのです。でも、今は大豆も米麹も年中手に入りますし、現代の家は衛生環境も整っているので、冬仕込みにこだわらなくても大丈夫です。1年分を1度に仕込む必要もないので、時間がある時に仕込みやすい量を仕込めばいいのです。
 
一度、味噌を作ってみたら、今度はもっと本格的に味噌を作ってみたいと思われるかもしれません。そんな方のために、よりこだわるためのポイントを3つご紹介します。
 
 

豆を選んで仕込んでみる


味噌は、大豆、麹、塩というシンプルな材料でできているので、出来上がりの味は、素材の実力に左右されると言っても過言ではありません。素材を選ぶことでより美味しい味噌を作ることができます。今回は、あらかじめ水煮されている大豆を使った味噌作りを紹介しました。簡単で便利ですが、大豆を自分で選ぶことはできません。でも、乾燥している大豆から水煮大豆を作る方法を知っておくと、色々な大豆で味噌を仕込むこともできます。大豆も色々な品種があり、味も全然違います。また、普通の大豆だけでなく、小豆や黒豆、インドカレーで使われるひよこ豆などでも味噌を仕込むことができるんです。乾燥豆から水煮の豆を作る方法はほとんど同じです。下記で大豆を煮る方法をお伝えしますが、蒸し器がある方は蒸すことをお勧めします。蒸すと煮汁に旨味が逃げないので、より甘い出来上がりになり、味も濃厚になります。
 

<水煮大豆のつくり方>
出来上がり約600g
材料:乾燥大豆300g
道具:大きなボウル、鍋あれば圧力鍋
 
①乾燥大豆を洗い、大きなボウルに大豆をいれ、水を張る。大豆の3倍以上の水を入れる。
②①を一晩おく。気温で左右されるが、5~8時間が目安。暑い時期は、水が腐らないように置く場所に気をつけたり、水を入れ替えたりします。
③大豆を煮る。圧力鍋なら30分、鍋なら時々差し水しながら1~2時間火にかける。指でつぶれるくらいが目安。吹きこぼれやすいので注意する。
④大豆の柔らかさを調整するため、煮汁を残しておくとなおよい。
⑤熱いうちにつぶす。固めだったら煮汁を足す。
冷ましてから<1時間で大豆を仕込む>の③に進む。

 
 

色々な麹で仕込んでみる


味噌の材料の一つ、麹って何なのでしょうか。麹というのは、原料の穀物を蒸して、麹菌をつけ、培養させたもので、日本の発酵食品には欠かせない素材です。麹は沢山の酵素を作り出し、豆のタンパク質を分解して旨味を作り出したり、でんぷん質を分解して甘味を作り出したりしてくれる役割があります。米を原材料とした米麹を使って味噌を作ると米味噌ができます。米麹は甘酒や日本酒、塩麹を作るのにも使われます。麹の原料となる穀物は米以外にも麦や大豆が使われます。麦で作った麦麹を使うと麦味噌が、豆で作った豆麹を使うと豆味噌ができます。麦味噌は九州地方で、豆味噌は三河地方で作られています。
 

(写真キャプション:右が半年熟成させた米味噌、左が二年熟成させた豆味噌)

 
 

色々な塩で仕込んでみる


味噌の原材料の最後のひとつ、塩は仕込んだ当初の雑菌の繁殖を抑える働きをしてくれます。なので、最初から減塩の味噌に挑戦するのはおススメできません。また、塩は麹と混ぜ合わせることで、麹の発酵の力を適度に抑えて、発酵がゆっくりと進むような仕事をしてくれます。最近、塩は色々な場所で作られるようになりました。製法もお日様で干して作る昔ながらの方法や釜で煮詰めて作る方法などがあり、塩を何種類か並べて味見してみると、味わいが全く違うのでとても面白いのです。気に入った塩を使って味噌を仕込む、ということができるのは、手前味噌の醍醐味なのです。

 

 

 

最後に熟成させる半年間という期間をどうしたらいいか、ということをお伝えします。
材料を全部混ぜ合わせるだけで、既に美味しいのですが、その状態だと塩気がまだまだきついのです。それが、時間が経つにつれて色も味噌らしくなり、旨味と甘みが増してまろやかになってくるのが本当に面白いのです。この半年間は、時々、ジッパーのあたりの空気に触れた部分にカビが生えていないか確認する程度でじっと見守ります。醤油色をした液体がでてくることもあります。それは「味噌だまり」と言って、雑菌を防いでくれる役目があるのでそのままにしておきます。味噌作りは、子育てのようなものです。つつきたい気持ちをぐっと抑えて待つ時間が麹菌達の活動を活発にし、味噌を美味しく育ててくれます。半年以降も常温に出しておいて大丈夫ですが、熟成が進み、色も味も濃くなっていきます。好みの味になったところで冷蔵庫に入れると発酵が抑えられるので味の変化が止まります。
 
手前味噌をぜひ作ってみてください!
 
もしかすると、もう市販の味噌には戻れない……! ということになるかも、しれませんよ。
 
Let‘s try 手前味噌作り!
 
お味噌の使い道
お味噌汁、きゅうりに味噌をつけて食べる、カレーやシチューの隠し味に、麻婆豆腐などの炒め物の調味料として(市販の炒め物の素がなくても家で美味しく作れます)
 

(文:赤羽かなえ、写真:たけださなえ)

 
 
 
 

□ライターズプロフィール
赤羽かなえ(READING LIFE編集部公認ライター)

広島県在住。横浜から広島に移住した当初はほぼ外食暮らしをしていたが、産直などで手に入る自然の恵みに魅せられて保存食作りを始める。今では味噌や沢庵などの発酵食品から梅干し、栗の渋皮煮などを手作りしながら、発酵仕掛人として発酵の魅力を伝えている。また、子供達が自分達の力で一汁二菜を作るキッズキッチンのインストラクターをしていた経験から、単に料理を作るということにとどまらない食文化を伝える食育の必要性を感じている。

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2021-11-24 | Posted in 1時間で仕込む保存食作り

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