第3回:大根の美味しい季節に沢庵を作る《マンションの1室で簡単にできる! 1時間で仕込む保存食作り》
2022/01/24/公開
記事:赤羽かなえ(READING LIFE編集部公認ライター)
1時間あったら、いつもは何をされますか?
この連載では、マンションの1室で簡単にできる『1時間で仕込む保存食作り』についてご紹介します。日本に昔から伝わってきた美味しい保存食の知恵を、狭いマンションでも手軽に楽しめる工夫も含めてお伝えしますね。
今回は、大根を使ってたくあん(沢庵)を仕込みます。
大根が甘くて美味しい季節になりました。私が沢庵作りを始めたのは、一冊の本を見て衝撃を受けたから。九州のとある保育園で、子供達が沢庵作りをしていたのです! 保育園児ができて、自分ができないわけがない! と、大人げない対抗心を燃やしてトライしてみました。作ってみると、とても簡単で、めちゃめちゃ美味しい。子供達が奪い合いで食べるのであっという間になくなっていきます。今では、沢山作ってお歳暮やお年賀の品として配るようになりました。家族や友人から毎年大人気の手作り沢庵です。
沢庵は、大根を干してから漬け込んでいきます。市販の沢庵だと、砂糖が多くて甘すぎたり、自分の好みの硬さではなかったりする場合があります。「もっとパリパリした食感がいい!」とか「もっとジューシーな食感がいい」とか、食感に限らず、塩加減、甘味など自分の好みってありますよね。手作り沢庵だと干す期間や調味料を調節することで、より自分の好みの味わいに近づけていくことができます。
沢庵という名前は、沢庵和尚の名前からとも言われますし、大根を漬けて保存するという「貯え漬け(たくわえづけ)」が転じてできたという説もあります。いずれにせよ、1500年代後半から作られてきた、とても長い歴史がある保存食をぜひ子供達にも伝えていきたいものです。
沢庵和尚の沢庵レシピは、50本もの大根を使い、6~12か月かけて漬け込むというもの。さすがに現代の家では、場所も時間も取れませんよね。
今回は、最初に、ご家庭で少しだけ楽しめる特別な道具は一切いらない作り方をお知らせします。
それでは、仕込み開始です!!
〈1時間で簡単沢庵漬けを仕込む〉
大根1本分(大根葉なしで重量1kg)のレシピ
仕込みの季節:12月~1月後半
材料:大根1本分(およそ1キロ)、米ぬか250g、塩40g
道具:包丁、まな板、ピーラー、ザル、ダブルジッパー付き食品保存バッグLサイズ1枚、洗い桶(洗面器やバケツでもOK)、重石(ペットボトルや米袋など重量があって平らなものでもOK)
〇事前準備(干す作業10分ほど)
大根は、ピーラーで皮をむいて、長いものは真ん中で切って、それぞれ4分割します。
天気に応じて1~3日ほどザルに入れて干します。長く干すと、食感がパリパリと噛み応えよくなります。短めだとジューシーな食感になります。
表面の乾き具合を見ておくと次回に作る時の参考になります。天気が悪い時には、部屋に入れておく方が無難です。日当たりがよくなくても風通しが良ければ大丈夫です。もしも、外干しできない場合には、室内の陽あたりのよいところに置いたり、扇風機などを使ったりして、干します。干す目安は、大根が曲がるくらい。
〇本漬け作業
0:00 ①食品保存バッグに米ぬかと塩を入れ、口を絞って持ち、振って混ぜる。
塩の塊があったら袋の上から潰しながら、塩の白さがなくなるまで袋を振ります。
0:05 ② ①に干した大根を入れ、ぬかが万遍なく混ぜ、空気を押し出すようにして保存バッグのダブルジッパーをしめる
0:10 ③洗い桶などに、②をいれ、重石を置く
これで仕込み完了です! 水が上がってきたら、重石を少し軽くして、常温で7~10日ほど漬けて完成です!
重石をなるべくたくさん載せておくと水のあがりが早いです。水が上がって、ぬかが水を吸い、水分がみえるようになったらカビがくるリスクが減ります。1日1回くらいもみ込むようにして大根にぬかが隠れるようにしておきます。特に干す時間を長めにとった場合、大根の水分が少なくなっているので、水を早く上げるためによくもむといいです。
全体的に水が上がって来ると、外側に水分がしみてくるので、重石に米などを使う場合にはビニールやラップなどを敷くと汚れません。
簡単沢庵漬け、完成です! 完成したら、冷蔵庫で保存します。
食べるときには、必要な分だけ取り出して、ぬかをぬぐうか、洗い流してから食べます。残ったものは、もう一度、つけ床が大根をきちんと包み込むように袋の外からならして保存します。
1か月程で食べきるようにしましょう。
砂糖を入れないレシピにしていますので、干した大根の甘さが楽しめますが、もう少し甘い方がいいな、という場合には、砂糖を20gほど、ぬかと塩を混ぜるタイミング(①)で入れて漬け込みます。
ここまでは、特別な容器などを使わずに本格的な沢庵を漬ける方法をお伝えしました。この方法でも十分に美味しいのですが、味わいは少し浅いのです。こちらで試してみて美味しいなと思われた方は、ぜひ、本格的な沢庵作りに挑戦してほしいです!
〈1時間で本格的な沢庵を仕込む〉
仕込みの季節:葉付きの大根が手に入る場合には、11月後半。
※葉付きの大根が手に入らない場合には、2月上旬に干す作業が終わるくらいまでに作業をする(3月になると急に気温が上がるため)
材料:大根好きなだけ(今回は6本、入れる容器に合わせる)、つけ床セット(米ぬか200g、塩80g、細切りにした昆布、柿の皮を干したもの、鷹の爪適量)
※昆布や柿の皮はなかったら入れなくてOK
道具:荷造りひも、ぬれぶきん、ボウル、キッチンバサミ、大根を漬けこむ容器、重石、容器に入るなるべく平らな皿(漬け込み樽の場合、付属の押し蓋を使う)、新聞紙1枚、
〇事前準備(干す作業20分ほど)
この時、根元から10㎝ほど上の部分を縛ります。これは、物干し竿にひっかけやすくするためです。縛った後に、ひもを起点に1本の大根を1回転させると竿から大根が抜け落ちにくくなります。
葉付き大根がない場合には、大根を3本ほど並べ、ひもで縛って竿に結びます。大根を互い違いに配置すると傾かずに干すことができます。
大根を干している間は、洗濯は干せないので、おうちの状況に合わせて工夫してください。
2週間~1か月ほど干します。大根がくの字に曲がったら、漬け時です。
〇本漬け作業
0:00 ① 大根の表面の汚れをぬれぶきんで拭き取る
葉をつけたまま干した場合には、葉の根元を切って葉と大根にわけます。
0:10 ②つけ床セットを作る
つけ床セットの材料を計量し、ボウルに入れて満遍なく混ぜます。
つけ床は、一度に大量に作りすぎるともったいないので、レシピに書いた量を一単位として作り足していきます。昆布や柿の皮はキッチンバサミで小さく切って混ぜ込んでいきます。昆布は旨味のもと、柿の皮は甘味をつけてくれる役割がありますが、入れなくても大丈夫です。
鮮やかな黄色の色をつけたいときには、ウコンの粉か、くちなしの実を割ってつけ床セットに混ぜ込むといいですが、なくても不思議なことにうっすらと黄色っぽい仕上がりになります。
0:15 ③容器の底につけ床を多めに敷き、その上から大根を詰めていく
敷き詰めたつけ床セットの上に高さが同じになるように折って組み合わせながら大根を詰める。その上からさらにつけ床セットを注ぐ……という作業をします。大根葉が残っている場合は、大根を詰め終わって糠をかけた上に載せます(大根葉を入れると発酵が早くなるそうです)。最後、つけ床セットで一番上の部分を埋めて平らにならします。その上に、押し板がある方は押し板を、なければ平らで容器に入る大きさの皿を置いてその上から重石を置きます。押し板や平らな皿を置くことで、重石の重さが均等に大根にかかるので、漬けムラが出づらくなります。
これで、仕込み完了です!
重石を載せると蓋が閉まらない場合には、新聞紙で覆ってヒモでしばり、フタにします。最初の1週間程度で、ぬかの表面に水気があがってきたら、重石は少し軽くして、外や温度が低い冷暗所で保存します。1か月くらいしたら食べられますので、必要な分だけ取り出して、ぬかを落として食べて下さい。
2月くらいまでは容器に入れたままで大丈夫ですが、3月に入ったらあたたかい日も出てきますので、つけ床がついた状態で保存容器に入れ、野菜室で保存しましょう。3月いっぱいくらいまでに食べきるのがベストです。
残ったつけ床をぬか床にする
大根を全部引き上げたつけ床をそのまま捨てるのはもったいない! これを機会にぬか漬けを始めてみませんか? ぬか漬けは本来、美味しくなるまでに何度か捨て漬けをしなければいけないのですが、沢庵が使っていたつけ床は、捨て漬け不要ですぐにぬか漬けが楽しめます。とりあえず、野菜室に入っている野菜を漬け込んで食べてみてください。朝、野菜を漬け込めば、夕方にはお漬物の出来上がり。忙しい夕飯に、簡単に一品を加えることができますよ。
Let‘s try 沢庵漬け!
沢庵漬けの使い道
そのまま食べるだけでなく、細かく刻んでチャーハンに入れたり、巻き寿司の具にしたり、炒めたり、納豆などで和えたりしてアレンジも楽しんでください!
*おまけ*マンションで保存食作りを楽しむ一工夫:重石の話
重石は、漬物や味噌、梅干しなどの漬け込みに欠かせません。素材に塩をまぶし、重石で重量をかけることで、素材の中から水分が押し出され、水があがってくるのです。上がってきた水分が仕込んだ保存食の空気を遮断するのでカビづらくなります。でも、保存食用の大型容器や重石は、使わない時にしまう場所に困るという難点があります。そこで、重石の代用案を上げてみますね。
〇ペットボトルや密閉式の容器に水をいれて重石として使う
→ガラス瓶は倒れて割れると危険なのでなるべく使わない
〇辞書など思い本や雑誌を積み上げる
〇未開封の米袋、塩など
汚れたら困るものはビニール袋などに包んで使って下さい。
(文:赤羽かなえ、写真:たけださなえ)
□ライターズプロフィール
赤羽かなえ(READING LIFE編集部公認ライター)
広島県在住。横浜から広島に移住した当初はほぼ外食暮らしをしていたが、産直などで手に入る自然の恵みに魅せられて保存食作りを始める。今では味噌や沢庵などの発酵食品から梅干し、栗の渋皮煮などを手作りしながら、発酵仕掛人として発酵の魅力を伝えている。また、子供達が自分達の力で一汁二菜を作るキッズキッチンのインストラクターをしていた経験から、単に料理を作るということにとどまらない食文化を伝える食育の必要性を感じている。
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