7. いつもあなたのそばに〜2次関数〜《オトナのための中学数学》
記事:吉田健介(READING LIFE編集部公認ライター)
さて、皆さんは2次関数と聞いて、どんなことをイメージするだろうか。
「2次関数? 何だったっけ?」
「放物線のことでしょ?」
「さっぱり分からないや」
反応は様々だろう。
関数なので、グラフが登場する。もちろん式も。
そもそも関数とは、1つの数字を決めると、その数字に連動して、もう1つの値も決定するような関係のことを言う。例えば、Aに2を入れたら、Bが7になる、みたいな。Aボタンを押したら、パンチを繰り出す、みたいな。
それはさておき、とにかく2次関数と聞いて、数学の時間を思い出す人も多いだろう。まあ名前的にも、数学感が漂いまくっているわけで、毎朝飲むコーヒーや、駅前のコンビニのように、いつも目にするものではない。結局の所「何それ?」という反応になってしまいやすい。
ではこの2次関数って、私たちの周りに、どういった形で携わっているのだろうか。何かの役に立っているのだろうか。目には見えないけれど、縁の下的な裏方的存在なのか。はたまた、外を吹く風のように、いつも私たちの周辺に自然と存在しているものなのか。
まず、2次関数のグラフ、覚えているだろうか。「放物線」と言うのだが、その名の通り、物を放り投げた時にできる形が名前の由来。
何でもいい、例えば、手元にある消しゴムを、ヒョイッと上に投げたとする。スルスルと上に上がり、ある程度の高さまで到達すると、次は下へ落ちていくはずだ。この投げ始めからキャッチするまでに辿った消しゴムの軌跡が放物線だ。
つまり、ゴムのチューブを両端からグネッと曲げたような形になっている。
ちなみに、放物線を式で表すとになる。には数字が入る。
では、次に2次関数をよりリアルに、身近に、体感してもらおう。
先ほどの消しゴムを次は上から落としてみる。この場合、落とすだけだ。指先からそっと放すだけ。上投げは禁止だ。もちろん下投げもダメ。とにかく、パッと指を消しゴムから放して、床まで落下させてみてほしい。当然、下に落ちるはずだ。
「えーと、物体は上から下に落下します」と学校の先生が言う以前に「そんなこと知ってるよ」となるくらいもはや周知の事実。消しゴムは音もなく、一直線に下へ吸い込まれる。もしかしたら、瞬きする必要もないくらいのスピードで落ちていくはずだ。ストップ! そこ! つまり、落下している最中。その時間、まさにあなたは2次関数を目の当たりにしている。具体的に言うと、を体感しているのだ。まさに、2次関数ワールド。
物が下に落ちる時、距離と時間の関係はになる。この場合、が高さ(m)で、が時間(秒)だ。つまり、高さ=4.9×時間×時間。
「へーそうなんだ……」
まだ。まだだ。これで終わりではない。実はを使うと、かなりの精度で物の高さを計測することができる。
仮に、仮の話だが、今あなたは2階の窓から地面までの高さを知りたくなったとする。なぜ知りたくなったのかは置いといて「いったいどのくらいの高さなんだろう」という疑問が頭に浮上し、何mくらいあるのか知りたくなったとする。できれば猛烈に。
この場合、長いメジャーを使わなくても、手元にある身近な道具で高さを計測することが可能だ。それは、消しゴムとストップウォッチ。絶対に消しゴムである必要はない。小石なり、ボールなり、下に落ちても差し支えない物なら何でもいい。ストップウォッチはスマホにも搭載されているはず。この2つを使うと、高さを容易に図ることができる。
例えば、2階の窓から消しゴムを落とし、下に落ちるまで1秒かかったとしよう。
この場合、1をのに入れて計算をする。
つまり、2階の窓から地面まで約5mあるということが分かるのだ。
もし、ビル級の高さから試したくなった場合は、落下の瞬間を目視できないだろうから、友人なり家族なりの連携プレーが必須となる。その辺りはうまくやってほしい。ただし、安全には充分注意して。
ちなみに逆も可能だ。
つまり高さが分かっている場合、落下するまでの時間を同じように計算で出すことができる。
仮に、そう仮にだ、東京タワーの天辺から消しゴムを落としたくなったとする。そんなこと滅多にあるものではないが、なぜか東京タワーの天辺から落としたくなったのだ。この場合、直接現地へ行って実験をすることはかなり厳しい。と言うか不可能だ。
でもご安心を。を使えば、東京タワーの天辺まで行かなくても、落下時間を知ることができる。東京タワーは333mあるので、に333をいれる。そうすると約8秒ということが分かる。つまり、東京タワーの天辺から消しゴムを落とすと、約8秒後に地面に到達するということだ。上からの合図で8秒カウントして、下でキャッチ! みたいな遊びができなくもない。何はともあれ、意外とすぐに到着するものだと分かる。
他にも、東京スカイツリー(634m)なら約11秒、京都タワー(131m)なら約5秒という結果になる。
ちなみに、あくまで大まかな計測であることは理解してほしい。なぜなら、物が落下する時の空気抵抗や、指から放す時の摩擦など、外からの刺激を考慮していないからだ。とは言え、その辺は誤差範囲、ということで、大体の値は計算で求めることが可能というわけだ。
さてどうだろうか。ここまで読むと、2次関数に少し親しみが湧いてきたのではないだろうか。
2次関数は、当たり前のように私たちの生活の中に存在している。何かの役に立つ、というよりは、呼吸に必要な酸素のように、いつもそこに存在している。
ちなみにこの他にも2次関数の世界は世の中に存在する。その話はまた次の機会に。
さあ、消しゴムとストップウォッチを持って、気になっていた高さを今すぐ測りに行こう! ただし安全には十分気をつけて。
❏ライタープロフィール
吉田 健介(READING LIFE 編集部公認ライター)
現役の中学校教師。教師が一方的に話をするのではなく、生徒同士が話し合いながら課題を解決していく対話型の授業を行なっている。様々な研究授業で自らの授業を公開。生徒が能動的に学習できるような授業づくりを目指している。
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