小説好きほどどハマりする台湾マンガの魅力!《週刊READING LIFE Vol.183 マイ・コレクション》
*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
2022/08/29/公開
記事:すじこ
突然だが、皆さんは「台湾」ときいて何を思い浮かべるだろうか。
きっと多くの方は、「グルメ」というイメージが浮かぶと思う。
ずいぶん前に空前のブームとなったタピオカや、台湾かき氷、ジーパイなど、台湾発の食べ物が若い人を中心によく食されるようになった。
今や、街中には台湾料理の店があちらこちらに見受けられ年々台湾が身近に感じられるようになっているきがする。
そんな中、台湾のある”カルチャー”が密かにブームになっている。
それは、台湾マンガ。
台湾マンガはその名の通り台湾で発行されているマンガのことで日本語に訳されているマンガも多いため、密かにブームになっているとのこと。
海外のマンガといえばアメリカのマンガ、通称「アメコミ」が有名だが日本人の中には「アメコミ」は馴染みがない方が多いのではないだろうか。
「アメコミ」は日本のマンガとは違い、ヒーローが街の悪党を退治するなど目に見てわかりやすい非日常感を描いている作品が多く、対し日本は非日常感を味わえる作品もある一方、日常の風景や人の心情に寄り添った作品も多い。日常に寄り添ったマンガが好きな人にとっては「アメコミ」は苦手何かもしれないがそんな方にこそ読んでほしいのが台湾マンガなのだ。
台湾マンガは人の心情を描いた作品が多く、登場人物も日本と同じアジア系の台湾人なので物語への感情移入がしやすい。
また絵のタッチも日本の作品に似ているため、海外作品ではあるが特別違和感を感じることなく読める。
そう言ったこともあり、今台湾マンガが日本人に読まれているのだ。
私も、非日常系のマンガより、日常の風景を切り取るマンガの方を好むタイプなので、すっかり台湾マンガの虜となっている一人だ。
そんな台湾マンガ魅せられた私が今読むべき作品をご紹介しようと思う。
それが「緑の歌」だ。
この作品は恋愛小説や文章を読むのが好きな方に是非オススメの作品だ。
《物語》
台湾・台北で暮らす緑(リュ)は日本の文化を通じ、あるバンドマンと出会う。
そのバンドマンと日本の音楽や日本の小説、日本のカルチャーを共に楽しむ中で緑の中で次第に恋心を描くようになるのだが。
日本の音楽、小説、カルチャーそしてこれからも恋心。
全てが繊細に、全てが美しく混ざり合った、1人の少女の青春物語。
物語としてはシンプルな青春物語という感じだ。
女の子がバンドマンに恋をするという典型的なストーリーではあるが
その典型的な雰囲気を出さないのが「緑の歌」の魅力だ。
青春時代感じた「会いたいけど素直に会いに行けない」もどかしい気持ちや、好きなミュージシャンのライブに彼と行くドキドキ感など、思わず「あまーーーい」と叫んでしまいそうな描写が繊細なタッチで描かれている。誰しも1回は経験をしたことがあるあの甘酸っぱい記憶を濃縮したような作品だ。
そこまで物語にスリルがあるわけでも、恋のライバルが出てくるわけではないが、なぜあそこまで読み応えがあったのだろう。
後から思うと不思議な作品だ。
日本で話題になる「恋愛マンガ」というものは、恋のライバルや、恋を邪魔する刺客が現れるなど、万人があまり経験しないことが起こることが多い。
(花より男子でいう花沢類みたいな立ち位置の人が必ず現れる)
ある意味の「非日常感」を入れることでマンガが脚色され、物語が盛り上がりのが「恋愛マンガ」の醍醐味である。しかし、「緑の歌」はその脚色がない。
恋のライバルが出てくるわけでも、恋愛した人が特殊な人間というわけでもない。
(花より男子でいう平凡な女の子と財閥の息子の恋愛みたいな特殊な設定ではない)
そこにあるのは普通の大学生と普通の青年の恋愛。
誰しも経験がある甘酸っぱい恋愛ただ一つだ。
どうして、どこにでもある恋愛をここまでマンガに閉じ込めることができたのだろうか?
そこには冒頭に書いた「小説好きに読んでいただきたい」に関係している。
まず、この漫画はセリフではない文章が主人公の心情がセリフ口調で書かれているコマが多い。
まるで、一人称の小説を読んでいるかのように感じることができる。
そして、漫画の絵に対して、セリフがあまり多くないというのも特徴の一つだ。
代わりに主人公や登場人物の表情で今の心情を語る描写が多い。
この「綺麗な文体」と「セリフが多くない」という日本ではあまり見かけない漫画のスタイルが
まるで小説を読んでいるような新しい感覚へと誘ってくれる。
「緑の歌」という漫画はまさに「小説を読んでいるような漫画」なのだ。
そして、小説には「行間」というものがあるがこの漫画にもちゃんと「行間」というものが存在する。「行間を読む」ことで主人公や登場人物の心情をより深く感じ取ることができる行為で物語をより味わうことができるのだ。
これが、「緑の歌」がより心にしみる最大のポイントだと思う。
漫画は情報量を小説よりも多く入れることができるというメリットがあるが、そのメリットが逆に「行間」を入れる隙を与えていない漫画が多い中「緑の歌」はうまく「行間」を取り入れることでより深い作品になっている気がする。だから、特別な事件やシチュエーションがなくっても楽しく読めるし、繊細な感情の移り変わりも表現できるのだと思う。
つまりこのマンガは「行間」が読める人ほどより没入しやすいのだ。
もちろん、マンガなので「行間」とかわからない方も楽しめるので安心してほしい。
だが、普段「行間」を読むことに慣れている小説好きの方はさらにこのマンガを楽しめると思う。これが私が「緑の歌」を小説好きにススメる理由だ。
また、日本の文化が多く取り入れてているところもこのマンガの魅力のひとつだ。
2人を引き合わすツールに日本のカルチャーのため、日本人でも没入して読み切ることができる。そういった意味でも「台湾マンガに挑戦してみたい!」という方にはかなりオススメな一作だ。あなたも緑の恋愛に思いを馳せてみてはいかがだろうか?
今台湾マンガが熱い!
各出版社がフェアを開催したり、各所でイベントが開かれていたりと、台湾マンガブームがちゃくちゃくと日本に押し寄せている。今年の秋も海外に行きづらい状況が続くと思う。
そんなときこそ本棚だけでも台湾の風を感じたいところ。
日本のマンガもいいが少し羽を伸ばして日本と似たようでどこか新鮮味を感じる台湾マンガを集めてみるのもいいだろう。
マンガ好きなあなたも、小説好きのあなたも虜にさせる台湾マンガの世界。
この秋は、台湾マンガの魅力的な世界をちょっとのぞいてみてはいかがだろうか?
□ライターズプロフィール
すじこ
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
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