老舗料亭3代目が伝える 50までに覚えておきたい味

第32章 深夜のラーメンを美味しく食べられる人であれ《老舗料亭3代目が伝える50までに覚えておきたい味》


2023/4/4/公開
記事:ギール里映(READING LIFE編集部公認ライター)
 
 
「そろそろ、気をつけたほうがいいんじゃない?」
 
そんな言葉を家族や友人からかけられるようになるのは、年齢を経てきたらある意味当然のことで、なんならすでに何か大きな病気を体験していたり、またはいわゆる生活習慣病のようなもので日常的に薬を飲んでいる、という方も、アラフィフとなると多いのではないでしょうか。
 
この歳になると、個人差はもちろんあるけれど、体のあちこちにいろいろとガタがきていることに気付かされます。
徹夜も楽々できていたのが夜も12時を回ると眠気に勝てなくなったり、ちょっとした距離を小走りするだけで息が切れたり、というふうに、体の衰えを感じることに加えて、花粉症や鼻炎が急にひどくなったり、原因不明の頭痛やめまいで悩まされたり、病気なのか、そうではないのか、どちらかよくわからない瀬戸際で、自分の年齢や健康の課題に直面するタイミングがどんな人にも必ずやってきます。
 
つまり、そろそろ健康に気をつけたほうがいいんじゃないですか、ということです。
 
またむしろ、健康に気をつけています、という方も必然的に増えるのがこの年齢というもの。自分自身で気づき、改善しようと健康情報を探し、良さそうなものを片っ端からやってみる、という方も多いかもしれません。
 
血圧を下げるのはコレ、血糖値にはアレ、尿酸値にはソレ、というように、健康に気を遣うばかりにサプリメントや健康食品に対する出費がかさんだり、効果がありそうな食材だけを食べる偏ったダイエットをしている方も少なくありません。実際に効果があるのかないのかがよくわからないまま、ただただ宣伝の謳い文句を鵜呑みにし、あたかもソレを摂ることで体調がよくなっていると自分で暗示をかけていることに、薄々自分で気づいてはいるけれど、それを敢えて無視しようとしている自分がいたりします。
 
「野菜ジュースを飲んでいるから安心」とばかりに、連日カツ丼や牛丼でランチをすませたり、「プロテインを飲んでいるから安心」とばかりに、たっぷり糖質を含んだ清涼飲料水を毎日大量に飲んでいたり、一見健康に気を遣っている風を装っていながら、その内情はあまりにもお粗末で、またそれを自分で薄々気づいていながらも心の声を聞かないように耳を塞いでしまっている、そんな往生際の悪い食べ方は、格好悪いなと感じます。
 
中途半端で往生際の悪い食事の選択をしている人は、往々にして人生に対する姿勢も中途半端だったりします。
 
健康に気を遣いたいなら、本気で、正しい方法でやってほしい。
またそうでないなら、思いっきりジャンクでも、なんでも楽しみ、今生きている命を謳歌したほうがいい。
 
アラフィフにもなったら、とにかく堂々と、自分の食べ方、生き方ぐらいは自分の確固たる選択であってほしいものです。
 
 

健康を志すなら


ただ闇雲に健康になりそうな食品だけをつまみ食いしていても、決して健康になることはありません。一般にメディアなどで宣伝されている食材や商品は、あくまでも一般的な知見の、その中でもある側面を述べているにすぎないのであって、必ずしもそれが正しい情報で、かつ自分に当てはまる情報かどうかは、定かではありません。
 
今の時代は昔と違って、食の生産、流通の現場が大きく様変わりしており、昨今いくらSDGsだ、環境保護だと謳われながらも、なかなか大量生産、大量消費される食の実情は変わることがありません。24時間どこもかしこも食べ物で溢れていて、尚且つそれらは色艶よく見え、そして日持ちがするように大量の食品添加物が加えられています。
 
添加物が体に悪いのかそうでないのかはまだ検証の最中ではありますが、発がん物質が検出されたとか、いろいろな報告があることは事実です。また現実に添加物を摂らなくなると健康レベルが上がると感じる人が多く、あながち添加物が体に与える影響は無視できないのではないかと個人的には思います。
 
しかし実は、本当に体によくないのは添加物そのものではなくて、不自然さを生み出しそれをあたかも当たり前のように見せている食の流通・販売のプロセスなのかもしれません。
 
そもそも24時間ピカピカの食材がコンビニの棚に陳列されているほうが自然の摂理からするとありえないわけです。本来は夜になると暗くなり、あかりが消えて、容易に買い物などできるはずがありません。また自然界では食材そのものもいつでも潤沢に用意されているわけではありません。自然の世界では、自分の食料は自分で狩りや採集をして集めなくてはならないので、それを考えるといかに今の社会の食事情、食の流通は自然からかけ離れているかを感じます。
 
これらの「無理」そのものが、私たちの体に負担をかけ、健康を脅かすことに繋がっているのでは、と、私は密かに思うのです。
 
 

実は簡単、健康になる食べ物、食べ方


そんな複雑な食事情はさておいて、実は健康になる食べ方というのはいたってシンプル、簡単です。
それはつまり、何を食べたらいいか、ではなく、何を食べないかを決めることなのです。
 
今もし自分に健康の課題があるとすれば、それは今の食べ物、食べ方が間違っているというサインです。であれば今やっていることの何かを変えれば、当然ですが結果は変わります。この時多くの人は「何を食べたらいいの?」と追加することばかりを考えますが、ここが実は一番食事制限がうまくいかない理由の一つです。
 
体は本来の機能上、不健康になるために存在していないので、放っておくと自然治癒力を発揮して、勝手に改善改良していきます。つまり、少々体にダメージを与えたところで、体は自分でそれを治癒しようとする力を持っていると言えます。
しかしなかなか症状が改善しない、もしくは悪化していく、ということがあるのだとすれば、それは「足りないこと」が原因ではなく「摂りすぎている」ことが原因であることが多い。であれば摂りすぎている何かを減らす、もしくは無くさない限り、根本改善は見込めないのです。
 
薬で一時的に症状を抑えこんだとしても、それは根本治癒ではありませんので、その一瞬が終わればまた同じことを繰り返します。いつまでもこうやって体を騙し騙し使っているのではなく、また適当な食情報に振り回されて、健康によいことをしているつもりで実は体をさらに痛めてしまっているようなことになるのではなく、本気で、自分の心身を整えてくれる食べ方をしたい。
 
 

健康になることだけが大事なわけではない


確かに健康は大事だし、何においても健康な心と体があることは基本、ということは理解しています。しかしその上で敢えて、健康になる食の選択をしない、という選択もあります。
 
健康を追い求めるばかりに、その時に体験すべきことを体験できなかったり、何かを過度に我慢するようなことがあれば、それが却ってストレスとなり、自らを攻撃しかねません。そのため、適当に健康そうな食事をすることによって、ちゃんとやってるわよ、と免罪符を求めるのではなく、ここは敢えて、体によくない食べ方であろうとも、潔く楽しみたい。
 
例えば、深夜に食べるラーメン。
 
外出したとき、とくにお酒を飲んだあとに、締めのラーメンを食べるという人は少なくはありません。しかしそれをしているほとんど全ての人が、その習慣が体に悪い習慣であろうことを頭で理解しています。真夜中に、脂っこいもの、しかもそれも、小麦製品。どう考えたって、体に良い要素は何一つありません。
 
だけれども、夜、ひっそりとオープンしているラーメン屋はあちこちにあります。帰宅する直前、ほっと一息、温かい1杯のラーメンが、どれほど人の心を元気にすることか。体によくないであろうことは皆、重々承知しています。しかしそれをわかっていても食べたいと思う温かな1杯のラーメンの力は、健康だなんだ、という指標では計り得るものではないのです。
 
疲れ切った心だったり、体だったりを心底から癒して元気にする深夜のラーメンのパワー。
これを健康的かどうかという指標で捉える方が、もしかしたら間違っているのかもしれません。
健康は大事、これになんの異論もありませんが、しかしそれを敢えて外す、体に悪いとわかっていても敢えて思いっきり楽しむ。自信を持ってその食べ物を選択する。そんな潔さを持つことは、大人でないとできない食べ方かもしれません。
 
 

長年しみついた食生活や食習慣から見えるその人の在り方


さすがにまあまあの年齢を生きていれば、自分なりの食べ方や食習慣、こだわりといったものがあります。そしてその習慣は、健康的なものもあれば、そうでないものもある。
 
朝ごはんは食べないようにしている、とか、コーヒーには必ず砂糖とミルクを入れる、とか、夜は炭水化物を食べない、とか、ありとあらゆる食べ方、食べ癖といったものを、少なからず人はもっているものです。
 
かく言う私も、いまでこそ「なんでも食べる」になりましたが、その昔にはビーガン食、ベジタリアン食を選択していた時期もありましたし、炭水化物抜きをやっていた時期もありました。なまじ食養生を学ぶようになってからは、それこそありとあらゆる食、食べ方を試し、こだわりを持っていたことがありました。実際に体質改善や健康になることをゴールにしたら、どうしても少し厳しい食事制限にならざるを得ない。「なんでも食べていい」ということは、健康を回復する上であり得ないこと、と言っても過言ではありません。
 
いろいろな試行錯誤の上、今にいたり、今ずっと継続しているような食習慣が、誰にでもあると思います。それがいい、悪い、と言っているのではありません。それらに固執していることが、つまり自分の変化や成長を止めてしまっていることに繋がる、ということを申し上げたいだけです。
 
 

食べ方は生き方そのもの


この世代になると、人は大きく2種類に分かれます。
それはつまり、挑戦し続けたい、成長し続けたいと願う人と、そうではなく、諦めてしまう人。歳だから、という理由で、自分を成長させたり、何かを成し遂げることを諦めてしまっている人。こういう2種類に、大きく分類することができる、と私は感じています。
 
皆様は、どちらでしょうか。
 
どちらを選んでも、それがいい、悪い、ではありません。あくまで選択ですし、個人の自由ですから、どちらの生き方を選んでおり、それはその人の生き様そのものですから、それを良い悪いを論じているわけではありません。
 
しかし私は、諦めてしまうのはちょっともったいない、と感じています。
 
もし今、まだ元気で、基本的な健康をキープしていて、自由に動かせる体があるのであれば、その体を使って何か、世の中にとって役に立つことや、人に喜んでいただけることにチャレンジし、自分を成長させていく、という選択をすべきではないか、と思うのです。
 
一体なんのために心と体があるのでしょう。
 
ただ存在するだけで価値がある、とも言われますが、なかなかそうとは信じがたいし、だから私たちは苦悩する。しかしもし、動く体をもっているのなら、それを何か、人の役にたつことに対して「動かして」いくことが、今やるべき今世の役目だと思うのです。
 
全てのことには理由があるし、全ては必然で起こっています。
 
自分がどう考え、どう生きるかの選択は、自分たちそのものを表しています。
また何をどう食べるか、の選択も、私たちそのものを表しています。
 
適当なものを選んで適当に食べていると、適当な人になります。
意思をもち、自信を持って食を選んでいると、人は意思をもち、自信をもって人生を歩んでいきます。
 
 
食べ方には、その人の人生観や生き様がそのまま現れます。
 
健康情報に振り回されて、取らなくてもいいものをたくさん食べ、却って体や心に負担をかけような食べ方をするのか、楽しむ時は楽しむ、と、濃淡をつけて食を楽しみ、慈しむ食べ方をするのか、どちらが心地よいエネルギーになるのかは、ちょっと想像してみたらすぐにわかります。
 
だから、とにかく、自信を持って、自分が何を食べるかを選択していただきたい。
それがつまりは自らの、生き方の根幹を形作るものだから。
 
 
《第33章につづく》
 
 

□ライターズプロフィール
ギール里映(READING LIFE編集部公認ライター)

READING LIFE編集部公認ライター、経営軍師、食べかた研究家。京都の老舗料亭3代目として生まれ、現在は東京でイギリス人の夫、息子と3人ぐらし。食べることが好き、が仕事になり、2015年にゼロから起業。一般社団法人食べるトレーニングキッズアカデミー協会の創始者。2019年には書籍「1日5分!子どもの能力を引き出す!最強の食事」、「子どもの才能を引き出す!2ステップレシピ」を出版。

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