週刊READING LIFE vol.223

あなたは私の後ろからしかついて来れない《週刊READING LIFE Vol.223 AI時代に、私たちは何を書く?》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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2023/7/10/公開
記事:丸山ゆり(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
「えっ、しゃべるんだ」
 
つい2日ほど前、わが家のリビングのエアコンを買い替えた。
以前のエアコンの取説を見てびっくりしたのだが、それは2009年に購入していたものだった。
今のマンションに引っ越してから、一度、エアコンは取り替えをしたのは覚えていたので、それで、なんとなくまだ新しい気分でいたのだ。
ところが、時間が経つのは早いもので、すでに14年目を迎えていた。
なぜ今回、エアコンを買い替えたかというと、バルコニーに出た時に、リビングのエアコンの室外機から「カラカラ」という小さいけれど乾いたような音がしたからだ。
家電の買い替えは、壊れてからでも大丈夫なモノもあれば、壊れる前に絶対に買い替えたいモノがある。
冷蔵庫とエアコンは後者である。
特に、この暑い時期のエアコンは壊れてしまってからでは遅いのだ。
なので、気になる音を聞いた日、その足で家電量販店に行って購入し、昨日入れ替え工事をしてもらったのだ。
 
入れ替え工事をしてくれた作業員の方が、新しいエアコンの試運転をしてくれた際、「冷房をつけます」とかなんとか、エアコンがしゃべったのだ。
その機能にびっくりしていると、「上位クラスのモノはこんなふうにしゃべるんですよ」
と作業員の方が笑って言っていた。
 
「へぇ~、そうなんですか」
 
エアコンがしゃべることに驚いたそのすぐあと、渡されたリモコンには、「AI快適おまかせ」というオレンジの大きなボタンがあるのを発見した。
 
「AIが選んでくれるんですね」
 
そんな話をしながら、私は感心することばかりだった。
なるほど、エアコンも14年の間に、AIのお世話になるようになったんだな。
確かに、以前のエアコンでは、エアコンに表示される室温を見て、それならば何度くらいにしようかと、自分で室内の設定温度を決めていた。
ところが、今日からは、このAIの人工知能が外気温と室内気温を把握して、人が生活するうえで快適な温度や湿度を選んでくれるのだろう。
それはそれで、ありがたいことではある。
 
それから、Wi-Fiにつないで、スマホにアプリを取り込むと、外出先からもエアコンの操作が出来るらしい。
これからの季節、家に帰っても室内がモワっとした熱気を帯びていることが多くなる。
なので、帰宅時間に合わせて、エアコンが作動していてくれたら家のドアを開けた瞬間から爽快になれる。
やっぱり、こういう点は便利だし、ありがたいと思う。
 
そう思うと、AIがやってくれることは、確かにそれを操る人間の行動や好みを学習して、卒のない判断を即座にして提供してくれることだろう。
これまで、人間である私たちが時間とエネルギーをかけて、自ら動いてやっていたことを請け負ってくれているのだからありがたいことでもある。
 
つまり、「この私がやらなくては絶対にいけないこと」、ではないのだから、AIでも誰でも代わりがきくのだ。
その分、そのことを考えずに、動かずに済むことで、私は他に時間もエネルギーも使えることになる。
 
さらには、最近、様々なところで話題にあがっているチャットGPT。
読書感想文を書いてくれたり、時には悩み事の相談にも乗ってくれたりするらしいから、どこまで進化するのかと目を見張るばかりだ。
さらには、話し相手にもなってくれるそうで、もう友だちも無理に作らなくてもいい時代がやってきたのかと思うとちょっと引いてしまう。
 
こんなふうに、これまでの生活の中で、私自身がやっていたことや、他の誰かとコミュニケーションを取ってやっていたことも、代わりにやってくれる存在が出来たのかと思うと何だか不思議な気持ちになってくる。
そう、単純な作業ほど、AIがやってくれるとありがたいことなのかもしれない。
 
それじゃあ、今私が毎日書いている、ブログやメルマガなどはどうなんだろうか。
例のチャットGPTを使ったら、無駄のない、センスの良い文章を書いてくれるのだろうか。
私の仕事である、「断捨離」を打ち込んだら、ササッと理解して、それに適した文章を排出してくれるのだろうか。
確かに、すでに「断捨離」は、この世の中に出ているもので、AIの人工知能を使うと、その10年と少しの歴史をサッと把握して、上手にまとめてくれるのだろう。
 
AIは、きっと、過去を網羅するのは得意なんだろう。
過去の記録や情報を集めるのは人間とは比べ物にならないだろう。
で、そこから未来を予測もしてくれるのかもしれない。
 
でも、私の頭の中と、気持ちに関しては、過去のモノだけではないのだ。
これからやってゆきたいことや理想がたくさんあって、それらは変化してゆくのだ。
そう、それらは間違いなく、日々変化していっているものなのだ。
昨日と今日では、考えることも、望むことも、気持ちも違う。
そんな私の未来の思いを予測できるのは、私自身でしかない。
過去の経験値からの計測では、私自身の全ては語れないはずだ。
だって、時間は前から流れてくるのだから、これから先のことは誰にもわからない。
そう、この私にだって、今現在、先のことなんて、何一つ確信が持てることなどなく、わからないことばかりなのだから。
 
だから、毎日、今、自分が感じること、思うことを、その時々、自分の心に向き合いながら、それを自分の言葉に変えて、文章にのせて書いてゆくことが大事なのだ。
日々、気持ちも目まぐるしく変化する。
気分が良い時もあれば、落ち込む日だってある。
そんなその時々の変化を知っているのは、この私でしかないのだ。
そんな自分の思いを乗せた文章を世に排出してゆくことで、きっと必要としている誰かの心に届き、響かせることが出来ると私は信じている。
だから、毎日、ひたすら自分の思いに寄り添って書くしかないのだ。
そんな自分の考えや思いを、ただただ私なりの文章にこめて。
そのことに関してだけは、AIに負ける気が100%しない私なのだ。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
丸山ゆり(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

関西初のやましたひでこ<公認>断捨離トレーナー。
カルチャーセンター10か所以上、延べ100回以上断捨離講座で講師を務める。
地元の公共団体での断捨離講座、国内外の企業の研修でセミナーを行う。
1963年兵庫県西宮市生まれ。短大卒業後、商社に勤務した後、結婚。ごく普通の主婦として家事に専念している時に、断捨離に出会う。自分とモノとの今の関係性を問う発想に感銘を受けて、断捨離を通して、身近な人から笑顔にしていくことを開始。片づけの苦手な人を片づけ好きにさせるレッスンに定評あり。部屋を片づけるだけでなく、心地よく暮らせて、機能的な収納術を提案している。モットーは、断捨離で「エレガントな女性に」。
2013年1月断捨離提唱者やましたひでこより第1期公認トレーナーと認定される。
整理・収納アドバイザー1級。

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2023-07-05 | Posted in 週刊READING LIFE vol.223

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