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「人生諦めないで」を心に留めて

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

記事:後藤 修 (ライティングゼミ、26年1月渋谷 通信講座 コース)

 

昨年の暮れの真夜中。

時計の針は12時を超えて、空気も凍り付く寒さを突き抜け、

自宅へ向かっていた僕は心を熱く踊らせていた。

 

高校時分の部活仲間との忘年会に参加した僕。10人の仲間たちと

笑顔を弾けさせながら夜通し飲み明かした後だった。

 

宴会場面を回想しながら、僕は呟いた。

 

この気分は富士山の頂上に着いたと同じだよな、たぶん……。

 

え? なんで友達と夜遅くまで飲み明かすことが登山と一緒なの?

 

誰もがそんな疑問を頭によぎるかもしれない。

 

でも僕は確信する。間違いなく、富士山の急斜面を登り切った後の心境だと。

 

 

20年前の12月初旬。

30歳だった僕は急斜面の入り口に立ってしまった。

 

 

目が覚めて、会社へ行く準備をするために体を起こそうとした時だった。

あれ……!?

 

体をピクリとも動かせなかった。

 

体がセメントで固められたような物体のようになってしまっていた。

 

出社を諦め、同居する母親の手を借りて起き上がったものの、立ち続けること

も数分。5分を超えると、脂汗が体ににじみ出てきた

 

一体なんだこれは……。どうしたらいいんだ? 

 

心のつぶやきが壊れたテープレコーダーのように、何度も頭の中で繰り返された。

 

数日間休みをもらい、なんとか会社に出社したが、体が蚕の糸のように

締め付けられる。

 

頭に数キロほどのバーベルを載せられたような重さの頭。

ダイヤモンド並みに凍り付いた両腕や背中。

鋼鉄のような鋭く冷たい首。

人間の体じゃないような感覚に襲われ続けた。

 

こんな調子でも日常をなんとか泳ぎ続けたが、やがて限界は来た。

そして、ついに病院で診てもらう決断をした。

 

しかし、結果は無情だった。

 

「あなたはこれといった症状はお持ちではありませんよ ……」

 

なんで? どうして?

 

自宅まで車を走らせる道中、ハンドルをぎゅっと何度も握りしめ、歯ぎしりを繰り返した。

涙が頬を伝って流れ続けた。

 

くそう……。これで、人生終わるのか?

そんな諦念の思いが頭をかすめた時だった。

 

いや。それはできない。まだ、30代で結婚もしていない。友達とも会い続けたい。

絶対イヤだ!!!

 

心から言葉が炎のように噴き出した。

 

そこからだった。

「名もなき症状」を治療するという登山がスタートしたのは。

 

まずは、体を治療してくれる病院を探さなければならない。

携帯を片手に、感じる症状を入力したら、画面にあふれるほどの治療院が登場した。

 

ここだ!!

 

直感で感じた1軒の整体院に連絡を入れて、一目散に走り込んだ。

幸運なことに、整体院は隣町にあったのだ。

 

「酷いね、この体は……」

先生がセメントで塗り固められたような僕の体を両手で丁寧に丁寧に延ばしてくれた。

 

そして、施術の翌日。

 

僕は鳥になった……。 体に羽をつけ羽ばたいていけるような軽さを覚えたのだ。

(これで、元の体に戻れる……)

 

僕の胸は小躍りした。

 

しかし、現実は甘くなかった。

 

しばらく経つと、治療の効果が減じて、セメントのような重さが体にすこしづつ戻ってきた。

両羽も少しずつもがれ始めた……。

 

(これはやばい……。)

やがて、不自由な日常生活をリスタートしなければならなくなった。

 

仕事をなんとか終わらせて帰るものの、そこからが症状との格闘だった。

体にあらゆる場所にお灸を当て、数時間横たわった。

そんな自宅での治療’を数年間も繰り返す日々を過ごし続けた。

 

無論、友達からの誘いがあっても、ほとんど断り続けていた。いや、意思に反して断ざるを得なかったのだ。

「たまには、参加しろよ~」

 

時には、そんな高校の仲間からの声に応えて、重い体を引きずるように、友達が集まる飲み屋へ行った。が、座敷に座り続けることは30分が限界で、冷や汗と脂汗が体を濡らした。

 

「じゃ、帰るわ……」

背中に哀愁をのせて、トボトボと飲み屋を後にすることが常となり、

そんな僕を仲間たちはため息交じりで見送り続けた

 

(もう、仲間と楽しく飲めないのか?)

そんな弱気の虫が出た時だった。

 

ダメじゃない!! こんな風に生きるのは嫌だ!

又も心から燃え滾るような声が立ち上がった。

そして、僕は再び心に火をともして、整体院を探し始めたのだった。

 

以前と同じ要領で、ネットで検索をし、新たな整体院を探した。

そして、またも運よく‘救世主’を見つけ出し、藁をつかむように通院し続けた。

 

それは急な山道をつまずきそうになりながら、這い上がっていくような様相だっただろう。

 

その甲斐あって、全身にコーテイングされたセメントが溶け始め、重さが消えた。

かくして、立ち続けることも座り続ける‘日常’も戻ってきて、‘名もなき症状’との共存に成功したのだった。

 

そして、去年の暮れの忘年会。

 

「だいぶ回復したな!!お前とこの時間まで飲めるのめちゃ嬉しいよ!! 乾杯      !!」

 

仲間の弾ける笑顔が居酒屋で花開いた瞬間だった。

 

これを通して僕は気づいた。

 

人生では、高い山が目の前に現れることは誰にでもある。

時には奈落の底に落とされるような失望感にも襲われる時はあるかもしれない。

 

でも、僕は思う。

 

「困難は自分の知恵と行動で乗り越え、いつかあふれる喜びを味わえるのだ」と。

 

だから、これからも胸に刻んでゆこう。

 

「人生決して諦めないで」と。

 

≪終わり≫

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