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聖地巡礼は物語の追体験 


 

 

 

 

*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

記事:立野亜美(ライティング・ゼミ1月コース)

 

2024年4月、私は毎朝8時から放送していたNHK連続テレビ小説「虎に翼」にどっぷりハマっていた。

日本で女性初の弁護士、裁判官となった三淵嘉子さんの人生がモデルとなったドラマで、

主人公が“女性はこうである”という当時の価値観や時代に翻弄されながらも、夢を叶え、自分の道を切り開く姿に勇気と感動をもらっていた。

半年後に放送された最終回では、テレビの前で号泣し、すっかり「虎つばロス」になった。

ロスを埋めるためには聖地巡礼すべし。

これは、私が勝手に作ったルールだ。

今までの何かとロスになってきた私が試してみて、傷心した心にとても効いたので、効果は保証する。

このドラマのロケ地では、行ってみたい場所が何か所かあった。

まず一番有名なのは名古屋市にある「名古屋市市政資料館」、そして次に有名なのは東京の神田にある「竹むら」(ドラマでは「竹もと」)という甘味処。

特に「竹むら」は、SNSで聖地巡礼の投稿を見るたび、「行ってみたいなぁ」と憧れる場所だった。

私の住む新潟から東京なら新幹線で2時間ちょっと。憧れるくらいなら行ってみよう。

私はわくわくドキドキ、何年かぶりの東京一人旅をすることに決めた。

竹むらの最寄り駅である水道橋駅到着後、グーグルマップを頼りに住宅街の中へ歩いていく。地元新潟でも、目的地と反対側へ歩いてしまうくらい方向音痴な私。

この道で合ってるよね……? 

と不安になりながら進んだ先に、人が並んでいる姿が見えた。

その人たちの先頭へ確かめるように歩いていくと、あった‼

ドラマで見た通りの外観、趣ある佇まいの竹むらがそこにあった。

私は嬉しくなってすぐに最後尾に並ぶ。開店時間前にも関わらず、すでに20人くらいの人が並んでいたけれど、2巡目で思いのほか早く店内に入れた。

「わぁ……‼」

思わず、心の中で声が漏れた。

店内はドラマのセットそのまま、いや、ドラマがこのお店を再現しているのだけれど。

このお店には小上がりがあって、主人公たちがそこでお茶をして語り合うシーンが何度もあった。

印象的な場所だったのでぜひそこへ座ってみたかったのだけれど、先にお客さんがいたので座れずにちょっと残念。

それでも店の端側で、小上りが見える席に案内していただき、じっくりと世界観を楽しむ。

雰囲気が本当に素敵で一気に昭和初期の時代へタイムスリップしたかのような気分になる。

和装姿になった私がお店の引き戸を開けたら、すでに主人公とその友人たちのグループがいて、話に花を咲かせていたりして。

そんな妄想をしていたら、有名なあんみつが運ばれてきた。

実は、私はあんこが苦手だ。

他にかき氷などのメニューもあったけれど、ドラマでは主人公たちがよくあんみつを食べていたので、再現性を重視してあんみつを頼むことにした。

目の前には透き通った寒天の上にコロンと可愛くのせられたあんこ、そして周りにちりばめられたフルーツ。

なんだか食べるのがもったいない、と思わせてもらえる食べ物に出会えるなんて幸せ。

「おいしい……‼」

口に入れた瞬間に驚いた。

なめらかでほどよい甘さ、豆の香りもあって、上品な味わい。

私が苦手とする、甘ったるくて口に残るざらついた感じがまったくしない。

寒天とフルーツを組み合わせると全部のバランスがほどよく口の中でまとまって、とっても美味しい。

今までの人生の中で、いちばんおいしい、あんみつ。

そうそう、たしかドラマの中では、主人公の友人がこのお店に弟子入りして、あんこの作り方を習得していたっけ。

この店の常連さんに味の判定をお願いするシーンでは何度も不合格が続いた後、合格の判定が出たときは私も嬉しかったな。

あんこを一口食べて、私もお茶をしている主人公たちに加わった気分になる。

「このあんこ、ほんとに美味しい」

と私が話せば、弟子入りをした友人が

「あら、お口にあってよかったわ、うふふ」

と返してくれそうで。

和やかなムードの中、いつも世の中への疑問をもつ主人公の

「はて……?」

という口グセが聞こえてきそう。

現代ではなかなかお目にかかれない華族のお嬢様とそのお付きの女の子、そして男装したもう一人のクセのある友人たちと一緒に、私も笑いあったり、時には議論を交わす姿を想像してみる。

ドラマの世界に入り込む。

それは、その人たちが生きた時代を追体験すること。

女性たちが世間と闘った時代の、癒しとなった甘味処。

あんみつを食べ終えて、この世界観を満喫してお会計を済ませて外に出る。

名残惜しさを感じながら、私はお店を振り返ってみる。

この場所では確実に主人公たちが生きていて、私は物語の細部を体験することができた。

そして、もうロスなんかじゃない。

私はこの今の時代を楽しく生き抜いていこう、不思議とそんな前向きな気持ちが湧いてきた。

やっぱり、ロスには聖地巡礼が効く。

この追体験が私の物語のスタートになることを信じて。

≪終わり≫

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