バストの重量と構造の話
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
記事:みちよ( 2026年4月開講・名古屋会場 )
バストが大きいということ。それは、男性やそうでない人々から見れば、もはや「別の生態系を持つ生物」と言っても過言ではないかもしれない。
もちろん、生物学上の分類がヒトであることに変わりはない。しかし、背中にラクダのコブを背負って生きる者の日常が、それを持たない者に想像しがたいのと同様に、この「重み」と共に生活することが何を意味するのか。それを真に理解するのは容易ではないはずだ。
最初に断っておくが、これは下世話な色恋沙汰でも、ましてやセクシーな話でもない。これは、ある特定の身体構造を持った個体が、重力や社会的なインフラとどう格闘しているかという、厳然たる「生物学的生存記録」である。
まずは、データである。それがどれくらいの重みがあるのか。まずは可愛いAカップ。こちらは、片胸70グラム、みかん1個分というデータである。それがCカップのリンゴ1個分、Dカップのグレープフルーツ1個分を経て、Fカップでは大玉キャベツ1/2個分。つまり、両胸で大玉キャベツをぶら下げていることになるのだ。あなたは大玉キャベツを仕事帰りに買って帰ったことがあるだろうか。疲れた仕事帰りに、今日の晩御飯を買おう、あ、キャベツが安いな、旬だもんな、せっかくだから一番大きいやつを選ぼう、これなんか立派で中もつまってそうだな。そうやってホクホクと買ったキャベツの帰路の重いこと。疲れた仕事帰りの体にギシギシとくる……それが毎日ということである。
ちなみにGカップは、片胸1リットルの牛乳パックである。あなたは仕事帰りに……(以下略)
さて、物理的学的視点からの数量化によりその重みが想像できたかと思うので、次にそれを支える鎧(ブラジャー)について話そう。今でこそEFGの大容量カップの鎧も、色とりどりレースひらひらの可愛いデザインは市場に出回るようになった。しかし、わたしがそれを必要とし始めた思春期には、紛う方なきコーヒー牛乳の色のフルカップ―つまりバストの上近全域を覆うようなスキのない鎧状のものしか、ワコールの下着売り場では手に入らなかった。「こんなに可愛くないやつ…」とつぶやくわたしにワコールの店員さんは「何を我儘言ってるんですか」と説教をたれた、そんな経験もある。
鎧、と形状したが、そのワコールの記事で「バストは液体」というのを読んでいやに納得したことがある。ブラジャーの形状で如何ともなるその形は、まるで容器によって形を変える液体のようだからである。なのでそっち方面での例えも書いておこう。大きなバストは、おしゃれなワイングラスのようなものには収まらない。丼茶碗のようなものに、ご飯をギュギュっと盛るようなもんである。あ、液体の例えでなくなってしまった汗、しかし、容器の形状によるという意味ではご飯も同じ。ツンとした形にも丸っこい形にも自在である。余談だが、ブラジャーを試着した後、お店のお姉さんが、「上に服を着てみてください」ということがある。服を着たときのバストの形を見てみろというのだ。たしかに違う、容器によって如何様にもなるというこのお肉の流れは、アメーバのようとも形容しうるだろう。
話はキャベツに戻り、それを支える鎧(ブラジャー)の重装備化である。キャベツを支えるのだからして、それは軟弱な布きれではなく、もはや「橋梁工事」や「サスペンション」に近い構造物である。ブラ紐は、少なくとも幅1センチ以上であるべきである。世にはお手頃価格で色も形も可愛い通販のEFGカップもあるにはある。しかしそれは、Aカップの容量をそのまま大きくしただけで、可愛いけれども支えに問題があるものが多い。横から背中にかけての布も、細くてたよりない。ホックは、三段になっているものが一昔前はデフォルトだった(最近みかけないのは、やはり着脱しづらい問題があるからであろう)。
静岡の、三島スカイウォークという吊り橋を歩いたことがあるだろうか。あんなに長い距離の重そうな吊り橋を、何本ものワイヤーによって吊っているのである。よく落ちないもんだと設計者に敬意を表するが、優秀なブラジャーとは、あの吊り橋の設計者よろしく、優秀な設計者がCADや微分や積分なんか用いて設計しているに違いないと思料されるのである。
そんな鎧は友達、戦友、わたしを守るなくてはならないものだ。しかし、何分キャベツを胸部に固定しているのだ、体調にもよるがずっとつけていて疲れる。人知れず服の上からこっそりホックをはずし、フウと深呼吸しているときもある。そうはいってもそれは10分ともたず、すぐに支えがないことに今度は疲れてきて、トイレでつけなおす次第。そんなだから、もちろん風呂上りや寝るときにも、ナイトブラなるものをつける。そうすると、お風呂のときと人間ドックのときくらいしか、ブラジャーをしていない時間がないことになる。しかしバストまで湯があり浮力があればいいが、そこまで湯量が多くない風呂では、結局手でもちあげて湯船であったまるという始末でなんともシュールな絵面なんである。
そんな厄介なバストだが、わたしの大事な相棒なんである。わたしが堂々としているときは、バストも堂々としている。元気がないときはバストもしょげている。いつもわたしの心に寄り添ってくれるのは、この二つまあるい存在だ。友人のように。時に、故郷の母のように。胸元でわたしを陰ひなたなく応援している。だからわたしは、精一杯の鎧を装備し、風呂の中でもいたわり、手をかけて大事にせずにはおれない。ラクダにとっても、コブはこんなふうに自身と一体のものなんだろうか。それにはラクダの手記を待たねばならない。
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