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ライティングスキルは心を動かす《週刊READING LIFE:テーマ:生成AIとライティングスキル》


 

 

 

 

*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

記事:松本萌(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

「ChatGPTを使って文章を書いたことある?」

ライティングを習っていると話したら、言われた言葉だ。

ChatGPT(チャッピー)は使ったことはあるし、何なら有料版にしている。壁打ちをすることで自分の考えをまとめたり、ヒントをもらうために質問をすることもある。

ただし、今まで「文章を作って」とリクエストをしたことはない。理由は、一度試したら自分で文章を書くことを止めてしまいそうな気がするからだ。そもそもライティングを習っているのは自分で文章を書きたいからだ。つたない表現であってもいい、私は自分の言葉で自分の思いを文章にしたいのだ。

 

そうは言っても、やっぱり気になるものだ。「果たしてどんな文章ができあがるのか、お手並み拝見してみようじゃない」と思い、チャッピーに頼んでみることにした。

「キーワード『自己受容を高める方法』『自分肯定感を高める方法』を、エッセイ風に5,000文字で面白おかしく書いてください」と指示を出した。

すると、ものの数秒であっという間に文章が作られてしまった。

タイトルは「自己受容と自分肯定感は、だいたい寝不足のせいで下がる」となっていた。なぜ寝不足のせいで自己受容と自己肯定感が下がるのが書かれているとともに、その対策までしっかり書かれていて、まるで専門家が書いたブログのようだ。

なんということだ…… 私が週末毎にウンウン唸りながら数時間掛けてライティングに取り組んでいるのに、チャッピーはあっという間に文章を作ってしまったではないか。しかもよどみない文章で全くもって不自然さがなく、すらすらと読める。

 

完敗である。

こうなったら、なんでもチャッピーに頼んでしまえばいいんじゃないの、という気持ちがムクムクと湧いてくる。

会社でも「AIを活用せよ」という風潮が高まりつつある。仕事上社内向けに発信する文書を書くことがあり、私はせっせと自分で書いているが、同僚は「AIにお願いしたら、文章の添削もしてくれて楽ですよ」と言っていた。「いやいや。自分で書いてこそ、相手に伝わるものじゃない!?」なんて思っている私は化石のような人で、時代遅れまっしぐらと言われても仕方ない。

 

とは言っても、自分で書くのを止めて、気になるキーワードをいくつか並べてチャッピーに作ってもらった文章を、あたかも「私が書きました」として世に出したいかというと「No」だ。

なぜ私がライティングに取り組むかというと、「自分の文章を色々な人達に読んでもらいたい」という承認欲求を持っているというのが理由の一つだ。

もう一つ大きな理由がある。それは「あなたも私も、全員がドラマチックな人生を歩んでいる」ということを、ライティングに取り組むことで知ったからだ。文章の技巧であれば、チャッピーが勝るかもしれない。しかし、どれだけ人生がドラマチックであるかということは、実際に経験をした生身の人間でなければ書けない。

能力や技といった意味でのライティングスキルは、生成AIの方が格段上手だ。では、感情や心情に訴えるライティングスキルはどうだろう。これは人の書く文章が勝っていると、私は思っている。

 

「全員がドラマチックな人生を歩んでいるだなんて、大げさな……」と思われるかもしれない。確かにそうかもしれない。書いている私も、実はちょっと恥ずかしい。

ここでいうドラマチックというのは、大恋愛だとか、大事件だとか、大きな挫折だとか、そういった類いのものではない。

人それぞれ人生の節目や岐路に立った経験は少なからずあるはずだ。そしてその都度自分でどうするかを決めてきたはずだ。「私は決断力がないから、なんとなくの流れでここまで来ています」という人もいるかもしれないが、それも「流される」ということを自分で決めていると考えれば、自分で自分の人生を決めて生きていると言える。

選択すればその道が開けると同時に、選択しなかった道は消える。もし選択しなかった道を選択していたら、今とは全く違う人生を歩んでいたかもしれない。過去の一つ一つの決断が今の自分の人生を作っている。そう考えると、そこかしこにドラマが転がっていると言える。

そんなふうに私が考えるようになったのは、ライティングの影響だ。

ライティングを始めた当初は、「毎週2,000字で人が読みたいと思う文章を書く」ことが課題だった。書くにあたって、私は実際に自分が体験したことや、そこから感じたことや考えたことを書こうと決めた。その理由は、私がフィクションに対し苦手意識を持っていたからだ。

母が読書好きな人のため、幼少期は様々な本を寝る前に読んでもらった。子供に読み聞かせる本のため、フィクションが多かった。自分で読める年頃になり、変わらずフィクションを読んでいたが、徐々に読むのが辛くなっていた。というのも、本を開いている間はフィクションやファンタジーの世界に浸れるが、ひとたび閉じてしまえばいつもと代り映えのない世界が目の前に広がっている。そう思うと寂しくなり、読書から離れていた時期がある。

年を重ね読むジャンルが広がり、ノンフィクションやエッセイ本を通じて、改めて読書の面白さに気がつき本を読むようになった。

そんな自分がいざ文章を書いてみようとなったとき、実体験に基づいたことを書きたいと思った。

実体験を書くとなると、まずは過去の振り返りが必要だ。「そういえば、あんなことがあった」「

あの時の出来事は、思い出に残っている」と、過去に経験したことを思い出す。ある程度振り替えると書けそうな気になり、パソコンの前に座って文字をタイプしてみる。でもすぐ手が止まってしまう。なぜか。書くことが思い浮かばないのだ。年表を作るのであれば、時系列に起こった出来事を書けばいい。だが、私が取り組んでいるのはライティングだ。無名の人間に起こった出来事を、ツラツラと書いたところで、だれも読みたいとは思わない。

なぜ自分は書きたいのか。

何を自分は文章で表現したいのか。

人は何を求めているのか

自分だったらどんな文章を読みたいと思うのか。

モンモンとしながら考えて出てきた答えは「出来事から何を学び、そして自分はどう変化したか」だった。

楽しい出来事があった。「あぁ、楽しかった!」と自己満足で終わるのではなく、なぜ楽しかったのか、どんなところが楽しかったのか、その出来事を文章で表現することで読者になにを共有したいのかを考える。

辛い経験をした。「もう金輪際同じ経験はしたくない!」と拒絶するのではなく、何が辛かったのか、どうしてそう思ったのか、なぜ辛い経験をすることになったのか、出来事をなかったことにするのではなくそこから何かしら今後の人生に活かせることはないかと考える。

「なぜ」「どうして」と何度も自分に問うて深掘りすることで、自分の好きなこと、嫌いなこと、苦手なこと、幸せに感じること、心から求めていることが、徐々に浮かび上がってくる。

 

次のフェーズでは、視点が自分から他者や周囲に移る。なぜあの人はああいう行動をしたのか、あの人がした行為はどんな意味があったのか、あの人の目に自分はどう映っていたのか。過去のことでましてや他者のことなので、今では「なぜあの時あなたは?」と問うことはできないけれども、思いを馳せることはできる。そうすると、当時自分が思ったことや感じたこととは別の視点で出来事を俯瞰することができ、新たな気づきがある。思いの外周囲の人達は自分のことを認めてくれていたこと、見守ってくれていたこと、評価してくれていたことに気づく。

そして、辛い経験や嫌な気持ちになった出来事が、想像以上に自分に学びをもたらしていることに気がつく。ドン底だと思っていたけれど、ちゃんと持ち直して今の自分がいることに喜びを感じる。

今まで経験した出来事を一つずつ紐解き、当時の自分の思いを振り返り、現在の自分に「今だったらどう思う?」と尋ね、その時周囲にいた人達に思いを馳せることで、過去にあった出来事が今の自分を作り上げていることに気がつく。そしてそれを文章にする。

その文章を読んだ誰かが「私も同じ経験をしたことがある。あなたの気持ちが分かるよ。私もそうだった」と共感したり、「そういう解釈ができるんだ。自分は気づかなかったな」と誰かの学びになり、「読んでよかった」と、心が動かされる。

誤字脱字がなく、技巧を凝らして書かれた文章は整っている。そういった意味では生成AIのライティングは美しい。だが感動や共感、説得力という人の心を動かすのは、日々多くのことに心を動かし動かされながら生きる人間が紡ぎ出す文章の方が勝る。これが3年間ライティングを続けた私の思いだ。

 

 

目まぐるしい勢いで技術は進歩する。そのうち、私達人間と同じような体と心を持って文章を書くAIロボットが生まれるかもしれない。そしたら太刀打ちできないかもしれない。

それでも私は書き続けたいと思う。なぜならこの3年の間、「なぜ」「どうして」と自分に問い続ける中で、思っていた以上に自分は幸せで恵まれた人生を歩んでいたこと、そして人生を切り開く力を持っていることに気がついたからだ。ライティングが私の自己受容と自己肯定感を高めてくれたことを知ったからだ。

 

ライタープロフィール

松本萌(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

兵庫県生まれ。東京都在住。

2023年6月より天狼院書店のライティング講座を受講中。

「行きたいところに行く・会いたい人に会いに行く・食べたいものを食べる」がモットー。趣味は通算20年以上続けている弓道。弓道と同じくらい、ライティングも長く続けたいと思い、奮闘中。

 

 

 

 

 

 

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