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積読考古学入門


 

 

 

 

*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

記事:森口畔(26年9月ライティングゼミwithAI)

 

ときどき自分の本棚をみて、心の底からため息をつくことがある。

「なにをやってるんだ自分は」

ため息の裏にはそんな声が響いている。

 

私は物書きでも学者でもない。本屋でもない。要するに本を読むことが仕事に直結している人間ではない。だから本は私にとって、純粋に趣味の領域に属するものだ。それなのにずいぶんお金をかけてしまっている。

読んでいるならまだ救いがある。でも、(正確に数値化したら絶望するのでしないが)おそらく買った本の3割も読んでいない。

この現実をいまこうして文字にしてみると、改めて心の底から深いため息がもれてくる。

 

なぜ本が増えたのか。そういう視点で本棚を眺めるとまず、シリーズものの本が多いことに気付く。古代から現代までの歴史の本や、テーマごとに一巻ずつ、今を時めく思想家や学者が執筆したシリーズ。そういう本は装丁も統一されていて、横一列にずらっと並べるとカッコいい。しかしそういう理由で集めてしまった本はまず読まない。ひどいものだと、本のタイトルとか、ISBNとかが書いてある紙(どうやらスリップというらしい)が挟まったままだったりする。

これは本当に精神衛生上よくない。小学校時代からなにも進歩していないなどと思ってしまう。

いまから約30年前。小学校中学年だったころ、ミニ四駆というものが大流行した。それはひとことでいえばモーターで走る小さな車の模型なのだが、ポイントは、自分で色々車体を改造できることだ。自分なりに、マシーンが少しでも速く走るように工夫できるのが、おそらくみんなが夢中になった原因のひとつだった。

私もミニ四駆は好きだったが、速さを追い求める情熱は全くなかった。私にとっては次々発売されるカッコいいマシーンを買い集めるのが楽しかった。そして、買ってしまえばあとはろくに改造もせずにほったらかしていた。

 

本棚に並ぶ、買っただけで読んでないシリーズものの本。その統制のとれた背表紙をみると、まるで自分が小学生から全く進歩していないような気分になってくる。なんだかどんどんメンタルが蝕まれていく……

 

でも! と無理にテンションを上げてみる。

ミニ四駆は、買ったあと飾らずにほったらかしてた。でも本はちゃんと本棚に並べてる! しかも読んだ本はゼロではない! たぶん3割くらいは読んでるし! 

 

そんなふうに強がったところで事態は何も変わらない。目の前に並んだ本は静かにこちらを見つめたままだ。無駄な空元気を出すのはやめて、気を取り直してもう一度本棚に向き合ってみようと思う。

読んでないシリーズ本からは目を背けて、読んだ本を探してみることにする。そうやって本棚を眺めると、懐かしい本に目が留まるようになってくる。それで、珍しく読了したことをはっきり覚えている一冊の本を手に取ってみる。

 

ぱらぱらとページをめくると、最後の方に“読書案内”というページが出てくる。自分にしては珍しく、赤ペンで線を引いたりしている。

 

そうだった。私はこの本のように、巻末に“読書案内”みたいな、ブックリストのようなものがついている本が好きだったのだ。

 

「この本を読んで、さらに理解を深めたい人はこんな本を読んでください」

あのリストを眺めているだけで頭がよくなった気になれる。それで欲しくなった本を検索して、買い物リストに放り込んでおく。この行為がとても好きだ。手っ取り早くいい気分になれる。例えば、この本の第3章について理解を深めるにはこの本がいいですよ、などといわれたら、その文章を読んだだけで第3章について理解が深まったような気になれる。そうやっていい気分になって終わるものもあれば、さらに一歩踏み込んで実際に買う場合もある。そして買った本は、本棚の、もとの本の隣に並ぶことになる。

 

私は手に取った本を棚に戻し、もとのように隣の本と並べてみる。この並びを見る私の目は、まるで重大な発見をした考古学者のように輝く。

“読書案内”のある本の隣に、“読書案内”のリストのなかの一冊が並んでいるという状態。

これってなんかとてもいい感じなのではないだろうか? これこそが、たいしたことない私の読書人生の、たいしたことない蔵書のなかにキラリと光る鉱脈なのではないか、などとすら思えてくる。

本の末尾で紹介されていた本をわざわざ買ったのだから、その本はよほど面白かったにちがいない。面白かったというのは心が動いたということだ。しかもその心の動きは、次の本を買うという具体的な行為にまで結びついた。こう考えると、本棚で隣り合っている2冊の本は、かつての自分の心の動きの化石に他ならない。

ただし、化石にしてはまだ新しすぎる。それだけで博物館に並べてはもらえない。この化石はむしろ、もう一度いきいきと躍動させなければならない。読む。それこそがかつての感動を現在に蘇らせる唯一の方法なのだ。《終わり》

 

 

 

 

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