東京天狼院で、赤ワインの最強おつまみ、見つけちゃいました《あなたの上手な酔わせ方~TOKYO ALCOHOL COLLECTION~》
記事:松尾英理子(READING LIFE公認ライター)
赤ワインの最強おつまみを見つけてしまいました。
それも、書店で。
その名も、のりアボカド。
え、なにそれ? そんなもの赤ワインにあうわけ?
はい、私も最初はそう思いましたよ。
私は、世の女性たちと同様、常に冷蔵庫に2,3個ストックしてないと不安に駆られてしまうくらい、アボカドを愛しています。当然、ワインのおつまみとしても100回以上、いや200回以上はあわせてきた食材です。それなのに、この組み合わせに今まで気づけていなかったなんて。アボカドラバー失格かもしれない。自分を責めたくなりました。
4月から、東京天狼院のリベラルアーツアカデミーで、ワインゼミを担当しています。毎回講義のあと、何種類かのワインと、東京天狼院マスターの特製おつまみ1種を楽しんでいただいていますが、2回目のゼミでは、赤ワインのみ4種類をテイスティングすることになりました。
「何にしましょうか、今回のおつまみ。赤ワインに合いそうなの、ありますかね。」
事前の打ち合わせの時に、川代店長と話していて悩んでしまいました。なぜなら、これにしましょう! と即答できるおつまみが、天狼院のメニューにはなかったからです。メニューには、5つのおつまみが書いてありました。
・ザワークラウト
・魚介のパテ
・のりアボカド
・ソーセージ
・豚の角煮
赤ワインにあいそうなおつまみ。普通はソーセージか豚の角煮ですよね。でも、なんか当たり前というか、面白くないというか。ザワークラウトと魚介のパテは、白ワインで出してもらっちゃったし、そうなると、残りは「のりアボカド」しかありません。
ただ、アボカドはどちらかというと、白ワインにあわせたい食材。それも、すっきりした味わいのものより、こってりしたタイプのっ白ワインと。なぜなら、アボカドのまったりとしたクリーミーな味わいとの相性が、芳醇なタイプの白ワインにあいそうだし、白ワインの酸味が、柑橘類をしぼったようなアクセントをつけてくれそうだからです。
だから、赤ワインの講座でアボカドをおつまみにするのは、少しリスキーだと思いました。
「なんですか、のりアボカドって?」
そう聞くと、川代店長は満面の笑顔で、
「これがもう絶品なんですよ。アボカドに海苔の佃煮がのってるだけなんですけどね。」
あ、海苔の佃煮がのってるわけですね。それなら、赤ワインに合うはず。
ということで、おつまみは「のりアボカド」に決まりました。
なぜなら、料理とワインの相性を考える時の法則の1番が、似た色のものを選ぶこと。そして2番めが、似た香りや味わいがあること。海苔の佃煮は色も香りも、赤ワインとの共通点があります。のりアボカド、きっと赤ワインに合うでしょう。
そして講座当日。4種類のおつまみが出ましたが、予想通り赤ワインとのりアボカドの相性は、全員が絶賛でした。
特に、アボカドの上にのっている海苔の佃煮の上に、さらに佃煮が見えないくらいかかっている刻みのりがポイントでした。佃煮とアボカドだけだと、濃厚でまったりしすぎるところを、刻みのりの爽やかな磯の香りと軽い食感で、バランスが取れた一品に。赤ワインより、出すぎることのない上品なおつまみに仕上がっていました。
天狼院のライターズ倶楽部仲間で、このワイン講座を受けてくださっている小倉さんが、このおつまみを自宅で出したところ、アボカド嫌いの息子さんが「美味しい!」と言って食べられたとか。この写真は小倉さん作の、のりアボカド。さすが料理も写真もプロ級の彼女の作品。とっても美味しそう。
お酒を嗜むママたちの悩みは、自宅でも酒のつまみを作って食べたいけど、それは子供たちの食べたいものではないことが多い、ということ。そのストレスを、「のりアボカド」は解消してくれる最強つまみかもしれません。しかも栄養価も抜群。言うことなしですよね。
それと。居酒屋とかでアボカドのメニューを選んだり、アボカド大好きなんですっていうと、「女ってみんなアボカド好きだよね~」って男子から言われること、ないですか。私は何度もあります。こういわれると、自分以上に大好きなアボカドを貶されているような気持になり、いつも悲しくなります。
そんな男性の皆さんにも、騙されたと思って食べてほしい。だいたい、このおつまみの考案者は、東京天狼院の幸田マスター。男の中の男、って感じの風貌です。※注意:左の方(三浦さん)じゃなくて、右の方です。
ゴールデンウィーク期間中に実施した、大正大学の雑誌「地域人」と天狼院書店がコラボした日本ワインの会でも、このおつまみを出していただいたのですが、やはり皆さん、赤ワインとの組み合わせに感動してくれました。この会には特別ゲストとして、日本ソムリエ協会認定のワインエキスパートで、日本のワインを愛する会副会長の髭男爵のひぐち君にもお越しいただきました。この日も、無茶ぶりでお願いしたコメントも、ひとしきり皆を笑わせてくれた後に、この日一番気に入ったマリアージュの解説もしてくれました。
「のりアボカドと塩尻メルロ、とってもいい相性でしたね。メルロのやさしいタンニンがアボカドの油分と溶け合う感じが心地よくて。ワインがまろやかになり、後味もとてもよくなりましたよね。」
さすがのコメントに、もう一度、この組合わせで試してみると、そうなんです。ワインがさらに美味しくなることを実感しました。
そしてひぐち君のコメントに、はたと気づかされました。ワインと料理の相性、3番目の法則。それは、「お互いにない部分をもっていること」つまり、「足りない部分を補ってくれる」という法則です。今回で言えば、長野県塩尻産のメルロはとてもやさしい味わいのため、外国産のメルロに比べて、少しまろやかさや強さが物足りないところがあります。それを、アボカドが補って、さらに美味しさを感じさせてくれたのかもしれません。
また、この会に来てくれた7年のお付き合いになるママ友が、イベント終了後に送ってくれた一句も秀逸でした。
「アボカドに、ごはんですよで赤ワイン」
なんという語呂の良さ(笑)。こんなに皆を感動させてくれた「のりアボカド」を考案した幸田マスターに感謝。
ワインの面白さは、こうやって毎回新たな発見があることなのかもしれません。
リベラルアーツのワインゼミ、次回のテーマは日本ワイン。日本固有の品種である「甲州」と「マスカット・ベーリーA」のテイスティングをします。天狼院のおつまみとのマリアージュで、参加者の皆さんと、また新たな感動と発見ができたらいいな。
❏ライタープロフィール
松尾英理子(Eriko Matsuo)
1969年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部社会学専攻卒業、法政大学経営大学院マーケティングコース修士課程修了。大手百貨店新宿店の和洋酒ワイン売場を経て、飲料酒類メーカーに転職し20年、現在はワイン事業部門担当。仕事のかたわら、バーテンダースクールやワイン&チーズスクールに通い詰め、ソムリエ、チーズプロフェッショナル資格を取得。2006年、営業時代に担当していた得意先のフリーペーパー「月刊COMMUNITY」で“エリンポリン”のペンネームで始めた酒コラム「トレビアンなお酒たち」が好評となる。日本だけでなく世界各国100地域を越えるお酒やチーズ産地を渡り歩いてきた経験を活かしたエッセイで、3年間約30作品を連載。2017年10月から受講をはじめた天狼院書店ライティング・ゼミをきっかけに、プロのライターとして書き続けたいという思いが募る。ライフワークとして掲げるテーマは、お酒を通じて人の可能性を引き出すこと。READING LIFE公認ライター。
松尾英理子氏が講師をつとめる天狼院「ワイン・ゼミ」は、引き続きお申し込み受付中です。ご興味のある方は下記ページをご参照ください。
【2019年4月開講】「上手に酔う」ためのワイン・ゼミ ~大人の嗜み「ワイン」の飲み方・選び方を本屋BARで楽しく学ぶ〜《天狼院リベラルアーツ・アカデミー》
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
http://tenro-in.com/zemi/82065
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