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オトナのための中学校数学

9.実は格好いいやつ!〜連立方程式〜《オトナのための中学数学》


記事:吉田健介(READING LIFE編集部公認ライター)
 
 
そもそも連立方程式とは、クイズだ。
 
ヒント1:足すと5になる。
ヒント2:引くと1になる。
 
さてこれらを満たす2つの数字はなーんだ。(答えは3と2 )
 
毎回黒板に、「ヒント1、ヒント2……」という具合に書くわけにはいかないから、学校の授業では数式に直す。英語の時間に、日本語から英語に直すように、数学の時間は、あらゆることを数字や文字といった数学語で表す。
今思えば、数学語であるが故に、話がややこしくなり、頭が混乱し、今ひとつ脳内が整理されないまま、だが授業はどんどん進むし「ああ数学って……」となってしまうのかもしれない。数学語であるが故に、話がよりシンプルになり、余分な部分は削ぎ落とされ、骨組みにのみ注目すればよいのだから「なるほど!」となりやすいはずなのだが、みんながみんなそうはならないのが難しいところ。ただ中学生だったあの頃、やはり遊び心というものは必要で、クイズ番組形式に司会者が「次の問題!」なんて言いながら話を進めてくれると、何だか楽しみながら連立方程式と親しくなれたのかもしれない。
 
「連立方程式って、結局何の役に立つの?」
「将来使わないしー」
 
と、将来使わない話の槍玉にあげられるわけだ。もはや不動の1位と言っても過言ではないだろう。必ずと言ってよい程、連立方程式は将来トークになると、その存在をさらされ「使わないよ」なんて罵声を浴びせられてしまう。何とも切ない。彼が世の中にどう役立っているのか、どのように社会に貢献しているのか、なかなか分からないから仕方がないのだが。
だが私としては、どう役立っているのか見えづらいからこそ格好いいと感じる。いつも同じパーカーを羽織り、使い古したリュックを背負いながらニコニコと愛想よくしているお隣さんが、実は超凄腕のカメラマンで、雑誌の表紙や、超有名芸能人もバンバン撮りまくっていて、しかし存在が表に現れることはない、みたいな。スーパーのレジ打ちをしている顔馴染みのおばちゃんが、実は超凄腕の投資家だった、みたいな。まさに連立方程式はそんな「実は!」的な要素があり、詰まるところ「格好いい」やつなのだ。
 
今回は、「え、そんな所に!?」的な話。改めて、連立方程式の凄さを実感してもらえるはずだ。
 
CT(Computed Tomography)
コンピューター断層撮影。
 
みなさんは病院に行った時、CTを撮ってもらったことはあるだろうか。
無機質で、機械的なベッド。頭の部分には、大きな輪っかがついていて、そのビジュアルは今から人造人間にでも改造されるのではないだろうか、と思わせるような見た目をしている。
実際には、体の中の部分を調べて、どこかわるい所がないかどうか調べるための機械だ。
頭の天辺から光を当てて、輪切り写真を撮っている。
アニメで、1枚1枚絵を描き、1連の動きを作るイメージだ。頭の上から断面図を1枚1枚撮り、それを繋ぎ合わせると、スキャンした人間の立体になる。
 
CTスキャンの仕組みは非常に単純で、今回の主役でもある連立方程式が使われている。
 
「え、そんな所に?」
そう、そんな所に、使われている。
もう1度言う、連立方程式とは格好いいやつなのだ。
 
CTスキャンはX線を当てることで、断面写真を撮影している。
X線は、基本的に物体を通過する。その際、物体の硬さによって通りやすい物や通りにくい物がある。その通りやすさや通りにくさをヒントにして正体を探っている。
 
下の図を見てほしい。
 

 
図のように、正体が分からない4つにX線を当てる。それぞれ硬さは異なるので、X線が通過した後の光の強さは違う。つまりここから、それぞれの物体がどのくらい光を吸収したのかが分かる。それを数値に表す。結果を式にするとわかりやすい。
 
A+B=50
C+D=70
 
さて、これだけでは4つそれぞれの正体を導き出すことは困難だ。
 
そこで、次は違う角度からもX線を当てる。それがの次の図だ。
 

 
これを式に表すと、次のようになる。
A=30
B+C=60
D=30
 
さあ、少しずつヒントが出揃ってきた。
先ほどの式と並べるとより分かりやすい。
 
A+B=50
C+D=70
 
A=30
B+C=60
D=30
 
さてさて、これらをヒントに4つの物体はどんな数値が導き出されるかというと、次のようになる。
 
A=30、B=20、C=40、D=30
 

 
このように、様々な角度から光を当てることで、多くのヒントをゲット。そこで回収した情報を連立方程式にかけることで正体を暴いている。
実際には膨大な式が並んだ連立方程式になるのだが、仕組みとしてはそういうことだ。
連立方程式すげー。
 
これらからも分かる通り、連立方程式とは、いくつかのヒントをもとに謎を解き明かすための道具なのだ。これを知れば、もはや連立方程式が将来トークで晒し者にされることはないはず。いや、むしろ格好良さすら感じるだろう。
しつこいようだがもう1度言う。連立方程式とは格好いいやつなのだ!
 
「ひとこと言ってくれればいいのに……」
そう、彼は無口なのだ。無口であるが故に誤解もされやすい。だが「役に立たねーよ」なんて言われても「何だろこのやろー!」と声を荒げることはない。いつもクールで、いつも控え目なのだ。だからなおのこと、格好いい……
 
数学とはあくまで裏方的存在。連立方程式も普段はパッとしないかもしれないが、よくよく目を凝らしてみると、世の中になくてはならない存在。私たちの生活を大きく支えてくれている。
いやいや、大丈夫。連立方程式を罵倒したことがある人も安心してほしい。彼は誰も責めはしない。器が大きいやつだから。
そんな所も、何だか格好いい……
 
 
 
 

❏ライタープロフィール
吉田 健介(READING LIFE 編集部公認ライター)

現役の中学校教師。教師が一方的に話をするのではなく、生徒同士が話し合いながら課題を解決していく対話型の授業を行なっている。様々な研究授業で自らの授業を公開。生徒が能動的に学習できるような授業づくりを目指している。

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2020-11-09 | Posted in オトナのための中学校数学

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