東京ディズニーランドへの長い道のり《週刊READING LIFE Vol.186 祭り》
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2022/09/19/公開
記事:丸山ゆり(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
「え~っ、どうしよう、入らないよ」
きれいなピンク色の大型スーツケースが和室に広げて置いてある。
娘が高校2年の夏、ニュージーランドに短期でホームステイをする際に購入したモノだ。
その後、2013年の春、ハワイに行くときに一度使ったきり、この度のコロナ禍でなかなか出番がなかった海外旅行用のスーツケース。
ところが、今回、国内旅行なのに、この大型スーツケースが出番となるようだ。
東京ディズニーリゾート。
娘と最後に行ったのは、確か中学2年生だったはず。
だとしたら、ざっと12年振りとなる。
今回、2年振りに東京ディズニーランドのアトラクションの一つ、ホーンテッドマンションが9月14日から年明けまで期間限定で「ナイトメアビフォアクリスマス」の映画を元にした「ホーンテッドマンション ホリデーナイトメアー」を開催するということになった。
娘は「ナイトメアビフォアクリスマス」の中に出てくる、小鬼の「ショック」が大好きだ。
なぜ主役のジャックやサリーではないのか、脇役であるショックなのか、何度聞いてもわからないのだが、とにかく夢中なのだ。
だから、「ショックに会いに行く」ということで、早々にツアーを予約したのだ。
もちろん、ツアー参加のお相手は母である私だ。
娘と一緒の旅行自体、9年振りとなるので楽しみなのだが、ただ少し心配なことがあるのだ。
一昨年と昨年は、東京ディズニーランドは「ホーンテッドマンション」のアトラクションを「ナイトメアビフォアクリスマス」仕様にはしなかった。
そのため、娘は昨年、ショックの衣装を手作りし、大阪にある写真スタジオで撮影することを楽しみにハロウィンを迎えていた。
私は、ハロウィンの仮装衣装と言えば、ドン・キホーテか東急ハンズで購入するものだろうと思っていたところ、娘は裁縫学校を受講する段取りをとっていた。
「えっ? 裁縫? 手作りするの?」
元々、裁縫が好きだったとか、手作りが得意とか、そんなことは全然ない娘だ。
私は耳を一瞬疑った。
でも、どうやら娘は本気らしく、週末、会社が休みごとにその裁縫学校に通い、先生の指導の元で生地を購入し、型紙をとって、ミシンや手縫いを教えてもらいながら、数か月かけて仕上げていったのだ。
さらには、コスチュームの一つである、ショックのトレードマークのようなかなり大きいとんがり帽子も作り上げたのだ。
私は、娘の「ナイトメアビフォアクリスマス」好きは知っていたし、何かに夢中になるとものすごい集中力と妥協を許さない性格は知っていた。
だが、この度もちょっと度肝を抜かれるような、そんな本気度に驚かされたのだ。
かなりクオリティの高いコスチュームと、本場ハリウッドで使われているメイク道具を手に入れてまで施したメイクで、撮った写真館の写真は、どれも引くぐらいすごかった。
その昨年、精魂込めて作り上げたコスチュームを今年は東京ディズニーランドで、ホーンテッドマンションで、ショックの前で着られるということで、本人はずいぶん舞い上がっている。
その娘との気持ちの温度差を感じながらも、几帳面な私は淡々と必要なモノを揃え、旅行に行くための雑多な準備を進め、ホテルに往復宅急便で送る手配をしていた。
ところが、いよいよ明日、宅配便に出すだけとなったところで、大きな問題が起こったのだ。
精魂込めて作った、あの大きなとんがり帽子がスーツケースに入らないのだ。
いや、正確に言うと入る。
だが、娘はその帽子を折りたたみたくないのだ。
型が崩れるから、と。
いやいやいや。
じゃあ、どうするんだ?
手荷物で持って行くというが、航空会社JALのホームページによると、機内持ち込みサイズではどうやらアウトらしい。
だったら、ということで、大きな段ボール箱に入れたらどうだろうか、という考えに至った。
そうしたら、宅配便でも送れる。
今では、段ボール箱は、アマゾンで各種サイズが購入できる。
往復宅急便で宿泊するホテルに送る荷物は、三個口になるが、ようやく、娘の納得がいく送付手段が見つかったと胸をなでおろしていたところ、宅配業者に確認をとると、宅配便で送れるサイズが縦、横、高さのサイズを合わせて200センチ以内だというのだ。
ああ、これもアウトだった。
手荷物で飛行機には乗れない。
宅配便でもサイズが大きくて送れない。
もう、一体どうするんだ、娘よ。
私は、荷物の準備だけでなく、わが家にいるワンコの世話のために、高齢の母に留守を頼んでいる。
そっち方面も心配があるのに、荷物を送る段階でも問題が起こって、この時点で相当疲れてしまった。
そこで、最後に娘に確認した。
「もう、スーツケースに入れるしか方法はないよ」
最大の目的は、東京ディズニーランドに行けること、「ホーンテッドマンション ホリデーナイトメアー」でショックに会うことなのだ。
遠方から行くには、何かしら犠牲にすることもあるし、我慢するべきことだって生まれるのだ。
完璧はないのだと言い聞かせると、やっと納得してくれた。
ああ、もう本当に、このコスチュームに使うとんがり帽子をどのように持って行くかで、その日は朝から大騒ぎだったのだ。
それにしても、まあ、楽しいことに向けての問題だったが、あーでもない、こーでもないと意見をぶつけあっていると、心身共に疲れてしまった。
なんだか、夢の国である東京ディズニーランドに行く準備をしているだけなのに、頭を使い、知恵を振り絞っていると、本当に疲れるものだ。
問題となっていた、手作りのとんがり帽子は娘の妥協によって、二つ折りから三つ、四つ折っても良いことになった。
そうすると、大型のスーツケースにちゃんと収まるのだ。
対角線を使って、斜めに入れると大丈夫だった。
思えば、東京ディズニーランドへは、娘が2歳くらいの頃から連れて行っている。
幼い頃は、当たり前だが準備は私が全部していた。
何を着せるのか、どんなおやつを持って行くのか。
オムツは何枚必要か、どんなふうにランド内で遊ぶか。
時々、実家の母も参戦してくれたが、企画から全て私の好きなようにやってきた。
娘が成長してくると、本人の意見や好みをもちろん取り入れるが、それでも今回のような問題はこれまでにはなかった。
これは娘がしっかりと成長した証と言えるのだろうか。
それにしても、こんなにもこだわりがあることは、羨ましくも思えたりする。
ふぅ~、本当に大騒ぎの一日だった。
そう、これであと心配なのは、当日、東京ディズニーランドに朝に到着して遊んだ後、ホテルのチェックインタイムに合わせて仮装とメイクを仕上げ、再入園して仮装を楽しむというミッションだ。
なんとか、娘の思うような仮装が出来て、念願だった東京ディズニーランドの「ホーンテッドマンション ホリデーナイトメアー」をバックに写真を撮れますように。
私は、まだ肩に力が入っていることを知っている。
なんとか、これまで我慢を続けてきた娘の希望が叶うように。
なんとか、楽しい時間が東京ディズニーランドで過ごせるように。
心のどこかでは、26歳にもなった娘が思いっ切り楽しめることを、切に望んでいる59歳の母なのである。
わが家のアツい祭りは、まだしばらく続きそうだ。
□ライターズプロフィール
丸山ゆり(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
関西初のやましたひでこ<公認>断捨離トレーナー。
カルチャーセンター10か所以上、延べ100回以上断捨離講座で講師を務める。
地元の公共団体での断捨離講座、国内外の企業の研修でセミナーを行う。
1963年兵庫県西宮市生まれ。短大卒業後、商社に勤務した後、結婚。ごく普通の主婦として家事に専念している時に、断捨離に出会う。自分とモノとの今の関係性を問う発想に感銘を受けて、断捨離を通して、身近な人から笑顔にしていくことを開始。片づけの苦手な人を片づけ好きにさせるレッスンに定評あり。部屋を片づけるだけでなく、心地よく暮らせて、機能的な収納術を提案している。モットーは、断捨離で「エレガントな女性に」。
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