AIが瞬殺で本を読み解く時代、なぜアナログな読書会に参加するのか?
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
記事:山岡達也(ライティング・ゼミ 2026年GW集中講座)
私は今、地元にある小さな書店の読書会に定期的に参加している。
そこでは、読書会ごとに決められたテーマに沿って、自ら選書して、参加者にその本を紹介している。テーマと言ってもきつい縛りではないので、テーマからは想像もつかない書物が選書されることもあるが、選者の意見を聞くと、なるほどと思う事が多々ある。そういう自分もテーマにきっちりと沿って選書しているわけではない。むしろ、選書には苦労している方だと思う。
読書会に参加して気がついたのだが、参加者が選書してくる本は、文学や哲学の分野が多い。確かに、読書会に参加してくるような愛好家なら、いわゆる文系の分野に精通していて、そこから選書してくるのは自然な話だ。一方で、自分の経歴は完全に理系である。大学は理系の学部で、職歴はメーカーの研究開発職。読書は理系の本や実用書に偏っている。ここ数年は、天狼院書店が主催するインフィニティ∞リーディングに定期的に参加するようになって、文学や哲学も少しは読むようになったが、文学や哲学のことはまだまだよくわからない。読書会で文学や哲学の話題で盛り上がると、自分にはついて行けないことがよくある。話の輪に加わりたくても、どこを取っ掛かりに話に加わろうかと悩んで、静かに座ったままの自分がいる。
もっと大変なのは、自分の選書を読書会で紹介することだ。私の読書会は読書愛好家のそれとは毛色が違う。参加者が好きそうな分野から選書してみたいが、自分の手札に使えそうな本は少ない。読んだことがあるというだけでは、人に語るというのはハードルが高い。
ある読書会では、「積ん読本」というのがテーマであった。積ん読状態の本ならいくらでもあるが、小説や哲学の積ん読本は完璧な積ん読状態なので、内容を全く知らない。これではとても恥ずかしくて紹介できない。途中までは読んだ本の中から選べば、どうしても理系や実用書から選書することになる。思い悩んだすえ、私が選んだ本はこれだった。
レイ・カーツワイル 著 『シンギュラリティはより近く: 人類がAIと融合するとき』
AIのことを知っている人なら、この本を紹介したら話が盛り上がりそうだ。AIの進化の歴史、業界の動向など、話すネタは尽きない。しかし、今回の読書会には、そんな参加者はいない。だから、細かいネタは避けて、世間でも話題になったものをつかって説明するしかない。ChatGPTのことや、AIが必ずしも正しい答えを出さないこと(ハルシネーション)、AIが作成した小説が文学賞の最終選考に残されたという話を織り交ぜながら、何とか自分の選書を紹介した。実際のところ、ヒヤヒヤの体験だった。幸い、参加者の反応は意外と盛り上がった。参加者の中にはAIに課金している人はいなかったが、AIとチャットしたこと経験はあることが、幸いしたようだ。
こういうときには、AIを使いこなせばという声が聞こえてきそうだ。確かに、AIにいくつか質問すれば、著者の経歴、著作の内容、時代背景など、本の魅力を相手に伝える材料はいっぱい入ってくる。5分程度の説明なら、これでも十分だ。しかし、それだけは良いのだろうか。最近になって、それでは足りないと感じるようになった。
本の魅力を紹介するのなら、自分の想いをキチンと載せなければいけない。たとえそれがノイズみたいなものであっても、参加者はそこを含めて読書会を楽しんでいるのだ。だからこそ、読書会は面白い。話題が予想もつかない方向へと発展していく面白さ。そんなことをリアルな読書会に参加して自分は学んだ。そこから、自分の読書に対する考えがアップデートした。
本の魅力というものは、印刷物というものから独り立ちして、人の想いの中で生きていくことで、初めて読者に伝わることを体現しているのではないだろうか。時代や場所を越えて、共通の世界の中で作者と読者が語り合う。そうして作者と読者の間に一種の共通理解が浮かび上がってくる。そして、読者が得た共通理解を別の誰かに伝えていく。その結果として、本に書かれている内容は、本という媒体から独り立ちして、人々の想いの中で生きていく。それはデジタル空間だけでは決して得られることのない体験であり、こうした体験を一つ一つこれからも積み重ねていきたい。だから、私は読書会に参加し続ける。
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