迷信のおかげで生きていけます
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
記事:🌈(ライティング・ゼミ GW集中講座)
「早く親指 隠して!」
一緒に歩いていた友人に叫ぶ。
「救急車を見たら、親指を隠さなければ親の死に目に会えない」
幼い時にそんな迷信を聞いてからずっと守ってきたルーティンだ。
私は異常な数の迷信に左右されて生きてきた。
子どもの時に「四つ葉のクローバーを見つけたら幸せになれる」と同級生に教えてもらってから、多くの時間を四つ葉のクローバー探しに費やしてきた。昼休みにクラス全員参加必須の全員遊びでドッジボールをする時も、できるだけ早くボールに当たって外野の時間を多く作り、コートの外で四つ葉のクローバー探しに集中していた。
それは大人になってからも変わらず、13日の金曜日は不吉とされているので、大事な予定を入れずにできるだけ早く家に帰るようにしていたし、夜に爪を切ると親の死に目に会えないので、どんなに長い爪が気になっても朝にならないと切らない。指にささくれができると「親不孝」だと思い知り、親にちょっと優しくなったりした。
それは徐々にエスカレートし、一般的な迷信を超えて“自分ジンクス”たるものを作るようになった。たった一人で決めたルールなのでネットで検索してもまったく出てこない。他人からは理解されない自分だけのジンクス。
「勝負の日はアロエヨーグルトを食べる」
高校受験の日の朝食で、たまたまアロエヨーグルトを食べていて合格したことから、私の勝負メシはもっぱらアロエヨーグルト。冷蔵庫にはアロエヨーグルトが常備してあり、社会人になっても大事なプレゼンの時は必ずアロエヨーグルトを口にしている。
「犬のキーホルダーにキスすると守ってもらえる」
就活の時に母からもらった犬のキーホルダーは高校生の頃に亡くなった飼い犬そっくりだった。企業の面接前にその犬の人形に3回キスしてから胸ポケットに入れて面接を受けると第一志望の会社から内定をもらえた。それ以来、人生の大事な場面では毎回、犬のキーホルダーにキスし続けている。誰かに見られたら完全に不審者なので、いつもトイレの個室で済ませている。
「自分の誕生日の時刻を見ると幸せになれる」
7月28日生まれの私の場合、7時28分が幸せの時間。朝の支度をしている時にふと時計を見て、7時28分だったら今日1日は幸せな日。しかしこの自分ジンクスには落とし穴があり、1分遅い時刻=7時29分を見てしまうと、不幸になるというルールまで存在する。すべて自分で決めているから、そんなルールはいらないはずなのに、幸せの時刻に間に合わなかった悔しさからなんとなく作ってしまった自分ルール。ちなみに29分→30分に変わる瞬間を見られたらその不幸がチャラになる、という都合のいいおまけ付きだ。自分でも「私ってめんどくさい」と心底思うが、やめられない。大学生の時、ケーキ屋さんのバイト中、上司に「早くしろ!」と急かされ、急いでケーキを運ばなければならなかったのに、偶然レジに置いてある時計を見てしまい「7時29分」だった時は、今しなくていい無駄作業をして、なんとか30分に変わる瞬間を見てからお客さんにケーキを運んだ。
こういう話を人にすると、
「ジンクスに頼るなんてアホだ」
「それ、逆にがんじがらめにされて生きているよね」
なんて言われるが、私にとってジンクスは心の拠り所であり、そして何よりジンクスは人の心を揉みほぐすマッサージにもなる。
私は誰かを応援したい時、「自分ジンクス」の押し売りをする。
何か悩みを相談してくれた人や、勝負の日の人に出会うと、自分ジンクスを教えてあげるのだ。
「アロエヨーグルト食べたらマジで上手くいくよ」
「お気に入りのキーホルダーをお守りにして、3回キスして胸ポケットに入れてたら、どんな質問でも上手く答えられるから!」
「誕生日の時間、見てから行った方がいいよ」
すると、自分ジンクスを教えてあげた人からはその後、いい報告を受けることが多い。
「私のジンクスって最強!スゴいパワーを持ってる!」
自分ジンクスを妄信している私でもそんなことは勿論思わない。
ただ「あの人が“絶対大丈夫なおまじない”を教えてくれたからきっと大丈夫」という心の拠り所を作ってあげた結果、その人の緊張をときほぐすことができて、本来の実力を出せただけだ。
自分ジンクスの話をすると「生きづらそう」と笑われるが、むしろ私は自分ジンクスのおかげで頼るものができて、なんとか生きていけていると思っている。
あなたも自分だけのジンクス、作ってみてはいかがでしょうか。
<おわり>
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