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サボってねぇし

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

記事:森口畔(26年9月ライティングゼミwithAI)

 

私は今、この文章を書いている。だが本当はこの文章を書いている場合ではない。なぜなら締め切りが迫っている仕事があるからだ。

 やらなければいけない仕事をしないでこの文章を書いているのは、やはり仕事をサボっていることになってしまうのだろうか。うん、たぶんそうなんだろう。でも自分のなかではどうもサボっているという感じがしないのも事実だ。

 いまの気持ちはたとえるなら、騎馬隊の突撃を迎え撃つ鉄砲隊の心境のようなものだ。もちろん実際に騎馬隊を鉄砲で迎え撃ったことはない。時代小説から得たイメージだ。小説の中ではよく、鉄砲隊を指揮する武将が「まだじゃ!」などといって、迫る敵に向かってなかなか発砲を命じないというシーンが出てくる。私の理解だと、戦国時代の鉄砲は射程距離が短いから、なるべく敵が近づいてから撃たないと玉があたらないということなんだと思う。それなのに凡庸な武将ほど、迫りくる敵の恐怖に負けてはやく発砲を命じてしまう。それでかえって、突撃してくる敵の前に撃てなくなった鉄砲を抱えて立つ羽目になり、敗走する。

いま私は、やらなければいけない仕事をせずにこの文章を書きながら、そんな、鉄砲隊を指揮する武将の気持ちを味わっている。仕事という敵をギリギリまで引き付けてから、ここぞというタイミングで一斉射撃を食らわせなければいけない。そういうプレッシャーと人知れずたたかっているわけなのである。

 ここで、私がいま「やらなきゃ」と騒いでいる仕事というのがどういう仕事なのか、少し説明しておきたい。まずそれは音声ガイドというものの原稿を書く仕事だ。音声ガイドとは、視覚に障害がある方々のために、映画やドラマにつけるものだ。視覚が不自由で画面がよく見えない場合、作品から得られるのはセリフやBGMなどの音声情報が中心となる。しかし映像作品には、セリフもなしに無言でなされる仕草や、例えばシーンが夜から朝に変わったことなど、耳だけでは認識できない情報も多く含まれる。そこでそれらの情報を言葉によるナレーションで補おうというのが音声ガイドである。だから音声ガイドは、なるべくセリフやBGMなどを邪魔しないタイミングでつけなければならず、どんなふうにつけるかは作品の中身に左右される。セリフが少なく役者さんが無言で演技する時間が長ければ、音声ガイドで伝えなければならない要素は増える。逆にセリフがたくさんある場合には、なんとかその合間に必要な情報を差し込むようにして作成する。要するに、作品の特徴をよく見極めなければ、作品世界にマッチしたガイドを作成することはできない。だからやるべき準備作業さえ押さえたなら、最後に大事なのは「こんな感じで書こう」というイメージが固まることだったりする。

 いま私は仕事をサボっているように見えて実は、このイメージが固まるタイミングを待っているのだ。いわば、音声ガイドをつけようとしている映像作品が締め切りという旗指物をなびかせて突撃してくる。それをパソコンという名の鉄砲を構えて迎え撃つ。私が置かれているのはそんな状況なのだ。恐怖に突き動かされ、なんの確信もなく発砲すればこちらの負けである。そんな一斉射撃の機が熟すのを待ちながら、私は音声ガイドではなく、この文章を書くためのWordファイルを立ち上げたというわけだ。

 最初に述べた、この文章を書いていることがサボりではないと思える理由とはだいたいこんなことなのだが、実はもう一つある。

 私が今、そろそろ仕事にとりかからねばと焦るのは、とりあえずの作業時間の見積もりに基づいて立てたスケジュールに沿ってのことだ。最終的な締め切りから逆算して、この日にはこれをやらなければならないという通過ポイントのようなものがあり、今日のノルマを達成するには5時間くらい必要だろう、という見通しがある。それを根拠に、もう仕事にとりかからねばと騒いでいる。だが経験上、この見通しはあまり当たらない。5時間かかると思っていたがやってみたら3時間で済んだ、というようなことがよくおこる。今私が仕事にとりかからないのは、心のどこか、あるいは身体で、今日の作業は思ってるよりはやく終わるだろうと予測してるのではないかとも密かに思っている。

 そこでAIにこんな質問をしてみた。「5時間かかるだろうって思って、ウダウダしてた仕事が、やってみたら3時間で終わった。みたいなことがあるんだけど、これって心理学とか脳科学とかで説明されてることだったりする?」これに対してAIはなにやらそれっぽいことを色々教えてくれた……と、こんなことをして遊んでいるうちに、じゃなかった、戦国武将のような気持ちで機が熟すのを待つうちに、この文章の文字数も増えてきて、夜も更けてきた。いくら何でもそろそろ仕事にとりかかります。お付き合いくださりありがとうございました。《終わり》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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