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遅れてきた青春の続きを

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

記事:天野将明(26 年 9 月ライティングゼミ withAI)

 

「リベンジしたいなあ」

ゴールした瞬間、そう口からこぼれたことに、我ながら心底驚いたのだった。

 

私にとってスポーツは昔の恋人のようなものだった。

ふいに思い出すたびに、心の中にそっとしまう。いくら掘り起こしたとしても、そこにあるのは苦い思い出ばかりだからだ。

学生時代、一応運動部には所属していたが、なんとなく身体を動かす機会があればいいやくらいのモチベーションでしかなかった。だから負けてもちっとも悔しいと思えなかった。勝ちたいという想いが強い同級生との温度差にしんどさを覚えることがしばしばあったし、それも相まって全く楽しいと思うことができなかった。

小学生から大学生に至るまで、入ってはすぐに辞めるのを繰り返し、何一つとして長続きしなかったのだった。

一方で世間ではスポーツで大成したりリーダーシップを発揮したりしてきた人物が重宝されていると感じていたので、スポーツが得意な同級生に悔しさを覚えていたのも事実だ。体育の授業でスポーツ万能な同級生がちやほやされる一方で、どう頑張っても足を引っ張ってしまう自分が何となく周りから冷ややかな視線を浴びながら球技をするのにうんざりしていたのを今でも覚えている。

スポーツができる人への嫉妬と、スポーツができない自分への諦め。

それを抱えたまま一生を終えていくんだろうなと、どこか達観しながら学生生活を終えたのだった。

 

大学卒業時、身長174cmに対し体重が85kgオーバーと、絵に描いたようなコロナ太りを達成してしまった。

とにかく運動して痩せないとと思い、ランニングと筋トレを始めた。

どうせまた長続きしないだろうと思っていたが、これが案外ハマったのだ。

自分は身体の動かし方が苦手で本や動画では理解できないのでトレーナーに習い始めたのだが、学生時代に物理学や解剖学を習ったことで、指導を受けることで「なんとなく」ではなく「考えて」身体を動かすことができるようになっていた。これは我ながら目から鱗だった。

それに、走ることも鍛えることも、決して他人と競わなくていい。もちろんマラソンやボディビルといった大会はごまんとあるが、あくまで自己と向き合うことに主軸を置いた。先週の自分よりも長く走れた。より重たい重量を扱うことができた。それだけで、もっと自分はできるかも知れないという手応えに満たされる感覚を得られた。

すれ違いで別れた恋人とヨリを戻すかのように、私とスポーツとの距離感が確かに縮まり始めたのだった。

 

2026年1月、職場の後輩達を誘ってHYROXに出場した。

ランニングとワークアウトを繰り返すフィットネスレースで、周りのチームの半数以上が筋肉ムキムキの上裸姿で出場していたが、私たちはとにかく楽しみながら完走することを合言葉に服を着て出走した。

最後の種目が6kgのボールを3m上の的に100回当てるという競技で、言い出しっぺの私が担当することになった。

もちろん周りの選手よりも早く100回達成したかったが、それ以上にあの時は、運動苦手で自己嫌悪に陥っていた過去の自分との戦いだった。

途中何度も心が折れて諦めたくなった。それでもチームメイトに囲まれ応援を受けることで、やればできるという根拠のない自信が芽生え、また1回投げては休んでと回数を重ねることができた。

そしてようやく無事クリアし、全員で完走した。

ゴールの瞬間に噴射されるガスを浴びながらその場に倒れ込みつつ、ゴールできたことへの歓びを噛み締める……と思いきや。

「リベンジしたいなあ、今すぐでももう一回やりたいかも」

思わずこぼしたその言葉に、心の中ではイヤイヤイヤと突っ込まざるを得なかった。

 

思えば学生時代の自分は、部活動でも体育の授業でも体育祭でも、どんなスポーツをやっていても負けて当たり前だと思っていた節がった。

そんな自分にも、スポーツをしていて悔しいという感情があったとは。

楽しむことを選択したが故に、結果的に悔しさが残るのは皮肉かも知れない。でも社会人になって部活動の呪縛から解放されて身体を動かすことを楽しむという本来やりたかったことに立ち戻ることができたからこそ、そんな自分に巡り会うことができたと感じている。

まるで昔の恋人と過ごした日々が、時が経つにつれて古き良き思い出と変化するように、運動に対する向き合い方が180°ひっくり返ったのだった。

 

すっかりスポーツの虜になった私は、来年出場するフルマラソンやHYROXに向けてマイペースに準備をしている。

今日もやってみよう、遅れてやってきた青春の続きを。

 

≪終わり≫

 

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