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週刊READING LIFE vol.50

暗い夜の海に投げた小石の届いた先《 週刊READING LIFE Vol.50「「書く」という仕事」》


記事:丸山ゆり(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 

「ああ~、どうしよう、もう日にちないやんか……」
 
今日は、8月24日。
 
小学生の頃、毎年、今日ぐらいになると、そんな言葉をつぶやいていたな。
そう、学生だと夏休みが終わるまでのカウントダウンが始まる頃だ。
 
小学生の頃から、私はとにかく読書感想文が嫌いだった。
 
いや、その手前、読書という習慣がなかったのだ。
毎年、夏休みの初めに出される、課題図書。
その数冊の中から一冊を選んで、読書感想文を書くという夏休みの宿題は、小学校の6年間ずっとあった。
そもそも、あの分厚い本を全部読む自信がなかったというのが、本当のところだ。
 
そんなレベルだから、そこから感想文を書くなんて、とてつもなくハードルの高いミッションだった。
400字詰め原稿用紙を前にうなっていた姿を、今ならばクスっと笑いながら思い出せる。
けれども、当時の私は必死だった。
ゆううつだったのだ。
 
どんなことを書いたかなんて、みじんも思い出せないほど、印象も残っていない。
どうやって切り抜けていったのだろうか?
とにかく、イヤだという思いしか覚えていない。
 
あれから40年以上が経って、私は断捨離トレーナーの仕事のために、ブログを書くことになったのだ。
正確に言うと、事務局からブログを書くように指示されたのだ。
それを聞いた時、私はひっくり返りそうになった。
そう、その瞬間に思い出したのは、やっぱり小学生の頃の読書感想文のことだ。
 
「え~、私がブログ? まさか、文章を書くなんて」
 
50歳を目前に、また、文章のことで悩む日が来るなるなんて、青天の霹靂だった。
それでも、今では私も立派な大人だ。
「苦手です! イヤです!」とは言えなかった。
読書感想文にのけぞっていた、小学生の頃の私ではないのだ。
 
見よう見まねで、ブログを書き始めた。
そもそも、「ブログ」というものが、わからないのだからスタートした時点からオロオロしていた。
 
「こんな内容でいいのかな?」
 
「文章、ヘンじゃないかな?」
 
「読んだ人は、わかってくれるかな?」
 
書けば書くほど、不安が募ってきた。
それは、まるで、子どもが遊ぶ、シャボン玉のようだった。
ブログの内容は、元気ではじけそうなことを書きながら、内心は、か弱いものだったから。
どこかをつつかれると、一瞬にして心は折れそうだった。
 
そして、そんな不安がさらに大きくなるにつれて、ブログの更新も少なくなっていった。
時には、月に2記事しか書けないときもあった。
 
「やっぱり、文章なんて苦手だ」
 
「こんな私が書くブログ、誰が読んでくれるんだろう」
 
当時は、まるで、暗い夜の海に小石を投げているような気分だった。
弱気になりだすと、際限がない。
 
それでも細々と続けていると、ポツリ、ポツリと感想をもらうようになっていった。
 
「読んでいると、ほっこりと癒されます」
 
「優しい文章に心があたたかくなります」
 
私の拙いブログに対して、そんなことを言ってくれる人がいたのだ。
私の下手な文章が、人の心を癒すことになっていたんだ。
 
そこからだ、私がブログに、文章を書くことに、「仕事」をはっきりと意識することができるようになったのは。
 
たとえ、文章が上手くなくても、続けていることで人の心に思いを届けることができるんだ。
私の書いた内容が、人の人生を変えることができるんだ。
そう思うと、私の背筋がスッと伸びてゆくのが感じられた。
 
そうだ、私がいくら心の中で素晴らしいことを思っていたとしても、
それを、自分の言葉で伝えてゆかなければ、何も始まらない。
 
私が、いくら人のためになる仕事をやっていたとしても、そのことを文章にして世に出さなければ、誰の人生を変えることもできない。
 
文章を書くことが仕事だと、ハラに落とし込むことができると、私は次の欲がわいてきたのだ。
文章を書くなら、さらに上手く書けるようになりたい。
より多くの人の心に届き、響くようになってくれたら嬉しいな。
 
そんなとき、偶然、facebookで流れて来たのが、天狼院書店のライティングゼミの広告だった。
文章を習う場所があるんだ。
 
「人生を変えるライティングゼミ」というキャッチコピーに、私の仕事が重なった。
 
気づいたら、申込み、毎週2000文字を書くという宿題に必死に取り組んでいる私がいた。
ブログを毎日更新するようになって、5年以上が過ぎた今、毎週提出するということは、出来る。
何回目かの提出で、やっとweb天狼院書店に掲載OKが出た。
その時の喜びは、今でも忘れない。
 
文章を毎日書くことはできるようになっても、読者にメリットを与える文章を書くことは、さらにハードルが高いものだった。
 
何度も繰り返し、フィードバックをもらい、さらに書き続けてゆくと、今度はブログの方にも変化が起こった。
読者が増え、アクセスもどんどん増えていった。
読んでくれる人のことを思い、書くことによって、より多くの人の心に届いていってくれたのだ。
 
「書く」ということが、私の人生の中の習慣になるなんて、小学生の頃の私には全く想像なんてできなかった。
 
文章を書くことで、人の人生を変えることができるが、それ以前に、私自身の人生を変えることができた。
 
「書く」ということで、多くの人の人生を変えることができるような、そんな文章の鍛錬をこれからも続けてゆこう。
 
8月24日。
 
私は、小学生の頃には読書感想文が書けない、ゆううつな日となっていた。
 
今日の私は、ライターズ倶楽部の最後の投稿に向けて、背筋を伸ばし、読者のことを考えて、軽やかにタイピングをしている。

 
 
 
 

◻︎ライタープロフィール
丸山ゆり(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

関西初のやましたひでこ<公認>断捨離トレーナー。
カルチャーセンター10か所以上、延べ100回以上断捨離講座で講師を務める。
地元の公共団体での断捨離講座、国内外の企業の研修でセミナーを行う。
1963年兵庫県西宮市生まれ。短大卒業後、商社に勤務した後、結婚。ごく普通の主婦として家事に専念している時に、断捨離に出会う。自分とモノとの今の関係性を問う発想に感銘を受けて、断捨離を通して、身近な人から笑顔にしていくことを開始。片づけの苦手な人を片づけ好きにさせるレッスンに定評あり。部屋を片づけるだけでなく、心地よく暮らせて、機能的な収納術を提案している。モットーは、断捨離で「エレガントな女性に」。
2013年1月断捨離提唱者やましたひでこより第1期公認トレーナーと認定される。
整理・収納アドバイザー1級。

 
 
 
 

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2019-09-16 | Posted in 週刊READING LIFE vol.50

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